見切り発車定期なので許して。
P5R設定なので、一応あのキャラも出す予定です。続けばですけど。
少年、
自身の能力を高めるため勉学に励んだり、読書をしたり、バッティングセンターへ行ったり、観葉植物を愛でたりと様々である。
———しかし、それは学生としての身分の話だ。
少年には、心の怪盗団のリーダー『ジョーカー』という裏の顔がある。
そんな怪盗団の役割はただ一つ。世間で悪事をはたらく悪人から歪んだ欲望を盗み、
そのリーダーとして、彼は多種多様な人物と
時には危ない薬の治験をしたり、時には選挙活動を手伝ったりと正に波瀾万丈だ。
そんな日々の中、彼はとある危機に陥っていた。
「……資金不足だ」
時は夕刻。喫茶ルブラン屋根裏部屋にて、少年が深刻そうな面持ちで会話を切り出した。
「資金不足…ねぇ。なぁ、蓮。オマエ、この前メメントスに行った時は結構稼いでたよな? 一体何にそんな注ぎ込んでんだ?」
そのように反応を示すのは猫一匹、と言うと本人は怒る。
彼の名はモルガナ。
猫の姿をしているただの猫という訳ではなく、喋ることも出来れば車にも変化可能な頼れる怪盗団メンバーの一員だ。
「いや、その…。色々と」
事実、色々なのだからこの言葉以外に形容し難い。
仲間の装備一式の調達、パレスやメメントスで使用するための道具の作成や購入。
そして出費の大部分を占めているのがベルベットルームに居る双子の看守によるものである。
ペルソナの合成に熱中してしまい、所持金が底をつくのもザラだ。
大体、自分で手に入れたペルソナを引き出すのにどうしてお金を払わなければならないのか。
おのれ、ジュスティーヌ、カロリーヌ。憎むべし。
「まぁ、蓮は吾輩達のリーダーだからな。そこら辺は気にしないでおくぜ」
「…すまない、モルガナ」
「ノープロブレムってやつだ。吾輩は気の遣える紳士だからな」
モルガナの言い様に蓮もついクスリと笑みが溢れる。
「しかし、手っ取り早く稼ぐって言ったらやっぱメメントスに行くのが一番じゃないか?」
「いや、流石に皆には迷惑をかけられない。というか、もう単純にバイトをしようと思う」
「バイトか…。効率はメメントスよりかは低いが、正攻法はそれしかないよな。アテはあるのか?」
蓮はよくぞ聴いてくれたと言わんばかりに、ニヤリと笑い、予め開いておいたスマホの画面をモルガナに向けた。
「…なるほどな。確かに、オマエにピッタリだぜ、蓮!」
●○●○
喫茶リコリコ。
それが蓮のバイト先として選んだ店の名前だ。
選んだ理由は至ってシンプル。
———喫茶店だったから。
ただそれだけである。
実のところ、蓮は自分でも気付かぬ内にどうもコーヒー好きになっていたらしい。
最近ではルブランのコーヒー豆を拝借し、自分なりに淹れるのがマイブームとなったりしている。
それは兎も角、彼にとっては自身の慣れ親しんだ『喫茶店』で仕事が出来るというのだから御の字である。
件の喫茶店は、マップアプリによると錦糸町駅北口付近という情報が表示される。
錦糸町駅には、帰りに自分が通う秀尽学園高校最寄りの駅、蒼山一丁目駅から電車で行くのが良さそうだと彼は当たりをつけた。
故に、現在は放課後。
都内に通う多くの学生が友人とゲームをしたり、映画を見たりと自由を謳歌する時間帯。
錦糸町には初めて足を運んだため、些かアウェーを感じつつ、ようやく辿り着く。
「ここが、喫茶リコリコ」
上部に取り付けてある看板を確認し、店舗に近づくと、まず彼の目を惹きつけたのはモダン風な外観だ。
彼にとっては喫茶店といえばルブラン、というような価値基準になっているため、その見た目は全くもって別物。
ルブランにはレトロ、アンティークといった言葉が似合いそうだが、果たしてこちらはどうだろうか。
彼は意を決し、ドアに手をかけ、一思いにガチャリ、と開く。
それと同時にドアと連動したベルのカランカランという小気味良い音が鳴り響く。
なるほど、やっぱり喫茶店にはこのベルは欠かせないな、と蓮は思った。
内観には、カラフルな色合いではあるものの、目に痛くないように考えられた配色のステンドガラス。
