今回の話はナナリーに対してかなり厳しめです。そして今回の話の終わりあたりから原作ギアスともスパロボとも異なるストーリー展開が始まっていきます。多分この先の展開を読み切っている人はいないと信じながらフジの戦いを終わらせて次のステージに進めたいと考えています。それではあと数話以内にフジの決戦に決着をつけられたらなぁと思いながら頑張って執筆していきますのでどうかよろしくお願いします。それと本日コードギアス20周年記念展に行ってきました。ギアスの歴史を感じられてとても楽しかったです。
眠りから呼び醒まされた火山の炎と夕焼けに染まりゆく空の下で、幾つもの炎が紅蓮の花となって咲き誇り、フジの大地を彩る。
ひとつの火球が生まれるたびに、ひとりの戦士が愛機と共に散ってゆく。
その一瞬に煌めく閃光だけが、彼らの戦った証。
エリア11────日本国において「霊峰」と崇め奉られたフジの大地は、名のある将から名も無き兵士たちなどあらゆるものたちの血をなおも貪欲に啜り続けている。
「一体シュナイゼル宰相は何をしているというのですか・・・!!」
ダモクレス防衛として後方に陣取っている人類軍の母艦にて現在の人類軍の実質トップであるへスター・ギャロップは焦りを見せていた。
現在ダモクレスを突破するために集まったルルーシュ皇帝軍側の戦力は深淵騎士団に第零騎士団、皇帝軍を始めとしたルルーシュとライの直属部隊だけでなくOZに大グレンダ騎士団、ジット団、キャピタル・アーミー、第二・第三・第四混成師団、第二・第四機甲師団というルルーシュ側の戦力の半分近くが揃っているためにヘスターたち人類軍を始めとしたダモクレス周辺にいるシュナイゼル連合軍は数と質量の差によって徐々に追い詰められていた。
まだ壊滅していないのもZEXIS・ドライクロイツの部隊が参戦して三つ巴の戦いになっていることでルルーシュ皇帝軍の戦力がこちらに集中しきれていないからだが、それも数や質が劣るこちらにとって壊滅する時間が多少伸びた程度でしかない。それを打開する為にもフレイヤによる圧倒的破壊力が必要だと言うのに・・・
「あの皇帝が残した連中のせいでダモクレスに乗り込むことも出来ないし、他の場所で戦っている連中も足止めされて援軍は来ない・・・!!一体どうすれば・・・!?」
ヘスターはなんとか起死回生の一手を打てないかと必死に考えるが現状なにか打つ為の手札を何も持っていないため歯噛みしながら今現在戦っている兵士たちが何とかしてくれるのを期待することしかできなかった・・・。それが蜘蛛の糸よりもか細くちぎれやすいちっぽけな希望であり叶う可能性はほぼ0%だということにも気づかずに・・・
『クソ!なんだあの化け物どもは!?あんな奴らデータにないぞ!?』
シュナイゼルにフレイヤを放ってもらうべくダモクレスに向かおうとした人類軍のファフナー部隊を妨害するようにルルーシュを守り歯向かう敵を排除する為だけに用意されたルルーシュ自身が設定した戦闘AIを搭載した無人機部隊【
────1機1機がゲットマシンであり、ゲッターロボである3機がゲットマシンとして合体する巨大なゲッターロボ【ゲッターノワール・G】
────ウイングガンダムゼロの設計図を元に開発された【ウイングガンダムゼロリベリオン】
────ブリットとクスハの操る超機人【龍虎王】の戦闘データを元にこの世界で発掘された半壊状態の四神を元に新たに製造された4機の戦機人【龍帝機】【虎帝機】【武帝機】【雀帝機】
────ヴァルシオンを元にありとあらゆる戦場で対応できるように豊富な武装を装備及び内蔵させた歩く武器庫と言っても過言では無い【ヴァルシオン・ケイオス】
────改良したガウェインにロイドたちが作成したフレームコート【ヘルテンペスト】を装備させた重砲撃特化のナイトメア【ガウェイン・スルト】
────多種多様な殺戮兵器を装備させた突然変異種のティラノサウルス種ゾイド【デスレックス・死龍形態】
────人を乗せることを想定せず圧倒的な加速をもって戦場を暴れ回る【トールギス・ヴァーユ】
────ルルーシュの忠実な配下としてロイドたちが用意した黒の重装甲仕様に仕立て上げたランスロット【ランスロット・サーガ】
────戦況に応じて武装を変更できる【
────別次元の荒廃した地球であらゆる組織に対して絶対的な中立の姿勢を貫き続ける組織が所有する最強の存在が使用する機体たちの中でも上位種の機体【ナインボール=セラフ】
────単機で巨大勢力を壊滅させた実績を持つ伝説の傭兵が使用していた白銀の機体【ホワイトグリント】
一機一機が
「ダモクレスへの連絡を続けなさい!!早急にフレイヤによる殲滅を行わなければ私たちは全滅するのですよ!!」
現状をなんとかすべくダモクレスへの連絡を続けるよう指示をするヘスターだが、その表情は焦りからか青ざめ背中に冷や汗を流していた。
『さぁ私の
カーリーの狂気的な笑い声と共にグラン・ジュデッカから放たれるテレキネシスミサイルが敵味方問わず放ち、周囲を焼け野原へと変えていく。それに対してマリオとマーヤはテレキネシスミサイルが着弾するよりも速く爆炎の中を突っ切りながらグラン・ジュデッカに接近する。
『お前の身勝手な押し付けなど御免こうむる!!』
『その醜くなった身体ごと潰してやる!!』
マリオはペルセウスのハルパーを、マーヤはアキレウスのグングニルを振るいグラン・ジュデッカの装甲を抉るように破壊する。しかし、破壊した箇所からすぐさまマシンセルによる再生が行われてしまい傷一つない姿に戻ってしまう。だが、そんなことはお構い無しにマリオとマーヤは攻撃を繰り返しグラン・ジュデッカに再生能力を何度も使わせていく。
『ギィィィガァァァァァ!!』
『撃て!撃ち続けろ!!このままディゼル卿たちの援護を続けろ!!』
『このっ!!トカゲと猿風情が私たちの楽しい時間に割り込まないで!!』
マリオとマーヤだけに任せる訳もなくデスレックス・ノヴァや雪花を始めとした
ペルセウスとアキレウスがメインとなって化け物であるグラン・ジュデッカと怪獣映画顔負けの激しい戦闘を繰り広げている中、ナナリーの騎士であるアリスはナナリーを守るためにナナリーから授けられた剣【ランスロット・セイバー】とアリスの同僚であるダルク、ルクレティア、サンチアの【ヴィンセント・セイバー】はダモクレスを襲撃してくるルルーシュ皇帝軍を相手に奮闘しているが、多勢に無勢であるために思うように反撃できないところにジェレミアのサザーランド・オランジュとに出くわしてしまった。
『なんて激しい弾幕・・・!?銃砲弾のゲリラ豪雨なんて洒落にならないわね・・・!!』
『どうした少女よ!!ナナリー様の騎士を名乗っておきながらこの程度も突破できぬか!!』
『抜かせ!私はナナリーを守るための剣!!ナナリーの望む平和の障害となるもの全てを切り捨てるもの!!お前程度に遅れを取らない!!』
『その意気やよし!!だが、ライ卿たちに劣るとはいえ私もまたルルーシュ様に忠誠を誓った騎士!!その力を存分に味わってもらおう!!』
アリスはナナリーが命名した聖剣【カリバーン】で迫るハドロンショットやGNミサイルなどを切り払いながらフロートユニットをフル稼働させてランスロット・セイバーをサザーランド・オランジュへと向けて飛ばしていく。迫るランスロット・セイバーに対してジェレミアは臆することなく大型スラッシュハーケンを構えて迎え撃つ準備を取る。
そしてジェレミアの周囲で待機しているサザーランドIIやクイン・ローゼスたちがダルクたちのヴィンセント・セイバーの相手を行う。どちらの戦いも激しくアリス達は目の前の敵に集中せざるを得なかった・・・。
彼女ら以外にも多くの勢力がダモクレス周辺で衝突し命を奪い合う闘争を繰り返し数え切れない程の命が次々と失われ空を彩る赤い花火となって儚くその命を散らしていく・・・。
『ダモクレスの突入作戦は無事に成功しているようだな・・・』
トールギスIIのコックピットの中で前線の部隊に指示を出しながら襲い来るビルゴIIIたちをドーバーガンで撃ち抜いているトレーズは薄らと笑みを浮かべた。その時トレーズの護衛を務めるウイングガンダムを操るレディ・アンがトレーズに対してプライベートチャンネルで通信を繋げ先程上がってきた報告を伝える。
『トレーズ様。先程ルルーシュ皇帝陛下直属の処刑部隊から連絡が入りました。『獲物が罠に掛かった』・・・
