鬼滅の刃  とある一剣士の物語   作:鬼滅ニワカ侍Part2

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第21話  どこからどこまで

 

 

 

 

「──────切符を……拝見。切符を……拝見」

 

 

 

「あれか、鋏痕をつけるというのは」

 

「そうです。車掌さんが来たら切符を渡してくださいね」

 

「あぁ。それにしても……」

 

「どうかしました?」

 

「…………………………。」

 

 

 

 (やつ)れた感じの車掌が車両の通路を歩いて乗客の切符に専用の鋏で切り込みを入れていく。しのぶから教わっていた通りの鋏痕に切符を手に取り待っているのだが、柳はその手の中の切符に違和感を感じていた。

 

 微かに鬼の気配が切符からするのだ。確かに無限列車から鬼が出てくるという話だったが、何故切符なのだろうか。それも本当に微かなものだ。その証拠にしのぶは切符から感じる違和感程度の鬼の気配に気がついていない。

 

 鬼が既に関与している?あり得る。だがどういったものだろうか。血鬼術は自然の理を無視したものがあったりするため、想像では絶対に答えに辿り着けない。ある程度の予想は立てられてもそれだけで、柳もわからない。

 

 さてどうするかと悩んでいる内に柳としのぶが座る座席まで車掌が来てしまった。先にしのぶが切符を出し、切り込みを入れる。特に彼女に変わったところは見られない。切符を拝見と言いながら手を伸ばすので仕方ない……と切符を差し出し、渡す寸前で口を開く。

 

 

 

「車掌。少し聞きたいことがあるのだが、いいか?」

 

「……はい。なんでしょう……」

 

「──────鬼……についてどう思う?」

 

「…………っ」

 

「……?柳さん?」

 

「どうした、車掌?何かおかしなことでも聞いたか?」

 

 

 

 柳は突然車掌に向かって鬼についてどう思うか、などと質問した。しのぶは意図がわからず訝しげにしながら柳の隣で首を傾げている。何故今その質問をこの人に?と顔に書いてあるようだ。

 

 対する車掌は少し息を呑んだ気がした。三度笠の向こうの柳の目が細められる。窶れてくたびれてしまっている印象が見受けられる車掌は答えづらそうにしており、一般人にいきなりそんなことを聞いたら困惑するに決まっていると、しのぶが耳打ちしようとしたとき、彼女の腰に柳が手を回し、ぐいっと引き寄せた。

 

 

 

「きゃっ……柳、さん?」

 

「どうした、車掌。私は鬼()についてどう思うと聞いたのだが、列車の走行音に紛れて聞こえづらかったか?」

 

「鬼……嫁……ですか」

 

「よ、嫁……」

 

「あぁ。この女は私の嫁なんだ。今はこうしてかわいらしい反応をしているが、家では私を尻に敷く。どうも惚れた弱みなのか私は逆らえん。だが愛があればそんなこと関係あるまい?現に私は嫁を心から愛している。だが中にはそういった尻に敷かれるのが嫌だという者もいる。今ふと思いついて気になってな。車掌は愛する嫁が鬼嫁と呼ばれるほど厳しくても気にしないか?」

 

「は……ッや、柳さんっ!嫁って……っちょっと……っ!」

 

「まあそう恥ずかしがるな。たまにはいいだろう?それで、どう思う?」

 

「……っ。私は……どんな形であろうと、()のことを愛しています。たとえ、何を犠牲にしたとしても、会いたいと思える程愛しています。なので……気にしない……と、思います」

 

「ふむ……そうか。意見をありがとう。切符だ、切り込みを頼む」

 

「……拝見……しました」

 

 

 

 車掌は柳から切符を受け取り、専用の鋏で切り込みを入れると覚束ない足取りで次の客のところまで移動していった。その後ろ姿を少し眺めていた柳は目を細めていたのだが、ふといつもの雰囲気に戻ると目線を落とす。

 

 腰に手を回され力強く引き寄せられたしのぶは、柳の胸元に手を置いて殆ど抱きついていた。そして身長差があるため下から上目遣いで見上げているのだが、その顔は耳まで真っ赤になり、目の端には涙が溜まり、形と色の良い唇がふるふると震えていた。

