蝉の声がすると体感温度が跳ね上がる気がする。
照りつける日差しもギラつきを増し、吹き込む風も熱風に変わる。
そんな暑さに嫌気が差して、部屋に籠ることにした。もちろん、冷房をガンガン効かせた涼しい部屋に。
「……あっつー」
「ほんと、暑すぎ……」
相づちを打ったのは赤メッシュの美竹蘭。部屋のクーラーが壊れて、幼馴染みも用があってダメ、ということで俺の部屋に転がり込んできた。
いきなり来たモノだから、食べ物も飲み物も俺の分だけ。やれ仕方ないと二人で買いに行って、部屋に帰ってきたのはほんの数分前。無論、外はとてつもなく暑い。
「で、今日はなんかするの」
「暑くて、やる気でない」
お互い汗を拭い、それぞれ椅子とベットに体重を預ける。
何をするでもなく、ただスマホを弄って時間を無駄にしていく。
「ねぇ、本当に何もしないの?」
「んなこといわれたって……そうだ、しりとりでもするか?」
二つ返事でOKに。単純なしりとりだとつまらないからということで、負けた方がなにかあ一つお願いを聞く権利の取得を追加して。
トントン拍子で進んでいくしりとり。お互い高校卒業間近と言うこともあって、ボキャブラリーに関しては問題ない。蘭は作詞もしてるんだし、集中力さえ切らさなければ俺の負けは確実。
「リンゴ」
「ゴリラ」
「ラッパ」
「パイナップル」
とはいえ、作戦があるわけでもない。定石通りにしりとりのり、から初めて早十分。順調に使えるワードが減っていく。対する蘭は飲み物片手に表情変えず、と。ある程度予想はしてたけど、少しショックだったりする。
「る、ね。え~っと……ルクセンブルク!」
「クライアント。もうキツそうだけど?」
「そんなこと、ないんですけどねぇ」
降参したいなぁ、これ負け確定盤面だよなぁ。なんて弱気な言葉を口から出したら最後、手加減してるだやる気はあるのかで怒られるのが目に見えてるんですよね。
勝負を提案した手前、降参するのはダサいと思うので、少しだけ抗ってみようと思います。見てくれなんて気にしてられない。ここで降参するよりダサいことはない気がするから。
「あ……アミラーゼ!」
「税理士」
「早すぎだろ。シミュレーション!」
「はい、あたしの勝ち。とりあえず飲み物でも飲んだら」
抗った末のあっけない敗北。蘭から手渡されたペットボトルの中身を一気に流し込み、疲れ切った脳内に糖分を送る。思い返せば初めてから何も口にしていなかった。集中力切らしたら負け、ってわかってたはずなのに、これ以上ない失敗だよ。
結局負けは負け。なんなりということを聞く所存でございます。
「で、なにをすればいいの?」
「課題、手伝って」
思いのほか子供っぽい要求で安心しつつ呆れつつ。なにはともあれ、無理難題を押し付けられなくてよし、と。
にしても、どことなく感じるこの既視感。わざとらしく首を傾げてみると答えはすぐに見つかった。
そこにあるのはいつとったか覚えてない昔の集合写真。この年の夏休みも、蘭が課題手伝ってって言ってきたんだっけ。
「なにニヤついてるの」
「べっつにー。昔も今も変わらないなって」
「気持ち悪い。まぁ、いつも通りなんだけど」
確かに、蘭の言葉の通りにいつも通り。変わってほしくないもの、って感じにエモいやつ。
それはそれとして気持ち悪いのがいつも通りってのは変えてほしいです!