【第二部開始】人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ   作:ガルカンテツ

292 / 292
Part-C

 対艦魔術攻撃によって中破した霊電子戦艦群は、対霊探隠ぺい霊符術も失い、無防備な姿を晒した。さらに『伊ー400』からの霊電子攻撃を成すすべなく受け、完全に支配下へと置かれた。もはや本国への通信すら不可能だろう。

 8機のHFナイトホークも抵抗を断念し、捕虜となった。

 

 拿捕した『オハイオ』をはじめとする8隻の乗員は、後続の皇国軍霊電子戦艦群に引き渡されることになった。一応は捕虜として扱うが、皇国との関与をこれほど明確に知られた以上、内戦が終結するまでは連邦へと送り返すわけにはいかない。

 

 うっきうきで到着した『そうりゅう』の艦長、呉ナゴミは、拘束されたブレマー・キトサップの姿を見るなり、指をさして爆笑した。ぐぬぬと悔しげに身悶えするブレマー。『伊ー400』の副長である呉ナトミは、姉に手放しで褒められ、顔をほころばせていた。

 

 

 一方、『ナッチャンワールド』は本来の任務へと戻り、『伊ー400』の補給と修理を開始する。

 

 巨大な艦内ドックへと『伊ー400』を格納し、専用の台座に据えて作業が進められる。

 

 無数の作業用キューボット(Cubot)が慌ただしく稼働し、『伊ー400』の外装を修復していく。外殻の傷の補修から、特殊塗料による再塗装までが並行して行われた。また、対霊探隠ぺい霊符術の再構築には、専門の機術士たちが当たっている。

 

 気密の保たれた巨大ドック内で、大勢の作業員が行き交う中、小柄な少女が艦尾でぴょんぴょんと跳ねていた。

 

「くっ! 届かない! もうちょっと……!」

 

 どうやら『伊ー400』の艦尾に付着した何かを取ろうとしているらしい。

 

 しばらく奮闘していたが、一向に届く気配はなかった。それを見かねたのか、長身の男が歩み寄ってくる。

 

「これか?」

 

 男はひょいと容易く、艦尾に付いていた手のひらサイズの黒い箱を剥ぎ取った。

 

「あ! レイちゃん! そうそう、それそれ!」

 

 小柄な少女……の姿をした『伊ー400』の艦長、スージー・アツギ。その正体は、星菱レイの母親であるカズミである。

 

「それが『餌』か?」

「そう、発信機ね。ストーカーなんて嫌ねぇ」

「いつから気づいていた?」

「最初からよ。私は艦長として人型出力炉(HFR)に乗って艦と一体化しているのよ? 身にゴミが付いたことに気づかないわけがないじゃない」

 

 スージーはレイから『小箱』を受け取ると、魔術を込めて粉々に破壊した。

 

「そういえば、ユイちゃんは?」

 

 いつもならレイの隣にいるはずの横田ユイの姿が見当たらない。

 

「ユイなら今、寝ているよ。ボクが作ったオムライスを食べたら眠くなったみたいだ」

「へー……えっ!? 今なんて言ったの?」

「ユイは寝てるって」

「じゃなくて! あんた料理なんてできるの!?」

「できるよ」

「しかもオムライスなんて凝ったものを……」

「いや、簡単だよ。チキンライスを炒めて卵で包むだけだから」

「……いや、簡単って……まあ、ユイちゃんが元気ならそれでいいけど」

 

 意外な息子の特技に、スージーは目を丸くした。

 

「ユイは地上戦で忙しかったからね。特に局所泡連合(LBU)軍との調整で、かなり神経を削っていたはずだ」

「そうね。大変だったわね」

 

 スージーは『伊ー400』から離れることができなかったため、LBU軍との政治的な調整はすべてユイが担っていた。戦場となる惑星に赴き、現地の軍と協調して地上戦を展開し、その都度調整、作戦共有、後始末、そして感謝の言葉を受ける。ユイたちは連戦連勝を続けていたが、他星系でも戦闘は頻発しており、状況はまさにいたちごっこだった。そんな日々が続けば、疲労が溜まるのも無理はない。

 

「でも、もう大丈夫! 秘密兵器が到着したからね」

「秘密兵器って、アラヤたちのことか?」

「そう! これで遠征空母打撃群(ECSG)に対抗できるわ! いたちごっこはこれでおしまい!」

 

 スージーが力強く拳を握る。

 

「それで、ボクは何をすればいい?」

「もちろん、ユイちゃんをサポートするのよ」

「そうじゃなくて」

 

 レイは、念のために周囲に誰もいないことを確認した。

 

「ボクの『影』としての役割は?」

「……もちろんあるわよ。ただ、南西部に入ってからね」

「そうか」

「でも、本当にいいの? ユイちゃんには決して言えないような仕事も含まれるわよ」

「構わない。以前も言った通り、ユイは光の中にいればいい。影になることは、ボクがすべて背負う」

「そう……。そのときは、お母さんも一緒だからね」

「いらん」

「えーっ、冷たいわねぇ!」

 

 重くなりそうな空気を振り払うように、彼女はおどけて見せた。それから気を取り直して、力強く宣言する。

 

「じゃあ始めましょうか! 反撃の時間(payback time)よ!」

 

 

続く

 




評価、ご感想お待ちしています。

【完結】NGチルドレン【EVAFF】もよろしくお願いします
https://syosetu.org/novel/323311/
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

エーテル・レコード ーかつての少年兵が英雄と呼ばれるまでー(作者:蒼色ノ狐)(オリジナルSF/戦記)

―いま我々が生きている世界と近く、それでいて遠い場所▼多くの被害をもたらした『大震災』▼生き残った人々は、新たに発見された『オリハルコン』と名付けられた鉱物▼その鉱物から得られる半永久的なエネルギー、『エーテル』によって活気を取り戻そうとしていた▼しかし繁栄がもたらしたのは平和だけではない▼利権を巡った戦いも爆発的に増えていったのである▼さらにエーテルによっ…


総合評価:41/評価:-.--/連載:130話/更新日時:2026年05月11日(月) 05:50 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>