スター団ひこう組のボスやってるけど質問ある?   作:かわたり

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深夜テンションに任せたら既視感しかないゲストキャラが暴れ回っていた…深夜テンションの恐ろしさを味わったぜ…。



11.俺はこいつと旅に出る \ It's Pikachu!!!!!!! /

「おいおい…ボーマンダ、それにグライオン?

冗談じゃねえ、前者はともかく後者はパルデアに居ないはずだぞ!」

 

「ふふっ、林間学校の時にちょっとね。」

 

シンニが保有する5匹のポケモンの登場により、堅牢な壁を彷彿とさせる存在感が周囲を満たす。空気は瞬く間に張り詰めていた。

それは彼のボーマンダが『いかく』していることも一因なのだろう。

相対する者たちは自ずと萎縮していた。

 

「ルチャブルは『ファストガード』、ウォーグルは『おいかぜ』、ボーマンダはジャラランガに『りゅうせいぐん』グライオンはニューラに『ほのおのキバ』」

 

当然、彼はその隙を見逃さない。

素早く下された指示を4匹は迷わず実行する。

ファストガードはペルシアンとニューラによる『ねこだまし』と『こおりのつぶて』を防ぎ、おいかぜは後続の飛翔する仲間に文字通りの恩恵を齎した。

それだけでは終わらない。

ボーマンダはりゅうせいぐんによってジャラランガを、グライオンはほのおのキバによってニューラを一撃で瀕死にしてみせた。

 

シンニは相手の戦略さえも利用する。

相手のコータスの『ひでり』によって晴れ渡っていた空の下、グライオンのほのおのキバはより強力になっていたのだ。

 

「デリバード、『ゆきげしき』」

 

更に、その天候はデリバードのゆきげしきによって塗り替えられてしまった。

コータスの使い手は恩恵を受けられないことに苛立ちを覚える。

シンニのポケモン達の繰り出す技が、周囲の建物に被害を出さないよう手加減されている事実も、更に彼の怒りを駆り立てていた。

 

「くそっ!おい!ルール無用の野良バトルだぞ!何故こんなに早く対応出来る?!」

 

「まあポケモンの数は向こうと大差あらへんけどな…にしてもイッチのやつ。ダブルバトルの知識もあったとはなあ」

 

「あっという間に2匹持ってかれるとは。このままじゃいいとこなしで終わるぞ俺たち」

 

ポケモンバトルを始めて間もないアオイにも、この現状が何を意味しているのか理解出来た。

数では上回っているも関わらず、彼らはシンニの手の広の上で転がされている。

つまりは醜態を晒していることに他ならないことを。

 

「ひょっとして私…凄いもの見てるんじゃ」

 

今になってアオイは実感する。

実力あるトレーナーの勇姿を目の当たりに出来ている事実。

それはチャンピオンを目指す駆け出しトレーナーからすれば、物凄く貴重でありがたい機会なのではないかということを。

彼が変人である点は少々癪ではあるけれど、後学のためにもしっかりと目に焼き付ける必要がある。

高揚とする気分とは裏腹に、彼女の目つきは険しさを増している。

言葉通り、この勝負から目を離したくなかったのだ。

 

「…ピカチュウ?」

 

それはピカチュウも同様だった。

釘付けになったようにシンニと集団のポケモン勝負を眺めており、尻尾を見やれば戦いに合わせブンブンと振り回されていた。

 

「(興奮してる…?それとも戦いのシミュレーション?)」

 

テレビに映るポケモントレーナーの姿にはしゃぐ子供。そんな印象を感じ取ってか、アオイは思わず微笑んでしまった。

 

 

 

「えぇ、その意気ですよご友人たち。諦めるには時期尚早かと」

 

不意に告げられた一言に、その場の一同が注目する。シンニと相対するスレ民達の背後。

そこには柔和そうな男が佇んでいた。

同様に佇むグレンアルマとの距離感から、彼のポケモンなのだろうとシンニは見抜く。

 