『そうか・・・。そちらはそのまま彼女たちに任せるとしよう。まずはシュナイゼル、そしてナナリー・ヴィ・ブリタニアが抑えられるのを待つ。そこからお待ちかね、
トレーズは目を細めながら、アンの報告に頷いた。
いよいよ、ルルーシュ軍、シュナイゼル軍、ZEXISの三つ巴の戦いは最終局面へ向かおうとしていた────。
シュナイゼルからナナリーの場所を聞き出したルルーシュとライは通路を走っていた。道中ルルーシュの命を狙うシュナイゼル陣営のブリタニア兵士の襲撃が何度かあったが全てライの手によって斬殺され2人が歩いた道は血まみれの死体による赤い絨毯となっていた。
そして数十人の死体を作りながら2人はダモクレス最上階にあるその部屋へと辿り着いた。
ライが念の為にと周囲の安全確認を行ってからルルーシュは扉に手をかけゆっくりと開いた。
開いた扉の先にあるのは、今外て行われている血で血を洗うような激しく残虐な戦闘が嘘のように思える程争いの影の形もない静寂が保たれた平和な庭園だった。
そんな色とりどりな花が植えられている庭園の中央部の広場に1台の車椅子が置かれていて、ナナリーがそこに座っていた。
改めてナナリーと敵対していることを再認識したルルーシュは深呼吸を数度行い息を整えてからナナリーに近づくために歩き出す。その数歩距離を置いて何が起こっても何時でも対処できるように周囲の警戒を続けながらライはルルーシュの後ろから控えるように続いた。
ルルーシュとライの足音だけが響く異様な空間の中でナナリーはというと、長い髪でその顔を隠し、下を向いていた。やがて、車椅子からほんの数メートルの距離にルルーシュとライが近づいたところで、不意にナナリーが俯いたまま口を開いた。
「お兄さま・・・。それに、ライさん、ですね」
突然のナナリーの問いかけにルルーシュとライは、思わず足を止めた。
「・・・ああ」
「そう、だよ」
「目的は、このダモクレスの鍵ですか?」
ナナリーは剣の形をした発射スイッチ────ダモクレスからフレイヤを発射するための装置であるダモクレスの鍵を両手で強く握りながら震えそうになる体を内心で鼓舞して気丈に振舞っているように見せる。
「うん。それは危険なものだ。キミには・・・」
「だから、です」
ライは力づくで奪うのは本意でないため言葉で説得しようと声をかけるが、ナナリーはそんなライの言葉を遮り、そこでゆっくりと頭を上げた。目は、閉じている。
ルルーシュはもちろん、ライにとってもそれは見慣れた顔だ。いつも通りの、変わらずずっと閉じた
でも────。
「っ!?」
「な・・・!?」
予想外の出来事を前にしてルルーシュとライの顔は、驚愕に歪んだ。
閉じたままだったナナリーの
「────もう、目を背けては、いられないから」
鮮やかに、開いたのだ。
「ナナリー、君は・・・!!」
「お前────!?」
まさか、皇帝シャルルのギアスを自ら打ち破った────!?
ルルーシュはもちろん、ライもそう言うよりも早く、ナナリーはしんとした声でこう述べた。
「お兄さま・・・私にも、ギアスを使いますか?」
そう言ったナナリーのルルーシュのアメジスト色とは異なるが同様に美しく力強さを感じさせる藤色の瞳がまっすぐにルルーシュとライに向けられていた。
いかに皇帝シャルルのギアスを自らの精神力で打ち破ったとはいえ、本当はまだ完全に視力が回復していないのかもしれない。だがそれでも、ナナリーはこう続けた。
「何年ぶりでしょうか・・・お兄さまの顔を見たのは。それが、人殺しの顔なのですね。そしておそらく私も、同じ顔をしているのでしょうね」
ルルーシュは、ナナリーのナイフのように鋭い言葉を前にしても沈黙していた。
想定外の出来事を前にルルーシュが驚愕から立ち直れていないと判断したライが、ルルーシュの代わりに目を見開いたナナリーにこう問うた。
「では・・・今までのフレイヤは、本当に君が?」
「はい。止めるつもりでした。お兄さまを。・・・たとえライさんと、お兄さまが死ぬことになったとしても」
「・・・・・・」
「ですから、ライさんとお兄さまにフレイヤの鍵をお渡しするわけにはいきません。もし、お兄さまがギアスを使われたとしても」
それは、庭園に放たれたものなのだろうか。
向かい合ったルルーシュとライ、ナナリーの間を、1匹の蝶がひらひらと飛んでいった。
『今ならわかる・・・!!愛する人のためにかつての仲間を裏切ったあなたの気持ちが!!』
富士急ハイランド跡地でムジナとブラックダイナゼノンは錆びて朽ちていたメリーゴーランドやコーヒカップを踏み潰しながらガウマたちの操るカイゼルグリッドナイトを殴り飛ばした。殴り飛ばされたカイゼルグリッドナイトは幾つかのコースターのレーンを壊しながら数度転がるもすぐに体制を立て直そうとするが、そうはさせまいとブラックダイナゼノンはバーストミサイルを発射しながらカイゼルグリッドナイトの顔を蹴りあげる。
『だから私は戦う!!あの人が、ルルーシュがこの世界の破壊を望むならその願いを果たすために!!』
『っんのぉ!!んな事させっかよ!!』
ムジナの強い想いが込められた拳を真っ向から受け止めながらガウマは負けるかと自身を奮い立たせるように叫びながらゼロ距離でのフルバーストを行いブラックダイナゼノンを吹き飛ばす。
『誰かを想う気持ちを否定はしない!!だけどっ・・・!!』
『そのために世界を犠牲にするなんて間違ってる・・・!!』
『そんなことしても誰も幸せになんてなれないってどうして分からないんですか!?』
暦、夢芽、蓬がムジナを説得すべく言葉をかけながらグリッドナイトサーキュラーでブラックダイナゼノンに斬りかかるが、ムジナはそれに対してダイナセイバーで受け流しながら答える。
『知ったことか!!私はあの人の為にこの手を血で汚すことを覚悟した!!あの人の願いが叶うなら世界も他の人間もどうなろうとどうでもいい!!』
ダイナセイバーでグリッドナイトサーキュラーを握っている右腕をかち上げるなりカイゼルグリッドナイトの懐に潜り込みそのまま右腕を掴んで巴投げをして勢いよく地面に叩きつける。
勢いよく叩きつけられたことでガウマたちは思わず呻き声をあげてしまうがその隙を見逃さないと言わんばかりに今度はムジナのブラックダイナゼノンによるフルバーストが放たれようとした瞬間、カイゼルグリッドナイトは合体を解除してグリッドナイトとゴルドバーン、ダイナレックスに分離するなりダイナレックスの頭とグリッドナイトによる盾となったゴルドバーンをぶつけられたことでブラックダイナゼノンは攻撃を中断して思わずたたらを踏む。
『だったらそんな馬鹿げたことをこれ以上考えられなくなるよう徹底的にぶちのめしてやんよ!!』
『やれるものならやってみろ、ガウマ!!』
ムジナもまたブラックダイナゼノンからブラックダイナレックスへと変形させるとそのままガウマたちのダイナレックスと正面からぶつかり合ってそのまま周囲のものを破壊しながら揉みくちゃになって暴れ回り始めた。
『────ゴッドォォォフィンガァァァァァァ!!』
『ぐぎゃあああああっ!?』
ドモンのゴッドガンダムの必殺技であるゴッドフィンガーによる一撃が見事に決まりゼウスガンダムは爆散した。
それとほぼ同時にサイ・サイシーやジョルジュ、チボデー、アルゴたちシャッフル同盟のガンダムファイターたちが各々のガンダムの
しかし何度破壊しようと何事も無かったかのように無傷の状態で新たに生み出されてしまい現に今破壊したばかりのゼウスガンダムたちもまたデビルガンダムの足元から生まれてきていた。
さらに今現在のフジ周辺はどこもかしこも激しい戦闘が行われ無数の破壊された機体の残骸があちこちに散乱しているためそれらを素材に次々とDG細胞で汚染された新たな機体が生まれていきドモンたちZEXIS・ドライクロイツは徐々にその圧倒的な数を前に押され始めていた。
『やっぱり大元を叩かないと無駄ってわけね・・・!!』
『なら狙うは・・・!!』
『デビルガンダムのみだな・・・!!』
カレン、オルドリン、オルフェウスはこれ以上敵の数を増やす訳にはいかないと紅蓮聖天八極式、ランスロット・ハイグレイル、烈火白炎を未だ動く様子を見せないデビルガンダムに向けて飛ばし破壊を試みようとするが、それを妨害するようにデビルガンダムの足元から新たに生まれた機体たちがそれを妨害する。
『薄汚イ猿風情ガァァァァァ!!』
