少年ジャンプ43号掲載、呪術廻戦236話を読んで脳を焼かれた作者が、もしウチの主人公がこの状況に至ってしまったらという妄想が溢れて描いてしまったワンシーンです。
未だよう実のストーリーを消化できず、廻戦原作にも追いつけずいつこの展開に到達できるか分からない。
そもそもこの展開になるかすらも分からない。
ただ書いてしまった以上、お蔵入りするのも勿体ないなと思ってつい投稿しました。
注意!
・原作および「ようじつ×呪術廻戦」本編の今後における盛大なネタバレが含まれております。
・本編既読であることを前提で書いているので、未読の方にはよくわからない内容となっています。
・あくまで一部シーンの抜き取りなので、内容としては中途半端です。
・この展開はあくまで暫定のものなので、場合によってはこの展開にはならない可能性もあります。
以上、留意して頂けた方のみどうぞお読みください。
本編の中で番外話として投稿してもよかったのですが、その場合ネタバレが嫌な方の眼にも入る恐れがある事。
あと最近、本編の方の感想欄でネタバレの恐れがあるコメントが増えてきたと何人かの方からご意見頂き、じゃあいっそネタバレOKな感想が書けるコーナーを作ってしまおうと思ったこと。
以上踏まえ、別作品として分けました。
ちなみに今回、よう実要素は皆無の為、原作を呪術廻戦二次として投稿しております。
五条悟の身体が真っ二つに裂けるのを見た瞬間、護は誰よりも早く駆け出していた。
いざという時の為、兄の衣服に忍ばせた呪符。
その呪力を頼りに転移を発動し、戦場へと現れた護が見たものは、生気の籠らぬ目で空を見上げる兄の上半身だった。
「あ……あぁ……」
口から声にならない声が漏れる。
愕然、驚愕、悲嘆、あらゆる感情の奔流が頭を支配しそうになるのを堪え、護は強く歯を食いしばると急いで兄に駆け寄った。
「次は貴様か。今は機嫌がいい。頼むから興を削ぐなよ」
背後で宿儺が何かを言っているが、護はそれを無視して即座に兄の体を結界で覆う。
(……ッ、まだだ。まだ間に合う!)
通常、人間の脳は心臓が壊れてもすぐに活動を停止しない。
護は己に言い聞かせるように心の中で叫びながら、分断された兄の体を繋ぎ合わせると、空間操作を用いて肉体の修復を試みた。
嘗てない程の集中力を発揮しながら、細胞の一つ一つに神経を巡らせ、慎重に繋ぎ合わせていく。
「無駄だ、その男はもう死んでいる。
俺の眼前で見苦しい真似をするな。不愉快だ」
「……うるさい。お前が……この人の何を知っている」
護は兄を全知全能とは思っていない。しかし最強である事。この事実に疑いは無い。
その最強が『勝つ』と言ったのだ。
ならばこの程度の事で死ぬはずがない。身体さえ治せば必ずや立ち上がる。
瞬間、護の背中に熱が走った。
「……ッ゛!」
この痛みは知っている。鋭い刃で肉が裂かれる痛み。
先程兄が受けた空間を斬り裂く一撃ではない。おそらくは御廚子による通常の斬撃。修復に意識を割いている護には、これで十分だと判断したのだろう。
事実、その傷は確かに致命傷だった。このまま治療をしなければ、間違いなく死に至る一撃。
無造作に腕を振るった姿勢のまま、宿儺は口を開く。
「その言葉そのまま返そう。
この戦場に最初から立つことも許されなかった人間が、どうして死合の結果に口を出せる?」
ドサリと、兄の体に覆いかぶさるように護は倒れ込んだ。
「奴は生き返らん。例え肉体を完全に修復したとしても、奴の魂は既に敗北を認めている」
「…………ッ」
その言葉に、護はギリッと歯を強く食いしばった。
分かっている。分かっていたことだった。
兄の死に顔を見た瞬間、護自身も思ってしまったのだ。
――ああ、なんて満たされた表情なのだろう、と。
「フン……強者が弱者に寄り添おうとするから、貴様のように勘違いをした馬鹿が生まれる。
五条悟も、その点は愚かだったとしか言いようがない」
そう言って、宿儺は護に背を向けて歩き出した。
「興が醒めた。そのまま無様に伏して死ね」
最早とどめを刺す価値も無い。そう言っているかのように侮蔑の響きを声に乗せる宿儺。
護はそれに対し、何も言い返せなかった。
(背中の治療……いや、それより兄さんを……)
おそらくは五条護という男にとって、人生最大の衝撃を受けたと言っていいこの状況。
加えて致命傷にも等しい傷を負ったことで、冷静な思考が出来ない。
そうして朦朧と意識が闇に溶けていく中、護は――
――兄の声が、聞こえた気がした。
◆◇◆
ああ、死ぬ前に見る景色がこれなら悪くない。
五条悟はそう思った。
昔行った沖縄の空港。そこで笑い合う嘗て先に逝った筈の仲間達。
視界の端に少々ムカつく顔も見えたが、アレに関しては昔きっちりやり返したので気にはすまい。
「これが僕の妄想じゃないことを祈るよ」
「――いや、何いい顔して終わろうとしてんだよ」
「あ?」
聞こえてきた突然の声。座りながら振り向くと、そこには小さな黒い髪の少年が立っていた。
昔の自分と瓜二つの少年の顔。それを見て、五条悟は「あっちゃぁ」と額に手を当てた。
「言った傍からこれかよ。お前が居るってことは、やっぱこれって僕の妄想?」
「妄想でも何でもいい!」
二ヘラと笑う悟に対し、激情を露わに少年が叫ぶ。
「何でっ……なん、で……そんな笑った顔が出来んだよ……? 負けたんだぞ?
