色々おかしな点やグダグダな所もありますがご了承ください。
それでも良いと言う方のみ、本編へどうぞ。
ミオリネは忙しい日々を送っていた。
会議をし、会社を回し、予算を見直し指示を出しては机に向かって資料を読み回す。
たまにスレッタに任せているトマト園に行くのが楽しみな彼女は忙しい時程、彼女の笑顔と一緒に食べるトマト料理に想いを馳せる。
「社長!ミオリネ社長!」
ドタドタと部屋に走り込んできた男には見覚えがある。
だが、
「入るときはノックぐらいしなさいと誰かに教わらなかったのかしら?」
笑顔の応答はキレる前触れである事を知っているものなら凍りついたことだろう。その笑顔をもってして尚重大なのか、怯むこと無く男は告げる。
「大変です!総裁が!総裁が!!」
「!!」
ただならぬ気配に何かあったと立ち上がる。
事は一時間前に遡る。
「それではこれで、定例会議を終わります。」
ガタガタと椅子を立つ者、通信を切って一息つく者、隣の者と談笑する者等居る中。
監査組織カテドラルの統括代表、デリング・レンブランは物思いに浸っていた。
「どうかなさいましたか?」
近くに居た者が立ち上がらない彼に質問を投げ掛ける。
「いや、なんでもない。少し考え事をしていただけだ。」
優しい笑顔を浮かべる彼を、見る人が見れば驚いたであろう。昔の彼を知っているものならば例えどのようなことがあってもあの様な笑顔を浮かべる事は無いのを知っているからだ。
少なくとも、話しかけた男は見た事の無い顔であった。
「私の顔に何かついているかね?」
そう問われて自分の上司の顔をじっと見つめていた失態に気が付く。既に表情は何時もの鉄仮面である。
「しっ、失礼しました。」
そう言って下がる男を尻目に彼、デリング・レンブランは椅子から立ち上がる。
ミオリネとスレッタが婚姻を決めてから数ヵ月。自覚無く、彼は浮き足立っていた。
父親として、男として、自分に何か出来ないだろうかと。
総裁として、恥ずべき立ち振舞いをしてはならないと考えながらも、先の事を考えると顔が緩みそうになる。それを必死にこらえながらも、ふと興味をもって聞いてみた。
「君。」
先ほど話しかけた男を呼び戻す。
「あ、はい。なんでしょうか?総裁。」
小走りで戻ってきた彼は、果たしてこの質問をどうとるだろうか?
「子供は居るかね?」
「はい。男の子が一人。」
「名は?」
「はい?」
訪ねられた方は意図が解らない。
何せこんな無駄話などしない人である。だが、気に入らない答えを返したばかりに地獄のそこまで叩き落とされた人間は数知れない。
男の額から汗が流れる。
「名は?と聞いているんだ。」
「セ・・・セルジオ、です。」
男は喉をならす。名を聞かれただけなのに緊張が走った。
「誰がつけた?」
「妻です。」
ここでデリングの眉がピクリと動くのを見逃さなかったのは幸か不幸か。今のが何を意味するのか?男は次の質問を待った。幸い、返答はすぐに来た。
「そんなにかしこまるな。ただの世間話だ。そんなに意味の有る内容ではない」
「はぁ・・・。」
と言われても、仮にも組織のトップを飾る人間からの質問である。緊張するな?という方が無理だ。
しかしデリングは知ってか知らずか質問を続ける。
「息子の名前の意味は知っているのか?」
「はい。妻も私も車が好きなので。いつか三人で名前の由来の車でドライブに行くのが夢で・・・。」
ここで男は失態を犯した事に気がついた。
聞かれたのは名前の事だ、先の話までは聞かれてない。
「しっ、失礼しました。余計な事を・・・」
しかしデリングは、
「聞いたのはこちらだ。気にしなくて良い。」
と片手で制した。もしかして本当にただの世間話なのでは?と疑問を抱き始めて思考を巡らす。
「もしかして、お孫さん・・・ですか?」
「まだだ。」
やらかした。
「だが、あいつには何もしてやれなかったからな。」
感慨深い顔で目を閉じる総裁を目の当たりにして、始めて彼が「お祖父ちゃん」になりたがっていることに気がついた。
「会社も、式も、あいつは私に頼っては来なかった。父親とは難しいものだな。」
自傷ぎみに笑うその顔に何処か寂しさを感じた。
だからだろうか?
その後の言葉に違和感を感じたのは。
「故に、孫の名前ぐらいは立派なのをつけてやろうと思う。」
あれ?この人こんなに親バカだったか?