 

 

 

「なんだ」

 

「な、なんだ……じゃないですよ……っ!どういうつもりですか突然!?恥ずかしいじゃないですか!?い、いきなり嫁だなんて……っ!」

 

「車掌の反応を()()ためだ。咄嗟の嘘だが良い反応だった。騙されていたぞ」

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!もうっ!もうっ!!ちょっと顔見ないでください!いいですね!見たら毒撃ちますから!」

 

「やかましい奴だ、まったく」

 

「はぁ……はぁ……ふぅ。もう、車両の中暑すぎですっ」

 

 

 

 柳がしのぶの腰から手を離した瞬間ずさっと距離を開けた。真っ赤になった顔を逸らしながら、手で顔を扇いで風を送り熱を冷まそうとする。全身熱くてしかたないと言わんばかりの顔の真っ赤具合を自覚しながら、チラリと柳を見る。彼女は残っている弁当を食べ進めだした。

 

 まったく気にした様子はない。まあ当然だろうか。柳は車掌に少しカマを掛けるために芝居を打っただけなのだから。結果的にその甲斐があったようだ。

 

 どうにか顔の熱を冷まし、何故か知らないが口角が上がろうとするのを頬をぐにぐにとマッサージすることで防ぎ、心をいくらか落かせるとスルスルと開けた距離を詰めて柳の隣にちょこんと座り直す。おほんとわざとらしく咳をすると、先ほどのはどういう意図があったのか問いかけた。

 

 

 

「あの車掌は鬼と結託している」

 

「さっきの車掌さんですか?でも何故?」

 

「理由はわからん。少なくとも自分から鬼に力を貸しているようだ。恐怖の気配がしない。というよりも焦りの気配が強い。特に私に鬼について聞かれたときはな。心臓も鼓動を早めた。十中八九あの車掌は鬼と繋がっている」

 

「そんなことが……」

 

「それとこの切符だ。微かだが鬼の気配がある。もしかしたら何かの血鬼術の発動に使うためのものかも知れん」

 

「……え?そうだったんですか!?というか、なんで教えてくれなかったんですか!」

 

「まあすぐにどうにかなるものではないだろう。お前が切符に切り込みを入れられた後も、特に変わった様子はない。私は一応他の客の切符と切り込みを入れられる瞬間を狙って取り換えたが、それでもどうなるかはわからん」

 

「……もし、切符に切り込みを入れられた人が死ぬ、もしくは操られる類いの血鬼術だったらどうするつもりですか?もうおしまいですよ?」

 

「それはないだろうな。そんな強力な血鬼術なら、私がよく読み取ろうとしなければ気がつかない程の微かな気配だけでは済まない」

 

 

 

 まあ、それより鬼狩りが先になりそうだがな。

 

 

 

「──────柳さん」

 

「別の鬼だ。私は食事の途中だからお前がやれ」

 

「わかりました」

 

 

 

「■■■■■■■■■■■■ッ!!!!!!」

 

 

 

 車両にいつの間にか鬼が居た。腹をすかせているのか、口から涎を滝のように流し、我慢ならぬと言わんばかりに骨の髄まで響く咆哮を上げる。それを気配で読み取り、柳は雑魚だと判断するや否や弁当を食べ進めていく。代わりにしのぶに任せるようだ。

 

 言われなくても鬼は滅殺するしのぶはふんわりと立ち上がり、足元に置いておいた箱の中から自身の日輪刀を取り出して腰に差した。顔には微笑みを浮かべているが、その目は笑っていない。家族を殺した鬼に浮かべるのは攻撃的な笑みのみだ。

 

 

 

「蟲の呼吸 蜂牙(ほうが)(まい)──────真靡(まなび)き」

 

 

 

 強烈な踏み込み。距離を瞬きをする間もなくゼロにしたしのぶは日輪刀を抜刀して鬼に突き刺した。刺すことに特化した特異な形をしたしのぶの専用の日輪刀は鬼の体に8箇所の傷を作り、藤の花をベースに生成された猛毒を受けて皮膚が爛れていき、鬼は苦しみの声を上げながら藻掻き苦しみ、やがて倒れて動かなくなった。