「確かに彼らの機動力と制圧力は驚異です。

しかし、後手に回るというのは必ずしも悪いことではないでしょう。ご友人達も既に理解している筈」

 

更に、彼が話すだけで先程まで漂っていた敗北ムードはいつのまにか払拭されている。

それがカリスマ性と狂気のどちらが由来かはわからないが、何にせよ彼らのバラバラだった歩みは揃いつつあった。

 

「エルレイド!展開せえ!」

 

コガネ弁の少年の指示通り、エルレイドは掌を地面に置きサイコパワーを送り込む。

蠱惑的な空間が、広がる波紋のように展開されていく。

 

「おお、この不思議な感じ…オルティガがやってたのと似てるな」

 

技の名は『サイコフィールド』。

足下からは、煙が立ち込めるようにエネルギーが湧き上がっていた。

 

「(俺の知るミストフィールドと似た効果なら、ひこうポケモンとは違い地面に居るポケモンに恩恵をもたらすことになる。

兼ねてから計画してたか咄嗟にやったかは知らんけどいい作戦だ)」

 

リードを許したことで冷静さを欠き、考え無しで反撃してくることを予想していたが結果は外れ。

相手の予想外な行動に、これぞポケモン勝負だよとシンニは歓心していた。

 

「火力を集中させて一体でも落とす!コータス、『かえんほうしゃ』!」

 

「了解!レアコイル、『10まんボルト』!」

 

そこへ割り込むように、火炎と電撃がルチャブルに襲いかかる。

瀕死にはならずに済んだものの、レベル差が無ければ十分落とされていた可能性もあった。

あと一回行動させられるか否かを判断していたのも束の間。

グレンアルマがその場から動いていないことに気がつく。

 

乱戦であるが為察知するのに遅れたが、改めて注視した。

周囲の戦いから隔絶されたように、静かに目を閉じ世界と一体化するが如く脱力している。

シンニはその技を『めいそう』だと看破した刹那、直感的に危機を感じた。

 

「グレンアルマ、テラスタル」

 

「ここで切ってくるか!」

 

眩いエネルギーの集うテラスタルオーブがグレンアルマに投げられる。

全身を宝石のような姿に変貌させると共に、頭上には瞳を模った冠が現れていた。

 

この行動を受けて、シンニの感じていた全ての違和感が繋がる。

タイプ一致とテラスタル。

サイコフィールドとめいそう。

突如として両者によって行われた連携。

足元でエネルギーが行き来する感覚。

 

「不味い!」

 

シンニは何かが起きることを予測すると、テラスタルしたそれを倒すべくポケモンたちに指示する。

しかし、総攻撃は相手のペルシアンとコータスに庇われたことで阻まれてしまった。

 

「悪いなイッチ!」

 

「野良バトルはこういうのもありなんだよォ!!」

 

当然、肉壁としての機能を終えたペルシアンとコータスは瀕死になる。

しかし、彼らが自身のポケモンを投げ打ってまで博打じみた行動をしたのは何故か。

 

グレンアルマにはこの勝負を制する手段があり、彼らはそれに全てを賭けていたということだろう。となると、彼らが一見統率が取れていないように見えたのも全て演技で、これを成功させる為の策だったというわけか。

 

「来る!みんな備えて!」

 

後悔してももう遅い。

シンニたちは来たる衝撃に備え、身構えた。

 

 

「『ワイドフォース』」

 

 

膨大な量のサイコパワーが地を伝うようにシンニのポケモンたちへ迫る。

標的の足下に到達した途端、それは間欠泉のように勢いよく吹き上がった。

サイコフィールド、めいそう、テラスタルによって威力が引き上げられているのだろう。

あたかも大爆発が起きたような衝撃が、テーブルシティを微かに揺らした。

 

「あ、あの人市街地でなんて技をってうわあああ?!」

 

近くで見学していたアオイの目の前には、こちらへ迫るように砂埃とエネルギーが吹き込んでいた。

思わず走馬灯を見そうになる程の衝撃だが、そんな場合ではない。

果敢にも、彼女はピカチュウを守るように身を丸めた。

 

