ようこそ綾小路主義の教室へ   作:ぬわぬーん

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初投稿です。
綾小路くんが入学を許可された世界線で、基本本気なのでぶっ壊れDクラスになるかも...


入学~中間テスト
[1話]3年も自由をいいのか?


「清隆、待機の命令は分かっているな、だがホワイトルームは少しだけ方針を変える、高校というものに行ってもらう」

 

急になにを言っているんだと思いつつも、ここでのこいつの命令は絶対

 

「分かった、詳細は?」

 

「あとは松雄に聞け以上だ」

 

男はそれだけ言うと去っていった。

 

ようやくすると、3年間高校に通う、俗世間というものを学ぶ、そして最後に勝つこと、ここで一つ疑問だが、俺の持っている知識の中では高校とは競うものではない、もちろん受験競争、体育祭この辺りは競うことになりそうだが、少し弱い。おそらく何か特殊な学校なのだろう「自由」なんて夢見たな俺も…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然だが少し俺の奇妙な話について聞いてほしい

 

先日まで幽閉状態だった人間がどうすれば友達や彼女を作れるのか偉大なGoogle先生に聞いてみたがよくわからなかった、人心掌握や洗脳の類であれば簡単なのだがそういうわけにもいかないらしい。

 

「あーどうす『席を譲ってあげようと思わないの?』

 

びっくりした、そういえば俺は今バスに乗っているんだった大きな声に現実に引き戻された俺は回りを見る、数人、社会人風の人もいれば少し年老いたお婆さんもいる、だが大半は俺と同じ綺麗な制服に身をまとった学生ばかりだ。

 

そういえばいまから行く学校は寮生活で外へ出れないんだったな新入生つまり俺と同じ1年生ばかりだろう、そして問題はその辛そうに立っているお婆さんと優先座席に足を組んで座っている金髪のことだろう。

 

「そこの君お婆さんが困っているのが見えないの?」

 

OL風の女性は優先席を譲ってほしいらしい。

 

「実にクレイジーな質問だね、レディー」

 

金髪は無視でも怒るでもなくそう返した。

 

「何故この私が、老婆に席を譲らなければならないんだい?」

 

なるほどこの金髪はただの馬鹿ではないらしいこの後の展開を予想しながら立ち上がり言うことにした。

 

「ここ座りますか?」

 

「あなたねぇ高校生でしょ、大人の言うことを聞きなさい!」

 

高校生に煽られて周りの声が聞こえないらしい

 

「あの、お姉さん落ち着いてくださいあちらの席の方が変わってくれるそうです」

 

次は俺たちと同じ服をきた少女がそう言う

 

「ありがとねぇ」

 

お婆さんは俺たちにそういうとOL風の女性は溜飲を下げたのか軽く頭を下げ前を向いた。

 

立ってつり革を持ちながら先ほどの金髪の少年を見るとすでにイヤホンをつけて回りに爆音を漏らしていた、なんというかすごい少年だな、これが普通の高校生ではないだろうと普通とはかけ離れた俺は思った。

 

 

バスから降りて、周りを見渡しここが3年間過ごす場所かどんなところなのかあの父親のことだ、なにがあっても驚きはしない。

 

「ちょっと待って!」

 

門をくぐろうとした足は止められた

 

「さっき、バスで席を譲ってくれた人だよね?」

 

あぁさっきの

 

「あぁ長引きそうだったからな別に立ってもよかったから代わった」

 

少し裏はあったが嘘ではない

 

「代わってくれてありがとう!お婆さんも喜んでたと思う! えっと…」

 

少女はそこで言葉を切ると、俺の頭からつま先まで見下ろした。その服装から、目の前の俺が同じ学校の生徒だと分かっているのだろう。ここは名前か?