脳裏に浮かぶのは恐れでも尊敬でもなくただただ「?」だけだった。
「総裁?」
「なんだ?」
「えっと、大変申し上げにくいのですが・・・。」
「構わん。話しかけたのはこちらだ。意見があるなら聞かせてくれ。」
そういわれて男は思ったことそのままを言おうとした。
しかし、
「それは少々問題なのでは?」
無理やり通信を開き、会話に横槍を入れたのは見覚えの無い女性だった。
「名付け親、である以上地位や名誉は関係ないと思いますよ?総裁。」
「レディ・プロスペラか。」
そう呼ばれた彼女の名前には聞き覚えがあった。
シン・セー開発公社のCEOだった彼女は仮面を脱ぎ、優しそうな笑顔と共に画面からこちらを見据えていた。
「遠慮なさらずとも、エルノラ・サマヤと呼んでいただいても結構ですのよ?デリング総裁。」
話は噂で広まっている。真実だというならば恐ろしいほどの嫌味である。
「話があるには少々強引ではないかね?」
「あら、お暇そうに見えたので」
「ふっ、そうか。これでも部下には恵まれているのでな。」
「あらあら、それでもう後継をお決めで?その若さでは勿体ないのでは?」
「ご心配無く。後釜ははもう決めているよ。そちらこそ休養が足りていないのではないかね?必要な物があるなら娘の誼だ。何か届けさせよう。お面などどうかね?」
「ふふふふふ、愉快な方です事。」
「ははははは、それほどでもないさ。」
二人の異様な空気に気圧される男。
笑顔で笑っているのに目の奥が一切笑っていない。一体この二人に何があるというのだろうか?
そして唐突に笑い声が途切れると声を揃えた。
「「孫の名付けは私がする!!」」
この二人、実は仲が良いのでは?と思いたくなる程息の合った叫び声だった。
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何事かと振り向く者達の中で勃発したそれは。ヒートアップしていくほどに知能指数が下がっていった気がする。
「家庭の事もろくに関わってこなかった方に何がわかるというのですか?」
「今も私は過去を振り返り、娘との距離を縮めようと努力している。甘えてばかりの君とは違うのだよ?」
「私はあの子を支えてきました。それは今も昔も変わりません。不必要なものを捨て去って、大事な物まで置いてきてしまった貴方とは違うのですよ?」
「良く言う。その大事なものに己の責務と責任を押し付けたのは何処の何方だったかな?」
「こんな放任主義であの娘がよくあそこまで良い娘に育ったことですこと。パーティーでも女同士、良く会話が弾みましたもの。」
「娘と何を話した!!!」
「嫌ですわ、女同士の会話にみっともない。」
「中央会議所で何してるの!!」
ミオリネの一括が会議場に響き渡った。
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シーンと静まり返る会議場を、ミオリネは颯爽と歩く。
ど真ん中に立ち腰に手を当て仁王立ちすると更に責を放とうとした。
「あら、ミオリネさん。お久し振り。」
「相変わらずあんた飄々としてるわね。」
「なぜここに来た?」
「連絡もらったのよ。どっかの誰かさんがみっともないって。」
デリングがギロリと睨むと場内の全員が目をそらした。
「仕方無いのよ。貴女のお父様、聞き分け無いんだもの。」
「それはあんたもでしょう?」
今度はミオリネが画面越しに睨むがプロスペラは涼しい顔で
「お肌が荒れてるわね?ちゃんと寝てる?」
『ここ最近は少し寝不足ぎみかな?お母さん。』
「ちょっ、エリクト!」
キーホルダーから語りかける義姉妹からの反撃にたじろぐが、それで収まる訳もなく。
「あらあら、仕事ばかりで私の娘をないがしろにしてないわよね?」
「余計なお世話よ!」
顔を真っ赤にしての威嚇にも「あらやだうふふ」と流していく。彼女にしては優しい方だと解りつつも感覚がそれを除外していく。
「満足したなら帰れ。休むのも仕事の内と知れ。」
「無駄に呼び出される此方の身にもなれってーのよ糞親父!」
「だそうですよ総裁?この際、休暇などとっては?長めの。」
「君こそ、その減らず口にわずかな良心を宿しているならもっと自分の娘に敬意を払ったらどうかね?」
「嫌だわ総裁。私、これでも愛されているのよ?ね?エリクト。」
『うん!お母さん大好き!』
「私、喧嘩止めに来たんだけど?」
「あらあら、御免なさいね。喧嘩に見えているとは思わなかったの。」
「些細なすれ違いだ。仕事などではよくある事だ。」
「これだけの騒ぎにして良く些細で済まそうとするわね。」
頭を抱えるミオリネに更に通信が入る。
「さっ、ささいな、事じゃ、無いですよ!」
「スレッタ!?」
堂々と写し出されたのはスレッタ・マーキュリー。此方もここらでは有名なそこに居るミオリネの花婿(?)である。
「あら?スレッタ。どうしたのこんな所に。」
「ミオリネさんが、とっ、飛び出したと、聞いたので」
人見知りの彼女のしゃべり方は独特だが不思議と聞き取りづらいということはない。
「問題ないわスレッタ。すぐにケリはつくから。」
「そうかしら?私、譲るつもりはないのだけれど。」
「それはこちらとて同意見だ。私には責任がある。」
「一応聞くけど、どんな責任よ?」
ミオリネが聞いてみると、威風堂々と言った感じで一切の躊躇無く言った。
「私が、デリング・レンブランで!」
続く言葉に一同は唖然とした。
「お祖父ちゃんになるからだ!」
「・・・バカなの?」
「なっ!?なぜだミオリネ!」
気に入らない親父と言えど、これだけの会社を纏めてきた総裁で。基本的に冷たい面影しかミオリネには記憶にはないが。
ことスレッタが一緒になると決まってからこの調子だ。
自分勝手なところは変わらないくせに下らないことにまで干渉するようになってきた。
「みっミオリネさんっのお、おおーおとーさん!?」
「どうしたのかね?スレッタ君」
キリッとした面構えに戻ったデリングだがもはや今の違和感がぬぐえない。
(さぁスレッタ!はっきり言ってあげなさい!)
