鬼滅の刃 とある一剣士の物語 作:鬼滅ニワカ侍Part2
夢を見せる鬼に手を貸し、柳が眠っている間に精神の核を破壊して廃人にしようとした男は、拷問された末に頸を斬られて死んだ。
鬼と結託した人間に興味などなく、ただ斬って感触を味わうためだけの肉の塊に過ぎない。柳は結局殺した男の顔を見ることもなくその場を後にした。
左腰に箱から出した日輪刀を差してのんびりと歩き出す。焦る必要はない。早くしないと鬼な襲われる可能性が高いが柳がその程度でやられることはない。一般人が襲われても別にどうでもいい。なので歩いて向かう。どうせ列車だ。数両分移動すれば自ずと鬼と接敵する。
何両か進んでいくと、柳の目には何度か見た羽織を見つけた。竈門炭治郎達3人と柱合会議の時に見た柱の1人である煉獄杏寿郎。そして箱から出てきている炭治郎の妹、鬼の禰豆子だった。
「竈門とその他が血鬼術にかかるのはわかるが、柱もかかるのか」
「むー?」
「お前はそもそも切符を切られていないからな、かかるわけがない」
「むー!む〜……」
「兄を起こしたいのか?血鬼術にかかっているんだ、今は起こせまい。解除条件はあるのやも知れんが、私が鬼の頸を斬ったほうが早い」
「むむー!」
柳がやってきた時には既に炭治郎達は眠りに落ちていた。まんまと血鬼術にかかってしまっている。加えて鬼と結託している少年少女が自身の手首と炭治郎達の手首に縄を結んで共に眠っている。
これが精神の核を破壊する方法だということは、斬り殺した男から聞いていたため横目で見て終わった。横を通り過ぎて次の車両に移動しようとする柳のもとに、禰豆子がトコトコと小さくなったまま走り寄って着流しをギュッと掴む。
「なんだ、竈門禰豆子。今助けろとでも言いたいのか?」
「むー!」
「肯定か……?私は解除条件なんぞ知らん。殺した男も知らなかったからな。ならば、鬼を殺せばいい。そうすれば血鬼術も解ける。そして私は鬼を殺しに向かっている最中。私の足を止めればその分お前の兄がガキに精神を破壊される可能性が高くなるぞ」
「むー……むん!」
「……一緒に行くつもりか?これは」
ある程度言葉を理解しているのか、柳が言ったことを静かに聞いていた禰豆子は炭治郎達の方へ引っ張ろうとする行為をやめ、少し考えるような唸り声を上げると着流しは掴んだまま、次の車両に向かって歩き出した。
鬼と人間を区別しない人殺しの剣士柳。鬼舞辻無惨の支配から逃れ、人間を食べることなく生きていける人間を襲わない鬼の禰豆子。異色同士を混ぜ合わせた2人組はやはり異色だった。
禰豆子は柳の着流しを掴んだまま歩いて後をついてくる。兄達を目覚めさせるには柳についていった方がいいと考えたからなのか、引き返す様子は見られない。邪魔をしなければどうでもいいかと思っている柳は放っておいていた。
「──────夢を見て死ねるなんて素晴らしいと思わない?」
「はぁ?」
「人間の心なんて硝子細工みたいに脆くて弱いんだから、俺に夢を見せてもらって食べられて死んだほうが幸せでしょ?」
「はッ。夢は所詮夢。斬るという行為は生身で己の手でやるからこそ素晴らしい。寝言は寝て言え」
先頭車両まであと何両かとなったとき、車両の通路から見た目不快な触手のようなものが伸びてきて形を作った。それは今回の眠りの血鬼術を使い、柳と禰豆子以外の全員を眠らせた鬼の
魘夢は柳を見て怯まないどころか、両腕で自身の身体を抱きしめながら恍惚とした表情で語る。幸せの絶頂にいる夢を見せてあげて、そこから絶望する夢を見せた時の人間の表情を眺めるのが最高にいいのだとか。
不快だとか趣味が悪いとか、そういったことは思わなかった。自身は他者がどうなろうと構わない。そして斬る感覚が好きすぎて殺すことに忌避感がない異常者だ。苦しんでいる者の断末魔を聞いても寝られるくらい興味がない。そんな柳が不快に感じるはずもなく、ふーんと言って終わった。
それが気に障ったのか、魘夢は口がついた手の甲を見せた。柳が無防備でいるのをいいことに血鬼術で眠らせようとしていた。しかし、血鬼術を使おうとした瞬間、そこには柳は居らず、着流しを掴んでいた禰豆子すらも消えていた。今居るのは背後。
灼熱纏う刀、灼刀で斬られた鬼は死ぬ。例外はない……筈だった。斬り刻まれた魘夢。多くの焼け焦げた肉塊と成り果てながら、その鬼は苦しみの声を上げることなく嗤っていた。
「ムダだよ。ムダ、ムダ。俺は本体じゃない。だからいくら君に斬られても死なないよ。残念だったねぇ。早く俺を殺せばよかったのに、自分は鬼を殺せると高をくくって歩いて移動してるから、俺はこの無限列車と融合する時間ができた!」