 

「あー綾小路清隆だ、同じ一年だよな?よろしく頼む」

 

「私は櫛田桔梗、よろしくね綾小路君っ!」

 

バスの席一つでかなりのおつりだなとその顔を見て思う

 

「一緒にクラス確認しにいかないかな?」

 

「あぁ同行させてもらう」

 

誘いに応じたので隣にちょこっと駆け寄ってくる。

うまいな…人との距離の取り方がうまい自分の容姿と嫌がられないことをしっかりわかっている。

 

「さっきの話に戻るんだけどさ、すぐに席をあの人が譲らなそうだから動いたんだよね?誰にでもできることじゃなくてすごいな思ったよ!」

 

「それを言うなら櫛田もすごいだろ、あのOLの女性が少し冷静を欠いていたのを見て、どう対処すればいいのか分かっていただろ、あれも簡単にできることじゃない」

 

これは本心だあの場を一言でうまくまとめた

 

「そうかな、ちょっと余計だったかなと不安だったんだ…」

 

そう言う櫛田は少し不安な顔をみせた。

 

「そんなことはない俺の言葉を届いてなかったし、あの場の空気も最悪だった、だが櫛田のおかげで皆ほっとしてたさ」

 

「そ、そうかな~えへへ」

 

照れくさそうに言うその姿は誰もが見惚れる顔をしていた。

 

「あぁ今頃あのバスいた人は皆、櫛田が女神に見えているだろうな」

 

少し大げさにそう言ってみた。

 

「言い過ぎだよ~でも綾小路君にもそう見えたってこと?」

 

笑いながらそう聞いてくる冗談だと

 

「もちろんだ、櫛田は女神だな」

 

真顔でそう言った。

 

「もう~綾小路君女神なんてからかってるでしょ?」

 

どう返すか A 冗談だ B 女神も霞んでしまうくらいだ 悩んだ末俺は

 

「からかってなんかないぞ、櫛田は女神さえも霞んでしまうくらい可愛い」

 

やばい、これは褒めすぎたか..?

 

「っく~! 綾小路君言い過ぎだよ!」

 

案外、満更でもない様子だし櫛田は褒められなれているのかもな、ただここは少し軌道修正をしないとな

 

「女神様、クラスの確認に行きますよ」

 

少しおちゃらけてそう言うと

 

「うむ、行こうか綾小路君!」

 

それは女神なのかという突っ込みはせずに二人で歩いて行った。

 

 

 

 

「あ、私Dクラスだぁ~」

 

櫛田は自分のクラスを見つけたようだ。

 

「俺もDクラスだった」

 

お互いDクラスということを確認できると、櫛田はニッコリと笑い

 

「よかった~綾小路君と同じクラスだ」

 

「俺も櫛田と同じで嬉しい、入学早々ボッチ回避はありがたい」

 

「綾小路君、中学とかはお友達が少なかったの?」

 

「ちょっと親が厳しくてな学習塾のような施設に入れられていたんだ」

 

軽く誤魔化したが、変な言い方だったのか少し申し訳なさそうに

 

「あ、ごめんね、変なこと聞いちゃって」

 

「いや、俺の言い方が悪かった気にしないでくれ」

 

その通りだ、櫛田には俺がイジメや虐待の線が見えたかもな

 

「高校からは友達もたくさんできるよ、だって綾小路君優しいもん!」

 

優しいか、まぁ櫛田と友人関係ならば俺にもおこぼれが来るだろうな、そんなことを話していると教室に到着していた。

 

ここが教室か初めて見る景色に感動する。

 

「ん?」

 

ふと視線を感じるホワイトルームでの記憶が思い出されるが、これは少し違うな機械的な・・・周りを見渡すと見つけた。

 

「(監視カメラか、しかもこれは四方に一つずつまだあるな、いじめ対策にしても多すぎる」)

 

「どうかしたの?」

 

櫛田が心配そうにそう言う。

 

「いや、なんでもない」

 

ここはごまかそう

 

「じゃああとでね」

 