「…あれ?何も来ない…」

 

しかし、いつまで経っても痛みは襲ってこない。

恐る恐る目を開けると、周囲は静まり返り、視界が晴れている。

前方を凝視すると、奇怪な光景がそこにあった。

虹色に光る膜が、このポケモン勝負に参加する全ての存在を覆うように、ドーム型で展開されていたのだ。

それと同様に、輪郭を境界にした形でシンニの各ポケモンたちも覆い守られている。

 

「あっぶなあ、デリバードの捨て身の『オーロラベール』がなければ今頃全滅だった!」

 

オーロラベール。

それは特定の天気でなければ成功しない変化技であり、物理、特殊技関係なく味方全体の被ダメージを抑えられるという条件付きであるが破格の性能を持つ。

ワイドフォースへの対抗策として、守るやワイドガードに次ぎベストな選択であったと言えよう。その判断力に、グレンアルマの使い手も思わず感動の声を上げていた。

 

「オーロラベールをポケモンの為だけでなく、周囲の建造物を守る為にも展開する…あぁ…これ程までの逸材だったとは…!

匿名掲示板…あなたはいつも私に新しい出会いをくれる…!」

 

「街中で好き勝手ぶっ放しやがってよく言うぜ。オーロラベール展開してなかったから今頃どうなってたことやら」

 

瀕死となったデリバードとルチャブルをボールに戻しつつ、シンニは目の前の人物への警戒を強める。

それはバトルの強さというよりも、彼の狂気性についてだ。

バトルフィールドでならまだしも、周囲への被害も考えず最大火力で大技をぶっ放す。

責任の所在を尋ねても自身の世界に浸っているようで何の手応えも感じない。

「今まで会ったことのない類の人物だ」とシンニは思った。

 

「スレ民の中で一番強そうに見えるけど…もしかしてコレの首謀者って君?人もポケモンも扱い慣れてるように見えるけど」

 

それ故に、心なしかシンニは尋ねてみた。

当然そう簡単に答えてくれるわけないだろうがこの際勢いに任せてしまえという思いで。

もちろんこの男が首謀者である根拠なんてない。ただただ直感でそう思っただけのこと。

しかし、彼はパァッと表情を輝かせている始末。「あっまさかの正解かよ」とシンニは一人辟易とするしかない。

 

「匿名掲示板…そしてスレッドという劇場に、あなたという来訪者(ビジター)は突然現れました。それは人々の寄せては返す波のようなルーティンを、より素敵な物にした。

ならばもてなしたい、喜んでもらいたい、私からの贈り物で。

それを叶える為に、ご友人たちにも贈り物をしたのです。いかがでしょうか、新しいご友人。

おかげであなたの望む物が今、目の前で繰り広げられている…素敵だ…グレンアルマも喜んでいます」

 

「うーん…何いってるかよくわからんけど他所でやってくんない?」

 

やけに遠回しな表現だが、要するに彼のやったことは「ポケモン勝負好きなシンニを喜ばせる為に懸賞金でスレ民を釣り、呼び出した」ことに他ならない。

恐らく金銭の損失だとか、誰がシンニを倒すかなんてことも彼からすればどうだっていいのだろう。

まさかデスゲームの悪趣味金持ち客みたいなのが実在してるとは。というかこの人の場合、自ら現場に乗り出してるのもあって尚更異常だしたちが悪過ぎる。

動機が善意なのも無駄に強いのも余計に。

というかなんでそんな足が付きそうなこと掲示板でするんだよ等とシンニは内心ドン引きするしかなかった。

 

「この勝負、俺が勝ったら…一つ頼まれてくれないか?」

 

「何でしょうか!?」

 

悪びれもしてない辺り、改めてこいつは野放しにしてはならない存在だとシンニは確信する。

自身の過去やスター団結成秘話なんて知ったら、善意でアカデミーに何及ぼすかわかったもんじゃないし。

自分が撒いた種だとしても、ハッキリと告げるしかない。

 

