(性欲が)増しろ最高のバクマン   作:チームメイト

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蒼樹ダークネス

『青葉の頃』は、複数の恋愛が並行して描かれているオムニバス形式の作品だ。

 

 ただオムニバスと言っても、各キャラの描かれ方には格差があり、主人公的なポジションにいる男キャラを中心にして描かれている作品の核となる恋愛がある。

 

 主人公

 学園のアイドル

 主人公の幼馴染

 この3人の三角関係が描かれたものだ。

 

 簡単にストーリーを説明すると、学園のアイドルに一目ぼれをした主人公、その主人公の恋を応援する主人公のことが好きな幼馴染を中心に話が進む。幼馴染の手助けもあって主人公とアイドルとの距離が縮まっていく一方で、幼馴染は身を引いて主人公と距離をとっていく。

 

 手の届くところまできた高嶺の花(アイドル)と結ばれるのか、当たり前に自分の近くにいた青い鳥(おさななじみ)を選ぶのかで揺れる主人公。

 主人公の恋を応援したいけど、自分の気持ちに折り合いがつききれない幼馴染。

 主人公に惹かれていることを自覚しつつ、主人公と幼馴染の間の固い絆には敵わないことにも気づいているアイドル。

 

 蒼樹紅の繊細な心情表現で描かれた三角関係は、多くの読者を引きつけている。シュージンが言うには、アイドル派と幼馴染派に二分してネットで日夜激論が行われているとかいう話。

 

 この恋がどうなるのかは、ドラマでも当然のように主題として選ばれており、ドラマから入ったファンも巻き込んで大騒動になっているとかいないとか。

 

 ドラマは、評判となりそのクールの恋愛ドラマとしては一番の人気作とまでなっていた。

 その影響で原作も大ヒット。

 青葉の頃は一躍、人気マンガの仲間入りを果たした。

 ドラマの放送に合わせて重版が行われていたにも関わらず、それも店頭から消えて既存巻が全てもう一度刷られたらしい。

 

 どれだけ伸びたのかは聞かなかったけど、アニメやドラマのパワーを思い知った感じだ。

 

 そして、ドラマの終了に合わせて、連載が終わった。

 打ち切りではない。蒼樹さんが自ら望んで連載を終わらせた形だ。

 

「……蒼樹さんらしいといえば、らしいけど」

「もったいないとは思うけど、悩ましいよなぁ」

 

 最終回の載ったジャンプの見本誌を読みながら、シュージンと話す。

 

「シュージンならどうする?」

「うーん。判断つかねー。やり切ったって思えたのなら有りじゃねえの」

「そのあたりがなんとも言えないからなぁ」

「だよなぁ」

 

 蒼樹さんが青葉の頃を終わらせることを決めたのは、メインの恋愛が三角関係だったことに起因する。

 

 ドラマ版の出来が悪ければ、ドラマ版はドラマ版で割り切って続けるつもりだったみたいだけど、ドラマ版の出来が素晴らしいものだった。

 それ自体は良いことなんだけど、そうなってくるとドラマ版の青葉の頃で生まれたファンの扱いが難しくなってくる。

 

 というのも、ドラマ版はドラマ版で三角関係のままフワッとしたまま終わるのではなく、ドラマ版のファンに向けた決着が描かれたからだ。

 

 ドラマ版で決着している三角関係をマンガ版では未定のまま続けるのかどうか。

 結ばれるヒロインを変更してしまうとドラマ版のファンに対して不誠実になるし、だからといってドラマ版の結果で選ばれるヒロインが分かっているのに、三角関係を続けるのも難しい。

 

 それを解決するために、ドラマ版の最終回に合わせてマンガ版も終わらせる。

 

 誠実に漫画を描いてきた蒼樹さんらしい選択だとは思うけど、思い切ったなぁ、というのが素直な気持ちだ。

 

「タイミング的にも、良いタイミングだったって」

「高校生と大学生じゃ同じようにはできないってのも分からなくもないけど。だからって、わざわざジャンプスクエアに移籍しなくても」

「大学生になって、キスまでってわけには、いかないじゃん」

「週刊少年ジャンプの限界って、そこまでだっけ」

「いや、そういうの把握するのは、話作りのシュージンの担当だろ。担当と話したりは?」

「そういう話を描くわけでもないのに、いちいち聞いたりしないって、気まずいだろ」

 

