このお話は……Pastel*Palettes(パステルパレット)のベーシストであり、二つ名に『微笑みの鉄仮面』を冠する少女──白鷺(しらさぎ) 千聖(ちさと)の誕生日をお祝いするべく描かれた物語です。


 設定などはメイン作品に準じていますが、時系列は現在『バンドリ!ガールズバンドパーティー!』にて進行中の時間軸に合わせておりますので、そこまで違和感無く読めると思います。

 最後にメイン作品のリンクを掲載して置きますので、此方を合わせて読んで貰えると幸いです。


【メイン作品】『新日常はパステルカラーの病みと共に(Rev.)』
【作品リンク】https://syosetu.org/novel/249478/

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 皆様、おはこんばんにちは。

 何故か自分の誕生日の日(・・・・・・・・)に千聖さんの生誕祭記念回を投稿している咲野です(大遅刻やらかして、誠に申し訳ありませんでしたぁぁぁぁッッッッッッッッッッ!!!!!!!!)。


 まあ、この場で言いたい事はある程度あらすじで語ってしまってるので……ここはもう簡潔にしようと思います。


 それでは、本編スタートです!

 最後までごゆっくりお楽しみ下さいませ。


私と貴方の現在(いま)、そして未来(これから)を。

「……いただきます」

 

 

 そう言って僕は目の前の包みを開けて、右手に箸箱から取り出したお箸を持って、蓋を取ってお昼を食べる事にした。一日過ごす中での気が休まる一時……それが、こう言う昼食の時だったりする。尤も、それは高校の時ならガヤガヤ騒がしく賑やかな中で食べていたのだろうが。

 

 

 何でこう言ったかと言えば、数日前から晴れて大学生になったからである。高校生の頃の学友とは殆ど離れてしまい、完全に新しい環境でのスタートとなったのだ。

 

 慣れるまでには時間こそかかるが、学ぶ事も多いと踏んでいる為、僕はこの洸星大学へと進学した。もちろん、学部は文学部を専攻したのだが。

 

 

「おっ、今日も一人寂しくお昼か?」

「煩いな。事情はわかってんでしょ……あまり話しかけないでくれるかな」

「ツレねぇ事言うなって。一緒に食おうぜ」

「……好きにしたら良いよ」

 

 

 そして僕がお昼ご飯を食べてる最中に、声を掛けて来る人物が居た。彼自身は専攻している学部こそ違うが、時折こう言う風に声をかけて来ては、一緒に休み時間を過ごしている。よくもまあこんな変わった人物とお昼を共にしたいと思ったものだ、と心の中で思う事になった。

 

 

「それでさ、盛谷」

「ん?」

「これは誰にも言わねーけど、お前が白鷺 千聖と付き合ってるって噂……あれってガチバナなのか?」

「……だったら何? まさか僕を利用して彼女に近づくつもりかな、隆太」

「別にそんなこたァ考えてねぇよ。お前が誰と付き合おうと自由だし、俺にはいずれ最ッ高の彼女が出来るからな……勝者の余裕ってヤツよ」

 

 

 ……またコイツは直ぐ調子に乗る。

 

 先程絡んで来た人物……隆太──神崎 隆太は、法学部を専攻している僕と同じ一年生だ。曰く、大学にはスポーツ推薦で入学したとの事らしく、そんな人が法学部を専攻するとは到底思えなかったのが第一印象となっている。

 

 

 身体付きは程良く引き締まっており、単純な力比べをしたら確実に彼に軍配が上がるだろう。背も170代後半と高身長で、サークルは高校からの続投でラクビーに入っているとの事だ。

 

 ただ……そんな彼に対して1個だけ問題点を挙げるのであれば、それは直ぐに調子に乗ると言う点だろうか。今もこうして高笑いをしながらご飯を食べてるのがその証拠だ。何も勝負をする気は無いと言うのに、いつも元気そうで何よりだよ。

 

 

「それで……白鷺 千聖とはどこまで進んだんだよ」

「何? 藪から棒に」

「良いから教えろって。これは男同士でしか語れねぇ事もある、プライベートトークってヤツだな」

「アホらし。……ご馳走様でした」

 

 

 隆太の質問を右から左に流した僕は、使った箸を箸箱に入れて弁当の蓋を閉じ、手を合わせて食後の挨拶をした。隆太が何やら驚いているが、此方の事情に首を突っ込まれる言われは無い。

 

 

 そして次の講義が行われる部屋に行くと、僕は先程出していた弁当を取り出し、もう一度包みを開いてスマホで撮影を行なった。食べ終わったはずのお弁当を開いて何をするのか……そう思う人が多いだろうが、こうでもしないと納得しないのが、僕の彼女だったりする。