『パーシヴァル!?それにパロミデスやダゴネットたちラウンズの機体たちまで復活したっていうの!?』
DG細胞によりゾンビ兵として蘇ったルキアーノの狂った叫び声を聞きながら襲い来るパーシヴァル・クルーエルのヒートシザーズを紅蓮聖天八極式の呂号式乙型特斬刀で受け止めた。
カレンは開戦直後にライたちの手によって撃墜されたはずのラウンズのナイトメアやモビルスーツたちさらにはその配下たちの機体たちまでもが蘇り、カレンたちはさらに追い詰められていくこととなった。
飛んでいく蝶を見た後で、なぜかナナリーは一度、言葉を切った。そうして、深々と息を吸い込んで。
「お兄さま。あなたにこの世界を手にする資格はありません。ゼロを名乗って、人の心を踏みにじってきたお兄さまに」
そう言われたルルーシュの瞳にも鋭さが生まれ、彼も沈黙を破った。
「・・・では、あのまま隠れ続ける生活を送ればよかったのか?表舞台にも出られず、暗殺に隠れ続ける未来が希望だったのか? 他に選択肢はなかった。ナナリー・・・お前の未来のために────」
「────いつ私がそんなことを頼みましたか」
言い募ろうとするルルーシュを、ナナリーが強い口調で遮った。
「私は、お兄さまと二人で暮らせればそれだけで良かったのに」
「それは・・・負ける考えだ」
「何に負けるというのですか。この世は勝ち負けだけでできているのではありません」
「しかし!!」
ナナリーの言葉に対してルルーシュも、より強く言った。
「現実は様々なものによって支配されている。抗うことは必要だ。そうやって黒の騎士団やガンダムたちも戦ってきた!!」
「そうです。私も偉そうに言えた立場ではありませんが、思い通りにならない世界だからこそ人は懸命に生きてきた、いいえ、生きているのです」
蝶が舞い続ける艦内庭園で、ナナリーはその眼光でルルーシュをまっすぐに射抜き、断言してきた。
「だからこそ、ギアスは卑劣です。人の心を捻じ曲げ、全てを思い通りに尊厳を踏みにじるギアスは・・・!」
「ではダモクレスはどうだ・・・!?恐怖によって強制的に人を従わせる卑劣なシステムではないのか!!? その事実を知って、この期に及んでまだ聖女を気取り、それをなおも使おうとするお前が卑劣だなんて言えた口かナナリー!!」
ギアスを否定するナナリーに対してルルーシュもまた断固としてかぶりを振り、その眼光でナナリーを真っ直ぐに射抜き返しながらフレイヤを使うお前はどうなのかと問いかけるが、それに対してナナリーも全く動じなかった。
「まさか。あのアッシュフォード学園でトウキョウ決戦とペンドラゴンのことをマリオさんとマーヤさんに言われた時から、聖女だなんて大層な肩書きを持とうだなんて思ってもいません。・・・それでも私がフレイヤを、ダモクレスを使う理由は、ただひとつ」
フレイヤをこの戦場で既に何度も使用している自分が高潔な人間であるわけがないと否定したところでナナリーは言葉を切り、深々と息を吸い込んで、はっきりとこう言った。
「
初めて見たナナリーの覚悟がこもった姿を見て、ルルーシュ、そしてライの目が一度、この上もなく見開かれた。
だが、ルルーシュのそれはやがて元に戻り、端整な顔はわずかに笑みを浮かべ、
「そうか・・・ナナリー。お前も・・・」
ナナリーの覚悟を聞いたルルーシュは、思わず小さく呟いた。
そこから先、言葉に出さなかったが、ルルーシュが何を言おうとしたのか、ライにはわかった気がした。
────ナナリー。お前も、俺と同じ覚悟なのか。
否。実際には、同じ────ではない。
ナナリーの意思はともかく、ナナリーが決めた覚悟とそれを元にした計画は、ひどく杜撰なものだからだ。
今やライやマリーベル、トレーズやスザクたちと共に世界の敵となった悪逆皇帝ルルーシュを討ち、シュナイゼルをダモクレスと共に消滅させる。
やがては、世界にすべての真実を公表し、世界中の憎しみや悲しみをこのダモクレスと自分たちブリタニアを名乗る一族に集める。
その後、世界の人々が自分たちを憎むことで、まとまってくれればいい────。
それは、可能なのか? ────いいや、不可能だ。
奇しくも悪が悪を討ったからといえど、そこから正義は善が生まれるわけじゃない。
世界はそこまで単純じゃないのは、ルルーシュも、ライもよく知っている。単純でない世界を単純にするには、もっと綿密な準備と緻密な計算と多大な労力が必要なのだ。
でも、ナナリーにはその能力はなかったし、なによりそこまでのことをやってもいなかった────兄とは違って。
そして、本人にしてもこれはただ──その真実はスザクやライたち数人しか知らないとはいえ──兄の非道を知って、さらにシュナイゼルに付け込まれ、半ば絶望の中から生まれた自暴自棄、破れかぶれの考えだ。
そうなってほしいと思ったのは、あくまで希望的観測であって、必ずそうなると確信していた訳でもないのだろう。
でも────ルルーシュにとってそれで充分だったということは、ルルーシュが浮かべたその笑みから、ライは理解わかった。
かつて、光と両脚の自由を奪われ、たった一人の兄の、ルルーシュのこと以外は全てを諦めていた妹。
だが、この妹は、もう・・・
「手出しは無用だ、ライ」
気がつくと、
「これは、兄妹おれたちの問題だ。この後が待っているお前たちには、これ以上余分な重荷を背負わせたくない・・・何があっても俺を信じてくれた、唯一無二の
「ルルーシュ・・・」
そう言ったルルーシュの右手が上がり、両の瞼にゆっくりと当てられた。目を覆っていた特殊なコンタクトレンズを取り外す。
外気に触れる、赤い瞳。ギアスの力を宿したその目。
あの虐殺皇女ユーフェミアの日以来、C.C.とライ以外にしか見せられなくなってしまうほど、もう二度と戻らなくなってしまった「王」の目────。
でも、ここまでの流れからして、もう会話は必要ないのは、言うまでもないことだった。
「・・・いいだろう、ナナリー。それがお前の覚悟ならば、俺も覚悟を見せよう」
残る言葉は一つだけでいいんだ。
ゆえにルルーシュは、ギアスの眼差しをナナリーに向け、告げた。
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる────ナナリー・ヴィ・ブリタニアよ、ダモクレスの鍵を我に渡せ!!!」
羽撃く
「え────」
その一瞬、ナナリーはとぼけた声をあげたが、すぐにハッとした表情になった。
しかしそれも遅くナナリーはルルーシュの
ギアスによって支配され勝手に動こうとする震える自分の両手を見つめ、悲鳴をあげる。
「あ・・・あっ、いやっ! お兄さまに・・・渡してはいけない!!これ以上の、罪を、お兄さまに・・・!!」
でも、絶対順守の力の前に、その切なくも健気な抵抗は虚しかった。
不意に、ナナリーの表情が変わったのを、ライは見た。それまでの厳しい顔から、いつものナナリーとしての柔らかな笑顔に。
「────どうぞ、お兄さま」
そうして、ナナリーは長い時を経て開いたその瞳に赤い光を浮かべ、嬉々として手にしたフレイヤのスイッチを差し出した。
「・・・望まれない形とはいえ、これが巣立ちの時。いや、もうお前は巣立っていったということか。もう
「ルルーシュ・・・」
ルルーシュは、ナナリーからすぐにそのスイッチを受け取ることはしなかった。ルルーシュも先ほどまでの悪逆皇帝としての威厳ある姿とは違って、妹を思うただ1人の兄として真剣な表情を浮かべている。
そして、ルルーシュはその表情と同じ口調で、その意志を踏みにじってしまった最愛の妹に、こう語りかけた。
「ナナリー。俺はお前をずっと理由に、いや、言い訳にしてきた。しかし、お前はもう立派に自分の考えで生きていける。俺がお前にしてやれることは、もう何もない。・・・残念だがな」
それは破れかぶれ────でも、それでもナナリーは絶望の中で、一つの考えにはたどりついた。誰に教えられることなく。
ルルーシュにとっては、その点こそが大事なのだ。最初から完璧なんて、求めてはいない。ただ、一歩を踏み出してくれたこと。それを確信できたことが、重要なことなんだ。
「残念ではあるが、お前がそうなれたからこそ────俺も俺の道を進むことができる」
ライが息を呑んで見守る中、ルルーシュの手が、ようやく伸びた。
ナナリーが差し出すフレイヤのスイッチに触れる。そして────。
「さようなら・・・そして、ありがとう。愛している、ナナリー」
