鬼滅の刃  とある一剣士の物語   作:鬼滅ニワカ侍Part2

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第5刃  何故鬼を斬るのか

     

 

 

 

 

「──────ゃ……や、柳さんを……ぃ、いじめないで……ぁの……柳さんは……わたしたちをた、助けてくれた人なの……っ!いっぱい殺しちゃったけど……それは……っ。あの怖い人のせいなのっ……!」

 

 

 

「怖い人……鬼のことか……?」

 

「……チッ。良いところだったというのに」

 

 

 

 異彩の剣士柳と鬼殺隊『柱』悲鳴嶼の戦いは激しいものだった。誰かが止めなければどちらかが死ぬことになっていただろう。いや、悲鳴嶼からしてみれば、死んでいたのは恐らく自分であっただろうと思う。実力が未知数であれ、放たれようとした居合から感じた重圧は、その考えを頷かせるだけのものを内包していた。

 

 人類でも最高峰の強さを持つであろう2人の戦いの間に入ったのは、なんと一般市民でしかない小さな女の子であった。女の子のなおは日々怯えて暮らしていた。鬼に肉の種子を埋め込まれ、視界から監視されて逃げることもできず、村に訪れた人を嵌めて鬼に献上する毎日。

 

 もしかしたら戯れで殺されるかも知れない。自身が食われるかも知れない。そんな恐怖と心の痛みに苛まれながら生きてきた。もう限界かも知れない。そう思った時に柳が訪れた。何だか傍に居ると心強くなれる人。もう、この人を逃がしてあげよう。殺されても仕方ない。そう両親と相談して逃げるように促した。

 

 しかし柳は逃げなかった。それどころか鬼と対峙し、頸を斬り落とした。その結果として肉の種子を埋め込まれた村人の殆どが柳によって斬り殺されてしまったが、鬼を殺してくれただけありがたかった。怖いし、血生臭さで吐きそうだが、命を救ってくれたことに変わりがない柳が、別の人に殺されそうになっているのを見て何もしない訳にはいかなかった。

 

 だから走った。だから庇った。泣いているし震えているし怖いけれど、それでもなおは命の恩人のために悲鳴嶼に立ち塞がったのだ。

 

 

 

「名も知れぬ少女よ、君達に起きたことを私に聞かせてはくれないだろうか。もしかしたら擦れ違いがあるやも知れぬ」

 

「こ、怖い人に変なの体に入れられてっ……怖い人が死んだら村の人が怖い人になっちゃうの……っ!だ、だから柳さんは仕方なく、村の人を……で、でもそうしないと怖い人倒せなくてっ。怖い人は強くなるために体に入れた変なの取ったの……っ!そ、それで……っ!」

 

「はぁ……もういい。お前は黙っていろ。まあ恐らく殆ど察しはついているだろうが、鬼の肉体の一部を埋め込まれた人間は、鬼が死んだ時の身代わりになる。それが鬼の血鬼術だ。真相は理解したか?鬼狩り」

 

「……南無阿弥陀仏。私は悲鳴嶼行冥だ。……到着が遅れてしまい申し訳ない。事情は理解した」

 

「ふぅん……?」

 

「──────が、到底納得しきれるものでもなし。ここまで徹底的に殺す必要はあったのか、剣士の柳」

 

「さてな。もしかしたら何か方法があったやも知れんが、1番手っ取り早いだろう?身代わりにできるものを無くせばいいだけだ」

 

「……お前のその考え、行動は筆舌に尽くしがたし。お前の強さならば一考の余地はあったはず。遅れてやって来た手前文句を言える立場にないのは重々承知しているが、あまりにやり過ぎだ」

 

「そんなものは知らん。私にとっては至極どうでもいい」

 

 

 

 悲鳴嶼が言外に責めようと、柳はそんなこと知らぬとつっぱねる。殺したから何だというのだと取り付く島もない。罪悪感も抱いておらず、それどころか鬼殺隊である悲鳴嶼に事情を詳しく説明せず、わざと戦う理由を作って殺そうとしたくらいだ。柳は異常だと、この場に居る誰もが思った。

 

 居合の構えを解いている柳は普通の姿勢に戻り、悲鳴嶼は鉄球を地面に置いて斧はなおを恐がらせないために背後へ隠した。戦いの殺気立った雰囲気は霧散している。ただ、この場の光景は最悪だった。頸を斬り落とされて血を噴き出した死体が何十と転がっており、辺り一面が血の池のようになっている。

 

