一発芸でレベル7になった男。   作:ひつまぶし太郎

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このエピローグにて完結です!
ここまでお付き合いいただきまして、誠にありがとう御座いました。

あとレヴィスさんは普通に負けて灰になり、アウラはナズナによって丁寧に葬られました。


第二十話。冒険者

 

ナズナがどうして生き残ったのか。

それはとある精霊が関係していた。

 

「やっほ、来ちゃった」

 

「誰ぇ!?」

 

ナズナ対策会議。

そう銘打たれて行われた会議が停滞し、全員がナズナという要塞の理不尽さに頭を抱えていた時のこと。

 

『え、これ無理では?』

 

『魔法はどうだ?』

 

『んー、ヘディンになら良いか。…最近ナズナは新しいスキルを手にしててね。魔法使いは軒並み機能しないよ』

 

『クソが』

 

『反射ダメもある』

 

『巫山戯てるのか?』

 

『あとは前からある回復スキル、物理魔法半減の鎧、デバフ無効をどうにかしないとけないんだ。頑張ろうか』

 

『帰りたくなってきたな…』

 

そこに、とてつもない美女が現れた。

 

「透けてる!」

 

「やーね、男って。すぐそういう目で私たち女をみるんだから」

 

「物理的に透けてるって話なんですけど!?」

 

会議に紛れ込んでいたというか、ナズナが羽化する瞬間を見ていた冒険者として放り込まれたベルの反応を見てくすくす笑うその女性は、神々に近しい雰囲気があった。

あと半透明だった。

 

「私の名前はエルナ・グノーメン。ナズナの母です」

 

「「「母ぁ!?」」」

 

最初のスカジの母親。

スカディに流れる血の大元。

そんなこと全てかき消すナズナの母という言葉に、全員が声を揃えて驚いた。

 

 

 

 

「そもそも土属性のスカディの一族の側に、土属性の精霊、しかも混ざってもわからないくらい親和性の高い精霊が生まれるなんて都合が良すぎると思わない?」

 

「それはうちもそう思っとった。やから暇さえあれば調べに行くつもりやったんやけど」

 

「あれはね、私が産んだのよ。だからスカディと混ざっても問題なかったのよ。偶発的だったからあまりにもか弱いスタートになっちゃったけどね」

 

「…でもあなたは最愛の人の死とともに眠りについたと聞きましたが…」

 

フィンのその言葉に、大精霊は昔を懐かしむようにとてもきれいな笑顔で目を瞑った。

 

「ええ、そうね。ふふ…ねぇ、寝起きってなんかムラムラしない?」

 

「ん?」

 

「ちょっとね、うわ寒いなぁ〜って起きた時についムラっと来ちゃってね…したのよオナニ◯」

 

「………」

 

「したのよ、オナ「いえ聞こえなかったわけではなく!」」

 

「そう?それで賢者モードになって五十度寝くらいした私の気付かないところで生まれたのがあの子ってわけ」

 

「すいません全然わかりません」

 

「まぁ人と精霊って違うものね。理解できなくても仕方ないわ。私たちってほら、神聖だから。処女受胎的なこともあるわよ。まぁ、私は旦那様にそれはもうずっこんばっこんされてるから全然処女じゃないんだけど。それよりお酒ないの?久しぶりに起きたから喉乾いちゃって。というか貴方かわいいわね嫁に来ない?」

 

「ナズナのお母さんだこれ…」

 

「間違いないな…」

 

「どの辺が神聖?」

 

アイズに口説き文句を囁いてぶっ飛ばされてるその大精霊を前に、ティオナが思わず呟き、それにリヴェリアが重く頷いた。

 

「あそうそう。そこの気配消してる骨のあなた?蘇生の魔法使えるわよね」

 

「魔法のスロットにはある、だが一度も成功したことがないんだこの魔法は。だから当てにしないでほしい」

 

「大丈夫大丈夫。それ、今なら成功するから。昔と違って本当に大切なものが何かわかってるでしょう?愚者」

 

「それは…」

 

「あとはそうねぇ。あの子、まだ抗ってるみたいでエリシマの身体とあの呪い石まだ完全に同化してないのよ」

 

「本当ですか!?」

 

「ええ、安心しなさい。私、娘に嘘はつかないわレフィーヤちゃん」

 

「つまり、分離できると?」

 

