私の就職活動   作:沖田十三郎

2 / 2
大変お久しぶりです。

先日、原作者であるきなこ餅先生の本編に徳子さんがゲスト出演して嬉しかったのでもう一作書いてみました。
とはいえザックリ目の掌編なので、色々大目にみてやってもらえればと思います。
気が向いたら改稿して肉付けする感じでいこうかな、と。

それと、今回きなこ餅先生に許諾を得まして、原作からの直接引用をしている部分があります。
そちらに関してはこちら(https://syosetu.org/novel/233567/17.html)からの引用となりますので、ぜひ原作を楽しんできてから拙作でお目汚しするのがよろしいものかと思います。

それでは、よろしくお願いいたします。


閑話 歴史探訪ヒストリー

0/

噂話、街談巷説、都市伝説、根も葉もない噂から根も幹もある噂まで。

世に不思議は多かれど、本当に多いのだろうか。

私の近くにそんなものはやってこなかった。

私はこんなにもこよなく愛しているというのに。

酷くない?

 

だから、私は自らそれに飛び込もうと思った。

そして、どうせやるなら色々と挑戦できる方がいい。

一つの業種に縛られることなく。

 

だから、私はこの会社に入った。

さあ、バリバリ噂話に聞き耳立てて生計を立てるぞ!

…そう、そのはずだったのに。

 

「先生、締切今日ですよー」

目の前で机に突っ伏して動かない先生の脇腹を人差し指でつつく日差しも鮮やかな夏も終わる9月の終わり。

今ここに至る問題の火花は丁度2ヶ月前に熾火から散った。

 

1/

『日本の歴史の一頁』という歴史を扱った雑誌がある。

我が棟平書房から刊行中のA4判並製本平均650頁の季刊誌だ。

同じ系統の雑誌の中では常軌を逸した厚さで、本屋の歴史物の雑誌コーナーに行くとすぐに目につく。

デカイし厚いし。

 

そんな雑誌で連載中のとある漫画作品がある。

それが私の担当作品でもある「棟平藤兵衛」という作品。

棟平グループの創始者を描いた意欲作で、グループに残されていたあらゆる史料を片っ端から紐解いて描いているという。

私が日歴頁(日本の歴史の一頁)の編集部に配属になった時点で単行本26巻、最終章も終わりに差し掛かる頃だった。

 

こんなド新人がそんな作品の、それも終盤で担当替えなんていいのかとも思ったものの「先生、基本的に絵を描きたいだけで漫画を描きたい人じゃないから次回作を描いてもらえるように何卒…」という身も蓋も、なんなら容器の中身もない回答が返ってこようとは。

 

しかし、編集部の目論見は的中した。

先生の方から「編集部の目論見はわかるよ。貴女に恥をかかせるのも良くないから、これが終わった後のことも考えないとね。よろしくね」と申し出てくれたのだ。

といっても現状2人ともノーアイディアなんだけど。

そんな頃、問題が向こうの方からやって来た。

 

2/

「先生、『棟平藤兵衛』の大河ドラマ化が決定しました。しかも、物語のテンポ感を保つためとかで連続52回の30分番組、一部特別回として年間で2回2時間スペシャルを組む予定で進めたいと打診がありました」

通常、ドラマ化であれアニメ化であれ幾らかの段階を経て、ある程度企画書が固まってから先生のところに話が行く。

当然、スペシャル回云々も放送前から決まるものでもない。

 

では、何故か?

それは

「先生、今回のは社内制作になるので先生の意向もある程度……センセ?」

「それなら、もしかして俳優さんも『この人だけは!』みたいなのもリク出来たりっ?」

「ええ、通るかは分かりませんけど」

「それならーーー」

 

3/

「ドラマの監修ってなんでこんなにやること多いの!!!!

っていうか、わたしの参考史料を全部渡すからそれ見てくれればいいじゃーーーーん」

「先生、心の声が全部漏れ出てますよ」

「だって、ねぇ、見てよコレ!《やっぱ25分キツいから45分にしますね!テヘペロ!》ってあり得なくない!?いくら自主制作だからってなんでもありなん!?」

「先生、先生はどんな会社で働いてると思ってるんですか。」

「くっ……、ま、漫画家としての私は働いてない」

「何処で描いてると思ってるんですか?」

「………一発芸で入れる会社っすね」

 

