私の就職活動   作:沖田十三郎

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大変お久しぶりです。

先日、原作者であるきなこ餅先生の本編に徳子さんがゲスト出演して嬉しかったのでもう一作書いてみました。
とはいえザックリ目の掌編なので、色々大目にみてやってもらえればと思います。
気が向いたら改稿して肉付けする感じでいこうかな、と。

それと、今回きなこ餅先生に許諾を得まして、原作からの直接引用をしている部分があります。
そちらに関してはこちら(https://syosetu.org/novel/233567/17.html)からの引用となりますので、ぜひ原作を楽しんできてから拙作でお目汚しするのがよろしいものかと思います。

それでは、よろしくお願いいたします。


閑話 歴史探訪ヒストリー

0/

噂話、街談巷説、都市伝説、根も葉もない噂から根も幹もある噂まで。

世に不思議は多かれど、本当に多いのだろうか。

私の近くにそんなものはやってこなかった。

私はこんなにもこよなく愛しているというのに。

酷くない?

 

だから、私は自らそれに飛び込もうと思った。

そして、どうせやるなら色々と挑戦できる方がいい。

一つの業種に縛られることなく。

 

だから、私はこの会社に入った。

さあ、バリバリ噂話に聞き耳立てて生計を立てるぞ!

…そう、そのはずだったのに。

 

「先生、締切今日ですよー」

目の前で机に突っ伏して動かない先生の脇腹を人差し指でつつく日差しも鮮やかな夏も終わる9月の終わり。

今ここに至る問題の火花は丁度2ヶ月前に熾火から散った。

 

1/

『日本の歴史の一頁』という歴史を扱った雑誌がある。

我が棟平書房から刊行中のA4判並製本平均650頁の季刊誌だ。

同じ系統の雑誌の中では常軌を逸した厚さで、本屋の歴史物の雑誌コーナーに行くとすぐに目につく。

デカイし厚いし。

 

そんな雑誌で連載中のとある漫画作品がある。

それが私の担当作品でもある「棟平藤兵衛」という作品。

棟平グループの創始者を描いた意欲作で、グループに残されていたあらゆる史料を片っ端から紐解いて描いているという。

私が日歴頁(日本の歴史の一頁)の編集部に配属になった時点で単行本26巻、最終章も終わりに差し掛かる頃だった。

 

こんなド新人がそんな作品の、それも終盤で担当替えなんていいのかとも思ったものの「先生、基本的に絵を描きたいだけで漫画を描きたい人じゃないから次回作を描いてもらえるように何卒…」という身も蓋も、なんなら容器の中身もない回答が返ってこようとは。

 

しかし、編集部の目論見は的中した。

先生の方から「編集部の目論見はわかるよ。貴女に恥をかかせるのも良くないから、これが終わった後のことも考えないとね。よろしくね」と申し出てくれたのだ。

といっても現状2人ともノーアイディアなんだけど。

そんな頃、問題が向こうの方からやって来た。

 

2/

「先生、『棟平藤兵衛』の大河ドラマ化が決定しました。しかも、物語のテンポ感を保つためとかで連続52回の30分番組、一部特別回として年間で2回2時間スペシャルを組む予定で進めたいと打診がありました」

通常、ドラマ化であれアニメ化であれ幾らかの段階を経て、ある程度企画書が固まってから先生のところに話が行く。

当然、スペシャル回云々も放送前から決まるものでもない。

 

では、何故か?

それは

「先生、今回のは社内制作になるので先生の意向もある程度……センセ?」

「それなら、もしかして俳優さんも『この人だけは!』みたいなのもリク出来たりっ?」

「ええ、通るかは分かりませんけど」

「それならーーー」

 

3/

「ドラマの監修ってなんでこんなにやること多いの!!!!

っていうか、わたしの参考史料を全部渡すからそれ見てくれればいいじゃーーーーん」

「先生、心の声が全部漏れ出てますよ」

「だって、ねぇ、見てよコレ!《やっぱ25分キツいから45分にしますね!テヘペロ!》ってあり得なくない!?いくら自主制作だからってなんでもありなん!?」

「先生、先生はどんな会社で働いてると思ってるんですか。」

「くっ……、ま、漫画家としての私は働いてない」

「何処で描いてると思ってるんですか?」

「………一発芸で入れる会社っすね」

 

4/

時は経って無事大河ドラマも放送が開始され、『棟平藤兵衛』の最終回の締切が、今日。

先生は優良進行なので正確には明日の昼が締切だ。

「センセ、センセ。」

最後の一コマだけ空白を残して完成原稿の山を横に突っ伏した20代半ばの女性を起こした。

「ん、やあ、みゃあちゃん。原稿だねっ?」 

起き抜けに机の上で雑に散らばっていた文房具類の中から筆ペンを引っ掴み、最後のコマに【終劇】と達筆と呼べる筆致で書き込んだ。

「はい、先生の玉稿いただきました。」

時間は18:00。

「はい、渡しました。よろしくね。」

「お任せください!」

季刊誌連載の弊害で先生は毎号180頁前後もある付録本連載を続けて来た。

本当なら配達ではなく、それこそ暖簾を構えているような寿司屋に行くのが筋だとは思うのだけど。

「いやぁ、楽しみだねぇ。7代目にフォーカスを当てた番組が作られるだなんて。…自分で描くわけじゃないから盛大に楽しめるってものだよわっはっはっ」

「定時過ぎって事で言葉崩すけど、そんなこと言ってると徳さんが描くことになっちゃいますよ。運が悪いんですから」

「…それは、勘弁してほしいなぁ〜」

「あ、徳さん、始まりますよ」

ピッとリモコンでテレビをつけると、丁度『歴史探訪ヒストリー』が始まるところだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『大旦那様!大変でございます!』

『今度はなんじゃぁ新右衛門!?』

 

潰れる一歩手前だった家を5代目の主として盛り立て、様々な騒動を繰り広げながら商家を発展させていくコミカルなストーリー。

様々な題材で描かれ、多種多様な解釈をされている江戸時代の怪物と呼ばれた伝説の商人棟平藤兵衛。

 

 

今年放映開始された徳川徳子先生の漫画が原作である時代劇、【棟平藤兵衛】。

現代でも様々な逸話や発見を齎す江戸時代の偉人であり、今も続く棟平グループの初代として知られています。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「徳さん、今名前!」

「ちょっと、聞いてないよ!!!」

 

お後がよろしいようで

「全然良くないよ、わたしは聞いてない!さくしゃ、もう少しなんとか言え!何か書け!

全然お後が良くない!」

 

お後はいいんですよ!

それでは、お後はよろしいのです。




そんなわけで、ご笑覧いただけましたら幸い至極でござりまする。
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