フィンがその情報を下に、思考を巡らせながら、まっすぐに大精霊の方を見据えて口を開く。

 

「そう。そのためにも、例の異端児ちゃんたちの協力がいるのよ。人間よりモンスターのほうが私の魔法と相性いいから」

 

「…ずいぶん詳しいですね」

 

ナズナの人間関係に、ナズナしか知り得ない情報。

とてもぽっと出の大精霊が知っていていい情報ではない。

それに疑惑の目線を向けるフィンに向かって、エルナは、なんてことないように笑った。

 

「ええ、だってナズナが急に精霊じゃなくなったんだもの。さすがに目が覚めるわ。そこからはずっとナズナの目を通して見てたからね、楽しかったわぁ。ギャルゲーとアクションゲームみたいな楽しさがあるのよね、あの子の人生。あと途中から主観視点でのAV見てるみたいで興奮した」

 

「主観…?」

 

「どぅあーはっは、っはっはぁ!?みんなは別に知らんでええ単語やから!天界ジョークやから!」

 

ロキが焦り、されど会議は進んでいく。

結果として、ナズナが本気で戦わないとそれを察知して精霊の魔法が発動してしまうので、ナズナ自体を本気で叩き潰すこと。

そして、異端児たちにはエルナの魔法で誰にもバレずにナズナに近づき身体の中に侵入すること。

そして最後に、一旦ナズナを処して、フェルズの魔法で生き返らせることが決まり。

 

「じゃあ次は、悪感情を残さないためにも盛り上げるための企画を考えていこうか」

 

ナズナ祭りは行われた。

 

 

 

 

 

度重なる咆哮が轟いていた。

地響きを伴う足音を立てる山羊のような角を持つモンスター───『フォモール』の大群が、怪物と称するにふさわしい巨躯を進撃させる。

 

「かかってこいやぁぁぁぁああああ!」

 

それに真っ向からぶつかるように、岩の巨人のような見た目をした何者かが群れの前に飛び出していく。

 

巨人とはいえ、その大きさは約3M。

一本の草木もない荒れ果てた大地を踏み荒らすモンスターの津波に飛び込むには少し心許ない。

 

だが、そんなことは関係ないと岩の巨人は大群に向かって巨石のようなタワーシールド…ではなく、文字通りただの巨石を構えて殴りかかる。

 

「───ッ!」

 

無謀な突撃はモンスターたちに踏み潰され、その命を無為に散らす。

なにも知らない誰かが見ていれば想像したであろうそんな未来は訪れない。

 

「ふんぬ、ぎぎぎぎ…!」

 

驚くべきことに、その巨人は途切れることなく押し寄せ、立ち塞がる全てを押し流そうとするモンスターたちを真正面から受け止めていた。

 

さらに、彼の背後に控える知り合いたちの方に向かってまっすぐ突進していた筈のモンスターたちが、急に足を止めて、まるで親の仇のように岩の巨人を狙い始める。

波がうねり、たった一つの岩に塞き止められているかのような光景を前に、彼の背後から見据えていた魔道士が、仲間に号令を下していく。

 

「ナズナが止めてる間に早く通り抜けろ!消耗しなくていいならそれに越してことはない!抜けてきたやつにだけ対処してくれ!」

 

敵を受け止める仲間を犠牲にするかのような作戦を、誰もが躊躇うことなく行っていく。

 

「サンキュ」

 

「マジ感謝でス」

 

「えっほえっほ」

 

「お前らあとで覚えてろよなー!?」

 

雑な扱いを受けながらも、ある種命の恩人的な彼らのために働かないといけない。

そんな状況にナズナは半ギレだった。

 

「ちくしょぉー、今日はフィンが奢ってくれるって言ってたのに!さっさと終わらせて浴びるほど酒飲んでやる!」

 

そんな風に叫ぶ彼はある意味で彼が契りを結んだ道化師の神にふさわしいと言えるだろう。

 

───いやいや。うちのは道化師(トリックスター)。それは道化師(ピエロ)やろ?全然違うもんやん!?お好み焼きともんじゃ焼きくらい違うで!?