勝つって…………言ったじゃないか……」
「……ごめん」
あの戦いに悔いはない。自分の持てる力全てを出し切って――そして負けた。
それでも約束を破ったこと、それに関しては申し訳ないと思う。
何一つの言い訳も無い謝罪の言葉に、その少年はグッと拳を握り締めると顔を伏せた。
「悪いと思ってるなら、今すぐ生き返れよ! あんたならそれくらいできるだろ!」
「いやぁ……お前も大概無茶言うね」
目の前の少年がこんな声を出すところなど、今まで見たことが無い。
まるで癇癪を起こした子供のような叫びに、つい苦笑が浮かんでしまう。
「まぁ実際、悟なら生き返っても『まぁアイツだし』で済みそうだけどね」
「お前も僕の事なんだと思ってる訳?」
「え、歩く理不尽?」
「……さっき僕に失礼とか言ってたけど、お前も大概だからな?」
隣に座る親友に軽口を返している間も、少年は俯きながら佇んでいた。
その姿に、仕方がないなと悟は立ち上がると、そのまま少年の下へと歩いていく。
「皆に色んなもん押し付けることになったのは悪いと思ってるよ。
けど、これ以上はもう無理だ。いくら駄々をこねたって、僕は生き返れない」
そんな事は、わざわざ言わなくても分かっている事だろう。
この辺り、正直悟としても誤算だった。目の前の少年は、こういう時にちゃんと割り切れる人間だと思っていたから。
「だーいじょーぶ!
皆、僕が封印されてる間に色々と成長したみたいじゃない。なんとかなるさ」
「自分は負けた癖に……適当なこと言うなよ」
「ま、それを言われると辛いけどさ。なにも適当言ってる訳じゃない。
なぁ、どうして僕がまだ小さかったお前に目を掛けたか分かる?」
「…………」
返事はない。分からないのか、分かっていて口に出さないのか。
悟は、構わず言葉を続けた。
「それは子供だったお前が、僕と同じ眼をしていたからだよ」
「同じ眼?」
「例えるなら、一人でマリカやってたら、暇すぎてコースの逆走始めちゃったような眼」
「「どんな眼だよ」」
横合いの親友と同時に二人合わせて突っ込みが飛ぶ。
「要は、退屈そうだったってこと」
「……退屈?」
「自覚してなかった? けど、薄々感じてはいた筈だ。
お前は自分のポテンシャルの高さを知っていた。なまじ何でもこなせるだけの素養があったから、その力をどう育てればいいか、どう使えばいいか分からなかった。
だから、僕に生きる指針を求めたんだろ?」
この子は自分と同類だと、悟は分かっていた。
違うのは最初に立っていた位置。五条悟は最初から強く、相伝という強くなる為のマニュアルが用意されていた。
一方で、この少年にそんな手本は無く、しかし持っている術式は誰よりも広い可能性を秘めていた。
「けど生憎と、僕はお前の見本になれない。
お前は僕が描く世界を見たいとか言ってたけど、別に僕は御大層な展望があった訳じゃないんだ」
「……呪術界を変えるって、言ってただろ」
「それだって、具体的な未来図を描いていた訳じゃない。
後進を育てるとはいっても、言い換えれば自分で良い手が思いつかなかったから他力本願に走っただけだ。
結局僕自身は、気に入らない奴を力づくでぶっ飛ばすって手段しか取れなかった」
実際、最終的に悟は力づくで上層部を壊滅させた。
事実上総監部が完全に敵対したからとはいえ、仮に渋谷の件が無かったとしても、成る可くして成った結果ではないかとそう思える。
「もう一度言うけど、悪いとは思ってるよ。
お前には、あまり兄貴らしいことができなかったからね」
「兄らしいとか、そんなもん最初から求めてねぇよ!