あとでねか、社交辞令てきなやつなのだろうが悪い気はしない

 

「あぁ」

 

俺の席はと探していると一番後ろだった、五十音順で一番前だと思っていたのでこれは嬉しい誤算だった。隣は櫛田とは違うタイプの美人が文庫本を読んでいた。

 

櫛田という協力な知り合いができたとはいえ、友達は多くほしい、俺が前の席の少年は話しかけてほしそうに見える、だがここで考える、もしかしたら彼は実は孤高のソロプレイヤーで、俺は独りが好きなんだ! とか言われるかも…。そうなったら泣きそうだ。

 

いやだがそれは俺の妄想で櫛田だって…いや櫛田が特別なのであって…

だ、駄目だいろいろ考えているとおかしくなりそうだ。

 

そんなことを考えていると前の少年は、他の生徒に話しかけられ嬉しそうにはにかんでいた、そして浮かべる勝利の笑み。

…なるほど彼は友人作りに成功したのか

 

「羨ましい…!」

 

気を取り直して隣の美少女に話しかけてみる

 

「はじめまして。オレの名前は綾小路清隆。これからよろしく頼む」

 

おお我ながらこれは悪くない自己紹介なのでは、さきほど櫛田とした会話に感謝しつつ相手の言葉を待つ。

 

「……」

 

…返事は無言だった。

 

聞こえてないのかと思い少し腹に力を込めて、もう一度口を開く。

 

「俺の名前は綾小路―」

 

「聞こえているわ」

 

「なら名前を聞いてもいいか?」

 

「拒否してもいいかしら」

 

「そうは言ってもな。隣人の名前を知らないのは学校生活に支障を来すと思うんだが」

 

「私はそうは思わないわ」

 

冷たい一言とともに椅子を引く少女、その姿勢は美しく教科書通りの座り方からも育ちの良さが垣間見える。

しかし困るな、これ以上会話して彼女を不快な思いをさせるのも良くない、ここは一度様子を見て時間を空けるべきかとチラチラ様子を伺っていると。

彼女はため息をはくと共に

 

「堀北鈴音よ」

 

「えっ…」

 

突然の返答に声が漏れる

 

「名前よ、そんなこともわからないのかしら」

 

侮蔑交じりの言葉少しだけ困惑するが、彼女…堀北は生来こういった性格なのだろう。

良くも悪くも素直か。

この流れに乗じてさら言葉を続ける。

 

「一応オレがどんな人間かというと、趣味は特にないが、昔から習い事を多くやっていて、ピアノ、茶道、書道なんかもやってた勉強やスポーツもそこそこやっていて得意だ、よろしく頼む。」

 

「そう。会話の下手さの割にいろいろできるのね」

 

「まだほとんど会話していないのにひどい評価だ」

 

「私は裏表ない性格だから。思ったことはすぐに言うのよ」

 

…そうですか。

 

と次の言葉を考えていたその時だった。

始業のチャイムが教室内に響き、それとほぼ同時に一人のスーツ姿の女性が現れる。

 

彼女は正しく社会人といった具合にきっちりスーツを身に纏っていた。ただ、胸の大きさは隠すことが出来ておらず白い肌が露出している。

 

外見だけで判断するなら、堀北と同じような性格だろうか。つまり優等生。歳は三十に届いているかいないか。やや長い黒髪を後ろに束ね、ポニーテール調といった具合にしている。

 

この学校の関係者であることは間違いない。

 

予想するに、彼女が担任だろう。

 

彼女が教卓に向かう数秒の間に、席から立っていた生徒たちは慌てて自分の席に戻った。

 

「新入生諸君。私はこのDクラスを受け持つことになった茶柱佐枝だ。担当科目は日本史だ。当校では卒業までの三年間クラス替えはしない。よって、私たちは三年間共に過ごすことになる。よろしく。今からおよそ一時間後に入学式が行われるが、その前に当校の特殊なルールについて説明をしたいと思う。まずはこの資料を配布したいので、前の生徒は後ろの生徒に回してくれ」