「こんなにも騒いだんだ。終わったらみんなでごめんなさいしに行くぞ、街の人たちに」

 

「!」

 

シンニの声を合図に、彼のウォーグルは勢いよくグレンアルマに向かって飛び出していき、

 

そのまま上空へと連れ去った。

 

「何を」

 

「これは俺の故郷の技だ。やるのは久しぶりだけど、とくと味わってくれ」

 

この戦いの勝敗は、超火力を抱えるグレンアルマによって左右されている。

オーロラベールありきでもデリバードとルチャブルだって瀕死になった。

次のワイドフォースを受けて全員耐えられる確証はない。だからこそ、グレンアルマを一切行動させないまま倒す。

シンニはワイドフォースを食らった時点で、どう動くかを決定していたのである。

 

「なるほど、グレンアルマを上空に離脱させたことでサイコフィールドから分断したのですね。

確かに、これでワイドフォースは使えなくなりましたが、それだけでグレンアルマは止まらない。彼は気の利く優しい子ですから」

 

「奇遇だな。うちのポケモンもだよ」

 

鉤爪がグレンアルマを鷲掴みながら、テーブルシティの上空を進行していく。

地上に指した影が風と共に通過していく様は、目にした人々に一瞬の騒ぎをもたらしただろう。その束の間、ウォーグルはある地点に到達した途端にグレンアルマを振り回し始める。

 

その場所はバトルフィールド。

ポケモン勝負が許可されており、技によってどのような被害を出してもお咎めなしの理想的な敷地。ここでなら全力でぶつけられる。

 

 

「『フリーフォール』」

 

 

ウォーグルはグレンアルマをありったけの力で地上へと叩きつけた。

 

同じポケモンであっても、生息する場所が異なるだけでその特徴に差異を現すようになる。

彼らの使う技もそうだ。

めざめるパワー、こころのめ、おいうちといった技がパルデア地方では相伝あるいは伝来していないように、イッシュ地方で生まれ育ったシンニのウォーグルはその地方ならではの技を使用出来たのである。

 

「まあ、あの程度じゃ仕留めきれないわな」

 

「感激だ…グレンアルマはもう少しだけ踊りたいようです」

 

しかし、両者トレーナーは 培われてきた経験や直感を根拠に確信していた。

ウォーグルのフリーフォールではグレンアルマを仕留めきれないという結果を。

 

グレンアルマはふらつきながらも反撃の準備を始めていた。

纏っていた自らの鎧装は熱を増していき、メラメラと燃え始める。

 

「グレンアルマも…アーマーキャノンも啼いている…」

 

守りを代償に絶大な破壊力を発揮する、諸刃の剣とも言える大技。

ウォーグルは異変に気付いたのか離脱しようとするも、この距離なら外さないと言わんばかりに、射出されようとする鎧装はその行手を捉えていた。

 

「お互い、阻むものは何もない…心配だ…けれどそれ以上に楽しみですね。グレンアルマ」

 

エースポケモンが仕留められるかもしれない危機的状況に、男はシンニの顔色を伺う。

どのような表情を浮かべているのだろう。

憂いているのか、はたまた

 

「まだ終わらんさ。だから場所を変えたんだろうが」

 

まるで諦めてなどいないのか。

シンニの言葉を受けて、男は漸く遠いバトルフィールドから目の前に意識を向けた。

 

「あのボーマンダ頑丈やな!壁があるから尚更や!」

 

「てか、グライオンはどこ行った!いや、レアコイルの相性的にむしろありがたいが」

 

見落としていたものに気付いたが如く「まさか」と呟いたのだ。

 

「トドメだ。思いっきりぶっ放せ」

 

こっそりとウォーグルに追従していたグライオンが背後から現れ、グレンアルマに肉薄する。

鋏は勢いよく振り下ろされた。

 

「『じしん』」

 

その一撃は地を砕き、グレンアルマの身を沈めさせた。

鎧装に集中させていた火はふっと息を吹きかけられたように消失する。

瀕死に追い込んだことを意味していた。

 