 生き残った村人は10人程度。それ以外は全員柳に殺されているというのだから恐ろしい話だ。これが鬼の仕業だというのならば、まだ億が一にも理解出来るし納得できるが、同じ人間の手で行われたとなると理解したくもない。しかも本人は本当にどうでもいいとでも言いたげに死体を一瞥すらしない。

 

 本当にこんな危険人物をお館様に会わせるのかと、懐疑的な鬼殺隊員は悲鳴嶼にどうするべきなのか師事を扇ぐ視線を飛ばし、悲鳴嶼は会わせるのは内心否定したかった。しかし産屋敷耀哉直々の頼みである。どれだけ否定しても従わない訳にはいかなかった。

 

 

 

「事情は先程も言った通り理解した。後始末はこちらが行おう。柳、お前は私と共に来てほしい」

 

「何故だ?聞きたいこと、知りたいことはもうないだろう」

 

「いや、ある。お館様がお前と話したいと仰っている。私と共に同行を求む」

 

「本人が直接来いと伝えておけ。何故私が私と話したいと言っている奴の元まで出向かねばならんのだ」

 

「お館様はお体が悪い。それにお館様は鬼舞辻無惨に最も命を狙われているお方だ。屋敷の外へは出られない。それなりに礼はするとのことだ。私としても、鬼殺隊でもないのに鬼を殺すお前のことを知っておきたい」

 

「……そんな脆弱な奴が鬼狩りの頭なのか?想像と違うな。むしろ最も鬼を殺している奴なのかと思ったが、まあ何でもいい。それで、私に来てほしいのだろう。ならば案内しろ。お前とはそれなりに楽しめた。少し気分が良い、行ってやろう」

 

 

 

 柳は気分が良かった。今まで自身とここまで打ち合えた者は居ない。()()()()()()()()()()()、今はこの程度でもいいだろう。何も無いよりはマシだ。とても気分が良いから、悲鳴嶼の後をついて行ってもいい。

 

 何より、鬼を殺す者達だ。その実力は普通の人間とでは比べるべくもない。鬼殺隊の頭が自身と会うのだ。一般人だろうが関係無しに殺す自身と。ならば他の『柱』もきっと居ることだろう。ならば、もし仮に話が拗れてしまっても仕方ない。そしてその果てに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「や、柳さんっ!」

 

「何だ?」

 

「ぁのっ……た、助けてくれてありがとう!」

 

「全身を強張らせていながら言うことがそれか。……まあいい。これからも精々生きていくといい。運が悪くなければ会うこともないだろう」

 

「さ、さようなら……っ!柳さん!」

 

「あぁ。さようなら」

 

「……南無阿弥陀仏」

 

 

 

 あれだけの人間を殺して、それを見てしまい恐怖で体が上手く動かないだろうに、それを必死に隠してお礼を口にするなおに、柳は振り返り適当に手を振った。なおの両親もなおの傍まで急いで来ると頭を深々と下げた。

 

 感謝されている柳を悲鳴嶼は眺めていたが、内心複雑なものだった。鬼殺隊は政府非公認であるため世には知られていない。そのため化け物を殺している刀を持った謎の集団という風に映り、大切な者が鬼に殺されてから鬼を殺した時などは責め立てられることも多い。

 

 今回だと人間が人間を殺しているという極めて異例の事態だというのにこれ程感謝されているのだ。何と言えばいいのか困惑するのも仕方ないだろう。

 

 斯くして岩柱、悲鳴嶼行冥と柳の初の邂逅は済んだ。後は柳と耀哉との邂逅だけだ。相手が死ぬことなく打ち合ったことで気分が良いらしく、柳を産屋敷邸へと連れて行くことができる。悲鳴嶼の後を歩き、鬼殺隊の頭が居る屋敷へと目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────お館様のお成りです」

 

「初めまして、柳。私は産屋敷家97代目当主で鬼殺隊の当主でもある産屋敷耀哉だ。今回は此処までご足労をありがとう。こうして直接会えて顔を合わせられることを嬉しく思うよ。是非会ってみたいと思っていたんだ」

 

「わざわざ随分と遠くまで来させたものだ。気分が良いから行ってやると言ったが、途中からはもう意地だったぞ。何故こうも面倒な方法で来なければならんのだ」

 

「すまないね。私は鬼舞辻に見つかるわけにはいかないんだ。だから剣士(こども)達にも苦労を掛けていると思っているよ」

 

 

 

 柳は代わる代わる鬼殺隊を裏で支える『(かくし)』がある地点まで送り、そこからは別の『隠』がある地点まで送る。誘導する喋る烏……鎹鴉(かすがいがらす)もまたある地点からある地点までを誘導するようしている。つまり、正規の正確なルートは誰も知らないのだ。