 

クラス替えに密かに憧れていた俺は打ちのめされつつも先生の話に耳を傾ける。

 

そう言いながら茶柱先生は一番前の席の生徒たちに見覚えのある資料を渡し、そう指示してきた。

 

確かあれは、入学決定後……合格通知と共に送られてきたものだ。

 

この高等学校は、全国各地にある高等学校とは異なったルールが敷かれている。大前提として、生徒は在学中、学校が用意した寮で寝泊まりしなくてはならない。ここまでは寮がある学校とさした変わりは無いと思うが、違いはここからだ。

 

生徒は在学中、特例を除き外部との接触を禁じられている。

 

つまり家族との連絡は不可能。

 

さらには、学校の敷地内からの外出も禁じられている。

 

しかしその反面、政府主導で建立させただけはあるのか、生徒に不満を覚えさせないように手配されているのも事実だ。具体的にはカラオケやシアタールーム、カフェにブティックといった娯楽施設や、コンビニエンスストアにスーパーといった施設も存在するらしい。

 

そして最も異質なものがある。Sシステムの導入だ。

 

「今から配る学生証カード。このカードにはポイントが振り分けられており、ポイントを消費することによって敷地内にある施設の利用や売られている商品の購入が可能だ。まあ、クレジットカードのようなものだと思えばいい。敷地内で買えないものはなく、また、学校内でもそれは同様だ」

 

学生証に振り込まれているポイントは1ポイント=1円の計算になっている。

 

理由は分からないが。

 

紙幣を持たせないことで金銭に関するトラブルを未然に防ぐつもりなのか…あるいは、それとは別の目的があるのか。

 

兎にも角にも、ポイントは学校側から無償で提供される。

 

「ポイントの使い方は簡単だから迷うことはないだろう。もし困ったらその場にいる職員に尋ねるように。それからポイントは毎月一日に振り込まれる。今現在、新入生のお前たちには10万ポイントが振り込まれているはずだ。無いとは思うが、もし足りなかった場合は申し出るように」

 

茶柱先生の言葉に、オレたち生徒はざわついた。

 

彼女の言う通りなら、オレたちは現時点で、10万ポイント─つまり、十万円という大金を得ているのだ。

 

学生のオレたちにとってその金額は凄まじい効果を生み出す。

 

思い思いに周りの生徒と共に言葉を交わす生徒を、茶柱先生はおかしそうに笑った。

 

「意外か? 最初に言っておくが、()()()()()()()()()()()()()()()。倍率が高い高校入試をクリアしてみせたお前たちにはそれだけの価値があるということだ。若者には無限の可能性がある、その評価のようなものだと思えばいい。ただし、卒業後はどれだけポイントが残っていても現金化は出来ないので注意しろ。仮に100万ポイント…百万円貯めていたとしても意味は一切ない。ポイントをどう使おうがそれは自由だ。男子だったら最新鋭のゲーム機が売られているぞ? 女子だったら様々な服屋があるぞ? 自分が使いたいように使え。逆に使わないのも手だな。もしいらないのならば友人に譲る方法もある。…ああ、苛めはやめろよ? 学校は苛めに敏感だから、もし発覚したらそいつは問答無用で退学処分となるからな。では、良い学生ライフを過ごしてくれ」

 

茶柱先生はそう締め括って、やることはやったとばかりに喧騒に包まれる教室から立ち去った。

 

どうやら彼女は、生徒にそこまで興味が無いのかもしれない。いや、それはオレの考えすぎかもしれないが。

 

だがいずれにしても…。

 

「思ったよりも堅苦しい学校ではないみたいね」

 

一瞬オレに声を掛けてくれたのかと期待したのだが、顔をこちらに向けているわけではないので違うと判断した。

 

確かに堀北の言う通りだ。

 