『TRAP』も『PCP』も、ヒロインこそいるけど、恋愛要素はほとんどない。

 亜城木夢叶がジャンプのレーティングで引っかかったのは、エグさ方面でやり過ぎないようにってのがメインだ。

 寝取りマンガを描こうとして止められたこととか記憶に新しい。

 

 蒼樹さんは、ジャンプのレーティングを回避するために、ドラマに合わせて一度終わらせて、移籍してリスタートという選択を取った。

 

 週刊少年ジャンプの『青葉の頃』の連載は、この号のジャンプで終了する。

 そして、来月からはジャンプスクエアに移籍して、高校が舞台だった青葉の頃の大学生活編を描く『紅葉の季節』がスタートだ。

 学園のアイドルと付き合うことになったその後が描かれる予定らしい。

 

 ジャンクスクエアの方が対象年齢が上で、レーティングが甘くなるというのが移籍する理由だ。

 

「ちなみに、移籍して仕切り直すって聞いた時に『青葉の頃 ダークネス』はどうかなって、提案してみたけど、蒼樹さんに却下された」

「当たり前だろ。つーか、ダークネスに限界突破とかエロやりますって、意味はねえよ」

「マジで!?」

「たぶん……自信ないけど」

 

 知らなかったが、そういうことらしい。

 蒼樹さんに、苦笑いで却下されてしまった。

 

 おかしい。大学生活編でキス以上を描くつもりなら、ダークネスで正しいはずなのに。

 もしくは青葉の頃トライアングルか。

 

「にしても、週刊少年ジャンプで移籍って珍しくね?」

 

 本人から直接聞いた僕とは違って、シュージンはまだ引っかかっているみたいだ。

 

「うーん、過去にも無いわけじゃないらしいけど、あんまり知らないかも」

 

 有名どころでは、ジョジョの奇妙な冒険や、D.Gray-man、ワールドトリガーあたりか。

 移籍して続編形式で仕切り直してだと、るろうに剣心やテニスの王子様が該当する。

 

「ってジャンプのレーティング問題は、他人事じゃないじゃん。どうする?」

「よりにもよって俺たちが審査のときに、こんな作品かよ」

「そこは狙ったんじゃね?」

「だよなぁ。誰が審査するのかは、先に発表されてるし、この作品が亜城木夢叶向きの作品なのは、間違いないし」

「七峰くんは僕達のファンっぽいしなぁ」

 

 僕とシュージンが頭を悩ませているのは、月例賞(トレジャー)の審査だ。

 連載が長く続くと順番に回ってくるので、避けられなかった。

 

 とはいっても、本来はそこまで大変なものではない。

 僕たちに回ってくる最終候補の時点で、一定の基準は突破した作品なので、誰もが分かるようなずば抜けた作品でもなければ、気に入った作品を選ぶ程度だ。

 

 問題なのは、今回に限って誰もが分かるようなずば抜けた作品なのに、ジャンプのレーティング的に邪道すぎるって作品が入っていたことだ。

 

 作品の出来だけなら圧倒的、その上でエグさも圧倒的。

 おまけで、読切を送ってくるべきトレジャーに10話分の投稿というやりたい放題。

 

 亜城木夢叶好みの作品ではあるけど、ジャンプの賞レースで選んでいいものか。

 

「この作品を評価できますかって、試されているような感じじゃね」

「……ノーコメントで」

 

 そして、そのマンガを描いてきたのが、亜城木夢叶のファンだった。

 ファンレターを何度も送ってきてくれている子で、名前を確認したから間違いない。

 

 亜城木夢叶は、ジャンプ作家に適合させているけど、適合させずに好き放題シュージンに話を作らせたら、この『真実の教室』みたいな作品ができるのかもしれない。

 

 亜城木夢叶のファンが亜城木夢叶のフォロワーとして、殴りこみにきたみたいなもんか。

 

「僕達は、漫画の評価をするだけで賞を出すのかどうか、ジャンプ向きかは編集部が考えることでよくね? 面白かったから面白かったで評価しよう」

「それはいいんだけど、10話分で評価するのか?」

「そこだよなぁ」

 

 トレジャーのルールを守ってこなかった作品の評価。

 

 結局、編集部が10話分渡したということは、このまま評価して欲しいってことだと判断して、亜城木夢叶の採点は『真実の教室』を推して、編集部に返したのだった。

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