 

 その後撮影を終え、再び綺麗にそれを包んで、彼女のトークルームにそっと一言。

 

 

『今日も美味しかったよ。ご馳走様でした』

 

 

 そう打ち込んでスリープモードにしようとしたら、直ぐ様既読が着いて返信が返って来た。そこに記されていたのは。

 

 

『今日も確り完食してくれて嬉しいわ♪ また明日のお弁当も……いいえ、貴方の食べる物は余さず全部私が作ってあげるから、楽しみにしてて頂戴♪ それじゃあ、午後もお互いに頑張りましょう。放課後、四ツ葉女子大で待ってるわ♡』

 

 

 ……何ともまあ、人が聞いていて恥ずかしくなる言葉を平然と使えた物である。それは彼女の職業柄からそうなっている節こそあるんだろうけれど。

 

 そんな事を考えながら、僕は午後の講義を受ける事にしたのだった。1時限辺り90分と言う長い時間だが、これから先起こる事を考えれば、疲れなんてあっても無い様な物だけれど。

 

 

 

 

「それでは、本日の講義はここまで」

 

 

 午後の講義全てを終えた私は、先程まで机の上に出していたノートや参考書類等を鞄に直し込み、今居る教室を後にしたわ。高校から進学して大学に変わり、花音や颯樹とも離れ離れになったので、私としては少し心の内に不安を覗かせてしまう。

 

 

 この大学(四ツ葉)は女子大なのだし、颯樹とは当然離れ離れになってしまうわよね……と思っていた矢先、途端に彼の声が恋しくなってしまい、入学して直ぐの頃は事が終わる毎に彼に電話をかけて長話に付き合わせ、彩ちゃん達から心配される事も多かった。

 

 でも、それから数日が経つと慣れてしまう物。今では新しい環境にも少しずつ慣れ、講義も確り受講できてはいる。ただそれでも……。

 

 

「やっぱり、貴方が居ないと寂しいわ……」

 

 

 ……彼の事を、欲しがっている私が居る。

 

 たとえ大学生になったとしても、私の心は変わらずに彼の方を向いている。数ヶ月前のクリスマスの日の夜に『アイドルとして、女優として、広く世界を見たい』と言って、二人っきりの状況から告白までして、漸く受け入れて貰った……と言うのにも関わらず、私は今も変わらない。

 

 

「こんな所……もし颯樹に見られたら、さすがに私、失望されるわよね」

 

 

 そんな事は無い、とわかっているのに、心の中にある迷いが私の本音を否定した。もう彼とは随分と長い付き合いになるし、お互いの事を何もかも知り尽くしている……だからこそ、ずっと一緒にこれからも居続ける、と信じて疑わなかった。

 

 

 でも、今……こうして、私と颯樹は離れている。

 

 冬の終盤付近で入学試験を受けた大学が女子大か、国公立の共学か……たったそれだけの違いだけで。目指す物は同じのはずなのに、この気持ちを共に分かち合えないでいる。

 

 

「……恋は盲目、とはよく言ったものね。彼に受け入れて貰って、少し気分が舞い上がってたのかしら」

 

 

 ……こんなんじゃ、ダメよね。

 

 つい数時間前に送った颯樹へのメッセージが、途端に恥ずかしくなって来ちゃう。彼は今頃、私に会う為に頑張って講義を受けている真っ最中かもしれない……もし私より到着が早かったとしても、いつもの様に私をフォローしてくれるかもしれない。

 

 

 そんな事を考えていたら……今の私は、なんて情けないんだと思えてしまう。彩ちゃん達パスパレのメンバーに対しては普段から厳しい事を言っている私が、愛する颯樹の事になるとこうも弱くなる……その事実が腹立たしくて仕方が無い。

 

 

「……颯樹には申し訳ないけれど、今日は先に帰ってて貰おうかしら。少し気を落ち着かせる必要があるわ」

 

 

 そう思い立った私は、直ぐ様彼とのトークルームを開いてメッセージを送信しようとした。……すると。

 

 

「……!? こんな時に、誰!?」

「おぉっと……やあ、千聖。随分と落ち込んでいるみたいだが、何かあったのかい?」

「薫……。貴女には関係無いわ、放っておいて頂戴」

「そうしてツンケンする千聖も儚いね……。その様子から察するに、颯樹の事かい?」

 

 

 私は突然肩を叩かれる感覚を覚え、勢い良く後ろを振り返ったわ。そこに立っていたのは、私と颯樹の幼少期からの幼馴染である少女───瀬田 薫だった。昔は少し恥ずかしがり屋で可愛い一面もあったのだが、中学に上がってからは一気に変わった。