ルルーシュの手が、ナナリーの手からフレイヤのスイッチを取り上げた。
その瞬間、
「────あっ!?」
ナナリーの瞳から、ギアスの光が完全に消え失せた。命令された事を果たしたせいだ。そして、ギアスをかけられていた間のことは、もちろんナナリーは何も覚えてはいないだろう。
ナナリーの唖然とした目が、何も無くなってしまった自分の手を見た。みるみるうちに、その顔が怒りと悲しみに歪む。
「使ったのですね・・・!?ギアスを・・・!!私の心を踏みにじって!!」
ナナリーは憎悪と失望、そして悲しみなど様々な感情が混ざった声を吐き出すがそれに対してルルーシュは、何も言わなかった。ディートハルトの時と同じ、もう興味がない存在となったナナリーを、冷たく見下ろして。
そしてライも、最初のうちに一瞬目を伏せただけで、ルルーシュと同じように冷たい表情となる。そこへ、
「────ルルーシュ様、間もなくダモクレスの制圧が完了します。後は格納庫にいるラウンズの生き残りとここにいるナナリー・ヴィ・ブリタニア様だけとなります」
マリーカが、C.C.とマリーベル共に現れた。そしてリドール・ナイツ、楯無やリーライナら
「ならばライ。生き残りのラウンズたちの制圧をお前たちに任せる。抵抗が激しいようならば殺しても構わん」
「わかった。ルルーシュ・・・」
ライは、ルルーシュの命令を受諾し予備武器を
「任せる。名残惜しくはあるが、これ以上反抗を続けられても面倒でしかない。後で俺からも
「「「「「イエス・ユア・マジェスティ」」」」」
ルルーシュの命令を受けるなりそれを了承したライ、そして第零騎士団隊が一斉に敬礼した。
ライはアズール・ナイツ隊に指示を出しながらこの場を後にする中、マリーベルが言った。
「陛下。ナナリーはわたくしたちが拘束いたします。このまま最後の仕上げのため、どうか司令室の方へお急ぎください。陛下の号令を兵たちもお待ちしております」
「わかった。俺もこれ以上、ここにいる理由はない。行くぞ、マリーカ、リーライナ」
「「イエス・ユア・マジェスティ」」
マリーベルの言葉に納得の意を示したルルーシュが、ゆっくりと踵を返した。
そしてそのまま、ナナリーを振り返ることなく、マリーカたち深淵騎士団を連れてゆっくりと、ゆっくりと階段を下っていく。
「ま・・・待ちなさいっ!!」
ルルーシュが去っていくのを見過ごせなかったナナリーが懸命になって自分で車椅子を動かし、その背中を追ってきた。ルルーシュは庭園から通路に下る階段へと、ゆっくりと移動していく。
階段に差し掛かったところで、ナナリーの車椅子はマリーカの目の前まで来て、ルルーシュに追いつきかけたが、そこまでだった。
「あっ!!」
車椅子が段差につんのめり、ルルーシュの背中を掴もうとしたナナリーの手が空を切る。そのままナナリーは、車椅子から投げ出された。マリーカの目の前、階段の上に倒れこむ。
「待ちなさい・・・!待って!!」
それでも、すぐそばに立っているマリーカや、階段の下までやってきているマリーベルとリドール・ナイツたちに構わず、ナナリーはルルーシュに向かって手を伸ばした。
ルルーシュは階段を何段か下ってから、一度だけその姿を振り返った。マリーカとリーライナもナナリーを見やった。ルルーシュはもちろん、マリーカとリーライナのその瞳は、冷え冷えとしている。
そしてルルーシュは前へと向き直った後、先に出ていったライと第零騎士団の後を追うかのように、艦内庭園の出入り口のほうへと向かっていく。もそれに続いた。
「お兄さまは・・・悪魔ですっ!!卑怯で、卑劣で・・・っ」
転んだまま、ナナリーが叫んでくる。ルルーシュ、マリーカ、リーライナたちは何も言わず、この場を共犯者の魔女ともうひとりの妹、そしてその親衛隊に任せて、ゆっくりと去っていく。
そしてマリーベルとリドール・ナイツに兄の姿を隠されたまま、ナナリーは開いたばかりの瞳に涙を浮かべ、そのまま顔を伏せた。
「なんて・・・っ、なんてひどい、っ・・・!!」
開いたばかりの瞳に涙を浮かべ、ナナリーが階段に顔を伏せた時、マリーベルがスッと右手をかざした。それに合わせてリドール・ナイツの2人がナナリーへと駆け寄り、両脇をそれぞれ掴んで引っ張り起こし、強引に立たせる。
無理矢理強引に立たされ、そして人力で磔にさせられたナナリーは、目に浮かべた涙を溢れさせながらマリーベルを見据える。
「そこまでにしておきなさい、ナナリー・ヴィ・ブリタニア。悲劇のヒロインを演じるのも見苦しいだけよ」
涙を滲ませて睨みつけてくるナナリー。その時、リドール・ナイツのふたりがこの場には場違いな、ティーポットとカップ、ティーセットをそれぞれ載せたお盆を手にしてやってきた。
マリーベルはティーポットとカップを載せたお盆から、カップを手に取り、その中に注がれたルビー色の紅茶を少し啜った。
「シャルル・ジ・ブリタニアも好きだった紅茶よ。どう? 最期の一杯に味わわないかしら」
その紅玉色の紅茶の入ったカップを勧めるように、ナナリーの顔に近づけてくるマリーベル。それにナナリーは、涙をさらに瞳に滲ませてマリーベルを睨みつけた。
「・・・皇帝気取りなのですか?」
それに対するマリーベルの答えは、そのカップの中に半分ほど残った紅茶をゆっくりと飲み干し、それから煙草の煙でも吐くかのようにフーッととナナリー目掛けて吹き付けただけだった。
そのマリーベルの吐息を、毒気でも浴びたかのようにナナリーは咽せ、咳き込んだ。
「ダモクレスは憎しみの象徴となる。皆が明日を迎えられる為に憎しみを集める・・・ね。なんとも素晴らしく情熱的で感動的でな演説なのかしら」
マリーベルがお盆を持ったふたりのリドール・ナイツのところへ戻ると、別のリドール・ナイツがティーポットを持って、おかわりを注ぐようにカップに紅茶を注いだ。
「それでこそあなたというものよ、ナナリー。それがあなたという人間の在り方であり、正しさというもの・・・だけど」
マリーベルはそのおかわりが注がれた紅茶のカップを手に、ナナリーのところまで戻る。
そしてマリーベルは、ナナリーと、カップに注がれた紅茶を交互に見やってから、
「わたくしもこれはもちろん、その青臭い正しさとも今日ここまでよ」
そう冷たく言い放ってから、マリーベルは紅茶をカップごとナナリー目掛けて放り投げた。
出来立ての熱い紅茶を真っ向から浴びせられ、さらにカップも一緒にぶつけられて、ナナリーは痛みと熱さに顔を顰めた。しかし、顔を顰める暇も与えないかのように、2人の会話をそれまで黙って聞いていたC.C.が会話に入り込みナナリーに話しかける。
「優しい世界、か。お前のいう『優しさ』とはどういうものなんだ?ナナリー」
かつて兄と暮らしていたクラブハウスで出会った不思議な女性。
兄の友人──恋人ではないかとも思っていた彼女。
当時もその態度はそっけないものだったが今は、当時のように声だけしか聞こえなかったとしてもわかっただろうと思うほど、はっきりナナリーを責める声音があったことに困惑しながらもナナリーは答えを返そうとしたがそれよりも先にC.C.は言葉を続けた。
「お兄様と二人でいられればそれだけで良かった。ダモクレスでお前はそうルルーシュに言ったそうだな」
「・・・ええ、そうです。私の望む優しい世界は、お兄様と二人でいること、ただそれだけだったんです!他には何もいらなかったのに・・・どうしてお兄様は、それ以外を求めるようになってしまったのですか!?誰かに優しくないことなんて、誰かを犠牲にすることなんて、私は望んでいなかったのに・・・っ」
「随分と強欲な言い様だな。あいつが比喩ではなく我が身を犠牲にして成り立っていたものは、お前にとってただそれだけでしかなかったのか」
「え?」
もしもルルーシュがナナリーと暮らす、ただそれだけで満足して、現実に抗うことをしなかったなら。
幼いうちにどちらか、あるいは両方が、生きることすらできなかっただろう。
生き延びても、アッシュフォードの保護下に隠れていても、老齢のルーベンが死去して貴族として返り咲くことを望んでいたミレイの両親がアッシュフォード家を継げば、今までの保護の代価を皇子女の復権と政略への利用という形で返すことを迫られるか、また何れ身元が発覚して政略の餌食か、浚われるか殺されるかするリスクは常にあった。
