《不殺》は時を廻したい   作:暦月

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 明日18:00に本編以外の話をもう一本投稿して年内の活動を終了します。
 なのでストーリーの更新はこれが今年最後です。



第二十二話:時間稼ぎ

 

 

 一瞬の浮遊感の後、石畳に立つ感覚が足先から伝わってきた。目を開けるとそこは先程までいた部屋に間違いなかったが、メリオダスや彼が放った獄炎も綺麗さっぱり消えていた。

 

「どうやら無事逆行できたみたいですね」

 

 ふう、と一息吐いて緊張を逃がす。ハッタリと分かっていても久方ぶりに命の危機を覚えたからか、無意識に身体が強張っていたみたいです。

 でもこれで本当に私の脅威と云えるものは無くなった。反省を生かし、今度同じ状況になったら迷わず逃げるか先手を潰しましょう。

 

 少し休憩を入れてから過去へ跳んだ目的を果たすべく動いた。

 念のため道中に気を付けながらこの時間軸の皆さんとの合流を図りますが――当然と言えば当然でしょうが限りなく停止した(ように見える)世界で私を害せるものなど無く本当にあっさりと発見することが出来ました。

 少し拍子抜けしましたが杞憂に終わるに越したことはありません。魔力を解除し、万人が常駐する普遍の速度へと身を預けた。

 

「お疲れ様です皆さん、少しお話したいことがあります」

 

「――ッ、ノルン、どうして此処に……いやそうか」

 

 私に一早く反応したのはやはりゼルドリスさんです。横に誰もいなかったのに気付いたら首のすぐ近くまで剣が迫っていました。やっぱり速いですねえ。

 加速抜きの純粋なスピード勝負では圧倒的最下位に甘んじていますから魔神族随一の剣速を見切るなんて土台無理な話です。一応、万が一が無いように『断魔の羽衣』は着ていますけど。

 

 そんなゼルドリスさんは最初訝しい目を向けていましたが、私がここにいる違和感と微妙に減った魔力から大体の事情を察してくれたみたいです。

 

「ガランの呪いは解けたのか」

 

そちら(・・・)は大丈夫です。いきなり私が居なくなってもメラスキュラさんが連れてきてくれるでしょうし……多分」

 

 あの様子だと置いてかれそうな気もするけど、まあガラン爺様の方が速いし流石に無いか。

 

「ふん…そちらは、か。問題があったのは俺達の方か」

 

 あ、面白くなさそうな顔。その他のメンバーはフラウドリンさんも眉を顰めてるし、デリエリさんとモンスピートさんは興味無いように見えて警戒を上げてますね。

 エスタロッサさんだけ「へえ…」と楽しそうですが未来のフラウドリンさんの話だと貴方が一番最初に脱落するんですけどね。

 

「ええ、実は――」

 

 口を開いた、その瞬間だった。私はとある人物の驚きの姿を目にした。その人物とは……

 

「ノルン、助けてくれ…」

 

「ガラン爺様!?」

 

「何ッ!?」

 

 そこにいたのはメラスキュラさんと此方に向かっている筈のガラン爺様だった。横に彼女の姿が無いのはまだいいとしても私が驚いたのは全身に付けられた大量の疵だ。既に一戦やり合ったのは明らかで、三千年前の戦いでもここまでボロボロの姿は見たことが無かった。

 

「メリオダスにやられた。儂を助けてくれ」

 

「ッ、『追い縋れぬ憧憬(アクセラレーション)』!」

 

「わ――」

 

 そんな、先手を打たれた…!? 