 

 

 鼻につく様なキザな言い回し、頼んでも居ないのに余計なお節介を焼きたがるこの性格と言い……歳を重ねるに連れて、薫の行動一つ一つに嫌気が差していた。

 

 幼少期の頃みたいに、少し恥ずかしがり屋だけど、素直で可愛いかおちゃんだったらまだしも……今私の傍に居るのは、もうあの頃の彼女じゃない。

 

 

「貴女に構っている時間は無いわ。用があるなら手短に」

「……すまない、もし私のせいで気分を悪くしたのなら潔く謝ろう。ただ、少し気になったんだ。私は颯樹の事も心配だが、千聖の事も心配なんだ……それは分かって欲しい」

「……ええ、お気遣いありがとう。私はもう行くわ」

 

 

 薫にそう素っ気無く返事をした私は、足早に大学の校舎を後にした。ただでさえ気分が下がりきっている時に薫の相手をしたものだから、私としてはかなり虫の居所が悪かった。

 

 更に言うなら、彼との待ち合わせがあると言う時に声をかけられたものだから、もう不機嫌さはお察しと言った具合。

 

 

「はぁ……今日はツイてないわね。急いで帰らないと」

 

 

 私はそう呟いて、四ツ葉女子の敷地内を出ようとしたのだけれど……。

 

 

「誰かしら、こんな時に」

 

 

 校門を潜ろうとした私を引き止めたのは、鞄の中に入れてあるスマホの着信だった。こんな時に仕事の連絡だったら即座に切ってやろうかしら、と半ば八つ当たりに近い感情を孕ませながら、私は鞄からスマホを取り出して応答する事にした。

 

 

「はい、白鷺です」

『ん、ちーちゃん? 今さっき四ツ葉女子の駐車場に着いたんだけど……あれ、ちーちゃん?』

 

 

 ……あれ、おかしいわね……颯樹からの声が聞けて嬉しいはずなのに、なんで……涙なんか……。

 

 

「颯樹……私……私……っ!」

『い、一旦落ち着こう!? と、とりあえず先ずはそっちに行くからね? あ、それか待ってた方が良い?』

「……良いわ……。私の方から出向くから、貴方は車の中で待ってて頂戴?」

『……わかった。花音と一緒に車で待ってるからね』

 

 

 私は手拭いで涙を拭きながら、彼に車の中で待つ様に連絡を入れたわ。通話の途中で花音の名前が出たけれど、四ツ葉女子に向かう途中で慶鵬女子にも立ち寄ったのね……とこの時に察する事が出来た。

 

 

 花音と颯樹とはルームシェアをしているのだし、帰りは必然と同じ方向になるのも自明の理。通学手段に関しては、彼の車で送迎して貰っているから、多少時間がズレたとしても問題無く過ごせている。

 

 なら、その苦労をかけさせている私が、二人の負担になる事はしたらダメよね。時間は有限……急がなくちゃ。

 

 

 そう思った私は、肩から提げている鞄を落とさない様に気を付けながら駐車場の方へと降りる事にした。そして暫く進むと、白い普通乗用車に乗った彼の姿が見えて来た。颯樹の横には花音も居た為、私が来るまで車で待っていた事が伺えた。

 

 

「ごめんなさい、お待たせ」

「千聖ちゃん、お疲れ様♪」

「お疲れ、ちーちゃん。はい、来る途中に買って来たお茶を渡しておくね。水分補給は確り」

「ありがとう。颯樹、花音」

 

 

 私は颯樹からお茶の入ったペットボトルを受け取り、蓋を開けて流し込む様に飲んだ。喉は特別乾いていた訳では無いけれど、彼からのこう言った気遣いは、私の中でのひとつの安らぎになっていた。

 

 

「じゃあ、帰りましょうか。そろそろ日も暮れるわ」

「そうだね。……あ、でも」

「「??」」

 

 

 颯樹の言葉に私と花音は疑問符を浮かべた。

 

 ……そして、それを見た彼は……左足で車のブレーキペダルを踏んで、右手でハンドルを掴み、空いた左手でシフトレバーをドライブに入れてからこう一言告げた。

 

 

「少し、ドライブしようか」

 


 

「……キレイね……」

「うん……。こんな景色が見れる所があったなんて……」

「お気に召して頂けて何よりかな。まあ、時期はいつでも良かったんだけど、どうせなら何かのお祝い事をする時にここに来ようって目を付けてたんだ」

 

 