恐らく、あのままルルーシュがアッシュフォードでのナナリーと二人の暮らしに満足して、他に何も求めなかったならば、二人の末路はルルーシュの想像通りの暗いものになっていただろう。
アッシュフォードでの生活も、ルルーシュにとってはギアスを得る前から反逆の計画を立てていたように、ずっとリスクを伴いタイムリミットのあったものと認識していたのに、ナナリーにとっては危機感もなく、何時までも続くはずのものだった。
ルルーシュは自分が利用され殺されることを恐れるだけではなくナナリーの身を案じていたのに、ナナリーは兄がそうされることを恐れることもなく、ただ兄と二人で暮らすことを望んでいた。
けれどルルーシュに暗殺に怯え続ける未来が望みだったのかと問われた時も、兄と二人で暮らせればそれだけで良かったと答えたナナリーは、暗殺に怯えながら二人で暮らすことと、その先に二人とも暗殺される未来が待ち受けているリスクとが結びついてもいなかった。
当時の自分と兄が、そのままでいても明日を迎えられると信じられるほど安穏とした環境になかったことを、ナナリーはわかっていなかった。
「お前には、分からないのだろうな・・・。お前を飢えさせないために自分は草を食っていたのだって、万人に『優しい』手段ではなかったさ。ルルーシュ自身が代わりに飢え、草を食み、ルルーシュは自分自身に優しくしない代わりに作った優しさを、お前に与えていた。お前にとっての優しい世界は昔から、ルルーシュの、他者の犠牲の上に成り立っていたもので、知らずともお前は、誰かに優しくない代わりの優しさを受け取ってきたんだよ」
ずっと兄に守られて生きてきたと口ではいいながら、それがどういうことなのか、ナナリーは深く考えたことがなかった。
いつもいつも、ルルーシュもユフィにもシュナイゼルにもスザクにもライにも、口ではわかったようなことを言いながら、わかってはいなかった。
もう目を背けてはいられないと眼を開いたその時にも、自分も兄と同じように人殺しの顔をしているのだろうとまるで罪の自覚があるようなことを言いながらも、ダモクレスが憎しみの象徴になるとまるで罪を背負う覚悟があるかのような顔でルルーシュに語った時も、自分の罪を、出した犠牲をわかっていなかった。
「どれほど胸の内が優しさに満ち溢れていようと、現実に形にすればそれは有限になる。飢える人間が2人いる時に優しさから食事を与えようとしても、2人分の食事に足る量を確保できなかった場合、たったひとりに全て与えれば残りの1人には与えられず、2人で分ければ1人の分は少なくなる。物事には限界が、時には妨害するものがあり、何かを成すなら相応の代価が必要になる。ましてあの頃のルルーシュは、親の庇護も得られず成熟した肉体も持たない、幼い子供の身に過ぎなかった。自己の保身と他者への献身を両立するには、あいつをお前を取り巻く世界はあまりに残酷だったんだよ。お姫様?その限られたどうやっても誰かに残酷な選択肢の中から、ルルーシュはお前に優しく自分には優しくない道を選んだ。そしてお前に罪悪感を持たせないために、隠して優しい嘘をついてきたんだ。それがルルーシュのお前への優しさで、ルルーシュは最初から嘘と犠牲の上の優しさしかお前にあげられなかったんだ」
ルルーシュやナナリーのように皇室から捨てられることなく皇女として育ち、また有力皇族の母と高い地位と継承権を持つコーネリアを同母姉に持ちその庇護の元にいたユフィは、ナナリー以上のまさにお姫様育ちだったが、代価の必要性は理解していた。
シンジュクの虐殺の後などの目を背けたいだろう世界の自国の残酷さを知る努力をし、一兵卒でイレブンのスザクから見た世界を聞き、行政特区日本設立のために皇位継承権という皇族にとって多大な代価を支払った。
本当に大切なものは何も捨ててはないと言いつつも、それはユフィ自身を守る術のひとつを犠牲にした上で作り出した他者への優しさだった。
ルルーシュとナナリーへの優しさを現実に形作るために、ユフィは自分自身へは優しくない方法をとった。
特区にはいくつもの問題点があり、皇位継承権の放棄も特区を守る術としては不充分でリスクもあり、ルルーシュが邪魔せずとも失敗する可能性もあった。
ユフィにとってはルルーシュのためでもルルーシュの望んでいたものとも違い、黒の騎士団の存在意義を失わせるという形で窮地に陥りもしたというすれ違いもあった。
それでもユフィは、何のリスクも負わず失わずに上から安穏と見おろしていたわけではなかった。
だからこそ行政特区構想を夢物語だと考え失敗させようとしたルルーシュは、一時は愛情の裏返しの激しい憎悪を向けながらも、全てを知って和解し手を取り合おうとした。
不充分ではあっても、甘く未熟な所はあっても、ユフィは優しさの有限さや、代価の上に成り立つ優しさというものを理解し、自己を犠牲にして実行した。
ユフィとナナリーは同じように優しい世界を望み、エリア11の総督・副総督として行政特区日本を作り、一見似ているようだったが、その心の根は全く違っていた。
そのユフィの行政特区と皇位継承権返上は、ナナリーの『お兄様と一緒にいられれば、他に何もいらない』という願いを汲んでの決心だったというのに、ナナリーときたらこれだ。
「何時私がそんなことを頼みましたか!?私はお兄様にそこまでして食事が欲しいと強請ったことなんてありませんっ・・・。そんなに辛かったなら、私は食事など食べなくたって良かったんです!」
「お前自身が先程、兄と二人で暮らすのが望みだと言っただろう」
「ええ、そうです!私は貧しくとも、飢えていても、お兄様といられればそれだけで・・・」
「食事をしなければ人は死ぬぞ。死ななくても充分に足りず、栄養をとれなければ身体は弱る。ああ、もしかするとルルーシュがああも体力がないのは、あの頃の栄養失調も一因かも知れんな。だがルルーシュよりもさらに幼かったお前であれば、より飢えの危険は大きかっただろう」
幼い頃から奴隷として虐げられ流浪していたこともあるC.C.は、飢えの辛苦を骨身に染みて知っていた。
長い生の中で、戦争や災害で衣食住を失い、飢えや寒さに苛まれた人間の末路がどんなものか、何度も何度も見てきた。
きっとルルーシュも、あの地獄の中で幾度も見て、経験もしてきたことだろう。
だがこのお姫様は、飢えるということがどういうことなのか、その目で見たこと、経験したことがないだけではなく。
「・・・飢えに苦しむと言う感覚など、人が生きるために必要なものを失うのがどういうことかなど、お前には想像もつかんのだろうな。いや、想像しようとしたことすらないのか。──だからペンドラゴンを奪い返すためとはいえあんな虐殺行為を見逃したのだろうな」
今もルルーシュは、兄の苦労への想像が足りなかったことについては、ナナリーを責めてはいないだろう。
だが、ナナリーは皇帝という立場を自ら望みながら、その下にいる人々に対しても、考えるべきことを考えなかった。
そして、そのために苦しんだ莫大な人々や、その家族や親しい人々は、ナナリーの無知を、無思慮を、その結果を許しはしない。
「あ、あれはお兄様を降伏させるためです!シュナイゼル兄様が、お兄様にフレイヤの威力を見せ付ければ降伏するだろうと・・・ペンドラゴンを襲撃すると言ってもその前に住民には避難誘導をするから最小限の犠牲で済むからと、そう仰ったから!」
「避難して、それでどうなる?」
「え・・・」
ナナリーの認識ではペンドラゴンの住民はシュナイゼル連合軍による襲撃が終われれば、帝都に戻り平穏無事に暮らしていけるだろうと考えていた。
過去のナンバーズたちへの侵略行為とは異なり住む場所をしっかりと返してあげるのだと、優しさのつもりでさえいた。
だから避難誘導をしたと言われればそれ以上問うこともなく口を閉ざした。
具体的な避難の方法も、被害の規模も、避難した後のことも、シュナイゼルに尋ねすらしなかった。
けれど突然に故郷が火に焼かれ軍人だけでなく逃げきれなかった人々による死体の山が至る所に散乱した瓦礫の山となっているそんな場所に戻らされたとてどうやって生きていくというのな・・・。
いくらかは親族や友人知人を頼れるかもしれない、いくらかは助けの手も延ばされるかもしれない、いくらかは破壊されなかった場所で雨露を凌げるかもしれない。
けれど、世界の三分の一を支配する大帝国の帝都の全住民という大規模な地域の莫大な住民のうち、そんな未来を得られるのは一体どれだけになるだろう?