 

 鼻が利くなら鼻を使えないように鼻栓をし、ルートは覚えられないように誰もが目隠しをする。柳は抱えられて移動するのが嫌なため、目隠しはしたが、『隠』の後をピッタリとくっついて走った。目も見えないのについて来れるということは、耳が良いのか?と思い耳栓もしたが、柳は変わらずついて来た。

 

 柳は『隠』の気配を頼りに後をついて行ったのだ。だから目を隠そうが耳栓をしようが殆ど関係ない。結局、柳は自身の足で産屋敷邸へとやって来た。そして今、産屋敷耀哉と対面している。彼の周りには悲鳴嶼行冥を始めとした『柱』が控えており、かなり殺気立っていた。

 

 

 

「柳とか言ったな。お前、お館様になんつー口の利き方してんだ。無礼だろうが」

 

「無礼?私を此処まで呼びつけている立場のクセに大きく出たな。そもそも何故私が改まった態度をしなければならない?当主と言っても政府非公認の組織だろう。そんなもの妄想が肥大化しただけの一般人と言っても過言ではない。お遊びと言われても文句は言えんぞ」

 

「お遊び……?テメェ……鬼殺隊がどんな思いで鬼と戦ってると思っていやがるッ!どれだけの隊員が死んでると思ってんだッ!死んでいった奴等の侮辱だぞッ!?俺達をバカにすんのもいい加減にしろッ!」

 

「残念だが私にはお前達の抱えるお荷物が死のうが死ぬまいが興味が無い。それで、私が気に入らないならどうする?鬼として殺すか?私は一向に構わんぞ──────この場で全員相手してやっても」

 

 

 

 悲鳴嶼ほどではないが、大きな背丈と身につけられた装飾品が特徴の『柱』が、我慢ならぬと言わんばかりに柳へ意見した。耀哉は鬼殺隊の者達から敬われている。心より心酔している者が多く、それは『柱』とて例外ではない。そのため耀哉への不敬な態度は目につきやすい。

 

 しかし柳はそれがどうしたと言う。柳にとって耀哉なんぞ話があるクセに自身で訪ねることもしない軟弱な奴という認識だ。鬼殺隊の当主だから何だというのか。興味もなければどうでもいい。気分が良かったからついてきただけで、今ではそんな感情はもう無い。用件が終わり次第出て行くつもりだ。

 

 殺気立った相手には殺気で応える。柳は手元にある刀に手を伸ばし鯉口を切る。すると『柱』の面々も武器に手を掛けながら腰を上げた。この場に居る全員を相手しても柳は勝つ気でいる。いや、そもそもとして負ける要素が見当たらないとすら思っている。鬼殺隊でも最高位の『柱』全員を相手にそれなのだから、傲慢かと思われるが、不可能ではないことを悲鳴嶼は知っていた。

 

 柳としてはこの場で殺し合った方が楽しみを見出せていいという考えだ。しかしその場を鎮めたのは耀哉だった。ただ口元に指を持ってきて“静かに”のジェスチャーをしただけで、『柱』の誰もが黙り、殺気を収め、腰を下ろし、武器から手を離した。その一連の動きを見ていた柳は、耀哉の発声の際に感じる安心感やら何やらで、洗脳でもしているのか?と疑問に思った。

 

 

 

「度々すまないね。本来の話をしようか。私は柳のことが聞きたくて呼ばせてもらったんだ」

 

「……まったく。良いところだったというのに。それで、何が聞きたい。全てには答えんぞ」

 

「うん。それでも構わないよ。話せることだけ話してもらえれば十分だ。まず、どうして鬼の存在を知っていたのかな」

 

「昔、お前のところの鬼殺隊が死にかけているのを見つけた。そこで鬼というものを知り、日輪刀でなければ斬り殺せないことも知った。その場の鬼はその鬼狩りの日輪刀を使って殺した」

 

「呼吸は誰に教えてもらったのかな」

 

「我流だ。まあ尤も……私はお前達のように、やれ何の呼吸だ、何の型などは使わないがな」

 

「使わないのかい?確かにそういった話は聞いていないけれど」

 

「常中だけで十分だろう。鬼なんぞ寄って斬れば全て事足りる」

 

「それが難しいんだけどね」

 

 

 

 鬼を殺す。そのために寄って頸を斬る。それだけなのに何故、やれ何の型など使わなければならないのか。それが柳の言い分だった。古くから伝えられてきた鬼と戦うための数少ない手段の1つ。呼吸。隊士はこれを育手と呼ばれる者達から教わる。

 