天井は高く、古民家のような造りの内装。
小上がりには畳が用いられ、そこから二階席に上がることができる階段。
コンセプトとしては『和洋折衷』と言ったところか。
店内に漂うコーヒーの香りと相まってその内装はより一層、彼の目には魅力的に見えた。
客層に関して言えば、男性女性関係無く、さらに言えば年齢すらまばらであった。
老若男女問わず、この店が人気だという証拠だろう。
視点を変えればコーヒーを静かに味わう人、学生同士で賑わっている人、勉強に精を出す人とそれはそれは様々だ。
入店わずか数秒後、蓮は良い店だ、と確信する。
「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ」
声のする方に顔を向けると、そこには長い黒髪を二つ結びにした少女がいた。青い和服を見事に着こなしており、自分を席へと誘導している。
と、ここで彼は我に帰る。そうだった、自分はお茶をしに来たのではなく、バイトの件について話をするのだったと。
「えっと、俺は…」
「? あの、何か?」
しかし、どうしよう。正直、ものすごくコーヒーが飲みたい気分だ。
折角だし、一杯飲んだ後でもバイトの件は問題ないだろうか。
「いえ、何でも」
「そうですか、ごゆっくりどうぞ」
結果、コーヒーの誘惑に敗れる怪盗団のリーダーの姿がそこにはあった。
空いている席を探そうと辺りを見回すと、カウンター席が彼の目に留まった。
まるでそこが自分の定位置だというような軽やかな足取りで彼は空席へと腰を下ろす。
実際、彼はルブランのカウンター席で読書をしたり、勉強をしたり、惣治郎のカレーを食べたりと何かと親しみがあるのは確かだ。
「いらっしゃいませ、初めての方ですね。こちら、メニュー表になります」
カウンターの向こうから野太く、それでいて安心感を感じさせる深く落ち着いた男性の声に自然と顔が上がる。
手持ち無沙汰にしていた右手でメニュー表を受け取り、軽く会釈。
惣治郎とはまたベクトルの違ったダンディーさと言うのか、所謂イケオジというやつだ。
黒い肌で和服を纏っているものの、妙な野暮ったさや違和感などは感じられ無い。
先程受け取ったメニュー表へと視線を落とし、パラパラと一通りラインナップに目を通す。
メニューは基本的に甘味をメインとし、パフェや団子におはぎときた。
和洋折衷の要素をこれでもかと言わんばかりにふんだんに反映されている。
そうして、見つけた。
———ブレンドコーヒー
単純な文字列なれど、自然と喉が鳴るのは日々コーヒーを身近に感じているからだろうか。
「すみません、注文いいですか」
「お決まりですか?」
「ブレンドコーヒー…と、モナカを一つ」
「承りました。他にご注文は?」
「いえ、特に」
少々お待ちください、とこちらに言い放ち、カウンターの奥へと進み、コーヒーを淹れ始める。
その所作に蓮は思わず見惚れていた。
一つ一つの動作に無駄がなかった。自分が真似をしようともそう上手くいくものではなく、それは正しくプロだからこそ為せる技なのだろう。
毎朝、自分が惣治郎というバリスタの淹れるコーヒーを飲めることの贅沢さを改めて思い知る。
「お待たせしました、こちらブレンドとモナカになります」
カチャリ、とカウンター越しにコーヒーとモナカのセットが自身の目の前に置かれる。
瞬間、ゆらゆらと漂う湯気から香る芳醇なコーヒーの匂い。それにお供するのは円柱状のモナカ。
衣はまだ熱を帯びており、こんがりとしたきつね色。
それがまたなんとも唆らせる。
「いただきます」
コーヒーとモナカを提供してくれた男性に感謝を伝え、カップの取っ手に指を入れて一口。
ふわり、とコーヒー独特の苦味と酸味が口の中に広がる。ブレンドということもあり、ルブランでは味わうことの出来ない完全オリジナル。
美味しい、とここで一呼吸。自然とモナカに手が伸びる。
パリパリ、さくっさく。
歯で衣を噛み切ると中からは程よい温かさのあんこがとろりと溢れ出す。
