前世記憶が蘇ったリトル・ツィイーはルビコン3から逃げたい 作:とうや
何度も書いて書き直して…全然内容が納得いかなかったまま気づいたらこんなに時間だけが…!
拝啓 お師匠様。
わたし、ツィイーは現在念願の宇宙にいます。
まぁお仕事なんだけどね。
RaDとBAWSの合同依頼で製品デモンストレーターとして私のユエユーとLoaderシリーズのフル武装セット1体ずつと宇宙に送り出された。
送り出し方法がグリッドの屋上にある巨大な貨物射出用リニアカタパルトキャノンでの偽装宇宙船連続打ち出しってやべーと思うの。*1
まぁギリギリ生きてるからセーフ、でもこんな作戦思いつくのRaDのカーラ姐さんか実はかなり脳筋なドルマヤン師匠ぐらいだと思う。*2
半ば放棄されていたグリッドのカタパルトは使い捨て前提で、リモート操作。
私以外にも2人打ち出されたけどどちらも衛星砲でお陀仏。
私は途中で操船に切り替えて回避できたの本当に運が良かったと思う。
成層圏を離脱しグラブジャンプ*3可能な所まで行ったら即座にリアクター*4の出力をシールド*5を最低限にしてグラブドライブに残り全部投入。*6
ジャンプ先は予めセットされていた太陽系第三惑星地球の衛星である月だ。
地球は人類発祥の星であったが、度重なるグラブジャンプ実験により磁気圏とかいうのが引き裂かれて大気が維持できなくなり今では僅かに遺跡が遺る枯れ果てた砂漠の星だ。
そういう話は知っていたが実物を見てしまうと前世の地球を思いただ寂しさを感じる。
「合流は月軌道上のノヴァ・ギャラクティックのスターヤード?*7
あぁスターヤードって整備工場みたいなもんだっけ?」
ある程度勉強したことはあるけど、実際にはルビコン3に閉じ込められてたから今までスターヤードとは縁がなかったんだよね。
リアクター兼グラブドライブの燃料であるヘリウム3は割とギリギリ、どこかで補充するべきだけど今はAC複数機運べるサイズの大型輸送船*8を駆る不審者だ、下手すると撃墜されかねない。*9
「月にヘリウム3の補充できる場所があるといいけど*10」
船をゆるゆると進めると放棄されてしばらく経つのか随分と廃れた雰囲気を出すスターヤードを発見した。
歴史上初のスターヤードのはずだが今や駐留しているのは自分の使う船よりやや大きいと思われる大型武装輸送艦一つだけだ。
その周辺をACが2機哨戒している。
機体はLoaderだから恐らく積荷の受け渡し相手だろう。*11
うろ覚えのパネル配置の中から通信ボタンを探しポチっと押す。
「こちらリトル・ツィイー。ハンドラー・ウォルターはいますか?RaDのカーラより荷物のお届けです。引き渡しはどうします?」
『こちらハンドラー・ウォルターだ。4番ベイがまともな状態だ。そこに船を
その言葉に反応したのか哨戒中のLoaderのカメラアイがぐぽんと光った*12気がした。
「了解。こっちは宇宙船素人でね、まごついても許してね」
『……』
特に返事はなかった。
ドッカーとベイの接続にまごつくもなんとか30秒程度で接続し、カーラから預かっていたスレート*13を片手に移動する。
「お前がリトル・ツィイーか……随分と若いな*14」
「よく言われるよ、ハンドラー・ウォルター。……でも、貴方の所の猟犬も私とドッコイじゃない」
「荷物のリストとコレはあなたのルビコンにいる友人からメッセージだ。荷物は承認のサインもらったら受け渡すけど、荷物の卸先はそちらの船?それとも一旦スターヤードの倉庫エリアに?」
「スターヤードの倉庫に送れ。積み込みはこちらで行う」
ポチポチと操作パッドを弄るとACの入ったコンテナがスターヤードのクレーンで掴まれ船体から分離し、倉庫エリアに送られた。
ACを載せれる宇宙船を預かるにあたってカーラ姐さんから必須とされた超詰め込み授業は地獄だった。
宇宙力学や宇宙船パイロット技術に加え、宇宙船に使われる各種科学技術やテクニック等も詰め込みは本当にきつかった。
なんせ髪の毛が一部白髪出ちゃったぐらいだし。*15
今ならUCや自由恒星同盟公認のクラスCパイロット試験や各種技術者試験もいけるわ。*16
「それでリトル・ツィイー。今後の仕事予定は空いているか?」
「フリーだよ。強いて言うなら傭兵仕事か運び屋でもして稼ごうと思ってるぐらい」
それを聞いてウォルターは少し考えてから何かを決めた様だ。
「しばらく雇われるつもりはあるか?ACでの戦闘或いは輸送船の運転だ。カーラからの私信では随分と評価が高いようだ、彼女が認めた実力はぜひ味方に欲しい」
「うーん……」
少し考えてからウォルターの提案に頷いた。
せっかくのカーラ姐さんの伝手だ、世話になるつもりで行こう。
「センサーに感あり。618、船のレーザー機銃で援護するから敵が乱れたところに斬り込みだよ!」
傭兵業は最初AC乗りとしていこうと思ったのだけど、ウォルターの提案でチームを2つに分けることになった。
仮称アルファチームはウォルター率いる連携重視の617(前髪ヘアピン),619(後頭に大きなリボン),620(ヘアバンド)。