 

 柳についていくようになって鍛錬を怠ることなく続け、常に強くなることを目指しているしのぶの移動速度は少し前よりも磨きが掛かっており、チラリと見た柳もふーんと口に出すほど。元より柱の中でも俊足の部類だっただけあって、彼女はまた強くなっていた。

 

 

 

「柳さん、終わりましたよ」

 

「私も食べ終えたところだ。どれ、取り敢えず座れ」

 

「え、でも鬼が出たことを煉獄さんに伝えるために合流しないと……」

 

「同じ柱だろう。心配ない。焦る必要もない」

 

「うーん……はぁ、わかりました。はい、座りましたよ。それで、この後は……っ!?」

 

「──────よくやった。褒めてやる」

 

 

 

 隣に座らせたしのぶの肩に手を回して引き寄せた柳が、彼女の頭を膝の上に置いた。着流しから香る太陽の香り。それと服の下に感じる柳の体の柔らかさ。それと頭をゆっくりと優しく撫でる手つき。驚いたしのぶは固まった。まさかのご褒……ではなく、チャンスにその場で石になる。

 

 その間も柳の手は止まらずしのぶの頭を撫でていた。昼夜問わず忙しい柱の仕事をしているのに枝毛もない、指を通せば引っかかることなく抜けていく柔らかい髪を撫でる柳の手つきは本当に優しい。しのぶは煉獄と合流しないといけないと考えていた思考を蕩けさせ、縋るように柳の太腿に顔を押しつけて愛撫を享受した。

 

 

 

「柳さん……」

 

「なんだ」

 

「私今、とっても幸せです」

 

「……そうか。たまにはこういうのも、悪くない」

 

「……はい」

 

 

 

 許されるかな。少し不安になりながら、腕を柳の腰に回して抱きついた。けれど彼女は嫌がる素振りを見せず身を任せている。頭を撫でる手は変わらず、胸いっぱいに柳の匂いを吸い込んでリラックスをする。こんな時間が永遠に続けばいいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────早く縄を結んで。この2人の精神の核を壊さないと、夢を見せてもらえない……っ!」

 

「わ、わかってるよ……っ!」

 

 

 

 柳の太腿に頭を乗せて()()()()()()()()()()()と、太腿に頭を乗せられながらぐったりしている柳を見下ろしているのは一般人だ。鬼殺隊の隊員ではない。だが鬼と無関係というわけでもない。

 

 血を混ぜた切符を車掌が切り込みを入れることで血鬼術が発動し、強制的に眠らされる。その術にはまった者に特別な縄で自身と繋ぐことによって相手の夢の世界に入れる。そこで夢を見てる世界とは別の無意識の領域の何処かに存在する精神の核を破壊すると、破壊された者は廃人になる。

 

 この仕事を行う代わりとして、鬼は協力関係になった人間に幸せな夢を見せる。もちろん、鬼の性質上幸せには終わらせず、そこから絶望の夢を見せて精神を壊して食らうのが常套手段だった。この者たちも鬼と協力関係にあり、柳としのぶを狙ってやってきた。

 

 先に行ってるから。そう言って女の方はしのぶと自身の手首に縄を縛り、眠りに落ちると夢の世界へ入っていった。男の方も緊張した様子で柳と自身の手首に縄を縛り、椅子に座って目を閉じる。こうしていると眠りに落ちて夢の世界へ入れる。……が、いつまで経っても夢の世界に入れない。なんで、そう思って目を開けると、窓枠に肘を置いて頬杖をつきながら、()()()()()()()()()()()()()柳と目が合った。

 

 

 

「─────────ッ!?な、なんでがひゅッ!?」

 

「やはり大した血鬼術ではなかったな。あぁ、なんで寝ていないのか、か?切符に切り込みを入れると血鬼術が発動すると推測して、車掌が切り込みを入れる瞬間、既に切り込みを入れた他の客から切符を奪い取り交換し、切り込みと鋏の位置を合わせた。つまり、厳密には私の切符に切り込みは入れられていない。感覚でバレる可能性があったが、私の問いかけで動揺していたからな。気がつかなかったようだ。それで?これはどういったものなんだ?教えてもらおうか」