オレ個人の意見を述べさせて貰うとするならもの凄く緩い。

 

もちろん制限はある。三年間の寮生活に、家族との隔離。しかしこれは俺にとって嬉しいことだ。

 

けれどそれを帳消しにする学校のシステム。周辺施設に不備はないだろうし、何より毎月十万円の大金が無償で贈られるのだ。

 

そして東京都高度育成高等学校の最大の魅力は、就職率、進学率共にほぼ百パーセントのところ。

 

国主導で作られたこの高校は、生徒が望む道に応えるのだとか。

 

事実、学校側はそれを大体的に告知しているし、卒業生の中には世の中を賑やかせている有名人もいる。そして有名人の分野は幅がとても広い。

 

普通の高校だったら必然と一つの分野に絞られるのだろうが、この高校にはそれは当てはまらないのだろう。それだけの力があるのだ。

 

在学中は夢のような日々を毎日送れる。

 

卒業後は安泰の人生を歩める。

 

生徒にとって、この学校は楽園だ。

 

─だが、本当にそうだろうか? いや分かっていることだありえないと。

 

あまりにも腑に落ちない点が多すぎる、茶柱先生が言った言葉に嘘偽りは無いだろう。仮にも彼女は教育者であるのだから。

 

他のクラスと説明が違うのならすぐに看破されるだろうしな。

 

まず監視カメラの数、さきほどの話から苛めに敏感なのはあるだろうが、それだけの理由で何台もカメラがあるわけがない。

 

おそらくカメラで何かを見たいのだろう、生活態度、授業態度あたりか、まだ憶測でしかないが何かあるだろうな。

 

そして次に月10万円というもの、正確にはポイントだが現金と同じように使えるのだから価値は同じことだ、さきほどのクラス確認の際に、4クラス各40人ということは確認している。

 

つまり4×40で160人、三学年あるので160×3×100000=4800万ということになる。一ヵ月でだ、これを三年間となるとまずありえない、いくら有望な若者だとしてもサラリーマンの生涯で稼げる金額は3億。割に合うわけがない、おそらく何かしらの要因で増減することは、明白だ。

 

公開されている情報が少ないためこの辺りまでの予想しかできないが甘い学校ではないらしい。

 

「ねぇねぇ、後で一緒に買い物行かない? 持ってこれた私物はかなり少ないし、服でも見に行こうよ!」

 

「うん! 今だったら何でも買えるしね。……私、この学校に入学出来て良かったな〜。絶対に落ちたと思ってたもん」

 

「私も私も〜」

 

「なぁ、さっきの先生の言葉が本当ならさ。最新鋭のゲーム機が売られてるんだろ? ちょっと見に行こうぜ」

 

「もちろんだ。あのVR搭載ゲーム、売っていると良いなあ…。すぐに完売になったからな、買えなくて悔しい思いをしてたんだ」

 

「お前もか? ならさ、一緒に買って一緒にプレイしようぜ!」

 

十万円という大金を得た喜びに浸り、浮き足立つ沢山の生徒。

 

しまった、完全に出遅れた。

 

見れば、既にグループが確立されつつある。

 

隣の堀北は孤高を貫くようだがオレは違う。

 

けどどうすれば…。

 

「皆、ちょっと良いかな?」

 

オレが逡巡している中、やや大きめな声が出された。

 

誰だと生徒たちが声主に視線を向ける中、そこには数多の視線を身に浴びながらも堂々とした態度を崩さない一人の男子生徒が居た。

 

彼は如何にもな好青年で、髪も染めていないようだし、それに立ち姿も綺麗だと思う。堀北同様育ちがいいのかもしれない、ただ性格は違いそうだが…

 

「僕らは今日から三年間共に過ごすことになる。だから自発的に自己紹介を行って、一日も早く友達になれたらと思うんだ。茶柱先生の言葉を信じるなら、入学式までに一時間はある。どうかな?」