頼れるような親族や友人知人がいないもの、またペンドラゴンの襲撃によって親族たちを亡くしたか同様の苦境にある者には、頼る者とてない。
幾らかは助けの手があったとしても、莫大な人々に行き渡るはずもなく、元々が弱肉強食が国是で外国に比べれば福祉関係が未発達なブリタニアではそれも僅かになる。
自助努力にしても、突然に故郷から『避難』させられ、炎に焼かれた故郷と『最小限の犠牲』とやらを目撃した衝撃も冷めやらぬうちから、荷作りの時間もろくになく、証明書類などを持ち出せなければ身元や財産の証明も危なげに、どれほどのことができるのだろう。
ペンドラゴンがインフラや職場ごと住居ごと、土地ごと破壊されてしまっては帰還しての元通りの生活を送ることは将来に渡っても長く望めないだろうことは明らかで。
例え全員が即座に立ち直ってペンドラゴンの外で精力的に職を探しても、やはり突然沸いた莫大な難民がありつける職は限られている。
しかもトウキョウ租界へのフレイヤ投下以降の植民エリアでは、ナンバーズの蜂起への恐れ以上に、ナンバーズもブリタニア人も無差別に広範囲を消滅させるフレイヤ投下による大量虐殺の方が恐れられていた。
そして先日のトウキョウ租界で大量に発生した難民たちのために大量の物資を輸送したばかりな上にシュナイゼルたちの決戦に備えて各地の基地に食料品や衣料品などの物資を多く輸送したことでペンドラゴンの物資はかなり減っており、さらにペンドラゴン襲撃の際に火事場泥棒を行う素行の悪い軍人たちもかなりおりの僅かばかり残った物資では生き残った住民たちに対して十分いき渡る量があるわけもなかった・・・。
その上に国の頂点にいる皇帝が、ナナリーの認識ではそれらを阻害しこそすれ助けにはならない『悪』なのだから。
「あの頃のお前たちにとって、ルルーシュは悪逆皇帝だったのだろう。帝都で苦しむ住民の救助を、『悪逆皇帝ルルーシュ』がすると思っていたのか? そして帝都を支配すればルルーシュの出鼻を挫き戦争を起こさせられないとでも思ったのだろう。だが、大帝国の帝都たるペンドラゴンを襲撃すれば発生する被害が莫大なものになることくらいは想像できただろう?」
もちろん本当にペンドラゴンの住民が避難していればルルーシュはすぐに救助させ、飢え凍えることのないよう衣食住を与え、救助や看護施設の増設などを行っただろう。
戦争で全てを失った者の行く末の苛酷さは、ルルーシュ自身が直に見聞きし、また身に染みて知ってもいる。
世界の憎しみを集めるために悪逆皇帝を演じようとはしていたが、そのために一億近くの民を見殺しになどしていたら本末転倒だ。
だが、それはあくまでルルーシュの本質やゼロレクイエム計画を理解しているからこそ分かることで。
ミレイやリヴァルならともかく、ルルーシュを大量破壊兵器を帝都に投下してまで止めなければならないほどの『悪』と断じていたナナリーが、ルルーシュの真意を察しペンドラゴンの難民を助けると期待していたとは思い難く、またルルーシュと対面した時にも、ナナリーはペンドラゴンの人々の救助のことなど一言もルルーシュに問わなかった。
そして、ルルーシュが助けると思わないのに、自分たちも助けの手を伸ばすわけでもなく、シュナイゼルに確認するでも求めるでもなかったなら、ナナリーはペンドラゴンの人々を、住む街を破壊し、生きるために必要な多くのものを奪い、新たに与えることもせず放置した、見捨てたと、見殺しにしたと、そうとられても仕方がなかった。
「民間人の犠牲も関係なしに身勝手に殺戮行為が行われた後の帝都に、戻って生活などできるはずがない。突然の避難では、逃げられたとしても準備する時間がなくろくに物を持ちだせない。さて、ペンドラゴンの住民は、何処でどうやってその日の居場所や糧を得ればいいんだろうな。言っておくが自由意思で財産を持って移り住み、仕事や住居を探せるような移住とは違うぞ?一度に出た莫大な、その日の食べるものや住む所すらろくにない難民だ。──さて、どうやって彼らは『死なずに』生き延びることができるのだろうな?」
世界は優しく変えられると総督の地位を望んだ彼女は、その世界の人々の、自分が治める民の生活を、衣食住という人が生きるための根本すらも、理解してはいなかった。
変えようとしていた世界の残酷さも、優しさを形として他者に与えることの困難さも代価も。
『みんなが明日を迎えるためにも』と語りながら、人が明日を生きるために何が必要なのかを考えず、自分がそれを奪った自覚もなかった。
そして食べるものも着るものも住む所も、庇護も愛情も、兄やアッシュフォードから与えられるものを、深く考えず享受しこの先も続くものと思っていた彼女は、それを得ることも、誰かが誰かに与えることも、甘く容易いものとしてしか見ていなかった。
「お前は先程ルルーシュの目を見ながら自分も同じような人殺しの目をしていると言っていたな・・・」
C.C.はゆっくりと歩きナナリーの前で立ち止まると乱暴にその髪を掴み顔を無理やりあげさせる。
「ふざけるなよ小娘。お前如きがあいつのことを語るな」
「・・・っ!!」
C.C.の怒気に圧倒されたナナリーは返す言葉が何も浮かばず下唇を噛むことしか出来ず涙で潤んだ目でC.C.を見ることしかなかった。
ペンドラゴンでの虐殺を理解していなかったこともそうだが、今この時フレイヤによって既に何千人もの人が死んでいるというのにそれに対しての罪の意識を持っていないナナリーが、自身の行動によって殺した敵だけでなく部下たちや巻き込まれてしまった民間人など多くの人間たちを殺した罪という名の十字架を己の人生をかけて背負い続けることを覚悟したルルーシュと同じだなんてC.C.は決して認められなかった。
「ルルーシュの奴は敵になったとしても妹であるお前には甘いから私が言ってやる・・・。生きるために誰かから生命も含めた何かを奪う・・・それはどこの世界の、誰でもやっていることだ!!」
C.C.は普段の気だるげな表情とは打って変わっての迫力ある姿に圧倒されたナナリーは口を噤むしかなかった。それを無視してC.C.は容赦なく吐き捨てる。
「世間知らずのクソガキにも優しく教えてやる。いやルルーシュだけでなくどこの誰でも同じことだ。わからないのであれば何度でも言ってやる・・・。生きるために人間は他の命を殺して喰らう。そうしないと生きていくことはできない。あなたがどう否定し、どう目を逸らそうが、これが真理というもの。そして何かを守るために人間は多くを生かすために少を殺すか、その少ない大切な人を守るために多くの知らない人を切り捨てるかと苦悩し葛藤し、その末に出されたものが残酷だったりもする。だが、それはどうしようもないこと。人間とはそういう生き物でしかない」
「・・・それでも、それでも・・・人を殺すのはっ・・・」
短い時間で色々とありすぎたことで頭が追いつかず意識を朦朧とさせられ、さらに真綿で首を絞めるが如くの優しい言葉の責めに戦意を喪失しかけながらも、ナナリーは縋るようにして抗弁してきた。
しかし、その健気な抗弁もC.C.には届かず、むしろ蟷螂の斧に等しいものだった。