「ふーん?──────それで?」
「は?……はぁ。頭悪いのかな。俺のことはもう殺せないって言ってるんだよ。わからないのかなぁ?」
「汽車と融合していたことは知っている。気配でな。その上で殺せるからゆっくりしながら
「なんで、君にそんなことがわかるんだよ。嘘を吐くのはやめなよ」
「──────先頭車両」
「──────ッ!!!!」
「頸はそこだ。結局融合しても弱点を隠しきれていないのは頭隠して尻隠さずと言ったところか?私の前では誰であれそうなるが、な」
「──────『眠れ』ッ!!!!」
全てを見透す目。柳を語る上で外せない驚異の視界。彼女の目には魘夢が無限列車と融合した瞬間もしっかりと視えていたし、頸がどこにあるのかもわかる。無駄な足掻きどころか、レールの上でしか移動できなく、図体が大きくなった分
頸の位置を当てられた魘夢は、顔があれば真っ青になっていただろう。焦りを含んだ声色で血鬼術を使用し、柳に強制的に眠らせる囁きを施した。今回は何故か彼女が動かず、強制昏倒を受けた。超越した身体能力や視界を持っていようと、結局のところ柳も人間。血鬼術には掛かる。
仁王立ちをしたまま眠りについた柳にほくそ笑む。あんな偉そうなことを言っておきながら眠りに落ちやがった。こうなればあとは眠っているうちに嬲り殺しにするだけ。そう思っていたのに、柳の体が突如燃え始めた。服も肉も焼かない不思議な炎を上げて轟々と燃える。
「よくやった、竈門禰豆子。聞いていた通りの血鬼術だな」
「むむー!」
「な、なんで……」
「さてと……ではそろそろ──────殺してもいいな?」
柳はあらかじめ、禰豆子に命令してあった。もし血鬼術をかけられて眠らされたら噂に聞く血鬼術を使って自身を燃やして眠りから解放しろと。そのため禰豆子は小さくなったまま柳の傍から離れず見上げていた。眠ったかどうかを確認するために。
禰豆子の血鬼術はあくまできっかけ。眠りの中、夢を見るよりも早く炎に包まれた柳は驚異的な精神力により無理矢理覚醒する。結果、殆ど血鬼術に掛かっていないような短期間で意識を取り戻した。
血鬼術を興味本位で体感してみたかったのがわざと食らった理由。どんな感覚なのかも理解したところで、魘夢に用はなくなった。そこらに居る鬼と同じ。つまり、もう彼女の目には魘夢が斬り心地を味わうための物体でしかなくなった。
ふざけるなと、そう叫ぼうとしたところで柳と禰豆子が消えていた。どこに……そう思うよりも早く、車両にピッ……と線が無数に入り、その後焼け焦げながら斬撃が入れられた。回復せず、延々と死ぬほど痛い激痛を味わいながら絶叫し、触手を増やすこともできない。車両を刻まれたダメージを乗っている乗客を食うことで補おうとしたが、柳は信じられないことに、運悪く乗り合わせ、運悪く血鬼術に掛かった一般人の乗客も一緒に斬り刻んでいたのだった。
「──────ぎィやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
「う、あ……な、なんだお前!ここから出ていけ!」
「ふむ、まさにここだな」
「くっ……出てい──────」
「やかましいゴミだな」
人間の正中線ど真ん中を唐竹に真っ二つ。一刀両断され左右に斬り殺される。列車の速度を調整している運転手が、突然現れた小脇に禰豆子を抱えた柳を追い出そうとした。この運転手も魘夢に手を貸している者たちの1人であり、わざと速度を落として駅に着くのが遅くなるように調整していた。しかしもう死んだ。
柳の邪魔をし、行く手を阻む者は死あるのみ。火の中に手を入れれば熱いのと同じで、当然の結果でしかない。そこに善人も悪人も関係ないため、運転手は即死した。
柳は先頭車両に立ち、その場で見下ろす。彼女の見透す目には巨大な頸の骨が足下にあった。最初から視えていた弱点。十二鬼月の下弦の壱だから多少他の鬼よりは斬り心地が良いだろう。ましてや今や列車と融合しているのだから。
左腰の日輪刀の柄に手を置いて親指で鯉口を切る。黒い刃を覗かせ、その場で跳躍した。抱えられた禰豆子は突然の浮遊感にケラケラと笑っている。そしてそのまま下に向かって落ちていき、神速の抜刀をしてみせた。
「柳流番外剣術──────
左脇に禰豆子を抱えた状態のため本来の威力が出せないため、正式な柳流剣術ではなく番外剣術へとなった不完全の居合。しかしその威力たるや、金属製の床全てを紙くずのように斬り裂いた。日輪刀の刃は当然に魘夢の太く頑強な頸の骨を断ち切り、あまりの速度に発生した斬撃が刃の射程外まで伸び、つまるところ飛ぶ斬撃が発生して先頭車両を両断してしまった。
