そんな苦しみを誰にも分かってもらえない彼女はある七夕の伝説を知る。
その伝説とはある山の頂にある笹の葉に願いを込めた短冊を飾ると願いを叶うというものであった。
そして、彼女はその笹の葉を見つけ、ある願いを叶えた。
その内容は『ポケモンがいなくなりますように』というものだった。
そして七夕の当日。その願いは本当に叶い、ポケモンがいない世界へと変容した。
それを喜ぶ彼女だったかが・・・?
私はポケモンが苦手だ。
ポケモンと直接触れたら危険だって、遠ざけなきゃいけないって身体がそう反応してしまう。
だって仕方ないじゃない?危ない技を繰り出したり、何をしてくるか分からないんだから。
この感覚をパパやママ、友達にいっても皆、ポケモンが好きだから私の気持ちを少しも分かってくれない。
正直・・・窮屈だ。
「あーあ、ポケモンが居なかったらなぁ・・・」
「レーラお父さんがあなたでも大丈夫そうなポケモン連れてきたわよー!」
「はーい」
いつもの嫌な時間だ。
「今日こそはレーラでも大丈夫なポケモンを連れてきたぞー」
「またー?どうせ無理なのにー」
「ほら、イーブイだ。可愛いだろ?」
「まぁ可愛いっちゃ可愛いけど・・・やっぱ無理。それ以上は近づけないでパパ」
怖い怖い怖い。
何を考えているか分からない。
進化して襲ってくるかもしれない。
強力な技を持ってるかもしれない。
何もかもが分からない事、それが一番・・・怖い。
「イーブイも厳しそうかぁ。ピチュー、ロコン、ニャオハその他諸々、色々試してはいるんだがなぁ。」
「・・・だって怖いんだもん。」
「うーむ。あっ!イーブイ!」
「ブイブイ」
イーブイが甘えるように彼女に近づく。
「っつ!来ないで!」
拒絶するようにイーブイを突き飛ばす
「あ・・・」
「ブイッ!」
「ごめんなさい・・」
「レーラ!どんだけ苦手でも今のはやりすぎだ!」
「な、なによ!パパだって苦手なものくらいあるでしょ!それなのに私が嫌々付き合ってるの分かんないの!?パパの好きを私に押し付けないでよ!」
いーブイの表情を恐る恐る見る。
イーブイは敵意を放つように睨みつけていた。
怖い、攻撃されるかも、謝ったのに、なんで私が全部悪い事になってるの。
彼女はその敵意に対し、突き飛ばしてしまった罪悪感や自分だけが悪くない被害者意識、傷つけられるという恐怖という感情に飲み込まれる。
(ここに居たくない・・・)
「今日、出かける用事あるから!じゃあ!」
「待ちなさい!レーラ!ああ行ってしまった。ごめんなーイーブイ、彼女はちょっと怖がりなだけなんだ。」
「ブイ・・・」
「なによ!なによ!私だってポケモンに触れれるものなら触れてみたいわよ!」
彼女は家を飛び出し駆けるように街に繰り出した。そして、周りを見渡した。
街にはトレーナーとポケモンが溢れかえっている。
街の近くの森にも海辺にもどこにもポケモンが居た。
全てが怖かった。
もし、あのポケモンに襲われたらどうしよう、あのポケモンが暴走したらどうしよう。
そんな事ばかり考えちゃう。
「はーもう。どこ行ってもポケモン、ポケモン、ポケモン!私が安らげる所は無いのかな・・・」
そして避けるように歩いていると街の道はずれに知らない喫茶店があった。
「あれ?こんな所に喫茶店なんてあったっけ?まぁ、いいやポケモンも居なさそうだし入っちゃお」
「いらっしゃーい」
入店すると喫茶店のイメージにあった老爺の店主が立っていた。
