FGOのマスターがまつろわぬ神として顕現してしまった話   作:星の王子さま

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お久しぶりです。
出来たので投稿します。

では、どうぞ。


24. 途中経過 その1(裏)

 

年始に突如発生した、あの「謎の『まつろわぬ神』顕現ラッシュ事件」から半月ほど。

当時の状況の把握と整理が進んだ現在、魔術業界では、顕現ラッシュ事件の時とはまた別種の、驚愕と戦慄に包まれていた。

 

当時の顕現ラッシュにおいて、どの地域に何柱の「まつろわぬ神」が顕現したのかが、少しずつ判明してきており、また、建設的な対話に成功した各所から、彼ら彼女らに関する情報が少しずつ挙がってきた為、事の全貌が明らかになり始めていたからであった。

 

普段の魔術業界における、結社同士の横の繋がりや、地域を跨いだ連携というのは、無い訳ではないという程度なのだが。

多数の「まつろわぬ神」の同時顕現という未曾有の事態においては、今回ばかりはそうも言っていられないと、プライドやしがらみ等を一旦脇に退けて、世界規模での魔術業界の情報の共有と連携が進められていた。

 

 

 

─────

 

 

 

「……との事です」

「そうですか…了解しました。下がっていいですよ」

 

イギリスの首都ロンドンにある、とある貴族のお屋敷の中庭にて。

割と結構重めな報告を、部下の一人から、報告書と共に受け取る、賢人議会顧問を務めるアリス。

少々億劫に思いながら、アリスは呟く。

 

「ヴォバン侯爵が、敗北ですか…」

 

それも、相当な重傷を負った、との事。

暫くの間、彼は身動きが取れないだろう。

 

ルーマニアで、彼が1柱の「まつろわぬ神」相手に、数日間絶え間ない戦闘行動を行っていることは、少し前から報告として聞いていた。

しかし、今回の報告では、彼は複数の「まつろわぬ神」を同時に相手し、彼ら彼女ら相手にかなり一方的に打ちのめされる展開であった、との事。

 

どうも、報告に齟齬がある。

 

…まぁ、複数の「まつろわぬ神」と聞いた時点で、彼が相手にした神格については、とても心当たりがある。

なので、この事案については、あの方々に詳細を教えていただければ良いかと、そこまで重くは考えていなかった。

 

なんならこの場に居るし。

 

「という訳なのですが、心当たりは御座いませんか?」

「ふむ…」

 

中庭にいる霊体を解除して、意識を本体に戻したアリスは、自分の身体が横たわっているベッドのすぐ側に居る、心当たり先の1人である「まつろわぬ女神」に、報告書の内容について問いかける。

 

本来ならば、恐るべき厄災たる「まつろわぬ神」に、こんな砕けた口調での問いかけなど、絶対に考えられない事案なのだが。

霊体越しに、数十の単位で集合してくる「まつろわぬ神」という、世界の終わり案件をずっと目の前で見ていた彼女は、感覚が完全に麻痺していた。

 

幸か不幸か、コミュニケーションに成功してしまった弊害とも言うべきか。

 

「あぁ、あのドラ娘が、北欧方面に向かった際に、道中で少々戦闘を行ったと言っていましたね。良いでしょう。確認します。少し待っていなさい」

 

彼女のすぐ側に居る、当の女神さまは、その辺を特に気にする様な事も無く、事情聴取をしてくれるそう。

転移か何かなのか、一瞬でその場から消え去り、そして暫く時間が経って。

唐突に、再び部屋に出現した女神さまは、事情聴取と称して、どうやら現場に居合わせた盟友の記憶を、そのまますっぱ抜いて来たらしい。

当時の現場の様子を、映像擬きの術か何かで、彼女に見せてくれた。

 

で、その映像を見てみると…

 

大量の狼と、屍人…は、侯爵の権能だろう。

相対するは、唐突に地面から生えてくる杭の様な何か。

それらが陣取り合戦の如く、一進一退の攻防を繰り広げている。

ここまでは、以前にも聞いていた報告通り。

 

そして、巨大な龍と化した侯爵さまと、それを相手に盛大な取っ組み合いをする、超巨大なマンモス。

マンモスの方からは、時折とても冷たそうな光線や吹雪が吹き荒れて、龍化した侯爵さまにぶつかっていた。

 

さらに、巨大な怪物2体の周囲を、白い竜と思われる何かに騎乗している狐耳の女性の姿をした「まつろわぬ神」と、いわゆるUFOと思しきナニカの上に乗っている幼なげな少女の姿をした「まつろわぬ神」が飛び回っている。

 

終いには、唐突に天から降ってくる割と大きめな隕石である。

満身創痍の龍化した侯爵さまは、この隕石を避けることが叶わず、真正面から衝突して、遂にノックアウト。

 

