原作者である社畜のきなこ餅様のご厚意により、公開させて頂きます。
本作は原作時間軸の遥か彼方、なんなら今現在(2023年8月)より彼方の時代、藤兵衛の子孫たちが残した棟平屋に就職したい就活生のお話です。
よろしくお願いします。
できる限り原作とバッティングしない形で適当三昧致しております。
お目溢しいただければ幸いです。
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就職活動の時期が来た。
嘘だ。
少なくとも時期というか旬は過ぎている。
現在、大学も四年の半ば。
実際のところ、もはや時期が来たとかどうとか言ってる場合ではなかったりしなくもない。
二重否定構文なんか使ってる場合でもない。
だけど、わたしの第一志望に向けてやるべきことはやっている。
昔から、それが出来たらどんなにいいだろうと夢想したものだ。
だから、私はそれに賭けることにした。
父は反対し、母は、まぁ、母は仕方なさそうに応援してくれた。姉は呆れ果てたという顔をしながら支援してくれた。
それこそが【一発芸入社試験】だ。
これこそがわたしを活かす道だ。
まぁ、それを人に伝えたら白い目で見られたんだけど。でも、敗れたのならともかく、やりたいようにやる人生を活きるために挑戦することすらしないなんて、なんのために生きてるっていうのサ。
無軌道無計画でないだけ褒められるべきだと思うんだけどな。
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さて、そんなわけで私が目指す場所は(実は小学生の頃から)『揺り籠から墓場まで』をスローガンに掲げた“人生娯楽企業”を謳う株式会社棟平屋だ。
理由は、他の仕事よりも面白そうだから。
ぶっちゃけ、志望理由としては甚だ不適切なのだけれど。
けれど、どう取り繕ってもこれが理由なのだから仕方がない。
とはいえ、この企業の理念と照らせばそれほど奇天烈な理由でもないと思う。それは業務形態の面にも表れていて、端的に言えばひたすら化け物。
家族にもこれを説明したら納得してくれた。
この会社、何が凄いかと言えば総合商社と呼んで良いのかすら不安になる業務範囲だ。
端的に言えば駅前にある書店ビルだ。
1Fには雑誌や新刊など、普通の本屋風のラインナップが並ぶ。屋号は棟平書店。
2Fには棟平浪漫書房、これは漫画専門古書店だ。
3Fには棟平夢書房、これは児童書専門店だ。絵本から40年以上前の児童書籍まで揃っている。
4Fには…みたいな具合で地下3階地上13階に渡る化物のような本屋の塊。
特徴的なのはレファレンスサービスが充実していることで、古書であれ欲しい本を特定して、最大1年間は全国津々浦々から欲しい本を探し出してきてくれる。さすがに値は少し張るけれど、こんな事をしているのは全国を探しても棟平書店だけである。
そしてその隣には飛脚サービスM⭐︎U⭐︎N⭐︎Eがある。頭の悪いことに『暴走、音速、一瞬、ンンン!』という4つの速達コースが用意されていて、“ボイン、どれにします?”という時代の流れを切り開くCMが未だに流れている。クレームは多いらしいが、クレームはクレープにくるんで食ってしまえ!という事らしい。
それに今をときめくピックポイントとして大きいのは戦後100周年記念戦艦大和大展覧会だろうか。
何を隠そうこの戦艦大和の造船にも一枚噛んでいたとかで、自分が担当した区分の設計図を完璧に覚えていて設計図とそれをもとにした造形物という形で再現したらしい。
どうも『今同じものを作るのなら、こうしたら面白いのでは?』とかなんとかで改めて大和改(仮)の設計図を作って造形物も作ってそれも展示しているらしい。…遊び心やばくない?
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今の時代に照らせば不適切と呼ばれたり不謹慎と呼ばれたりすることもある。
例えばそれは当時の会社議事録に「いや、これはヤバいんじゃね?」というそれが残っている某戦艦の(記憶頼りのお手製)設計図や各種サービスのネーミング、果ては『日本における賭け事のエンタメ化は賭場だ!』という意味不明な動機からゲームセンターのコインゲームのラインナップに丁半博打遊戯を入れたりと《不健全なくらいが面白い。足を踏み外さない程度に羽目を外さにゃ人生これすなわち地獄よな》と書かれた暖簾のゲーセンを、一度は目にしたことがあるはずだ。
戦艦大和展示会における与太話の如きそれも同じこと。
面白き
ことばかりなる
この世をば
更に盛り立て囃し立て
愉快痛快奇々怪界
明日も明後日もその次、
夢覚めることなき楽日を。
この社是からして是とされないこともある。
けれど、それを止めることもなく江戸時代から令和の世に至るまで連綿とそれは続いてきた。
楽しさは人によりけりだ。
だから出版、造船、書店、病院、競輪、競舟、競馬、競走、賭遊、飲食店、スポーツジム、出版、各種武芸道場、学校、製薬、建築、レジャーランド、築城、鉄道と株式会社棟平屋は本当に色々なんでもやっている。
一次面接の前に零次面接があり、入った後のヴィジョンの聞き取りを行った上で面接官の社内審査を経て面接官として受かった社員が決まった後に一次面接が行われる会社なんかここ以外には存在しない。
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ともあれ、わたしはここで風景画家になりたいのだ。
え?
ここまでの中に画家なんてなかったぞ?
それが今年から『社史を編纂するにあたって挿絵を描ける人間を募集します。アルバイトも可能ですので下は高校生から、上は90代まで、描きたいものがある人は是非応募してください』と出始めたのですよ。
しかも【時代劇的な漫画を描きたいやつはぜひうちへ来い。今描けなくても描けるようになるまで仕込んでやるかうちに来い。】とか手書きで殴り書いてあるのだ。採用ページに。これは行くしかあるまい。
私こと徳川徳子(オイ両親、もちっとネーミングセンスを磨け。なんだ徳子って。七兄妹の末っ子だからって考えるのやめただろ)は、ご先祖様たちの波乱万丈奇々怪々を広く世に伝えたいのだ。
特に、歴史の陰に隠れたお茶目で愉快な我が家に伝わるあの人たちを。
それは、歴史と云う名のベールの向こう側に隠れてしまった大冒険の日々のこと。
西暦2042年7月、洒落にならないほどクソ暑い日本でのとある一日。
『就活』
それは、端的に言えば以下のようなものだ。
思い出したくない方。
今まさに直面している方。
そして将来的に直面するであろう方。
何それ美味しいの?という方もいるかもしれない。
ともあれ、戯言として笑って貰えれば良いなと思う次第でございます。