「あのーどこに座れば良いですか・・・?」
「お好きな席でどうぞ」
何というか静かだ。
ポケモンの声が聞こえない、ただ木々のざわめきが小さく揺れるだけ
なんというか安心する・・・
「お嬢さん、ポケモンがお好きですか?」
「えぇ!?あ、まぁ好きか嫌いで言うと好きですけど・・・」
「では、ポケモンに触れるのはお好きですかな?」
「それはちょっと苦手ですけど・・・」
「な、なんですか!私を嗤いにきたんですか!お爺さんだって克服できない嫌いなものぐらいあるはずだわ!」
「そうですな、誰しも克服できない物はございます申し訳ない。」
「しかし本当に全てのポケモンが苦手なんでしょうか?」
「そんなの・・・知らないわよ」
何よ、この店主。私に説教がしたいわけ?この店主もどうせポケモンを好きになれない私の事を見下してるんだわ。
せっかく良い気分だったのに・・・お茶がまずくなっちゃった。
「他の用事を思い出したのでもう帰らせて頂きます。」
「申し訳ない、ご気分をお悪くしてしまって。お詫びとしてお勘定は無料とさせていただきます。」
「ふんっ」
「あーあ、初めてリラックスできたのに・・・ん?」
喫茶店の扉の横にチラシが張ってある。
「七夕の伝説?七夕の日に山の山頂にある伝説の笹の葉に願いを込めた短冊を飾ると願い事が叶う~?うっそだぁ。私、山の山頂に行ってみた事あるけどそんな笹の葉なんて無かったわよ。」
「さっさと家に帰ってポケ動画みよーっと・・・そういえば明日、七夕だったかしら?まぁ見たいポケ動画は特に無いし暇つぶしに行ってみようかしら」
そういい、街に短冊とペンを買いに行き、彼女は山の山頂に向かった。
「あーもう19時かぁ。山の中にいる虫ポケモンが居なければこんな時間かからなかったのに・・・」
「あ、そろそろ山頂かな?まぁ笹の葉なんて・・・あった。」
山の山頂に本来無いはずの笹の葉があった。
「ま、まぁいいわ。どうせ誰かのいたずらだろうし、短冊にお願い事を書いて、笹に短冊を付けってっと。」
その後、家に帰りパパに合わないよう夕食とお風呂を済ませそそくさと自分の部屋に戻る。
「あ・・・」
「ブイ・・・」
「・・・」
悲しげなイーブイを通り過ぎて自分の部屋に入った。
「何よ。そんなに可哀そうな目で見つめてきたらこっちが悪者じゃない。」
「短冊に書いたお願い叶わないかなー」
そんな事を思い、眠りに付いた。
7/7 朝
「ふわぁ~よく寝た。こんなに寝起きが良かったの初めて」
いつものならポッポやムックルの鳴き声がするのに今日は珍しいな
「おはようママ、パパ」
「ああ、おはよう」
「おはよう、レーラ。今日は早いのね」
「まぁね」
「レーラ。イーブイとキュウコン知らないか?」
「え?知らないけど。」
「そうか」
「お隣さんにも聞いたんですけどやっぱり手持ちのポケモンや野生のポケモンが見当たらないんですって」
「大規模のポケモンの失踪かー。原因不明だな、今日他の街の人にも聞いてみるよ」
「え」
「なんだレーラ。何か心当たりでもあるのか?」
「いや何でも。不思議だなーって思っただけ」
そそくさと朝食を食べる
「はい、ごちそうさまー。じゃあ出かけてくるねー」
「今日は随分せっかちねー、はいいってらっしゃい」
やった!やった!やった!
「願いが叶ったー!」
「楽しいー!」
外に出ると毎日家の外にいるポッポも街の中に行くと絶対いるピッピも
みんなみんな居なくなってくれた!