「それならば、お前は自分が死にそうな目に遭っても現実に抗うのはやめろ。そんなに他の命を奪うのが嫌だ、怖いというのなら黙って死を受け入れて。何もせずに死んでいけばいい」
「なっ・・・!?」
静かだが苛烈極まりないC.C.の言葉に、ナナリーは痛みと恐怖を忘れて顔を上げた。
「雪山に遭難しても、船が沈没しても、そして崖から落ちそうになっても、他人を蹴落としてでも他人の肉を食らってでも生きようとしないで。そのまま大人しく虫ケラのように死ね」
「そんなっ・・・なんて、酷い!!何もせずに死んでいくなんて、そんなのっ、出来ません!!」
悲鳴をあげるナナリーだが、C.C.はそれでも容赦はしない。
「あぁ確かに酷いな。とても残酷だ。だが、それと同じことをあなたはアイツに言ったようなものだ。生き延びるためでも人を殺すな。何もせずに死ねと。多くの人を助けるためであっても無辜の民の命を奪っている連中を殺さずに、連中が死んでいくのをただ黙って見ていろと。何もせずに助けるな、死なせろと、お前はアイツにそう言ったようなものだ。生きるためや助けるための殺人は否定するくせに、ダモクレスに憎しみを集めて明日を迎えるための殺人は肯定するとでも? ああ、殺人ではなくて、人身御供という名の虐殺だな」
「で、ですが、ギアスは認めてはいけないのです・・・!ユフィ姉さまを滅茶苦茶にした、卑劣で卑怯で非道で最低な力で・・・」
「だったら、お前が落としたフレイヤは?フレイヤとてギアスと同じでしょう。フレイヤは認めるくせにギアスは認めない?とんだ
「・・・そ、それは・・・」
C.C.の静かで容赦のない糾弾に、ナナリーはさらに精神を真綿で絞められ、反論する気力を削がれていく。
「アイツもライもマリーベルもルルーシュの元に揃った連中は全てを覚悟した上でアイツの血塗られた道を共に進む覚悟を決めている。その過程でどれだけの死体の山が築かれようとその全ての罪を背負いこの争いで満ちた世界を変えるために行動する。そのためなら家族だろうと容赦なく切り捨てる」
ナナリーの髪を掴んでいた手を離し項垂れて嗚咽を漏らすナナリーを見下しながら容赦ない言葉を吐き捨てるC.C.はもう用はないと言いたげにその場から離れていく。
ナナリーは薄れゆく意識の中でC.C.の言葉を頭の中で反芻しながら考える。
やっと見えるようになった世界は、現実は、かつて兄が語った優しい予想とは違い、あまりにも優しくない、ナナリーに冷たく無情なものだった。それはナナリー自身の、兄への、民への、他人への無情さ冷酷さの結果が跳ね返った結果でもあった。
それを自覚してしまうと、ナナリーはもう、反論する気力も湧かないはおろか、現実を直視することに耐えられなかった。視力を取り戻したのに閉ざされている眼から、一筋の涙が零れ落ちる。
そんな中、リドール・ナイツのひとりが駆け寄り、マリーベルの耳元で何かの報告をした。その報告に頷いたマリーベルは、ナナリーをゆっくりと振り返った。
「ナナリー・・・舞台の準備が整ったようよ。そしてZEXISが来てくれたことで、役者もいい感じに揃ったわ」
それから両手を大きく宙へと広げ、ミュージカルスターのように朗々と、高らかに声を張った。
「見届けなさい。陛下とわたくしたちの勝利────そして新たな世界の歴史の始まりを!!!」
C.C.がナナリーに対して厳しい言葉を投げかけ終えた頃、格納庫へと移動していたライはちょうどダモクレスからの脱出を図ろうとしていたラウンズの親衛隊を発見しそのまま連れていた第零騎士団の兵士たちと共にその場にいるラウンズの直属の兵士たちと整備士たちを殺していく。そのまま
輸送機に移動させている生き残ったラウンズたちも殺そうとしたところで傷ついた身体を奮い立たせ立ち上がったビスマルク、ジノ、スザクの3人がライに斬りかかった。
「おや、まだ剣を振るくらいの体力は残っていたようですね。まぁこちらとしても身動きの取れない人間の首を切り落とすよりも気が楽でいいですけどね」
「随分と舐めた態度を取っているな・・・!!ナイトメアでの戦闘では負けたが剣の勝負ならば・・・!!」
「勝てる、と本気で思いますか?」
「っ!!舐めるな!!」
先程のナイトメア戦で負傷した傷の痛みから顔を歪ませるがそれを無視して大剣を振るいライに斬りかかる。それをライは両手に握っている2振りのロングソードを交差させて受け止め、そのままがら空きの胴体を蹴り飛ばす。
傷を蹴られたことで包帯に血が滲みビスマルクはより顔を苦痛で歪ませるがライは容赦なくビスマルクの首にロングソードを振り落とす。
その刃がビスマルクの首に当たるよりも先に二人の間に割り込んだジノがハルバードの槍先でライのロングソードを弾き、スザクがジャンプしながら体重を載せた騎士剣による一撃をライに叩き込もうとする。
その一撃が当たるよりも先にライは両手に持っていたロングソードを捨てその場から後方にジャンプして回避。
武器を失った今がチャンスと判断したスザクとジノはすぐさまライに接近しハルバードと騎士剣を振るうが、その一撃が迫るよりも先に地面に落ちているハルバードを足で蹴り上げそのまま右手で掴むと力任せに振り回しジノとスザクの攻撃を弾く。
「「なっ・・・!?」」
「この程度で驚いてどうする。敵は止まってなどくれないぞ」
攻撃を防がれたことに驚愕するスザクとジノに対して容赦の無い言葉をかけながらライは今の防御で破損したハルバードを捨て、代わりに後方で捕らえた一部の兵士たちの監視をしている第零騎士団の兵士から投げ渡された
スザクとジノは咄嗟にその手に持っている武器で防御するが、勢いよく弾き飛ばされそのまま勢いよく背中を壁に叩きつけられガハッ!!と息を吐きながらそのまま地面に倒れる。
ライはそのまま2人の首をはねようと処刑人の剣を捨て代わりに日本刀と小太刀をその手に握りスザクとジノの元に歩こうとしたところでビスマルクが再び襲いかかってきたためにライは紙一重で大剣の一撃をかわしながらビスマルクの腕を斬る。
「ナイトオブワンの意地、とでも言えばいいのかな?だけどその程度の実力で勝てると本気で思っているとしたら笑えない冗談だ」
「抜かせ・・・!!私こそシャルル皇帝の最強の剣・・・!!貴様ごとき青二才の小僧に負けるなど有り得ぬっ!!」
「笑わせるな。自らのことしか考えなかった愚かな皇帝の錆び付いた剣如きが吠えるな」
ビスマルクの大剣とライの日本刀と小太刀による二刀流のぶつかり合いは並の兵士では目で追うこともできないほど激しくそれを見ているその場の全員が不謹慎ながらも2人の剣戟に魅入っていた。
────故に気付けなかった。1人の少女が誰にも気付かれずに動いてたことを、そしてその少女が行った行動をきっかけにこのダモクレスにて悲劇が引き起こされ多くの人間が絶望に落ちてしまうことを・・・
「ぬうぅ・・・っ!?」
「終わりだ
何度も同じ箇所にダメージを与えられたことで真っ二つに折れた大剣を握りしめながらビスマルクは無念の表情を浮かべるがそれに対してライは冷徹な表情で容赦なくビスマルクの首を切り落とすために日本刀を振るおうとしたその瞬間、それは起こった。