仮称ベータチームは私が補佐する単機突破能力の高い618(後ろ髪を紐でまとめてる)だ。
彼女たちの共通点は白髪というか銀髪?でUー140*17って感じ。
そして共通点はそこいらの凡百の傭兵よりは強いけど、ある程度以上のAC乗りとしてはフレディ以下かな?*18
宇宙船とACでは宇宙においては宇宙船がハッキリと有利だ。
理由は実にシンプルで宇宙船の巨体がシールド張って体当りするだけでACをはじめ大体の小型艦載機は破壊出来る。
だが、大気のある居住可能惑星では宇宙海賊ですら守る基本航宙法により宇宙船の推力やシールド出力に制限がかかり、軍の戦闘艦であっても厚い装甲と搭載火器で守る以外の選択がない。*19
だからこそ、地上では様々な機動兵器が活躍する。
そしてACやMT等の機動兵器は全部ひっくるめてメックと呼ばれることがある。
前世感情を考慮しないでもAC乗りとして雑に扱われてるようで腹立たしいモノがあるが、政治家や民衆はどれも一緒に感じるのだろうか?*20
今回は618の支援で比較的近距離での援護をしているが、そもそも艦載兵器は射程が短い方でも800はある。
支援射撃だけでも相手からすればアウトレンジにもほどがあった。
『斬り込む』
レーザーを撃ち込んだ地点に618が突撃するのを見て指をトリガーから離して即座にレーダーとコンソールを確認する。
「ドローン射出。情報支援リンク構築。*21618、ACに周辺地形情報と索敵情報をリンクするわ。UC*22の機動兵器は片っ端から落としなさい」
『了解。618、敵を駆逐する』
それから幾らか情報支援をしたくらいで戦闘は終了した。
ウォルターの猟犬はそれなりに強いね、MT相手なら大きな不安は無さそうだ。
『敵反応なし。………ツィイー?』
「ん。ドローンからの索敵にも反応なし。作戦完了。回収に向かうから現在地でたい……索敵範囲にACと思われる反応とクラスB以上の艦艇3隻!挟撃する形で618のいる場所めがけて接近中!情報をリンク」
『ツィイー、どうすれば良い?』
618が無表情のまま問う。
「ミッションは完了しているんだし、直ぐに離脱すべきね。ACだけならともかく、クラスB以上の艦艇3隻はあなたも私も装備が悪い*23、相手できないわ。合流地点をマークするからその場を離れ合流して頂戴。彼等に付き合う必要はない。とは言え…ハンドラーウォルターには貴方の選択を尊重して欲しいと言われてるけど……どうする?」
『……離脱する。今の戦力で迎撃は不可能と判断する』
「それが正解ね。逃げるだけならともかく、迎撃は輸送艦が墜とされるわ。合流ポイントをマークするから移動して。合流次第直ぐにこの星から離脱してグラブジャンプで2つ星系移動を挟んでからハンドラー・ウォルターと合流するわ」
『了解』
618が離脱を選んでくれてよかった。
流石にこの状況で戦闘するとBクラスの戦闘艦3隻を相手に武装も機動性も乏しい輸送艦じゃ自殺でしかないからね。
タイマンだったら絶対勝てるんだけどね…。
ゴゥンと衝突音がして艦が揺れる。
【所属機の着艦を確認。格納要請を確認。格納シーケンス開始】
「618,このままこの星を出るわ。大気圏離脱まではAC内で待機してて」
『了解、待機する』
あっという間に成層圏を離脱したが、戦闘艦……解析結果からエクリプティク艦3隻はまだ追いかけてくる。
流石にACは成層圏まで出ては来ていない。そこまでの上昇できる性能は普通のACは持たないから当然だ。
「ちっ、しつこいわね」
パチパチとリアクターのエネルギー配分をいじり、武装を0、シールドの分量を減らしグラブドライブを最大出力、残りをエンジンにすべて回す。
その間にも攻撃が飛んでくるがこれは必死に回避する。
「流石にちょっと安定しないわね……予約してたジャンプ先をセットして…早く早く…!」
グラブジャンプで必要なエネルギーチャージは僅かに時間がかかる、ジグザグと左右上下に斜めととにかく動き回って回避軌道を繰り返してジャンプ可能領域まで移動し、待つ間に相手の攻撃が幾つもシールドを叩きシールド残量35%まで落ち込み肝が冷える。
「3、2、1・・・グラブジャンプ、GO!!」
ぐにゃぁあと船外の光景が歪み滑るように船が一挙に進んでいく。
その光景を地上から最大望遠で見送った敵AC…ACエンタングルのパイロット、スッラはため息一つで見送った。
「随分と逃げ足の速い猟犬だな、ハンドラー・ウォルター……いや、逃げを選ぶのが奴以上に早い。オペレーターは別か」
『こちらエクリプティク。標的はグラブジャンプで逃げたが、追うか?』
「追撃は不要だ。向こうも連続ジャンプ*24で逃げはうっているだろう、追うだけ燃料の無駄だ。依頼は失敗、だな」
スッラは自身の輸送機を呼ぶと機体を乗り込ませ次の依頼に向けて移動を開始した。
「ルビコン、懐かしい因縁だ…お前も来るのだろう?ハンドラー・ウォルター」
ルビコンが燃えた日、己の中にあるあの日燃えた筈の残滓が未だに燻ぶっているのをスッラは久方ぶりに感じてた。