鬼滅の刃  とある一剣士の物語   作:鬼滅ニワカ侍Part2

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第18話  触れてみろ

 

 

 

 

「──────天国に居たクセに地獄に居たみたいな顔してんじゃねぇーーーーっ!!!!女の子とキャッキャしてただけのクセになにやつれた顔してんだよっ!!土下座して謝れよっ!!切腹しろーーーっ!!!!女の子を合法で触り放題なんだぞっ!!体をいっぱい揉んでもらって湯飲みで遊んでるときは手をよぉっ!!鬼ごっこしてるときはもう触り放題じゃねぇかーーーっ!!!!女の子1人につきおっぱいが2つっ!!お尻が2つッ!!ふとももが2つついてんだよわかるかっ!!すれ違うだけでいい匂いするし見てるだけでも幸せになれるだろうがーーーっ!!!!幸せっ!!うわ幸せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

 

 

 

「……これから先蝶屋敷に来ることはない」

 

「注意してくるんで考え直してください」

 

 

 

 三度笠があっても、不快感で顔を顰めているのがわかる声色で蝶屋敷にはもう来ないと告げると、割と本気で額に青筋を浮かべたしのぶが威嚇的な美しい笑みを浮かべている。

 

 叫んでいるのは黄色い髪が特徴的な我妻善逸である。負傷して寝たきりとなり、体を動かすときに支障が出ないように肉体の機能を元に戻す一環として機能回復訓練なるものを行っている。遅れて合流した善逸は、炭治郎と嘴平伊之助というよく一緒に行動している友人の2人が毎回やつれて帰ってくる理由に激怒していた。

 

 鬼ごっこのような全身訓練や湯飲みに入った薬を掛け合い。柔軟体操などがあり、そのどれも相手をしてくれるのが蝶屋敷で働いている女の子なのである。女の子が大好きな善逸からしてみると痛みなんてなんのその。全てが天国だった。

 

 鬼から一撃も貰ったことがない柳としては機能回復訓練というものが何なのか気になって内容をしのぶに聞き、その内容のつまらなさでため息を吐いた。そんなことであれだけテンションを上げられるのだ。単純な奴だなと善逸に呆れた。

 

 

 

「あ、柳さんおかえりなさい!今日は泊まっていってくれるんですか?」

 

「……やかましいのが居るだろう。藤の家紋のところに行くつもりだ」

 

「えー!せっかく来てくれたんですもの、泊まっていってほしいな〜?善逸くんはえっと……ちょっと女の子が相手だから声がおっきくなっちゃってるだけだから。ちゃんといい子なのよ?苦くて美味しくないお薬も、しっかり飲んでくれるんですもの!」

 

「姉さんに鼻の下伸ばしながらよ。ホント、そういうところ鈍いんだから」

 

「なんでもいい。やかましくしないなら泊まる」

 

「うふふ。じゃあ私としのぶの3人で川の字になって寝ましょう?」

 

「姉さん!?」

 

 

 

 顔をほんのり赤くしてカナエに詰め寄るしのぶ。まだ寝床を一緒にしたことはない。風呂で柳の胸を本人曰く執拗に揉みしだいたクセに今更そんなこと言うのかと思うが、しのぶとしても流石に一緒に寝るのは恥ずかしいのだろう。姉とは昔一緒に寝ていたが、今は別々で寝ている。

 

 柳さんも否定してくださいと言わんばかりに、頰が少し赤いままアイコンタクトしてきた。同調するつもりはないが、柳の率直な意見を言うことにした。

 

 

 

「胡蝶しのぶは寝相が悪そうだからやめておく。いびきをかかれてはたまったもんではない」

 

「……(怒)。うふふふふふ。私は寝相もいいですし、いびきはかきませんよ?勘違いされたままでは困るので一緒に寝ましょうね?」

 

「やった!今日の夜はお喋りしましょうねっ」

 

「はぁ……くだらん」

 

 

 

 率直な意見を口にしただけだというのに、しのぶは美しい微笑みを貼り付けながら額に大きな青筋を浮かべた。いかにも怒っているし、気配も鋭いものになっている。普通の隊士なら泡を吹いているか蒼白くなって後退るところを柳はどうでもよさそうにしていた。

 

 結局、その日の夜はカナエとしのぶ、そして柳の3人で寝ることになった。しのぶは確かに寝相がよくいびきもかかなかったが、カナエが夜に厠へ行って帰ってくると布団を間違えて柳の方に入ってそのまま寝た……なんてことがあったとか。

 

 

 

「姉さん?なんで柳さんの布団で、しかも抱きついて寝ているの?」

 

「あれ〜?なんで私こっちの布団で寝てるんだろう……?けど、柳さんと一緒に寝れて嬉しいわっ」

 

「姉さん正座」

 

「えっ」

 

「早く正座」

 

「はいぃ……」

 

「くだらなすぎて付き合いきれん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの──────柳一心さんですか?」

 

「……なんの用だ」

 

 

 