4/

時は経って無事大河ドラマも放送が開始され、『棟平藤兵衛』の最終回の締切が、今日。

先生は優良進行なので正確には明日の昼が締切だ。

「センセ、センセ。」

最後の一コマだけ空白を残して完成原稿の山を横に突っ伏した20代半ばの女性を起こした。

「ん、やあ、みゃあちゃん。原稿だねっ?」 

起き抜けに机の上で雑に散らばっていた文房具類の中から筆ペンを引っ掴み、最後のコマに【終劇】と達筆と呼べる筆致で書き込んだ。

「はい、先生の玉稿いただきました。」

時間は18:00。

「はい、渡しました。よろしくね。」

「お任せください!」

季刊誌連載の弊害で先生は毎号180頁前後もある付録本連載を続けて来た。

本当なら配達ではなく、それこそ暖簾を構えているような寿司屋に行くのが筋だとは思うのだけど。

「いやぁ、楽しみだねぇ。7代目にフォーカスを当てた番組が作られるだなんて。…自分で描くわけじゃないから盛大に楽しめるってものだよわっはっはっ」

「定時過ぎって事で言葉崩すけど、そんなこと言ってると徳さんが描くことになっちゃいますよ。運が悪いんですから」

「…それは、勘弁してほしいなぁ〜」

「あ、徳さん、始まりますよ」

ピッとリモコンでテレビをつけると、丁度『歴史探訪ヒストリー』が始まるところだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『大旦那様!大変でございます!』

『今度はなんじゃぁ新右衛門!?』

 

潰れる一歩手前だった家を5代目の主として盛り立て、様々な騒動を繰り広げながら商家を発展させていくコミカルなストーリー。

様々な題材で描かれ、多種多様な解釈をされている江戸時代の怪物と呼ばれた伝説の商人棟平藤兵衛。

 

 

今年放映開始された徳川徳子先生の漫画が原作である時代劇、【棟平藤兵衛】。

現代でも様々な逸話や発見を齎す江戸時代の偉人であり、今も続く棟平グループの初代として知られています。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「徳さん、今名前!」

「ちょっと、聞いてないよ!!!」

 

お後がよろしいようで

「全然良くないよ、わたしは聞いてない!さくしゃ、もう少しなんとか言え!何か書け!

全然お後が良くない!」

 

お後はいいんですよ!

それでは、お後はよろしいのです。




そんなわけで、ご笑覧いただけましたら幸い至極でござりまする。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【完結】黒いガンダムの宇宙世紀(作者:いずりょう)(原作:ガンダム)

U.C.0070、地球。▼三歳のレン・イズミは、前世で三十五年間を生きた記憶を取り戻す。自分が生まれたのは、人類が宇宙へ進出した未来――宇宙世紀。▼そして九年後には、ジオン公国と地球連邦による一年戦争が始まる。▼レンは原作はある程度知っている。▼ジオン軍のモビルスーツ コロニー落とし サイド7への襲撃▼アムロ・レイがガンダムへ乗り、ホワイトベースの戦いが始ま…


総合評価:1183/評価:6.79/完結:103話/更新日時:2026年08月17日(月) 18:00 小説情報

転生したのに念能力が使えない男(作者:ゴリラ廻戦)(原作:HUNTER×HUNTER)

ざけんなや オーラが無いんじゃ ドブカスが▼


総合評価:4929/評価:6.36/連載:10話/更新日時:2026年09月04日(金) 12:00 小説情報

詐欺占い師と米花町(作者:罠ビー)(原作:名探偵コナン)

 爆処同級生の未来が視える占い師≒詐欺師がコソコソする話。▼ pixivとのマルチ投稿です▼


総合評価:5191/評価:7.87/連載:21話/更新日時:2026年07月04日(土) 01:16 小説情報

暴君忠長に転生したので、兄上のために日本列島をメンテします 〜SFチートのはずが、田んぼと水路と寺社ノードの保守係なんですが〜(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル歴史/戦記)

現代日本で死んだ主人公が転生した先は、江戸幕府を開いた徳川家。▼身分ガチャは大当たり――かと思いきや、幼名は国松。▼のちに兄・徳川家光と対立し、「暴君」と呼ばれて破滅するはずの徳川忠長だった。▼将軍の座など絶対にいらない。▼生き残るためには、兄・竹千代を全力で支え、「敵」ではなく「便利で忠実な弟」になるしかない。▼そう決意した国松が最初に始めたのは、天下の根…


総合評価:2128/評価:7.26/連載:142話/更新日時:2026年09月03日(木) 17:34 小説情報

アナキンの親友になって色々あって旅に出た英雄の話(作者:紅乃 晴@小説アカ)(原作:スターウォーズ)

アナキンの親友になって。▼アナキンの代わりに暗黒面に落ちて。▼そしてエンドアの戦いで帰還した主人公。▼彼は師であるパルパティーンと共に宇宙に出て▼フォースの根源を探究する旅を続けていた。▼だが、彼らの旅路は大きな渦に巻き込まれていくのだった。▼※過去作、アナキンの親友になったら暗黒面に落ちた件の続編です。▼https://syosetu.org/novel/…


総合評価:5364/評価:8.79/連載:37話/更新日時:2026年07月15日(水) 18:58 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>