「贈り物をくれるのですね…素敵だ…!」

 

男はグレンアルマをボールに戻す。

恍惚とした表情からは、驚愕と共に歓喜が読み取れる。自身の予想を超えてくれたのがそれ程までに嬉しいということか。

とりあえず、なんか怖いしよくわからんからそっとしておこう、触らぬ神に祟りなし!と言わんばかりにシンニは放置を心がける。

シンニは残る相手のポケモンに意識を向けた。

 

「ボーマンダ、『げきりん』」

 

と言っても、続いたのは呆気ない光景だ。

残るエルレイドとレアコイルは、荒ぶる竜によって無慈悲に蹂躙されていく。

激昂するそれを止められる存在は、この場に存在していなかったのである。

 

「お疲れ様、ボーマンダ」

 

この街の片隅で起きた戦いにおいて、未だ立つポケモンはボーマンダただ1匹のみ。

シンニはそれをモンスターボールに戻しながら、傍で見学していたアオイに目配せした。

彼女は我に返ったように気を取り戻すと、挙手を伴って宣言する。

 

「エルレイド、レアコイル戦闘不能!

よってこの勝負の勝者、シンニ!」

 

突如として始まった戦いは、何だか締まらない宣言で幕を下ろした。

 

⬜︎

 

「なんだかんだ楽しかったなぁ」と浸る間もなく、シンニは思い出す。

 

「…君たちわかってるよね?」

 

「ええ、騒動を起こしたからには鎮める責任が我々にありますので」

 

「ほんとかあ?俺も行くけど頼むよ本当に!」

 

駆け出しトレーナー同士の可愛げあるポケモン勝負ならともかく、人々が普通に暮らす街の片隅でガチバトルをやったのだ。

結果的にオーロラベールで被害0とは言え、騒音だとかで近隣の者たちに怒られてもしょうがないと自覚している。

というか、襲撃された時点でバトルフィールドへ向かっていればよかったかと後悔する。

そう思案を巡らせているシンニに、アオイは呼びかける。彼は何だ何だと耳を傾けると、彼女は人差し指を上に向けた。

 

そこには、建物の窓から身を乗り出すようにこちらを見下ろす住人たちが。

威圧感のある光景に、思わず身を震わせる。

「まずい、絶対キレてるよあれ…ゴミとか食器とか投げられるんだろうけどそれでも謝らなきゃ」とシンニは身構えるも、来たる反応は全くの予想だった。

 

「凄えぞ兄ちゃんたち!熱いポケモン勝負だった!」

 

「こんなにも短いのに胸踊るのは初めてだよ!」

 

「ナイスガッツだったぜデリバード!」

 

「グレンアルマとボーマンダかっこよかったー!」

 

拍手と歓声が、シンニたちに降りかかるように巻き起こる。

「…そんな都合のいいことある?!」とポカーンとするシンニ。

 

シンニよ。

そもそもこの世界の人間は面白いポケモン勝負が のことが大好きだし、その上で周囲を慮りながら戦った思いやりを、人々は決して見逃さない。

いかなる理由があろうとも、一方的にお前は感謝される立場にあるんだ。

悔しいだろうが仕方ないんだ。

 

そんな彼の意識を取り戻させようと、アオイは自身のスマホロトムに表示されている映像を見せつける。

 

「野次馬してたのはあの住人だけじゃないみたい。ほらこれ見て、この街の人や学生なんかがネットに拡散してるー!」

 

そこにはバトルフィールドに取り残され、困惑したような表情を浮かべるウォーグルとグライオンの姿が。

周囲を興奮する人々が取り囲み、その迫力は今から取材でも始まるのではと思わせられる。

 

というか、上空どころか周囲を見渡すと、そこら中にスマホロトムが浮遊している。

「これ全部俺たちのこと撮影してんのか…ま、またしても拡散されてしまった…」と、シンニはモンスターボールにポケモンを戻しつつ項垂れる。

そんな彼を、グレンアルマの使い手は慰めるように語りかけた。

 

「喜ばしいことじゃありませんかご友人!