 私と花音が颯樹に連れられて来たのは、市街地から少し離れた山の上にある展望台だった。そこから望む沈みかけの夕陽は、日々の講義やバイトにお仕事と多忙な私たちの心を癒して行くかの様で。

 

 

 颯樹が前に居た長崎でも、こう言う眺めは時折見れていたらしいのだけど、この様な展望台から望む夕陽は、今まで数が少なかったらしくて。

 

 だからこそ、私たちにこの絶景を見せたかったのだろうとこの時に察する事が出来た。彼から降りて良いよと合図を貰ったので、私たちは車から降りて眺めを堪能する事にした。

 

 

「……凄くいい景色だねぇ…」

「……そうね……。本当にありがとう。とても嬉しいわ」

「颯樹くん、ここに連れて来てくれてありがとう♪」

「どういたしまして。それと……ちーちゃんにはもう1つ贈り物が。花音」

「……あっ。うんっ♪」

 

 

 そう言った花音は、颯樹と一緒に車の方へと駆け足で戻って行った。その時に聞こえた『もう1つの贈り物』って、一体何なのかしら……。この景色を見せるだけなら、確かにこの日じゃなくても良い気がするし、私で良かったらオフの日を使って一緒に行きたいくらい。

 

 でも、彼が『贈り物』と言ったからには、きっと何か用意してる。そして花音も一緒に戻って行った……なら、あまり確証は無いけれど、ほぼあれかしらね。

 

 

 そう思いながらも、フェンスの役割をしている木枠に凭れていると、私の元へと駆け寄ってくる二人の姿が。もう少し涼しい風に当たっていたいけれど……今は。

 

 

「千聖ちゃん♪」

「ちーちゃん」

「……ええ、何かしら?」

 

 

 颯樹と花音は私の前で立ち止まると、息を揃えてこう言って来た。

 

 

「「Happy birthday、お誕生日おめでとう」」

 

 

 ……今まで、1年毎に確り受けて来た、誕生日ならではの決まり文句。それは仕事先で言われるのもそうだし、家族との団欒の時にも言われて来た。だから、私にとってはそこまで大して変わりない物と思っていた。

 

 

 ……でも、今年は大切な人と迎えた誕生日。

 

 いつものこの決まり文句であっても、他の人から見れば何気ない物だったとしても……私からすれば、もう至福のひととき。

 

 

「……ありがとう。颯樹、花音。……二人からお祝いして貰えるなんて、私は幸せ者だわ……」

「じゃあ……先ずは花音から」

「うん。私からは、これだよっ♪」

 

 

 そう言って花音は、私に小さな箱を手渡して来た。

 

 彼女や颯樹に開けても良いか聞いた所、二人とも快く承諾してくれたので、私はその綺麗に結ばれているリボンをゆっくりと解き、箱の蓋を開けて中を見た。

 

 

 するとそこに入っていたのは……。

 

 

「キレイ……」

「私からはアクアドームだよ♪ 最近益々お仕事が忙しくなったって聞いたから、その息抜きになるかは分からないけど……リフレッシュする時に使って欲しいな、って思ったんだぁ」

「ええ、ありがとう……大切にするわね、花音」

 

 

 花音から貰ったアクアドームの中では、イルカやペンギン等の海の生き物が優雅に泳いで居る光景が目に映った。……これを見ていると、お仕事等で感じている嫌な事が全て洗い流されていく様ね……これを贈ってくれた花音には感謝してもしきれないわ。

 

 

 私が箱を持ってベンチに座ったのを見た花音は、隣に居た颯樹に軽く合図をした。……まあ、順当に行けば次は颯樹の番で間違いないわよね。でも、そうやって合図を出すって事は、この事も想定済みなのかしら?

 

 そんな風に私が思うのを他所に、颯樹は徐ろに私の前に来ると……目線を私に合わせて屈んで来た。

 

 

 

「……さ、颯樹……?」

「僕からはこれ。……随分遅くなっちゃったね」

「?」

 

 

 彼の零した言葉に若干の疑問符を浮かべ、私は先程の花音と同じ様に箱を開けて行く。……すると、そこに入っていたのは。

 

 

「……えっ……こ、これって……」

 

 

 颯樹から手渡された箱に入っていたのは、鮮やかな銀色に光り輝くシンプルな指輪だった。その中央では小さな宝石が光を反射して輝き、私に今目の前で起こっている事が現実だと報せていた。

 

 

「さ、颯樹くん……それ……」

「うん。お察しの通り、婚約指輪だよ。ちーちゃん、左手を出してくれる?」

「……ええ」

 

 