俺は兄さんに……兄さ、んが…………あんたが居ないと、俺は何の為に生きればいいんだよ……?」
「自分の為に生きろよ」
縋る様に発せられたその声を、悟はバッサリとぶった切った。
(ここで何かを言えば、それはこいつにとって一生の呪いになる)
あるいは、本人にとってはその方がいいのかもしれないが、悟はこれ以上目の前の少年の人生を縛る気は無かった。
「僕はこれ以上、お前に何も望まない。
宿儺の件も、なんなら放り出したっていい。お前一人なら呪いが支配する世界でも好きに生きていけるだろ?」
「一人ならって……」
放り出していいという一言に、どこか愕然とした表情を浮かべる少年。
その反応を見て、悟はニヤリと笑みを浮かべた。
「今、誰かの姿を思い浮かべたな? だったらそれが答えだ。
大丈夫。お前がその気になれば、出来ないことなんて何も無いよ。
お兄ちゃんが、保証してやる」
そう言って、ワシャワシャと俯く少年の頭を撫でる。
「けどま、流石に言うだけ言って何もしないのは無責任か。
丁度今日は12月24日だし、僕から最後のクリスマスプレゼントだ。お前なら、使いこなせんでしょ」
頭から手を離し、すれ違いざま少年の背中をバンと叩く。
「もう時間だ。おまえはそろそろ戻んな」
「兄さ――!」
呼び止めようと、振り返り伸ばされる少年の手。
しかしそれはあと一歩のところで届かない。足が動かないのか、その場で必死に背中に手を伸ばそうとする少年。
「じゃあな、
気付けば、少年はいつの間にか青年の姿になっていた。
周囲の景色が白くぼやけていく中、五条悟の黒い背中だけが、護の目に映る。
「――あ、そうそう。さっき何も望まないって言ったけど、どうせなら子供こさえて家庭を築くまではこっちにくんなよ」
最後にそう言って、後ろ手に手を振りながら五条悟は去っていく。
僅かに遅れて、周囲に居た他の者達もそれに付いていき、護はただ一人、その後ろ姿をジッと見つめていた。
◆◇◆
去っていこうとする宿儺の足が、ピタリと止まる。
振り返らずとも分かる背後の気配。その気配に向かって、宿儺は口を開く。
「……伏して死ねと言ったはずだがな」
心の弱い者が聞けば、卒倒する程の重圧が込められた声。
されど、そこに先程までの不快感は込められていなかった。
何かが違う。呪いの王は、背後に立ち上がった者の変化を敏感に感じ取っていた。
(死の淵からの覚醒。別段珍しい事ではないが……)
「……まぁいい。二度も失望させてくれるなよ」
先程台無しにした余韻の分くらいは、せめてその命を持って贖え。
そう思いながら振り返り、無造作に右腕を掲げようとし――
――瞬間、その腕がボトリと地に落ちた。
「――――ッ!?」
初めて、宿儺の顔に驚愕の色が浮かぶ。
その反応はただダメージを受けたこと、それだけに対する反応ではなかった。
重要なのは、その現象が自分にとってとても見覚えのある現象だったこと。
「貴様……」
宿儺が何かを言うより先に、その現象を引き起こした人物は動いていた。
落ちた右腕――その死角となる位置に、黒い人影が現われる。
「チッ……」
すかさず飛び退く宿儺。
先程の五条悟との戦闘も含めた四肢の損壊がある以上、このまま近接戦を行うのは不利。
まずは一旦距離を取るべく背後に跳躍する――と、宿儺は背中に妙な感触が触れるのを感じた。
(これは、糸……いや、糸状の結界か)
目の前の人影の手元から伸びる細い線を見て、自分の背中に感じた引っ掛かるような感触の正体を理解する宿儺。
そして気付くと同時、纏わりついた糸が引き絞られた。
残った上腕ごと体を拘束され、そのまま糸に引っ張られ足が地から浮く。
欠損した両腕。身動きが取れぬまま踏ん張りの効かぬ宙へと放りだされたこの状況。
今の宿儺に碌な抵抗ができる筈もなく――
――次の瞬間、その顔面に拳が突き刺さった。
「――ッ!」
拳の勢いそのままに、宿儺の体が瓦礫の山へと突っ込み、大きな土煙を巻き上げた。
そうしてその惨状を作り出した男――五条護は、ゆったりと歩きながら口を開く。
「……想像力が足りてないんじゃないか? 空間を裂く斬撃。確かに至難の業ではあるが、空間に干渉できる俺なら真似できない道理はない」
護は言葉を紡ぎながら、トンッと静かに跳躍した。
すると跳躍したそのあとを、土煙の中から飛来した鋭い斬撃が通り過ぎる。
そして護は
「あんたが術師として遥か先を往く先達だろうと、空間操作という分野に関しては俺のが上だ」
煙が収まったその場所で、宿儺は鋭い視線で護を睨みつけていた。
「小僧ぅ……誰を見降ろしている」
「降ろしてみろよ、呪いの王」
先程までの、打ちひしがれていた姿とはまるで異なる不敵な態度。
そして宿儺は見た。
土煙の舞う薄暗い空の中、見上げた先に色鮮やかな二つの青色が輝いているのを。
黒い髪の隙間から覗く
「構えろよ、
やっちまった……
本編すらろくすっぽ進んでないのに、何を書いてるんだ私は。
けど仕方なかったんや。これを思いついてしまったせいで、本編を書いていてもずっとこの展開が頭をチラついて集中できなかったから。
許して……