「「────────っ!?」」
「「「「「ライ卿!?」」」」」
「「ヴァルトシュタイン卿!?」」
誰もが何が起こったのか分からなかった。しかし気が着いた瞬間、ビスマルクの身体を槍が貫抜きビスマルクの首を切り落とすために接近していたライの身体を貫く串刺し状態となっていた。
第零騎士団とラウンズの兵士たちは2人を救うために2人のそばに近寄ろうとした瞬間、どこからともなく現れた仮面の兵士たちが斬りかかって来たために乱闘が始まってしまい、瀕死となっている2人に近づけないでいた。
「──────ふふっ。トドメの一撃の瞬間はやっぱり無防備になってくれたわね」
優雅に歩きながら瀕死になっているビスマルクとライに近づいている少女──アーニャは歳不相応の妖艶な笑みを浮かべながら両手に騎士剣を構えていた。気絶していたはずのアーニャが目覚めていることにも驚きだがそれよりも仲間であるビスマルクごと攻撃した事実にスザクとジノは目を見開くことしかできなかった。
「あ、アーニャ・・・何のつもりだ・・・?」
砕けた大剣を支えにして立ち上がろうとするビスマルクはアーニャを睨みながらその意図を聞くとアーニャは笑みを浮かべながら答えた。
「ごめんなさいねビスマルク。本来の私なら問題ないのだけど流石にこの子の未熟な身体だとあの子の騎士を相手にするのは厳しいからあなたを利用させてもらったわ。だけど構わないわよね?だって死んでもみんなCの世界で再会できるんだから」
「な・・・!?」
ビスマルクはアーニャの言葉に頭の中が真っ白になってしまった。ラウンズでも自分しか知らないはずのCの世界に関することを知っていることもだが、その口調が敬愛するシャルル皇帝の最愛の理解者にして自身もまた恋慕の感情を向けていた亡き女性に似ているためビスマルクは困惑してしまった。
しかし、その中でライだけは今のセリフでアーニャの正体を理解し身体に刺さっている槍を無理やり抜き、傷跡から血を垂れ流しながらもゆっくりと立ち上がりアーニャを睨む。
「まさかCの世界で消滅せずアーニャの身体に寄生して生き残っていたとはな──っ!!」
「あら?そんな傷ついた身体でまだ戦う気?」
「黙れっ!!ルルーシュの想いを踏み躙った貴様の生など俺は決して認めない!!死人はあの世で彷徨っていろ、マリアンヌ!!」
「「「なっ──!?」」」
ライが叫んだ名を聞いた瞬間、その場にいる全員が目を見開いて驚愕した。
マリアンヌ、そしてルルーシュの関係者であることからそれに該当する人物はルルーシュとナナリーの母親にしてシャルル・ジ・ブリタニアの妻であるマリアンヌ・ヴィ・ブリタニアただ1人しかいないからだ。
「まったく素直に死んでいれば痛い目に合わずに済んだのに・・・。まぁいいわ、C.C.の確保のための時間稼ぎついでにあの子の騎士の1人であるあなたもここで始末させてもらおうかしら」
マリアンヌは視線だけで人を殺せそうなほど強く睨んでくるライに対して恐れもせず騎士剣を構えるとそのままライに斬りかかる。ライはそれを日本刀と小太刀で受け流そうとするも血を流しすぎたことで体力が低下してしまい受け流しきれずバランスを崩し肩を斬られ血を流す。
「狙いはC.C.か・・・!!各地にあるCの世界に繋がる門は全て破壊した!!Cの世界にアクセスできないというのに何が目的だ!!」
「いいえ、まだ一つだけ門が残っているのよ。私の協力者の1人がC.C.を連れてくれば門を使わせてくれるって条件を貰ったのよ」
ライはマリアンヌと斬り結びあいながら情報を引き出そうとするが、多量の出血によって体力が低下しているライでは致命傷を避けるので手一杯になってしまいマリアンヌの猛攻を避けるか受け流すことしか出来なかった。
「協力者だと・・・!?まだギアスの関係者が生き残っていたというのか!!」
「えぇ遠い昔に響団から別れた分派の連中が集まってできた組織だけどかなり協力的だわ。それと目的はC.C.の身柄だけじゃないわ」
「なに・・・?」
数え切れない切り傷によって血で染まった騎士服の裾で額から流れる血を拭いながら余裕の表情を浮かべるマリアンヌを睨むライ。それをマリアンヌは愉快そうな表情を浮かべながらもう1つの目的を語る。
「────完全にギアスを支配した人間。ルルーシュの死体よ」
「────────!?」
笑顔で語るマリアンヌの言葉にライだけでなくその場にいる全員が一瞬理解できずただただ戦慄してしまった。そんなこともお構い無しにマリアンヌは話を続ける。
「あの子のせいで今のCの世界は酷く乱れちゃってるのよ。それを何とかするためにはあの子の力が必要なのよ」
「黙れ・・・」
「別に死体じゃなくてもいいんだけどあの子のせいでこんな面倒臭いことになっちゃったからその責任を取ってもらうのとお仕置きもかねて、ね」
「黙れ・・・っ!!」
「でも問題ないわよね?だって私たちの悲願が達成出来れば死んでも再会してまた家族一緒になれるんだから────」
「黙れって言ってんだよこのクソアマっ!!」
マリアンヌの身勝手な言い分を前に怒りで頭に血が上り痛みも忘れて力任せにマリアンヌに斬りかかりそのまま騎士剣を砕く。マリアンヌは驚いた表情を浮かべつつもすぐに床に落ちている別の騎士剣を手に取ってライの追撃を防ぐ。だがそれに対してライは自分の身体がどうなろうが知ったことか言わんばかりに苛烈に攻撃を続ける。
「お前の思い通りなど決してさせない!!貴様のような腐りきった生ゴミ以下のクズはこの場で殺処分してやる!!」
「あらあら乱暴ね。だけど私ばかりに集中していいのかしら?」
「何を────」
「私だけが刺客だと本当に思ってる?」
マリアンヌのその言葉にライは最悪の展開が頭によぎった。今のルルーシュの護衛はマリーカとリーライナの2人だけ。
深淵騎士団のほとんどの団員たちはほかの戦場で戦っているシュナイゼル連合軍の部隊やZEXIS・ドライクロイツたちがダモクレス周辺に次々と迫ってきたことからその対処のために出撃したためにルルーシュの守りが手薄になっているこの状況はC.C.とルルーシュを狙う敵にとって絶好の機会であることに気づいてしまったライは誰かを向かわせようと声をあげようとしたが、ここにいる全員が突如現れた仮面の兵士たちに足止めされていることでそれも不可能だった。
(ルルーシュ────────!!)
ライはルルーシュの安否を確認するためにも早急に目の前のマリアンヌを倒さなくてはと焦りと不安に駆られていた。そして最悪なことにその不安が的中してしまうことをこの後ライは思い知ることになるのだった・・・。
あとがき
さてナナリーがC.C.によってメンタルフルボッコされたかと思えば最後にマリアンヌの登場という不安を駆られる展開が始まってしまいました。ここからずっとやりたかった展開を始められると思うと楽しみに思いつつ受け入れられるのかなという不安があります・・・。まぁやりたいようにやっていきたいと思いますので暖かい目で見ていってください。次回からスパロボともギアスとも異なるオリジナル展開で話を進めていくためどうかよろしくお願いします。