時に言葉は、人を殺めることになる。



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最初に投稿した話の加筆修正版となります。こちらの投稿に当たりまして、以前投稿していたお話は削除させていただきます。

作者メモ
オリジナル投稿日:2023/8/17 20:00


向けられた言葉にたきつけられて

 ——僕には行きつけがある。最近オープンしたライブハウス『RiNG』と、そこに併設されたカフェ。

 最初は、働いてる店員さん目当てで通ってた。凄く、可愛い人達が働いてて気がつくと、といった感じで。

 その暫く後、同い年ぐらいのバンドのボーカルをやってるという子と交流を持った。それと同時期に、RiNGのスタッフの1人からの当たりが強くなった。

 

「お前、ほんとになんなの?」

 

 今日も今日とてRiNGに足を運んでみれば、件のスタッフから強めの言葉をいただいた。

 

「ただの常連……かな?」

 

 苦笑いしながら答えた僕は、目の前の彼女『椎名(しいな)立希(たき)』の出してくれたコーヒーを呷る。途端、口の中に広がる苦味とほのかな酸味。あ、この前出してくれたやつより香りが強くなってる。

 

「コーヒー、また淹れるの上手になった?」

「そんなのどうだっていいでしょ。それよりいい加減、(ともり)の側にいるのやめてくれる?」

 

 褒めたつもりがあしらわれ、逆にお叱り、とも取れる言葉を投げられる。彼女は、燈……先に挙げた、交流を持ったボーカルの少女こと『高松燈』対して、過保護であり変な奴が寄り付こうものならこうなるのだ。僕もその変な奴にカウントされてるらしい。心配になる気持ちはわかるけど、ね。

 

「僕は距離を置いてるつもりなのだが、彼女の方から色々と話題を振ってきてくれるんだよ。それに答えないのは、流石に失礼じゃないかと思ってさ」

「……チッ」

 

 正論とも取れそうな返しをしたら舌打ちをいただきました。なんだかこう、悲しい気持ちになってくるね。そんな僕は、徐に彼女へと疑問を投げかけた。

 

「椎名さんは、僕のこと嫌い?」

「大っ嫌い。はっきり言って、顔見るのもうんざりしてきた」

 

 包み隠さずに投げられた彼女の言葉に、トドメを刺された気分になった。そっかそっか。僕って、そう……思われちゃってたか。

 

「ごめんね。椎名さん。僕、無神経だったみたい」

 

 そう言って立ち上がった僕は、溢れそうになる涙を必死に堪えながら、彼女へと笑みを向ける。

 

「え、急に何……?」

 

 対する椎名さんは、少しばかり戸惑っている様子だ。

 

「もう、ここには来ないだろうし、高松さん、に近づくこともないよ」

「お前何言って……」

 

 理解が追いついていない様子の彼女を他所に、僕は淡々と言葉を放っていく。その後、懐から携帯を取り出した僕は、地図を開いてから彼女の方へ画面を差し出す。

 

「シフトが終わったらさ、ここに来てくれない? お別れが、言いたいんだ」

「お別れ……?」

 

 怪訝な表情を浮かべた椎名さんへ、再度笑いかけた僕はそのままRiNGを後にした。

 それから数時間後、椎名さんからシフトが終わったとの連絡が来た。

 それを受けた僕は、目を瞑り涙を流す。椎名さんへ謝罪の思いを抱えながら。その数瞬後、僕の体は浮遊感に晒される。そこから10秒も経たないうちに、僕の体に激しい痛みが走り、それにより砕けてしまったであろう鼓膜に、聞き馴染みのある人の叫びが届く。

 

「あんた……なんで……!」

 

 薄れゆく意識の中、自由の効かなくなった体に命令を出し、目の前の状況を映す。そこには、大きく目を見開き、悲痛な表情に顔を歪めた椎名さんの姿が。……なんでそんな顔してらっしゃるんですか? 邪魔者がいなくなって、喜んでるはずじゃないんですか? 

 とめどなく湧き上がる疑問の答えを探ろうとするも、直ぐにやめた。そんなことはどうでもいい。だって、椎名さんの()()()()()()()()が見れたのだから。

 だから僕は、精一杯に笑った。最後の最後に見せてくれた、素敵な表情への謝意代わりに——

 

 

 

 

 

 

 シフト終わりに『彼』から呼び出された場所へと足を運んだ立希。そうして周囲を見渡して見るが、呼び出した当人の姿が見当たらない。

 

「呼び出しておいて自分はいないわけ……?」

 

 不機嫌な表情と共に湧き上がった不満を吐き出した立希。その最中、周囲の通行人達がどよめき始めたかと思うとある一点——ちょうど立希の目の前辺りから慌てて離れていく。異様な光景に立希が眉を顰めていると、突如として彼女の視界に上空から降ってきた影が映り込み、認識する間もなく地面へと打ち付けられ、破裂音にも似た激しい音が辺り一体に響き渡る。

 

「は……?」

 

 常識を大きく逸脱した状況に立希の思考はフリーズしてしまう。何が起きた……何が()()()()()? 頭の中が錯乱している中、彼女自身の目が捉えたのは、先程まで会話していた少年の変わり果てた姿。それを理解した途端、彼女の背筋を激しい悪寒が駆け抜ける。

 

「……ッ?!」

 

 あまりの光景に口元を抑え目を見開いて立ちすくむ立希。無理もない、彼女の眼前には、血溜まりが広がり始めたのだから。そうして暫く震えていた彼女であったが、ふと我に返ると彼の元へと駆け寄る。

 

「お前……なんで……!」

 

 立希の問いかけに薄らと目を開いた彼は、微かに笑ったかと思えば震える声で言葉を紡ぎ始めた。

 

「ごめん……さい……しいなさ……きもち……づかなくて……」

 

 彼の言葉を聞いた立希はハッとする。先程放った言葉が彼に罪悪感を覚えさせ、彼を追い詰めこのような事態へと発展させてしまったのではないか、と。

 

「そんな……それは……私の……!」

 

 彼女の心の奥底で湧き上がった悲痛な叫びは、誰が呼んだのかわからない救急車のサイレンに掻き消され、彼の耳に届くことは無かった。その後付近には、少女の泣き叫ぶ声が響き渡った——


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