 

おぉ…! 凄いことを言ってのけたな。

 

大半の生徒が思っていても口に出せなかったことを、あの少年は口に出してみせた。

 

集団に訴えるのにはかなり勇気がいることなのに、彼は凄いな。中心人物とは彼のようなことを言うのかもしれない。

 

「賛成ー! 私たち、まだお互いの名前すら知らないしね」

 

一人の少女が賛同したことによって、流れは前に前にと進む。

 

最初に自己紹介をしたのは、やはりというか発案者の少年だった。

 

「僕の名前は平田洋介。中学の時は皆から洋介って言われていたから、気軽に『洋介』って呼んでくれると嬉しいかな。趣味はスポーツ全般だけど、その中でもサッカーが好きで、サッカー部に入部する予定だよ。皆よろしく」

 

拍手喝采。

 

イケメンにサッカーは最強のコラボだ。好感度が一気に二倍…いや、四倍にアップする。それだけの力が爽やかフェイスとサッカーにはある。

 

事実拍手自体は皆送っているが、女子生徒の拍手の度合いが凄まじい。今のたった数秒の自己紹介で、何人の女子生徒が彼に惚れたのか、想像すら難しいだろうな。

 

「もし良ければ、端の方から自己紹介をお願い出来るかな? えっと、そこのきみ。頼めるかい?」

 

「わ、私……?」

 

言葉に詰まってしまう女子生徒に対し

 

「大丈夫だよ、落ち着いて。」

 

櫛田が冷静になるように言葉をかける。やはり櫛田の能力は目を見張るものがある。

 

一連の流れに淀みが一切ない。

 

彼女はゆっくりと確実に言葉を紡ぎだしていった。

 

ちなみに、自己紹介をした彼女の名前は井の頭心と言うのだとか。趣味は裁縫らしく、編み物が得意だそう。

 

「じゃあ次は私だねっ」

 

勢い良く立ち上がったのは、井の頭を助けた櫛田だった。

 

「私は櫛田桔梗と言います。中学からの友達は一人もこの学校に進学していないので、さっき友達になった一人しかまだ友達がいません。だから早く皆さんの顔と名前を憶えて友達になりたいと思っています」

 

ちらりとこちらを見て言う。おぉ感動だあれで友達と思ってくれているとは、社会貢献万歳!

 

「私の最初の目的として、ここにいる皆さんと仲良くなりたいです。是非、皆さんの連絡先を教えて下さいねっ」

 

拍手喝采。

 

平田の時とは逆に、今度は男子生徒の拍手の度合いの音が大きい。もちろん女子もだが。

 

櫛田のようなタイプが少しだけ羨ましい。きっと中学の時は学園のアイドル的存在だったんだろうな。

 

そのコミュニケーション能力を少しでもオレに分けてくれないだろうか。無理か。

 

そこまで考え、オレは状況が切迫していることに遅まきながら気付く。

 

他人の自己紹介を悠長に聞いている場合じゃない。

 

ど、どうしよう…。

 

櫛田や堀北の時のような自己紹介をするか? 

 

でも可もなく不可もなくの自己紹介だと存在感が消える気が…いやでも、それもありのような気がしなくもないような…。

 

オレが悩んでいる間にも、非情にも自己紹介は続いていく。

 

「俺の名前は山内春樹。小学生の時は卓球で全国に、中学時代は野球部でエースで背番号は四番だった。けどインターハイで怪我をして今はリハビリ中だ。よろしくう」

 

などと聞こえ、中学でインターハイとはハイの意味をいますぐに教えてやりたい、などと考えているともう寸前まで俺の番が来ている。許すまじ山内と密かに山内を恨みつつ考える。

 

「それじゃあ次の人─」

 

司会役としてすっかり定着した平田は次の生徒に促すが、その生徒は真正面から睨み付けることで対抗した。

 

髪の毛を真っ赤に染め上げた、如何にもな不良少年。

 