 

 回帰直前の自信に満ちた表情が頭を(よぎ)り、方法は分からないが出し抜かれたことを察した。

 次の襲撃が来る前に急いで近寄り『聖職者の極意(シェイリーフ)』を掛けようとしたが、『逆行する世界(リバースオーダー)』発動中は過去改変が出来ないことを思い出し、代わりに『断魔の羽衣』を纏わせて応急措置とした。

 これで今すぐ死ぬことはないし、世界の改変が終わるまで私が近くにいれば例えメリオダスさんが襲撃してきても大丈夫……

 

「なだッ、そいつから離れろノルン!?」

 

 再び魔力を停止から加速に切り替えた時、珍しく焦燥に駆られたゼルドリスさんの声が私の耳に届いた。

 なだ…? 何かの暗号、いや言いかけか。その直前彼は何を言おうとしてたんだっけ。

 

(わ、なだ……わなだ、罠?)

 

「捕らえたぞ」

 

 それは戦闘を生業とする者から見れば致命的な隙だった。これまで危機(ピンチ)といえるような経験も命を脅かすような天敵もいなかった、強者故の弊害……傲り。

 ゼルドリスが、十戒の統率者が何度注意しても治らなかったノルンの悪癖が結果として一瞬のフリーズを引き起こし、全て気付いた時にはノルンの身は結界の中にあった。

 

 

 

 

 

 

 

「チッ、だから考えるより前に動くなと言ったんだ」

 

 結界の中に囚われたノルンを見て最初に抱いたのは苛立ちだった。癖の強い他の十戒(メンバー)に比べたら大人しく常識寄りだが、如何せん魔力以外の部分の未熟さが目立つ。この時代の子供でもノルンよりかは警戒心が備わっていることを考えると単純に頭が良くないのか将又魔力が強すぎるのか。できれば後者と思いたい。

 

「この…!」

 

 ノルンが結界の壁に聖杖をぶつけて破壊を試みるが無駄だった。幾ら全ての行動が容認されると言っても所詮はエネルギーを弾くだけで、ノルンの力は羽衣の補正込みで精々が巨人族に毛が生えた程度。対人戦では無類の強さを誇るものの〝完璧なる立方体(パーフェクト・キューブ)〟のような質量攻撃にも耐性がある魔法には効果が薄い。

 

「ヌオッ! おい見ろメラスキュラよ、ノルンが捕まっておるではないか!」

 

「急にいなくなったと思ったら何してるのよこの子は」

 

 そこに傷のない(・・・・)万全な状態(・・・・・)のガランとメラスキュラが合流し、結界の内側にいるノルンへと声を掛けた。当の本人はガランが無傷なことに混乱していたが。

 

「やはり、今は抹消の力が使えんらしいな」

 

 冷静に今の状況を分析していると、何時の間にか抜け出していたガランの偽物(・・)が結界の外からノルンを観察していた。瞬間、背後を取り一撃で沈みようとしたがノルンが付与したであろう不可視の防御に剣を弾かれた。

 

「便利だな。しかし私でも再現できんかコレは」

 

「貴様何者だ」

 

 目の前で姿が歪み、そこから一人の女が表れた。

 顔は見たことがない。少なくとも三千年前にはいなかった存在だ。

 

「今すぐ結界を解け。さもなくば命は無いぞ」

 

「これは可笑しなことを謂う。この羽衣とやらが私の命綱なのだろう?」

 

 脅しは効かないか。まあそうだろうな。

 偽物であることに気付いたノルンが遠隔で女に掛けた魔力を解除しようとするが、この特殊な結界(・・・・・)のせいか羽衣を没収できず困惑していた。既に対策済みというわけか。

 

「苦労したぞ。術者の介入を完全に断つ結界など試した事が無かったからな、久しぶりに研究しがいがあった」

 

「舐めないでください。逆行の力が使えずとも他に方法はあります」

 

 そうだ焦る必要などない。魔術士封じ(シェイリーフ)が無くても全ての時間を強制的に果てさせる『万物が至る死期(ハイ・アクセラレーション)』なら容易く破れるだろう。

 千年存続できる魔法は在るかもしれないが、どれほど高名な術師だろうと永遠にかけ続けられる魔法など存在しない。ノルンはそれを簡単に暴く。

 

 だが幾ら掛けても結界が崩れる様子はなかった。これにはノルンだけでなくゼルドリスさえも驚愕するが、すぐにハッと何かを思い出したノルンが唇を噛んだ。

 