 

という関西弁の神のツッコミが聞こえた気がするが、どうせ幻聴だ。

なにせここは何十もの階層を積み重ねた地底深く───『ダンジョン』なのだから。

それに彼らの主神は関西弁なだけで、極東の関西出身な訳ではないから、お好み焼きともんじゃ焼きの違いをたぶん知らない。

 

「オレっちたちが中から石を壊したおかげなんだから我慢しろって」

 

「うるせぇ一発芸滑りリザードマン!」

 

「誰のせいだ!?」

 

「なんで()()()()()()()()()にこんなことしなくちゃいけねえんだ!クソが!」

 

「そりゃあオレっちたちが目立たないように一度深層に潜る護衛をするためだろ?」

 

その巨人の名前はナズナ・スカディ。

 

敵をスキルによって強制的に引き付け、仲間よりも前に出て攻撃を引き受ける絶対守護の盾。

ダンジョンに挑む冒険者たちの中でも、上澄みの上澄みであるレベル7であり、ちょっとあまりかっこよくない経験によってランクアップした、エルフのような何かのガチタンクである。

 

実は正式なファミリーネームは存在せず、ただのナズナではあるのだが、名字がない方が不便だとしてこの名前を名乗っていた。

 

スカディ。

意味は『傷付ける者』。

忌み嫌われる存在の蔑称として一族全体につけられたものではあるのだが、ナズナは過去に一族が受けた所業に対して特に思うところはない。

 

それにもう、この名前を名乗って曇るような人間も周りにはいない。

この名前はもう、傷ではない。

 

「だぁ~っ、もう体がいくつあっても足りねぇーっ!」

 

「チャージ完了、行きます…!」

 

「はよ打てやベルぅ!」

 

ナズナの後ろで英雄願望をチャージしていたベルが、魔法を放つ。

ウチデノコヅチによるバフ、リリによる援護、さらにヴェルフの()()()()魔剣がナズナの背後から襲いかかる。

 

「ファイア・ボルト!!!!」

 

「お前ら容赦なしか!クソ!受け止め役じゃなかったら自力で全滅できんのに!」

 

だが、いくらフルチャージとはいえ自分たちだけで深層に来れるわけでもない彼らの攻撃では完全には殲滅しきれず、ダンジョンから産み出され続けるモンスターの群れは徐々に数を取り戻してきていた。

 

───ダンジョンは生きている、という言葉がある。

その言葉が真実なのなら、確かに今ダンジョンは明確な意思を持って彼らを殺そうとしているのだろう。

 

だが、それに抗うのが冒険者という生き物だ。

この場にいる誰一人、諦めるつもりはない。

 

「…おまたせしました!…フツノミタマ!!!!」

 

「よぉし、よくやった忍者女!全員頭伏せてろ!」

 

命の魔法が発動し、重力の壁が生まれてタンク役のナズナが自由になる。

そしてナズナは、鎖が結びつけられた巨石を振りかぶる。

 

そして、空間が割れた。

そう錯覚するほどの一撃が放たれ、階層に存在する敵性存在が一切合切灰になる。

ついでに命の魔法すらも破壊される。

 

「ぁ〜スッキリ」

 

あれだけのモンスターに囲まれておいて無傷。

どころか暢気に疲れたぁ、と自分の肩を揉みほぐす岩の巨人を見て、冒険者たちも異端児たちも戦いの終わりを確信し、武器を静かに下ろすのだった。

 

「………ナズナ、グロスが風圧で気絶してるんだが…」

 

「いやそれ俺悪くなくない?」

 

「とりあえず背負っていってくれ」

 

「なぁフェルズ腹減ったんだけど」

 

「ちょっとは我慢しろ」

 

「くそ、まじでオラリオ出んのもっと早くしてりゃよかった」

 

「そう言うな。ギルドとしてもレベル7の都市外への流出は苦渋の決断だったんだ」

 

「お前もしかしてわざと決定遅らせた?」

 

ナズナのジト目を、フェルズは目線をそらすことで誤魔化す。

 

ナズナは、騒動が騒動だったためにとりあえずしばらくお前外に出て落ち着くまで身を潜めといて、という指示が出ていた。

 

ギルドからの指示だと言うのに、最終的な決定が下るまでに一ヶ月もかかっていた。

変だと思っていたが、どうやらフェルズが異端児たちの護衛として使うためにギルドの会議を遅延させていたらしい。

 

「あ、こら目をそらすな走るな逃げるんじゃねえ!」

 

「なずな、弱いものいじめはダメ!」

 

「ウィーネ邪魔すんな!そいつ一発殴らせろ!」

 

───これは数多の英雄譚たちの横で繰り広げられる道化芝居。

 