 鬼を殺すこと事態儘ならないことがある。呼吸を学んでも、鬼は常人よりも遥かに優れた身体能力と再生速度を持ち、人を多く食らった者は血鬼術を発現させる。そもそも、隊士として認めてもらうための最終選抜でも死人が出てしまうくらいだ。人を2、3人食っただけの鬼でそれなのだから、血鬼術を使われたら尚のこと殉職率が高くなるだろう。

 

 故に、『柱』になる条件は十二鬼月または50体以上の鬼を殺し、且つ隊士の位の甲であることが挙げられる。耀哉は柳が何とも思っていないように言う鬼の滅殺が如何に難しいかを知っている。これまで死んでいった隊士のことは誰1人忘れていないのだから。

 

 

 

「肝心なことを聞かせて欲しいんだけれど、柳は何故鬼を狩っているんだい?」

 

「理由か」

 

「そう、理由だ。私の剣士(こども)達は鬼殺隊に入る理由の大半が親しい者を……それこそ家族を殺されてしまったことに起因しているんだ。失礼な質問になるかも知れないけど、柳はどうして鬼を?」

 

「そんなもの単純なことだ。私は──────斬ることが好きなんだ」

 

「斬ること……?」

 

「そうだ。刀で皮膚を裂き、骨を断ち、頭を唐竹に叩き斬り、頸を落とし、胴を両断し、脚を飛ばす。斬る感触が、私は堪らなく好きなんだ。だから斬り殺しても特に問題ない鬼を殺している。殺した後は消えて何も残らんからな」

 

「それにしては一般人も斬っているようだけれど」

 

「はッ。私の邪魔をするのが悪い。人質にされても私はその人質のことは知らん。鬼と結託した奴を生かしておく理由も無い。ならば諸共斬ってもいいだろう?私はそう思って斬った。それだけだ。あぁ、罪の意識はないのか……なんてつまらんことは聞くなよ。私はその他がどうなろうと()()()()()()()()

 

 

 

「「「「────────────ッ!!!!」」」」

 

 

 

 柳が鬼を斬る理由。それは何とも単純な理由だった。刀で斬ること。全てはそれだけだった。皮膚を裂き、骨を断つその感覚が堪らなく好きだと言う。そこに嘘は一切無く、鬼ではない一般人を斬り殺すことに対する罪の意識の無さもまた、嘘が含まれていなかった。

 

 その他がどうなろうと心底どうでもいい。生きていようが死んでいようが興味が無い。殺すことが悪いことは知っている。人が人を斬ることなど言語道断。罪に問われて当然だ。()()()()()()()()()()()()()()。我慢なんてしない。その果てが絶望であろうと、柳はやることを変えない。斬るという楽しみのために罪を犯す。

 

 止めるならば止めてみるといい。止められるならば。そう言っているようだった。屋敷の中でも脱がない三度笠の向こうから、チラリと瞳が見えた。その瞳は恐ろしいほどに無機質で禍々しく、しかし斬ることへの愉悦を孕んでいた。この人間はダメだ。終わっている。到底同じ人間には思えない。その場に居る『柱』の殆どがそう直感した。

 

 

 

 

 

 鬼を狩る謎の剣士、柳。その人間が内包する末恐ろしいものの一端を垣間見た耀哉は……このような人物を待っていたと言わんばかりに浮かべる笑みを深くした。

 

 

 

 

 

 









鬼を無差別に斬り殺す謎の剣士。その実力の高さは鬼殺隊最高位の『柱』ですら測りきれない。しかしその一方で、冷酷非道な面を併せ持つ。人間は人間として見ているものの、邪魔する者は斬り殺しても良い人間に分類され、すぐさま斬る。

斬る行為そのものに愉悦を見出している。悲鳴も絶望も苦難も要らない。欲しいのは斬る行為そのもの。斬る感触が堪らなく好き。故に殺せば消える鬼を斬っているが、差別せず、平等に人間も斬る。

全集中の呼吸や型の存在は昔に殺されかけている隊士から聞き、独学で修得した。常中を行う以外に型は使わない。理由としては、首を斬ることに型を必要と感じていないため。

ほんのりとした、素朴な甘いものが好き。特に3色団子がお気に入り。




なお

柳が襲われていると思い助けに入った。人を殺し回った柳のことは確かに怖いがそれでも助けてくれたことには変わりないのでどうにか役に立ちたかった。

鬼殺隊『隠』に保護されてからは落ち着くことができ、柳のことを恐がってしまったことに罪悪感を抱いた。運が悪かったらまた会うだろうと言われたけれど、助けてくれたお礼をしたいのでもう一度会いたいと思っている。

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