「【無限(インフィニティ)】の魔力――そう、貴女がベリアルインの娘」

 

「ベリアルインの娘だと!?」

 

 未来でフラウドリンからマーリンの正体と有する魔力を訊いていたノルンが、本来有り得ない事象を可能にする存在がいたことを思い出しそれを看破したのだ。

 【無限】の魔力で発動した魔法は、自分自身で解除しない限り永続的に効果を発揮するという反則的な性質を持つ。つまりいくら時を加速させたところで終わりが無ければ効果が無いのと一緒だ。

 これにより今この瞬間、ノルンが結界に封じられるという千載一遇の事実が成り立ったというわけだ。

 

「よもやこんな所で出くわすとはな。魔神王と最高神から(・・・・・・・・・)祝福を受けた(・・・・・・)にも関わらずどちらにも与せず…あまつさえ怒った神さえ欺き逃げおおせた貴様がまさか一国の騎士の真似事など」

 

 この状況、確かにこいつならノルンを一時的に拘束することが出来るだろう。メリオダスめ、こんな大物まで手駒に置いてるとはやはり油断ならん奴だ。

 

「何が狙いだ」

 

「さてな。気になるならそこで見てると善い」

 

 最終的な目的こそ分からないが、どうやらノルンをここに留まらせたいらしい。戦場に緊迫した空気が流れる中、クツクツと押し殺したような笑いが聞こえてきた。

 

「何がおかしい、ガラン」

 

「カ――ッハッハッハ!! 時間を司るノルン相手に“時間稼ぎ”じゃと? これが笑わずにいられるか!」

 

 やはり数ヶ月動けなくなった程度で性根は変わらないか。むしろ復活して早々にこんな戦場に出くわしたせいで普段より箍が外れている。やはりノルンに許可を出したのは失敗だったな…

 

「その顔覚えておるぞ~? お主、前に石化した女じゃろ。戒禁の呪いから抜け出したのも最高神から貰った加護のお陰とみた」

 

「ああ、私自身加護(それ)の存在自体をすっかり忘れていてな」

 

 【無限】の魔力を持つ娘を手中に収めるため、二柱はそれぞれ加護を授けた。

魔神王は、魔界の秘術に関するあらゆる知識と女神の洗脳術を防ぐ加護を。

最高神は、いかなる闇の呪いと戒禁すらも無効にする加護を授け、それを持ち逃げしていた。

 

 つまりは奴に戒禁は効かないということだ。

 

「クックック、面白い奴だ。だが調子に乗るなよ? 自慢の【魔力(インフィニティ)】も所詮はノルンの下位互換、発生前に戻してしまえば意味ないじゃろうて」

 

「……その通りだ。だからこそ逆行が使えない今、お前()を倒す」

 

 

 マーリンとやらが指を鳴らす。

 重い何かが落ちる音がノルンのいる結界の中に響き、反射的に震源地を確認した。

 そこに一人の大男が立っていた。

 

 

「まったくマーリンさんもお人が悪い。こんなか弱そうな少女を私にぶつけるとは」

 

「何者ですか?」

 

「おっと失礼、貴女とは初めましてですね。私はエスカノール」

 

 

〈七つの大罪〉、傲慢の罪(ライオン・シン)エスカノール

 

 

「全ての種族の頂点に立つ者。以後お見知りおきを」

 

 

 対面する少女の倍以上ある太さの脚を踏み出そうとし――

 

 

 

 

「しません。不敬極まりないその傲慢、永遠(とわ)に停止した時間の中で反省なさい」

 

 

 

 

 それが下ろされる前に勝負は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

リオネス遡行決戦(結界内)

 

ノルン VS エスカノール

 

決まり手:時の棺

勝者:ノルン?

 

 

 

 

 

 

 

十戒 vs 七つの大罪 勝つのはどっち?

  • 十戒
  • 七つの大罪
  • 実は引き分け
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