タンクとか言う地味な役割のせいで見せ場の少ない、起伏の少ない物語である。

 

 

「じゃ、ナズナの追い出しコンパを始めようか」

 

「いえーい!俺このまま帰ってこないけどよろしくー!」

 

「ふっ、安心しろ。ちゃんと捕まえに行く」

 

「ディープキスできてたらなぁ、結婚も考えたかもなぁ…?」

 

「くっ、オッタルめ…!ナズナをよろしく…!」

 

「全然いらない」

 

「ていうかなんでオッタルがおるんじゃ?」

 

「ま、オッタル、だからね」

 

「フィン、酔うのが早いぞ。そんなしたり顔で言われても全然わからん」

 

「よぉアイズ、2連敗だなぁ?ひっひっひっひ」

 

「10万」

 

「おっと、今日はお金のあるナズナさんなので問題ないのだった」

 

「あ、じゃああたしが貸してた3万も返して」

 

「あ、私も6万を…」

 

「じゃあ自分も」

 

「あ、やめろ!旅の資金がなくなんだろうが!それが無かったらすぐ帰ってこないといけなくなるだろ!あ、なんでお前らそれ聞いてむしろ勢いよく奪ってくんだ!やめろ!!」

 

「う゛ぅ〜ナズナぁ…!達者でなぁ!浮気はするんやないでぇ!」

 

「それ昨日も聞いた」

 

「え、昨日?兄さん、夜中に帰ってきて誰にもあってないって」

 

「おっとやべやべ。レフィーヤ、愛してるぜベイベ★★」

 

「兄さん!!!!!」

 

誤解なきように初めに説明しておくと、これは一発芸を極めて頂点に至った男の話ではない。

これは酒の勢いでやらかした思いつきの一発芸が、なんか偉業にカウントされてしまってレベル7に至った間抜けな男の話だ。

 

息を吐くように九魔姫を行き遅れ呼ばわりし、怒れる他のエルフの女性陣に中指をたてる口の悪いアラサーエルフ。

見た目も性格もただのクソガキ。

家族大好きガチタン隠れマゾ合法ショタエルフという属性過多な冒険者。

 

それがロキ・ファミリアのレベル7。

一発芸で頂点に手をかけた男。

ナズナ・スカディである。

 




●あとがき。

この暇つぶし小説を最後まで読んでくださって誠にありがとうございました。
作者自身が感じるほどに右肩下がりにクオリティが下がっていく中、おそらく最後まで読んでくださった方はそう多くないなという確信があります。
なのでこの文章を読んでくださっている方は相当な選ばれしものということです。

もともと書きたいものを書くというスタンスで、全力で妄想をぶちまけてみたところ、ダンまちという素晴らしい作品の力の後押しのみで最初の方だけでもたくさんの方に見ていただくことができました。
途中でシリアス興味ないんで、とかネットミームがうざい、とか色々な意見を頂きながらもその日書きたいものを書くというスタンスだけは貫きましたが、いい経験にはなりました。
正直仕事始まってからはかなりしんどくて、なかなか小説のクオリティ維持というのが難しかったのもあるのですが、たぶん自分長いストーリー書くの向いてねえなと実感しました。
次書く時は思いついた設定の新鮮味があるうち、飽きられないうちに逃げ切るスタンスで行こうと思います。
とりあえず色々書きたい設定を詰め込みすぎたナズナというキャラクターの冒険はここで終わりです。異端児との共通点、エルフ連中の曇らせ、妹レフィーヤ、アイズの変顔、酒カス、クソガキ、ロキとの肉体関係とかとか。色々詰め込みました。
前も一度書いた気がしますが、ナズナのスキルはアクナイから持ってきてたり。

息抜きとか承認欲求膨れたらまたちょこっと番外編でナズナ寝取られものとか書くかもですが、完結できて本当に安心しています。
俺ガイルとかコナンとかぼざろとか、浮かんでは消えてる妄想たちや、未完にしてるハルヒ、途中で放置してるブルアカなど創作自体は続けていけたらなと思います。

最後に、改めましてこれほど作者の妄想全開、ネットミーム全開、やりたいことだけ乗っけた小説を最後まで読んでくださってありがとうございました。
作者である私はとても書いてて楽しかったです。
皆さんの少しの暇を潰せる程度にこの小説が役に立っていたら嬉しいなと思います。

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