街がこんなにも楽しい場所になるなんて知らなかった。
いつもは行けなかったデパートも、いつも行きたくて行けなかったショップ店のもこんなに自由にいけるなんて。
「あの笹の葉に感謝しなくっちゃ」
お礼の為にあの笹の葉がある山頂に向かうと笹の葉の近くに浮遊している変な物体が居た。
「あれは・・・ジラーチ?」
そう言うとジラーチはこちらに気づき、こちらに近づくのでとっさに近くの木の陰に隠れる。
「な、なによ。悪いけどそれ以上は近づかないでね。」
「あんな願いで本当に良かったの?」
「願い?あーあの願いね。貴方が叶えてくれたの?それなら、ありがとね。私はやっと自由快適な暮らしが出来るんだから、ついでにあなたも消えてくれるとありがたいんだけど。」
「他の人は嫌な気持ちしてるよ。ねぇ取り消さない?あと1週間までなら取り消せるよ?」
「他の人が嫌な気持ちしてるなんて知らないわよ!まぁ、多少思う所はあるけど・・・でもそれなら私だって前の世界で嫌な思いしてたんだから!それなのに誰も分かってくれなかった!それなのになんでみんなのために自分が我慢しないといけないのよ!嫌よ!」
「でも君だって・・・」
「う、うるさい!うるさい!うるさい!消えてよ!あなたたちなんて皆怖い怪物なのよ!永遠にモンスターボールに閉じ込められばいいのよ!」
「ひどいよ・・・」
そう言うとジラーチはどこかに消えていった。
「あ・・・」
「そこまで言うつもりは無かったのに悪い事しちゃったな。」
「で、でもあのジラーチだって私の願いを叶えたんだから想う所はあったって事だよね、きっとそうに違いないわ。」
「確か後1週間までなら取り消せるって言ってたし残り3日ぐらいになれば元に戻してもららえばいいや」
取り消し不可まで残り1日 朝
「あーもう残り1日になっちゃった。で、でも今日取り消して貰えれば良いのよね。」
「おはようパパ、ママって何してるの!?」
「何って相棒のキュウコンやママの相棒のピカチュウが映ってるビデオを見てるだけだよ。」
「そうよ、ポケモンが大量に失踪してもう6日も経ってるんですもの仕方ないわ。」
「でもそんなに目の下にクマが出来るなんておかしいよ!」
「レーラも大事な相棒が失ったら分かるようになるよ。」
「なによ!そんなにポケモンが大事な訳!?どうせ私の事より相棒のポケモンの方が大事だもんね!パパとママのバカ!」
「レーラ...」
家を飛び出し、街へと逃げ出す。そこにも無気力な人や悲しみに打ちひしがれる人が溢れていた。
(なによ!なによ!全部私のせいって訳?もうそれなら、ずーとポケモンがいない世界にしてやる!いやそれだと生ぬるいわ、ポケモンの存在そのものを消してやる!)
彼女は短冊とペンを持ち、街のはずれの洞窟へと逃げ込んだ。
「来年の七夕にまたあの笹の葉にお願い事をして、ポケモンの存在そのものを消してもらわなきゃ。」
「それまでここに1年間引きこもれば良いわ。どうせ家にも帰れないし。」
「後で街でキャンプセットと保存食1年分を買えばこんな洞窟も楽園よ!」
「ああ、でも急に眠気が・・・zzz」
数時間後
「う・・・やっぱりレジャーシートだけだと寒いわね。あ!」
滿汐により海面が上昇し、洞窟の入り口は海により塞がれていたのである。
「これじゃあ街にいけないわ。ああ、なんだかお腹も空いてきたし、なんで私がこんな目に・・・」
出来る事もないのでレジャーシートの上で必死に空腹を抑え横たわる。
横たわりながら海を眺めていたら小舟らしきものがこちらへと向かっていた。
「こんな所でどうかしましたか?お嬢さん。」
「あなたはあの喫茶店の店主さん!満潮のせいで洞窟から出られないの。助けて」
「それには条件があります。あなたにお会いさせたいポケモンがいます。そしてそのポケモンの前であなたの本当の願いを告げてください。」
「本当の願いなんて私・・・」
「嘘だよ」
「ジラーチ。なんであなたがここに・・・」