以上が、事の顛末であった。

女神さまは「あぁ、彼らが相手だったか」と訳知り顔。

…まさかトドメを刺されていたりしないだろうか、と不安に思ったのが顔に出ていたのか、女神さまから「討ち取ったという感触は無かったらしい」とのお言葉を頂いた。

 

あんなのでも、人類が厄災たる「まつろわぬ神」と、それに類する事物に対抗出来る、貴重な手段なのだ。

 

「…『冥界の黒き竜』まで使用しているなら、彼は今後数ヶ月は動けないでしょう。ですが、彼はとても好戦的です。復活してから再び、御身らに再戦に行くでしょう」

「えぇ、そうでしょうね。ですが、再戦までに数ヶ月もの時を確保出来るならば、やりようは幾らでもあります。心配りは有り難く受け取りますが、心配無用です」

 

そう言って、女神さまは映像を見るのを終えた。

アリスも、映像を見終えたので、ベットで姿勢を楽なものに変える。

相変わらず、彼女の体は酷く虚弱で、映像を見る時も、その背中を、よりにもよって女神さまに支えて貰っていたほど。

 

ふぅ、と。

姿勢を楽にしたアリスから出た、彼女の溜め息を聞いていた女神さまは、少々思案する様に俯いた後。

 

「アリス。我々は昨日の夕方、予定していた盟友の回収を全て終えました。貴方には、ここ暫くの間、世話になったと思っています。故に、謝礼として貴方に何かしたいと考えていたところですが…」

 

そう言って、再び此方のベッドの側に寄ってくる女神さま。

普通の「まつろわぬ神」だったら、まず「謝礼」なんて言葉が出てこない。こういうのは「大義であった」の一言だったり、そもそもそれが当然みたいな反応になる筈。

神さま方の機嫌が良いと、傍迷惑な加護を賜ったりもするが、それも殆ど無いこと。

 

「人理の防人の神話」を読破して、その内容を読み込んだ今なら、目の前の女神さまの行動の理由も、なんとなく分かるが。

 

そうして、寄ってきた彼女から述べられた言葉に、アリスは更に驚かされた。

 

「貴方のその虚弱。人の身のまま、根本の改善をする事は難しい。ですが、後々の後遺症等無く、寝所から出て、この屋敷内を自由に歩き回る事が出来る程度の回復と補助は可能です。世話になった貴方への謝礼として、その施術を考えていますが…どうしますか?」

 

 

 

─────

 

 

 

万里谷祐理は、苦悩していた。

 

「人理の防人の神話」を読み進める度に。

 

「人理の防人の少女」に会う度に。

 

その日の夜、気持ちが落ち着いた頃に、おそらく「人理の防人の神話」と思われる霊視を、始めの時と同じ特別仕様で視てしまうのだ。

 

まるでその場に居合わせているかの様な臨場感に、主人公の少女の心象が、ダイレクトに伝わってくる、あのパターンだ。

 

(うぅ…)

 

人類にとって、「まつろわぬ神」と呼ばれる存在は、厄災と同義である。

祐理のその考えは、草薙護堂と行動を共にするようになり、時には三途の川を渡り掛ける様な目に遭いながら、幾柱かの「まつろわぬ神」と邂逅して、益々強まっていくばかりであった。

 

彼ら彼女らは、厄災であり、理外の存在である。

彼ら彼女らは、神であり、英雄であり、怪物である。

尋常ならざる彼ら彼女らは、我々一般人とは異なる視点・思考回路で動いている。

 

だから、彼ら彼女らの心を図る事はあっても、心を寄せる様なことは、あってはならない。

そう、思っていた。

 

(なのに…それなのに…)

 

霊視を見る度に。

 

「まつろわぬ『人理の防人の少女』」が、非日常に巻き込まれた、ごく普通の女の人にしか、見えなくなってしまう。

 

彼女に、心を寄せてしまう自分がいる。

 

ダイレクトに自分に伝わってくる彼女の心象が、彼女自身の様相が、自分とそう変わらない事を感じさせる。

 

 

 

中世欧州の農村を想わせるような平和な町村の空を、邪な翼竜が飛び交い蹂躙する、第一の時代。

 

彼女は、ただただ混乱していた。

空飛ぶ竜、怯える人々、壊れ燃え尽きた街並み。

一体全体、何が起きているのか。

わたしは一体、何をどうすれば良いのか。

なんで自分が、どうしてこんな目に。

 

失敗が許されないことだけが、周りの雰囲気から伝わっていた。

この先の全てが、自分が正しく立ち回れるかに掛かっていることだけが、感じられていた。

でも、具体的に何をどうするのかは、当初は全く分からなかったし、分かったところで、自分がどうこう出来るモノだとも思えなかった。

 