「え、えへへへへ」
「なんで照れてるのよ!」
「おとーさん。って、呼び慣れなくって・・・。」
「スレッタ君・・・。」
何故か目を閉じて感慨深い表情を浮かべるデリングに更に頭を痛めるミオリネ。
「安心したまえスレッタ君。私が全責任をもって君たちの未来を守って見せよう。」
胸に手を当て宣言を決めるデリング。
スレッタと言うと「あ、ありがとう、ございます!」といって頭を下げている。何を言っているか解っているのだろうか?
「スレッタ?話、ついてきてる?」
「へ?か、かぞくではなしあい、するって。」
「違うわよ」
『スレッタらしいね』
「あんたは黙ってなさい。ややこしくなるから。」
『はーい。』
これ以上事態を拡大させないためになんとか纏めようとするが。
「そんな冷たいこと言わなくても良いじゃい?エリクトだって気になるわよね?子供の名前。」
『うん!気になる!』
ミオリネはやられた!と思った。
「貴様!ミオリネと一緒に居るあの子を懐柔するとは卑怯だぞ!」
「懐柔だなんてとんでもない。私の娘ですよ?ただの家族の会話ですよ。」
「ふん、どれだけでも連れてくるが良い。結果は変わらん。孫の名前は私が決める。」
「そうやって押し付けてるから、自分の娘に愛想をつかされるのですよ?」
「だからどうしたと言うのだ?私がそう判断した!」
「私まだする気無いわよ?」
「「なぜ?」」
「当たり前でしょ!そういうの含めて自分で決めるわよ!どっちも引っ込んでなさい!」
「ミッ、ミオリネ、さん。落ち着いて」
「むしろなんであんたはそんな落ち着いてんのよ!」
「えっ?えぇー!?」
だんだんカオス状態になってきた会議場にそれぞれの主張を繰り返すだけの面々。
賑やかなのが楽しいのかエリクトだけが笑っていた。
その横で、退がるタイミングを逃してそばで聞いていた男が一人。これまでだんまりを決め込んでいたのに。ボソリと一言、ため息と共に吐き出した。
『もういっそ殴り会ったら良いのに。』
その一言に、デリングも、プロスペラも、ミオリネも。成り行きを見守っていた人々までもが静まった。
突然の静寂に戸惑う男。聞こえていないはずの場所に居た人を含めて会場に居るほぼ全ての人々がその男を見ていた。
やがて、
「それだ!」
「それよ!」
と声を合わせて叫んだ二人が居た。
「全社員に告げる!決闘用の機体とパイロットを一式!大至急用意しろ!」
「子会社まで使うなんて!小物感たっぷりね総裁!」
「何とでも言うが良い!ここで父親としての威厳を見せつけるのだ!」
「エリクト、お母さんと来てくれる?」
『うん!』
「貴様!その子を巻き込むつもりか!」
「私はただ、この子の新しい体を作るだけですわ?」
「「フフフフフフフフフフフフフフ」」
お互いの張り付かせただけの笑顔に恐怖を拡散させる効果を上乗せさせる。もはや止められないことをミオリネは悟った。
「仕方無いわね。スレッタ!やるわよ!」
「ミっ、ミオリネ、さん?」
「まだ先の話だけど。私達の子供の名前ぐらい私達でつけるわ!誰にも譲らないわよ!」
「はっ、はい!」
唐突に始まった痴話喧嘩からとうとう決闘にまで話が広がり、この先どうなるのか。
因みに、
「これだ!これで実力を認められれば、会社も大きく出来る!」
と意気込む若社長や。
「この企画を使って、僕がここを出る足掛かりになってもらおう。」
と牢屋から手を子招いてる者。
「あいつ、これに出るだろうなぁ?」
「でしょうね?先輩必死なんだから。」
「じゃ、俺も出たらどんな顔するかなぁ?」
「悪い顔、してるっすねぇ?」
と悪巧みを始める者まで。
そうそうたるメンバーを巻き込んで。
名付け親トーナメントは開催される。
果たして?勝者は?行方は?
それは何時の日か、語られるその日まで。
「それでは皆さん。ガンダムファイト!レディー、」
「あんた違うアニメでしょうが!?」
「あ、いや、ナレーションだけでは足りなかったのでつい。」
後日談
「許さん!許さんぞ!何処の馬の骨かも解らん男の種なぞ!ここはやはり、私が選んでやらねば」
「あなた、そんなことだから絶縁されかけるんですよ?」
第二回はそう遠くないかもしれない。