 

「ご……っひゅっ……っ!!」

 

 

 

 柳は起きていた。気配で切符に細工をされていることを感じ取り、問いかけで車掌が鬼と繋がっていることを確信した瞬間、切符を切らせると何らかの血鬼術にハマることを見越し、不可視の移動速度を利用して他の客と切符を入れ替え、位置を合わせることで切り込みを入れられることを防いだ。よって血鬼術に掛かる条件に当てはまらず、結果眠らなかった。

 

 カクンと眠りに落ちて膝の上に頭が着地したしのぶを見て、眠らせる類いの血鬼術かと理解した。しかしどんな血鬼術なのかもう少し知りたくなった柳は、他にも協力関係にある人間がいることを予想し、わざとその場に留まり待った。結果的に協力関係にある人間が釣れ、箱から出した日輪刀の鞘の(こじり)で胸を打ちつけ肋骨を3本ほど砕いた。

 

 肋骨を折られた男は腹を押さえるように腕を回し、痛みで前傾になりながら滝のように冷や汗をかいている。それを無感情に見下ろしながら日輪刀を持ち上げ、また鐺で膝を狙い関節の骨を粉々に砕いた。骨が折れる生々しい音が響き、男は絶叫する。

 

 

 

「あ、ぁあ脚がぁぁっ!!!!」

 

「ほら、命令されているならある程度鬼の能力は知っているだろう。さっさと吐いたらどうだ?」

 

「はぁーっ!はぁーっ!こ、こんなことしてっ、許されると思ってるのかよッ!!」

 

「まだ喋る気がないと。なら、喋れる口以外は順番に斬って落としていくとしよう。安心しろ。殺すのは最後だ」

 

「ぁあ……ぁああぁ……──────あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!」

 

 

 

「──────さて、次は鬼の頸でも斬り落とすとしよう」

 

 

 

()()()()()()()()()、最後には頸を斬られて絶命している死体の前で呑気にお茶で食後の水分補給を行った柳は、腰に日輪刀を差して前の車両に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 






柳一心

眠らされることがないように立ち回った。切符を取り換えるとき、割と本気の速度を出した。なので隣りに居たしのぶにもバレていない。

拷問した男のことは、結局指を順番に1本ずつ斬り落とし、脚を灼刀で斬って止血しながら落とし、腕も同じように落とした。泣き叫び、助けを乞い、謝罪を繰り返し、絶望しながら斬り刻まれ、最後は頸を斬られて死んだ。

病死した幼い妹と弟にまた会いたいという思いから鬼に手を貸したが、最後は惨たらしい最期を迎えた。

柳的には鬼に協力した男に興味がなかったので顔も覚えていない。




胡蝶しのぶ

切符に切り込みを入れられて眠った。夢の中で柳に膝枕をしてもらい、頭を撫でてもらっている。彼女的には幸せな夢らしい。

運がいいことに、長時間ではないが現実でも柳に膝枕してもらっていた。

ちなみに、一番後ろの車両から飛び乗ってきた炭治郎達とは顔を合わせているが、伊之助以外柳のことが苦手なため会話は挨拶程度で別れている。その時挨拶を交わしたのはしのぶのみ。








「柳さん、柳さん。意外と柳さんの太腿って柔らかいんですね。筋肉が常人の数十倍と聞いていたのでてっきり硬いと思っていました」

「質のいい筋肉は柔らかいものだ。まあ、お前が懸想する私の胸は脂肪の塊だからどうしても柔らかいがな」

「ちょっと柳さん?私そんなに胸大好き人間じゃないですからね?」

「風呂場で私の胸ばかりを執拗に──────」

「はい!ここで大正コソコソ噂話です!柳さんは誰かに膝枕をしたのが初めてらしいですよ!それじゃあまた次回まで!」

「遮ったところで全員知っているだろうがな」

「もうやめて!!」



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