 蝶屋敷。月が夜空に昇った夜のこと。縁側に腰を掛けて夜空をただ眺めていた柳一心。黄昏れている訳ではない。鬼を殺すために基本夜に歩き回る生活を送っていたせいで目が覚めやすくなっているだけだ。対して朝の方が比較的眠い。

 

 そんな柳は腰掛けた縁側から動かず、目前に広がる雑草1つ生えていない手入れされた庭から別の方へ目を向けた。そこには少年が1人立って彼女の方を見ていた。その顔は気まずそうで、話しかけていいか悩んでいるようにも見える。

 

 少年は炭治郎だった。竈門炭治郎。前例がない、鬼を連れた隊士。鬼舞辻無惨が何故か執拗に狙う個人であり、唯一鬼舞辻無惨と直接遭遇した人物にあたる。そんな炭治郎の気配を読んで、近づいて来ていたことは知っていた。気配の性質も読み取り、自身に話があることもわかっていた。

 

 

 

「今、お話いいですか?」

 

「短い間ならな」

 

「わかりました……っ!あの、自己紹介がまだでした!俺は竈門炭治郎といいます。今は起きてこないけど、妹の禰豆子がいます。柳さん、柱合会議のときは庇ってくれてありがとうございました!」

 

「お前達を庇ったのは事実だが、理由はお前達の身を案じてではない。鬼舞辻無惨に何かしら繋がる可能性を考慮してのこと。感謝なんぞいらん」

 

「でも……」

 

「いらんと言った」

 

「うっ……」

 

 

 

 柳は炭治郎の感謝の言葉を全く受け取ろうとしなかった。それは謙遜によるものではなく、心の底からいらないと思っているから。何故なら、柳は炭治郎を助けるためにやったわけではない。鬼舞辻無惨に何かしら繋がるだろうと思ってのことだ。有効打を打てる道具を壊されないためにした行為。

 

 柳にとって、炭治郎になんの価値もないなら柱合会議にすら来なかった。その程度の存在。やはり、その他全てと同じくなんとも思っていないのである。故に感謝の言葉はいらない。とことん無下にされた炭治郎は困った顔をしたが、匂いから余計なことを言ったら大変なことになると察して口を噤んだ。

 

 しかし、炭治郎は柳にどうしても言いたいことがあった。それは、柳一心が一般人……つまりなんの罪もない人まで手に掛けているという事実。それだけは、善逸曰く泣きそうになるほど優しい性格の炭治郎を衝き動かした。

 

 

 

「柳さん。なぜあなたは普通の人を傷つけるんですか」

 

「傷つける?違うな。斬って殺しているんだ。間違えるな」

 

「……っ!!あなたは……っ!!他の柱の人達よりも強く……っ!すでに十二鬼月の上弦を1人で倒したと聞きました!なのにその力をどうしてなんの罪もない人に向けるんですかっ!」

 

「聞いていないのか?私は斬ることが好きなんだ。鬼は斬っても跡が残らん。都合がいい。それに人間よりも硬い。だから優先的に狙っているだけのこと。鬼が居なければ人間をずっと斬っている。それが私だからな。要するに、斬る対比が違うだけのこと……それをお前にとやかく言われる筋合いはないな」

 

「……ッ!!!!!俺はあなたを──────」

 

「──────許せない……か?お前のような塵芥にも劣るガキに何を言われようが、そこらに落ちている石よりも興味を割かれないが、些かやかましいな。これ以上くだらん話を続けるなら両腕を斬り落とす」

 

「──────ッ!?」

 

 

 

 優しい心を持っている炭治郎にはどうあっても理解できなかった柳の考え。それはそうだ。好きで人を殺していると言われて、はいそうですかと肯定する者はそう居ないだろう。居たとしてもそれは異常者だ。

 

 鬼となった妹を人間に戻すため、罪もない人々を殺させないため、自分と同じような悲しい気持ちにさせないため、炭治郎は毎夜戦っているというのに目の前の人物はわざと、その守ってきた人達を殺している。頭に血が上って更に一言言ってやろうと思ったとき、目の前に居たはずの柳はもう居なかった。

 

 その代わり、背後に居た。瞬きもしていないのに姿が消えた。そして顔の横に混じり気のない漆黒の刃が伸びており、鍔から鋒まで混じり気のない黒だった。背後が恐ろしすぎて動けない。炭治郎も恐怖したのだ。柳に染み付いている他者からの恐怖の匂いと同じように。

 

 

 

「私は殺すと言ったら殺す。両腕を斬り落とすと言ったら落とす。嫌ならば一言も発さず消え失せろ」

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 匂いが本気のものだった。今ここで引かなければ、柳はその瞬間に炭治郎の両腕を斬り落とすことは間違いない。故に炭治郎は下唇を噛み締めながらでも引くしかなかった。こんなところで両腕を失くすわけにはいかない。やらねばならないことがあるのだから。

 

 この世には、優しい心で触れても毛ほども動きもしない心がある。その心が如何に他者に対して牙を剥くような攻撃的なものであったとしても、必ずしも伸ばされた手を取るとは限らない。

 

 柳を改心させることなど不可能に近い。強靭な精神力に類稀なる肉体を持つが故に、彼女は何もかも意のままにできる。それだけの実力を得てしまったから、こうして警戒されている。本人は気配で読み取って理解しても放っておいているのだからお察しだろう。