暫く口の中で歯触りの良い食感と甘味を堪能し、飲み込んだらすかさずコーヒーを啜る。
「ところで、なんだが」
和菓子とコーヒーの組み合わせもありだな、なんて呑気なことを考えているところ、その声によって意識が戻される。
「? 何ですか」
「バイトの件について一報くれたのは君かな?」
その言葉に蓮はギクリとした。連絡を入れたのはこちらなのに、よもや図々しく茶菓子に舌鼓を打つなどとは如何なものか。
それにしても、どうして自分が一報入れた人物だと分かったのだろうか、と蓮が不思議に思っていると、その答えは直ぐに分かった。
「そうか、制服…」
「ああ。それ、秀尽学園のだろう? 送ってきてくれた履歴書に学校名が書いてあったよ。それに何というか、その制服は良くも悪くも目立つからね」
悪くも、と彼が言った理由は十中八九
「……なるほど。何か、すみません。こんな形で…」
「なあに、構わんよ。それに、あんなにもコーヒーを美味しそうに飲むもんだからな。こちらとしても嬉しい限りだ。バイトの件は、後で落ち着いて話をしよう」
メガネの奥で慈しむように微笑む彼の姿に蓮はホッと息を吐く。これで門前払いされたらモルガナに合わせる顔がない。
「それじゃあ…」
蓮はカップの中に残るわずかなコーヒーをグイッと口の中に含み、男性に向けてこう言うのだった。
「ブレンドのおかわりを」
「フフッ、承った」
●○●○
「ちょっと、アンタ! なぁ〜にさっきから人様の顔をじっと眺めてんのよ! そんな暇あんなら働けっ!」
喫茶リコリコ、厨房にて。
ミズキからそんな言葉が飛び交う。
普段ろくに働くこともなければ、酒瓶を丸々一本空ける勢いで堂々と飲んでばかりな奴がどの口を、と思ったがぐっと呑み込む。
「うっせ、今はもうオーダーないし。ちゅーかそんな見つめてないわ!」
と言いつつも、ついつい見入ってしまったのは本当だ。カウンター席に座り、先生と何やら話し込んでいる様子。
制服を着ているところを見るに学生ではあるのだろうが、妙にコーヒーを啜るのが様になっている。
黒髪の癖っ毛に黒縁メガネ。周囲から見たらパッとしないような、地味な印象を受けるだろう。
しかし、不思議と目が惹かれる。彼の一挙手一投足が妙に色っぽく、どこか気品のあるような…。
「——うえぇっ……!」
直後、彼と目が合う。まるで、自分の視線の気づいていたかのように、蠱惑的で不敵な笑みを私に向けてきた。
「……あんた、まさか」
「………まさか、何だよ」
「一目惚れとか言わないでしょうねぇ〜!?」
「……は、はぁ?」
「やだ、もうやめときなさいよねっ! ああいうのは地味そうに見えても無自覚に女侍らしてバレンタインとかで修羅場になるのよ。ハッ、ああ汚らわしいわーホンットに」
ミズキのマシンガンの如きリア充への愚痴が炸裂する。私はもうツッコむのすら面倒で右から左へと聞き流しておく。
「……はぁ、千束。さっきから騒がしいですよ」
従業員室の扉が開くと同時に我が相棒の声がする。
「ちゃうわ、騒がしいのはこっちの呑んだくれの方」
「何でもいいですけど。まだ店内にお客さんがいるんですから、程々にして下さい。それと千束も」
「や、だから…」
「お客さんの顔を見過ぎってことです」
たきなの言葉に意表を突かれる。さっきミズキにおんなじことを言われたばっかだったこともあるし、そんなにバレバレな程自分は彼に視線を奪われていただろうか。
「ほ〜れ見たことか。たきなにも言われてますことよ、ち・さ・と・ちゃん?」
「いや、ちがっ…!全然そういうんじゃないっての!」
「別に、何でもいいですけど。くれぐれもお客さんの迷惑にならないようにして下さいね」
「ちょっ、だから違うんだってば! あ〜も〜、たきなぁ! 待ってってぇ! 誤解、誤解だからねぇー!」
リコリコサイドは、たきなの千束呼びからも分かる通り、3話後ということになってます。
P5サイドはメメントスに行ってるので5月以降なのは確定させてます。時系列をはっきりさせないのは作者が都合良く色々書けるようにするためです。
モチベがあったら続きます。