この光景は、あなたという存在の旅の始まりを祝福している!やはりあなたこ」

 

しかし、そんな埒が明かなさそうな言葉は彼の耳に入らなかった。

シンニの目の前でもっと大切なことが起きていたのだから。

 

「…ピカチュウ?なんか用か?」

 

そこには先程出会ったピカチュウの姿が。

こちらを真っ直ぐ見つめる目は、出会った頃からはまるで見違えたよう。正に揺るぎないと表現出来る。

何かを決心した面持ちだった。

 

「君、もしかして…!」

 

「ビガァッ!」

 

肯定するように、ピカチュウはシンニに頬擦りした。

心地よい体毛と静電気を感じるシンニに、アオイは微笑みながら話しかける。

 

「その子、ポケモン勝負を楽しんで見てた!きっとシンニについて行きたいんだと思う」

 

「あれま。それが思い立ったきっかけなら、この混沌とした戦いも無駄じゃなかったか」

 

シンニは思わず顔を綻ばせ、今一度ピカチュウに向き直った。

視線を合わせるべく、シンニは地を這うような体勢になる。大衆に注目される中でそれをやるのでアオイも少々戸惑いを覚えたが、これは彼なりのポケモンへのリスペクトだった。

 

「嬉しいこと言ってくれるじゃない。

ピカチュウ、俺ーズブートキャンプは厳しいよ〜?よく動き、よく学び、よく遊び、よく食べて、よく休む。この鍛錬に君はついて来れるのか?」

 

「ビ…ビガ?!」

 

「シンニ、それ鍛錬の中でもかなり優しい部類だと思う」

 

結局、何を言われようとピカチュウに心変わりする気配はない。

それはシンニに同行し今よりもっと強くなりたいという思いもあったが、彼の話す声色に嫌味や悪意が一切無いからだとわかったからでもある。つまるところ、ピカチュウはシンニという存在を大層気に入った。

その上で、シンニが駆け出しトレーナーであったとしてもピカチュウからすればさりとて問題じゃなかったのだ。

 

「よし、それじゃあこちらとしても大歓迎だ。改めてよろしくな〜ピカチュウ」

 

「ビッガア!!」

 

シンニの差し出したモンスターボールに、ピカチュウは自ら入って行った。

三度揺れることもなく、捕獲したことを示す効果音が即座に鳴る。

この瞬間、シンニのパーティに新たなポケモンが加わったことを意味していた。

 

「まあ色々あったけど結果オーライって感じだな!」

 

「本当だねえ。 でも、こんなにも面白そうなポケモン勝負に私を呼ばないなんて、シンニも寂しいことするよね〜」

 

「「うぁぁぁ ね…ネモが道を練り歩いてる」」

 

神出鬼没な友人の乱入に、シンニとアオイが驚愕したのは余談である。

 




シンニ
空を飛ぶピカチュウを仲間にした。
この後ネモにドナドナされた模様。

ピカチュウ
この子が主役回のつもりが影が薄くなってしまった。
まあこれからやってくジム巡りの実質主役みたいなもんだから多少はね?

アオイ
ネモが遅れてやって来た理由。
実はシンニと遭遇した時の連絡がちゃんと繋がってたらしい。
今回のポケモン勝負の見学を経て、よりポケモントレーナーとして強くなりたいと決意した。

ネモ
シンニvsスレ民のポケモン勝負がネットで話題になっているのに気付き後からやって来た。
私も混ぜてよw

グレンアルマ使いのスレ民
某虚言癖乳歯野郎の語録を喋っていた男。
(再登場は)ないです。
シンニといい勝負してた辺りかなりの実力者と伺える。
ネモが勝負を申し込もうとした頃には既にその場から去っていた。
スター団の問題を放置してたらこういう悪い大人に利用されるんだろうな…多分。
________________________

次回からジム巡り開始!早くカエデさんと戦わせたい。
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