「君は本当にポケモン全てが嫌いな訳じゃない。夜な夜なポケモンの動画を見てにやけてる事。ボクは知ってるよ?」
「なんでそれを・・・やっぱりモンスターなのね。あなたも」
ジラーチは悲しげな表情をする。
「そうやって遠ざけようとするんだね。ポケモンをこれ以上傷つけたくないから。」
「ぐっ・・・私の気持ちを分かったかのように言わないでよ。」
「苦手なポケモンがいるのは仕方ないし、それを克服させようなんて事は間違ってると思うよ。でもポケモン全てを試した訳じゃないんでしょ?」
「でも、どうせ無理よ。」
「本当に?本当に無理ならあの願いを書かないと思うんだけどなぁ」
「ほら喋った方が気が楽になるよ。」
「なによ・・あんなにひどい事言ったのに。あんなに悲しそうだったのに。なんであなたは私に構うのよ。」
「それは君と友達になりたいから。」
「・・・!」
「分かったわよ。言えば良いんでしょ。私の本当の願いは・・・・」
表に書いた短冊は『ポケモンがいなくなりますように』と書いた。
しかし裏にはもう一つ書いたものがある。
「『私が触れても大丈夫なポケモンに出会えますように』です。」
「私だって、私だって。ポケモンと触れてみたいわよ。ポケモンと触れて一緒に遊んだり、皆みたいにポケモンバトルしたり、ポケモンコンテストにも出場したい。」
「でも、今まで会ってきたポケモンと触れても私の方から拒否しちゃうの。これだけは治らないのよ。」
「じゃあ、ボクで試してみようよ。」
ジラーチは彼女の方へと近づく
「嫌よ!近づかないで。どうせイーブイみたいに・・・!」
私はポケモンが苦手だった。そしてそれ以上よりも許せなかった事はそのせいでポケモンを傷つけてしまう何よりも自分自身だった。
ピトッ
「ほら、触ったよ。ボクは怖い?」
手の感触がする。そしてジラーチと目が合う。
不思議と・・・心地よかった。
「私、触れた!初めて!ポケモンに・・・私!」
「ほら、夢が叶ったよ。」
「うん・・・!うん・・私・・初めて・・!」
そう言った後、私は意識を失った。
そして目が覚めると私の部屋のベットで眠っていた。
パパとママが言うにはどうやら私は七夕の日に行方不明になっていたらしく、6日間捜索したが見つからず、途方に暮れていたらしい。
しかし行方不明から6日後に家のドアに眠っている私をママとパパが見つけ現在に至る。
「パパな、考えたんだ。ポケモンを好きになってほしいばかりにレーラに無理させすぎたんじゃないかって。だからポケモンがあまりいない所に引っ越そうと思うんだ。ごめんな、レーラ。」
「いいよ、パパ。引っ越さなくても。」
「本当か。無理してないか?」
「本当よ、パパ。だって触れても大丈夫なポケモンに出会ったんだし、きっと他のポケモンでも触れても大丈夫なポケモンにもすぐに出会えるよ。」
「レーラ。本当か!」
「うん。ジラーチっていうポケモンなんだけどね。」
「ジラーチ。あの伝説のポケモンか!?」
「そうか・・・また会えるといいな。」
「うん!」
1年後
山の山頂に1つの封筒が置かれていた。
『ジラーチへ
いつ会えるか分からないのでメールに書き留めておくわ。
聞いて!ジラーチ!私が触れても大丈夫なポケモンに出会えたの!
コダックって言うんだけど。最初は無理なんじゃないかって思ったんだけどチャレンジしてみたら意外と怖くなかったんだ!
まぁ、ゴルダックはちょっと苦手だけど。
でもでも!あの時突き飛ばしちゃったイーブイも触れる事も出来たしやっぱり、頭ごなしに拒否してた所とこも大きいかもしれないわ。
どうしても触れないポケモンもいるけど。
でもあなたのおかげで色々世界が広がったの!
本当に本当に本当に・・・ありがとう!ジラーチ!
レーラより』
最初はポケモンでアニメのドラえもんの独裁スイッチの回のような話にしようと試みましたが色々なポケモンの映画とか見ているとこういった内容になりました。