「俺らはガキかよ。自己紹介なんて、やりたい奴だけやればいい」

 

おぉ…! 不良少年は真っ向から平田に挑むようだ。

 

これには流石の平田も気分を害する…そう、思ったのだが、彼はむしろ申し訳なさそうに。

 

「僕に強制させることは出来ない。不愉快にさせたら謝りたい」

 

そういって頭を下げる。

 

「なによ、自己紹介くらい良いじゃない!」

 

「そうよそうよ!」

 

「ガキって言うけど、アンタの方がガキじゃない!」

 

平田の謝罪と同時に彼を擁護する声が不良少年を追い込む。どうやら既に、平田は一定以上の人望を得たようだ。

 

これからの学生生活を考えるのなら、不良少年もまた平田に謝罪して誠意を見せるべき場面だ。最悪、クラスの生徒全員が彼のことを疎むかもしれない。

 

しかし不良少年はますますいきり立ち。

 

「うっせぇ。俺は別に、仲良しこよしするためにここに入ったわけじゃねえよ」

 

不良少年は席を経ち教室を出ていった。それに追随するようにして数名の生徒も立ち上がる。

 

彼らもまた、自己紹介は必要ないと判断した生徒たちだ。

 

そして隣人の堀北もそのように判断したようだ。

 

「じゃあ気を取り直して、そこの君。お願い出来るかな?」

 

「…えっ? オレか?」

 

しまった堀北が抜けたため俺の番が来ていたのか、落ち着け清隆。

 

俺ならできる、櫛田が見せてくれたんだここで友達と言ってくれた櫛田の顔に泥を塗るわけにはいかない!

 

ガタッ! と勢い良く立ち上がる。

 

一人一人、これから三年間共に過ごすクラスメイトの顔を眺めながらオレは、口を開いた。

 

「えっと、綾小路清隆です。趣味は特にありませんが、得意なことはピアノに書道です。スポーツ全般が好きで特定のスポーツが好きとはないですが、運動全般が好きです。皆と仲良くなれるように頑張りたいです。よろしくお願いします」

 

拍手喝采とはいかないが、そこそこの拍手をしてもらい最低限は成功だな。

 

「よろしくね綾小路くん。ピアノが得意だと文化祭とかで活躍できるかもしれないね。一緒に仲良くなっていこう」

 

良かったうまくいって、人生で一番緊張した瞬間かもしれないな。

 

その後すぐに茶柱先生が戻ってきて、普通の高校の様に高度育成高等学校の入学式も無事につつがなく終えた。

 

高校生活最初の日は授業は無いのか、茶柱先生はSHRを早々に切り上げ解散を命じた。

 

ちなみに、SHRでは敷地内の簡単な説明と、明日からの日程についての確認だけだった。たった半日程で学校は完了したのだ。

 

七、八割方の生徒は一種の流れのように学校側が用意した寮へと向かう。自分がこれから三年間過ごすことになる部屋を確認したいという意味合いも当然あるだろうが、それ以前に他にやりたいことが見つからないのだろう。

 

俺も例にならって寮へ行くかと思っていたが。

 

「綾小路く~ん!」

 

まだ教室にはかなりの人数が残っているにもかかわらず櫛田は声をかけてきた。

 

とりあえずここは返事を返しておかないとな

 

「櫛田、なにか用か?」

 

さっそく人気者となった櫛田から来た事でクラス内の視線が俺に集まる。

 

「一番初めの連絡先は綾小路君がいいなと思って… ダメかな?」

 

各地でキャーという声と吐血の音が聞こえる。

 

「ダメ…じゃない、俺で良ければ交換してくれ」

 

「わーい、ありがとう、あとで連絡するね!」

 

櫛田はなんていいやつなんだ、やはり女神である。

 

「櫛田さん、綾小路君とは付き合ってるの?」

 

「綾小路君よく見るとかっこいいかも」

 