不完全でありながら飛ぶ斬撃が発生する威力。斬撃は列車を両断するだけには留まらず、後の話だがレールも綺麗に両断されており、地下深くまでその斬撃は爪痕を残していたという。
魘夢が頸を斬られたことで耳を劈くような声で断末魔を上げ、全ての車両から触手をでたらめに伸ばし、列車を大きく揺らしたせいで無限列車の車輪がレールから外れて脱線を起こし、横転した。その横転するときには既に柳は禰豆子を抱えたまま人間技とは思えない超高度までの跳躍をしており、その場から脱していた。
「むむー!むー!むー!」
「お前の兄か?それなら無事だろう。私が頸を斬ったことで血鬼術から目覚め、炎柱が車両に斬撃を入れて横転の威力を殺していた。その他の黄色頭や猪の被り物を来た奴等も動いていた。私が殺した者たち以外は死んでいない」
「むー!」
「気になるか。行ってくるがいい。私はもうここに用はないからな」
列車が横転してから少し、速度が出ていたこともあって大事故になっていた。それを少し離れた場所から眺めていた柳は小脇に抱えていた禰豆子を解放する。彼女は乗っていた兄達が心配なようでパタパタと小走りで横向きに倒れている車両の方に向かった。
無限列車に現れるという鬼はこれで殺し終えた。柳はやることを終えてしまったのでここに用はない。生存者の確認なんぞするつもりは毛頭ない。まあそもそも自身が殺した一般人以外全員生きているのは視えていたので知っているし、他者の心配なんか天地がひっくり返ってもしない。
「──────柳さん、柳さん。どこに行こうとしてるんですか?」
「次に鬼が出るところだ」
「鬼を殺してくれたのはありがたいですけど、もうちょっとやり方を考えてください。見てくださいよ。煉獄さんが技を出して威力を殺してくれたおかげでこの程度で済んでますが、本当なら私達以外の人達は全員死んじゃってますよ?」
「運が悪いことだな」
「それと柳さん、何人か斬りましたよね?」
「10人くらいか?大して見ていないからな、居合わせた者共は運が悪い己を呪うことだろう」
「はぁ……まったく。柳さん。特に意味がないなら斬らないでください」
傍に人が居れば忽然と、しかしふんわりとした足取りで現れたしのぶに驚いたことだろう。柳は気配でわかっていたので驚きはない。しのぶは女性にしては背の高い柳のことを下から見上げるように見る。わざわざ一般人を斬らなくても鬼の頸は斬れたのはわかっている。
それに無限列車を横転させることもなく滅殺を行えるだろうこともなんとなくわかっている。なのにこの有様なので少しは言っておかないとと思い口にしている。まあ当然そんな話は聞くつもりのない柳からしてみれば右から入って左から抜ける内容ではあるが。
「聞いてるんですか柳さ──────っ!?」
「ふふ……クククッ……──────ようやく来たぞ」
「──────あの方の言っていた黒い着流しの剣士はお前だな。驚いた、お前からは闘気を感じられない。が、この気迫……至高の領域に踏み入っているな」
「目的を……履き違えるな……私達の……目的は……迅速な惨殺。お前の……腕を……確かめるものでは……ない」
「──────柳さん」
「あぁ──────今宵はよい月が出ている、素晴らしい夜だ。素晴らしい邂逅だ。宴を始めよう。私の、私による、私のための宴だ」
柳としのぶの前に突如現れたのは十二鬼月。その上弦。さらに言えば、そのツートップだった。満月が暗闇を照らす雲一つない夜。そよ風が肌を撫で、柳は三度笠の向こうで三日月の如く口を裂いて笑みを作った。
柳一心
無限列車に乗車していた一般人13名。鬼に加担した一般人1名。運転手1名。十二鬼月下弦の壱を殺害した。
被害ゼロでこの時間を終わらせることができたものの、そこまで配慮する理由が彼女にはないため、巻き込まれ&鬼に加担した&鬼だからという理由で全員殺された。魘夢は残当。
胡蝶しのぶ
夢の中で柳にめちゃくちゃ甘えていた。本人に夢の内容を知られたら3年くらい口を利いてもらえないくらいにはベタベタしていた。夢心地で夢を享受していたら魘夢が殺されて血鬼術が解け、列車が脱線する時の浮遊感の中目覚めた。
もうちょっと夢を見ていたかったと思ったのは内緒。
煉獄杏寿郎
終始眠っていた炎柱。このことについて本人的には、認めないと声を大にして言った柳に犠牲は出てしまったものの全部任せてしまったことに責任を感じており、穴があったら入りたいとのこと。
十二鬼月
先日上弦の弐が死んだことにより、それより下の者達の番号が繰り上がっている。前参の十二鬼月はスッキリしている模様。
今回、鬼舞辻無惨直々の命令により上弦のワンツーで柳を殺しに来ている。