 そう言って颯樹は、私の左手の薬指にゆっくりと指輪を嵌めていく。そうして奥まで届いたのがわかると、スッと手を離して私に向き直った。

 

 

「……こんな、私で……良いの?」

「良いよ」

「寂しくなった時は、毎晩貴方を求めるわよ?」

「僕でそれを担えるなら、光栄だよ」

「偶に愚痴も言うし、もしかしたら……知らず知らずのうちに貴方の事を縛り付けてしまうかもしれないわよ?」

 

 

 私からの質問に、颯樹は迷う事無く肯定で返した。

 

 

 ……あぁ、私の求めていた光は……変わらずにそこにあったのね。誰かに対してかなり嫉妬深い私も、好きな人には甘えたがりな私も……少し誰かに悪戯しちゃうイケない私も、誰かに頼る事が無く抱え込みやすい屁理屈な私も。全て……颯樹は嫌な顔一つせずに受け入れてくれる。

 

 そんな太陽みたいな貴方に、私は心を奪われていた。

 

 

「千聖。この場で……言わせて欲しい」

「……ええ、覚悟は出来たわ。どうぞ?」

 

 

 それを聞いた颯樹は、私の前で膝を着いて手の甲を優しく取ってキスをして来た。その光景に思わず胸が高鳴ってしまうけれど、私にとってはその後が大事だ。

 

 そうして彼は、私の目を見て……こう言って来た。

 

 

「……僕と、結婚して下さい。一生賭けて、キミを幸せにすると誓うよ」

 

 

 その言葉を聞いた花音は分かりやすいくらいに顔を真っ赤にしていて、オロオロと慌てていた。……もう。次は貴女が私の立場になるのだけれど……この分だとまだこのシチュエーションは早そうね。

 

 

 でも、今は私に対しての告白。

 

 だったら……返すべき言葉は、これしか無いわよね。

 

 

「颯樹、顔を上げて?」

「……え? それは全然良いんだけど……どうしたのちーちゃんんっ!?」

「ふぇぇ!?」

 

 

 私は颯樹の驚く顔を見ずに、キスをして返した。

 

 彼が手の甲にして来たのならば……私からは唇にする事でのお返し。私がいつも颯樹にやっていた、最大の愛情表現。花音がそれを見て驚いているけど、今の私には関係無い。

 

 

 そして一頻りキスを終えると、私は再び彼と向き合った。

 

 私の背後では鮮やかな夕陽が照らしているけれど、私が颯樹に向ける愛はそれを遥かに凌駕している。……そう、誰にも止められないくらいに。

 

 

「こんな私で良いのなら……私の方こそ、お願いするわ。貴方だけのお嫁さんにしてください」

「……愛してるよ、千聖」

「私も愛してるわ、颯樹」

 

 

 そうお互いに気持ちを伝え合って、口付けを交わした。今までもやって来た様な濃厚なキスだけれど……もうそこには、誰も入り込む余地なんて無い。精々此処に混ざれるのは、今この場で顔を真っ赤にしている花音くらいな物。

 

 それ以外の横槍なんて……絶対に許さない。

 

 例えそれが同じバンドメンバーや友達同士であっても、それは変わらない。

 

 

「……私たち、絶対に幸せになりましょうね」

「勿論だとも。約束するよ。誰が何と言おうと僕たちの関係は揺らがせる事は出来ない……必ずね」

「ふふっ♪ さて、そろそろ帰りましょうか。未だに顔から湯気が出ている花音を介抱しなくちゃ」

「……おおっと、そうだった! 花音、確り!」

 

 

 そう言って颯樹は花音を後部座席に寝かせて、私を助手席に乗せて……自分の車を私たちが現在ルームシェアしている部屋へと走らせた。その顔は真剣そのものだったけど、顔色は少し紅くなっていたのは本人の名誉の為に留めておく事にした。

 

 

 ……こんな彼氏を持てて、私は幸せ者だわ。

 

 必ず私と貴方と……そして花音を加えた三人で、幸せになりましょうね。……約束よ?




 今回はここまでです。如何でしたか?


 今話はパス病み本編の、有り得るかもしれない未来の一端と銘打ちまして、この話を執筆致しました。それ故に所々元作品では聞き慣れない単語が多かったと思いますが、そこに関してはまた別の機会にお話出来ればと考えています。


 普段は何事もそつなく熟す千聖さんですが、恋愛方面に関しては年頃の女の子と何も変わらない……僕はそう思ってます。ただし、気持ちの向け方が若干重すぎる様な気がしないでもありませんが。


 それでは、また次の更新にてお会いしましょう。


 最後になりますが……千聖さん、Happy birthday!

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