 

 炭治郎の背中に一瞬目を向けたが、興味が失せたように視線を庭に向けた。手に持った日輪刀を置いて縁側に座り直す。柳はまた、夜空に浮かぶ月を静かに眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬうぅぅ…………っ!!!!努力……ッ!努力っ!努力っ!努力ぅぅっ!!」

 

 

 

「「「頑張って!炭治郎さん!」」」

 

 

 

「……あれはなんの鍛錬なんだ」

 

「全集中の呼吸・常中を会得するために心肺機能を上げる鍛錬だそうですよ」

 

「ふぅん?」

 

 

 

 数日後。柳が蝶屋敷に訪れると、蝶屋敷の庭や塀の上を駆け回り、岩を持ち上げたりしてがむしゃらに鍛錬に励む竈門炭治郎の姿があった。それを見て首を傾げる柳。それに答えたのはしのぶだった。

 

 確かに……と口ずさみながら炭治郎のことを見る。柳の目にはすべてが透けて見える。骨。血管。筋肉。臓器。神経までもすべてだ。その視えるものの情報によれば、数日前よりはほんの少しだけ心肺機能が高くなっている。常中を行えるようになるには心許ないが、そのうちできるようになるだろうレベルにまではなっている。

 

 騒いでいた黄色頭と猪のやつは?と聞くと、カナヲにこてんパンにされて不貞腐れてしまい、機能回復訓練を辞めてしまったらしい。意志の弱い奴等だなと適当に返しながらその実、興味は全くない。

 

 興味なさそうだなと思っているしのぶは苦笑いだった。まあ柳さんは機能回復訓練をくだらないと言っていたし、それを行っている人達のことなんてもっと興味ないだろうなと思うのは自然のことだった。しかしその後は予測できなかった。

 

 

 

「捕まえる、捕まえられるで機能を回復させる訓練があっただろう。やってみるか?」

 

「……へっ?」

 

「そういえば鬼ごっこなんてものはやったことがないなと思ってな。まあやらなくても構わないが」

 

「……いえ。やりましょう。お相手はもちろん──────私が」

 

 

 

 なんと、あの柳から鬼ごっこの機能回復訓練をやってみるかと誘いがあったのだ。やる必要なんて全くないどころか、これから先必要になることがあるかすらも怪しい人物からの誘いだ。それに、柳の実力のほんの一端でも体感することができる。

 

 しのぶは胸が高鳴った。緊張によるものだ。あの柳を相手に機能回復訓練を行えるというのだから、またとないチャンス。これを無駄にする勇気こそ無かった。

 

 是非やりたいと答えたしのぶに、小さく頷いたら蝶屋敷の中へ入っていった柳。向かうは鍛錬場。本当にやってくれるのだと思い、緊張で張り裂けそうな胸を少し抑えながら深呼吸をし、しのぶは意を決したように彼女の後を追いかけた。

 

 それからのこと、鍛錬場には炭治郎や伊之助、善逸にアオイとカナヲ。他にもカナエとすみ、きよ、なほが集まった。観客として観戦するためにやってきた彼女達の視線の先には日輪刀を外しただけの柳としのぶが対峙している。自然体で立っているだけの柳。膝を落として半身を前に出し、いつでも駆け出せる姿勢をとっているしのぶ。両名の間には見えない空間の歪みがあるようで禍々しかった。

 

 

 

「お前では私に触れることなんぞ不可能だが、やってみるのもまた一興だろう。どんな手を使っても構わんから、来るといい」

 

「へぇ……そこまで言うということは、もし私が触れられたときは何かお願いをさせていただいても?」

 

「その時は……そうだな。灼刀が出せるように鍛錬をつけてやってもいい」

 

「言いましたね?やっぱりなしは通りませんし、通しませんから」

 

「はッ──────精々気張れよ」

 

 

 

 

 現蟲柱として活動しているしのぶに対するは、鬼殺隊の協力者にして鬼殺の最大貢献者の柳。機能回復訓練の一環、全身訓練というものであるものの、その雰囲気は殺伐としたものである。

 

 

 

 

 さぁ、胡蝶しのぶは柳一心に一矢報いることができるのだろうか。

 

 

 

 

 






竈門炭治郎

柳一心に助けてもらったのでお礼を言いたかったが、同時に同じ人間を殺していることを咎めたかった。だがその考えは覆ることとなる。

価値観。人間性の違い。性格。生きてきた世界。生まれた環境。生まれ持った才能。何もかもが違うからこそ、炭治郎の優しさで柳を改心させることは不可能だった。




柳一心

子供の頃から他者に恐れられていたため、鬼ごっこなんてやったことがない。そのため1回くらいやってみるかの気持ちで機能回復訓練をやってみるか?と提案した。




胡蝶しのぶ

絶対に柳に触れてやると気合を入れている。そして灼刀を行えるように鍛錬をつけてもらう。またそれとは別に、鬼殺隊最高戦力である柱を任されている以上、ずっと格下に見られるのは嫌なのでプライドの問題もある。


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