ちょっとした擦り傷や出血が少し珍しくて、骨折なんてそうそう見るモノじゃ無くて、部位欠損や命に関わる様な流血なんて、画面の向こうの存在だったのに。

四肢を失った人たちも、噴き出るような流血も、人死にも、当然の様にその辺に転がっていた。

自分の知る日常が、塗り潰されてしまいそうな衝撃を受けた。

…自分が見たその全てが、戦闘を生業とする人たちの、理不尽なモノでは無かった事だけが、救いだろうか。

 

そうして、ほぼ状況に流されるままに、言われた様に各地を訪れて、請われた通りに戦闘の指揮を執って…

そうして気がついたら、目の前には、あの杯があった。

 

 

 

突如として分裂し、内戦の憂き目に遭っている古の大帝国を駆け回った、第二の時代。

 

第一の時代から数ヶ月の後。

それまでの間で、彼女は、拙くとも、自分が何を求められているのかは、その間にどうにか分かった。

出来たかどうかは別として、どのような心構えが必要なのかも、察した。

始まりの時や、第一の時代で、お世話になった縁から施設に来てくれた盟友達とのやり取りは、中々に刺激的で新鮮に感じた。

彼ら彼女らと一緒なら、自分の求められている役割を、果たせるかもしれない。

そんな希望を、少しだけ明るい未来を想えるくらいには、彼女は気力を取り戻せていた。

 

それでも。

少しばかりの時間があり、付け焼き刃の様な訓練こそ積んだものの。

少しばかりの希望こそ持てたけれども。

 

やっぱり、辛いものは辛い。

 

初めて、目の前で「戦争」を見た。

激しく打ち合わされる剣戟。

飛び交う流血。

吹き飛んでいくように死んでいく兵士たち。

第一の時代との違いは「戦う相手」のみ。

 

味方の盟友たちは、彼女を手厚く守護し、また導いてくれた。

今回は敵として現れた、後に盟友になる者たちも、時に彼女の事を導いてくれた。

それでも。

 

立ち塞がる、不気味極まる肉の柱。

 

そして、最後に、文明を破壊する極光。

 

頼りにしていた盟友たちも苦戦していた。

自分も、得た知識を総動員して、死に物狂いで指揮を執った。

そうして、どうにか、辛勝した。

勝利の余韻を感じている余力なんて無かった。

ただただ、自分が生き残れた事を、噛み締めた。

 

 

 

時代の流れから切り離された、神代から近代まで、海に生きた者たちが鎬を削り合う中に放り込まれた、第三の時代。

 

時々、小さな島々に補給の為に寄りながら、蒼い大海原を往く旅だった。

生まれてから今まで、直に海を見たことはあったし、船に乗ったこともあったが、本格的な船旅を、しかも木造の帆船で行った経験は、現代っ子の彼女には当然ながら無かった。

 

船に乗せてくれた船長は、快活で姉御肌な大人物で、彼女たちの面倒を良く見てくれたし、船員たちも陽気で彼女たちの事を良く目にかけてくれていたから、船旅自体はとても良い経験になった。

途中で仲間になった盟友達も、みんな個性豊かで、頼りになる人たちだった。

 

当然ながら、楽しいばかりの旅では無かった。

 

逃げ場の無い、船の上という戦場。

船旅を始めて日の浅い自分たちにも容赦無く襲いかかる、敵の海賊たち。

物理的に撤退が不可能な船上の戦いにおいて、敗北は許されなかった。

それが、毎度の戦闘の度にプレッシャーとなって、精神的余力を削っていった。

 

耐え難い程の強さの殺意を受けながら、最上位の英雄を相手に、女神を腕に抱きながら、命懸けの鬼ごっこをした。

 

一挙手一投足の間違いは、それ即ち死と同義。

そんな究極的な状況に立たされた。

ただただ、恐ろしかった。

それ以外の表現方法は無かった。

今にも足が竦んでしまいそうな程だった。

でも、止まるわけにはいかなかったから、必死に、兎に角必死になって、走り抜けた。

 

そうして、幾つもの死線を潜り抜け、再び不気味な肉の柱を倒して、杯を回収した。

やっぱり、勝利の余韻なんて、感じる余裕は無かった。

自分が、やるべき事を果たせた事を、噛み締めていた。

 

 

 

彼女が抱く感情が、意識が。

彼女が抱く恐怖が、悲哀、そして奮起が。

祐理の精神に直接響いてくる。

 

 

 

「人理の防人の神話」を読破し、出会い頭の初回を含めて、特別仕様の霊視をこうして授かり続けること4回。

 

祐理は、もう「人理の防人の少女」を、恐るべき厄災とは思えなくなり始めていた。

 




対ヴォバン戦、防人側のメンツ、全員当てられるかな?

裏とか書いておきながら、2人の視点しか書けなかった…
先の構想もまだフワフワしてるので、次もちょっと完成まで長くなりそうです…
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