櫛田は囲まれて質問攻めされている。

 

「付き合ってはないよーバスで会って助けられちゃって、えへへ///」

 

「モールに行く途中で話してよー」

 

「えーじゃあちょっとだけ」

 

櫛田は女子数人とモールに行くようだ

 

「じゃああとでね綾小路君!」

 

「あぁ」

 

櫛田と女子たちが教室を出ていくと同時に

 

「「「あやのこうじ~~~!」」」

 

「いつの間に櫛田ちゃんと仲良くなったんだよ!」

 

「なんで同じ中学でもないのにそんなに仲よさそうなんだよ!」

 

男子たちがすごい剣幕で質問してくる。

 

「さっき櫛田が言ったように少しバスで話しただけだ」

 

「付き合ってないならまぁいいけど…」

 

まだ初日で付き合うもないだろう。

 

「じゃあ綾小路俺と連絡先交換しようぜー!」

 

池だったか、彼女欲しいと自己紹介で言ってたように女子好きなのだろう

 

「あぁもちろんだ池でよかったよな、よろしくな」

 

「おう、改めて池寛治だ。よろしくー」

 

この後男子数人と連絡先を交換して寮に向かうことにした、余談だが山内とも一応交換しておいた、まだ自己紹介の時に邪魔された恨みはあるもののここは山内だけ拒否するわけにもいかないしな。(邪魔はしていない)

 

 

 

連絡先の交換も終わり。

 

ほんの5分歩くと寮が見えてきた、案外近いんだな。

 

一階フロントで管理人から寮に関するマニュアルとルームキーを貰い受け、エレベーターに乗り込む。

 

管理人曰くこの学校の寮は男女共用に作られているとのこと。現代社会ではかなり異質なのではなかろうか? 

 

男子が下層なのに対して、女子は上層に部屋が設けられているらしい。セキュリティの面を考えれば妥当か。

 

オレが割り当てられた部屋は401。つまり四階だ。

 

ピポン! エレベーターが軽快な音を立てて止まる。

 

エレベーターから降りるとすぐに自分の部屋に入る。

 

まずは渡されたマニュアルを確認。

 

てっきり電気代やガス代は所持ポイントから差し引きされるのだと勘繰っていたのだが、それは違うようで完全無料-つまり国が代払いしてくれるとのこと。難しいルールもなく、比較的常識的なものが多い。

 

部屋は僅か八畳だが、別段買いたいものも特には思い浮かばない為、部屋の狭さで困ることは恐らくないだろう。

 

ベッドの上に寝転がり、窓から覗き見える青空に目を向ける。

 

今日からこの寮で暮らし、楽しい高校生活を送れる。

 

外部との接触は禁じられているが、そんなものに興味は無い。むしろ好都合…だ。

 

初日のクラス内での自己紹介は上々だ、目を瞑り今の自分の状況を確認する。

 

もしかして俺は三年間自由なのか、そう考えると自然に笑みがこぼれそうになるが、笑い方がいまいちわからないため笑ってはいないのだろう。

 

自由な日々が来るとは思ってもいなかった。

 

 

 嗚呼─自由は素晴らしい。

 

 

もう誰の目も、誰の言葉もオレには届かない。

 

やり直せる…いや、ようやく始める事ができるのだ──人生を。

 

初めて父親に感謝をしている、いや最もいままでおかしかったのは父親のせいなのだが。

 

茶柱先生の言葉を借りるわけでは無いが、良い学生ライフを過ごしたいものだ。

 

当面の目標は、クラス内でもっと友達を作ることだな。隣人の堀北とはある程度の関係を築きたい。

 

明日からの生活が楽しみで、生活に必要なものを買うのを失念していた…

 




主人公最強が好きなので綾小路くんに本気でやってもらいます!

こんな駄文をここまで読んでくれてありがとうございます。
これからもゆっくり更新していきます。
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