【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ 作:ガルカンテツ
対艦魔術攻撃によって中破した霊電子戦艦群は、対霊探隠ぺい霊符術も失い、無防備な姿を晒した。さらに『伊ー400』からの霊電子攻撃を成すすべなく受け、完全に支配下へと置かれた。もはや本国への通信すら不可能だろう。
8機のHFナイトホークも抵抗を断念し、捕虜となった。
拿捕した『オハイオ』をはじめとする8隻の乗員は、後続の皇国軍霊電子戦艦群に引き渡されることになった。一応は捕虜として扱うが、皇国との関与をこれほど明確に知られた以上、内戦が終結するまでは連邦へと送り返すわけにはいかない。
うっきうきで到着した『そうりゅう』の艦長、呉ナゴミは、拘束されたブレマー・キトサップの姿を見るなり、指をさして爆笑した。ぐぬぬと悔しげに身悶えするブレマー。『伊ー400』の副長である呉ナトミは、姉に手放しで褒められ、顔をほころばせていた。
一方、『ナッチャンワールド』は本来の任務へと戻り、『伊ー400』の補給と修理を開始する。
巨大な艦内ドックへと『伊ー400』を格納し、専用の台座に据えて作業が進められる。
無数の作業用
気密の保たれた巨大ドック内で、大勢の作業員が行き交う中、小柄な少女が艦尾でぴょんぴょんと跳ねていた。
「くっ! 届かない! もうちょっと……!」
どうやら『伊ー400』の艦尾に付着した何かを取ろうとしているらしい。
しばらく奮闘していたが、一向に届く気配はなかった。それを見かねたのか、長身の男が歩み寄ってくる。
「これか?」
男はひょいと容易く、艦尾に付いていた手のひらサイズの黒い箱を剥ぎ取った。
「あ! レイちゃん! そうそう、それそれ!」
小柄な少女……の姿をした『伊ー400』の艦長、スージー・アツギ。その正体は、星菱レイの母親であるカズミである。
「それが『餌』か?」
「そう、発信機ね。ストーカーなんて嫌ねぇ」
「いつから気づいていた?」
「最初からよ。私は艦長として
スージーはレイから『小箱』を受け取ると、魔術を込めて粉々に破壊した。
「そういえば、ユイちゃんは?」
いつもならレイの隣にいるはずの横田ユイの姿が見当たらない。
「ユイなら今、寝ているよ。ボクが作ったオムライスを食べたら眠くなったみたいだ」
「へー……えっ!? 今なんて言ったの?」
「ユイは寝てるって」
「じゃなくて! あんた料理なんてできるの!?」
「できるよ」
「しかもオムライスなんて凝ったものを……」
「いや、簡単だよ。チキンライスを炒めて卵で包むだけだから」
「……いや、簡単って……まあ、ユイちゃんが元気ならそれでいいけど」
意外な息子の特技に、スージーは目を丸くした。
「ユイは地上戦で忙しかったからね。特に
「そうね。大変だったわね」
スージーは『伊ー400』から離れることができなかったため、LBU軍との政治的な調整はすべてユイが担っていた。戦場となる惑星に赴き、現地の軍と協調して地上戦を展開し、その都度調整、作戦共有、後始末、そして感謝の言葉を受ける。ユイたちは連戦連勝を続けていたが、他星系でも戦闘は頻発しており、状況はまさにいたちごっこだった。そんな日々が続けば、疲労が溜まるのも無理はない。
「でも、もう大丈夫! 秘密兵器が到着したからね」
「秘密兵器って、アラヤたちのことか?」
「そう! これで
スージーが力強く拳を握る。
「それで、ボクは何をすればいい?」
「もちろん、ユイちゃんをサポートするのよ」
「そうじゃなくて」
レイは、念のために周囲に誰もいないことを確認した。
「ボクの『影』としての役割は?」
「……もちろんあるわよ。ただ、南西部に入ってからね」
「そうか」
「でも、本当にいいの? ユイちゃんには決して言えないような仕事も含まれるわよ」
「構わない。以前も言った通り、ユイは光の中にいればいい。影になることは、ボクがすべて背負う」
「そう……。そのときは、お母さんも一緒だからね」
「いらん」
「えーっ、冷たいわねぇ!」
重くなりそうな空気を振り払うように、彼女はおどけて見せた。それから気を取り直して、力強く宣言する。
「じゃあ始めましょうか!
続く