居間の畳にうつ伏せに眠る左之助さんの背中に張り付くしとりの背中に張り付くひとえを見つけ、ブレーメンの音楽隊のようでクスリと笑ってしまう。
仲良しなのは良いことです。
しかし、我が家の可愛い姉妹は女の子としての危機感を持っていないのでしょうか。剣路君や心弥君に対して、全く危機感を持っておらず、何だか申し訳なくなってしまっていたりします。
「しとり、ちょっとした質問なんだけど、貴女は剣路君の事をどう思っていますか?」
「けんちゃん?んとね、男の子?」
女学校で習えるところは既に教えていますけど。しとりは剣路君の事を普通の幼馴染みという認識しているだけで、まだ異性とは思っていない?
「(もしもお互いに好き合っていないのに無理に結婚を強いるのはダメですね)」
「ん!でも、けんちゃんはわたしを倒してお嫁さんにしてくれるって言ってたよ!父様と母様みたいに仲良しの家族になってみたいかな」
にっこりと笑うしとりに私も笑顔を向けながら「きっとしとりはステキなお嫁さんになれますよ」と言ってあげると、左之助さんは不服そうに身体を起こし、しとりとひとえを背中からおろす。
「父ちゃんは寂しいから嫁に行くなよ、な?」
「んー、じょりじょり!」
「やー!」
ジョリジョリとまた生えてきたお髭で頬擦りする左之助さんにしとりとひとえは、イヤそうに抵抗していますけど。嬉しそうにも見える。
私は恥ずかしくて出来ないです。
「ん!ん!んんんんん!!!」
「ねーさま、怒った!」
「父様、いじわるはメッ!」
「お、おお、悪かったな。……これ、しとりにやったみたいなのを景にもやったら怒るのか?」
「ジョリジョリされても怒りはしませんが、無精髭は整えたくなりますね」
そう言うと残念そうにする左之助さん
「私は怒らないタイプの人間なので、そもそも怒る気力を蓄えるのも一苦労しているわけですし。左之助さんも知っているじゃないですか」
「ひーは怒れる!」
「フフ、そうですね。大事なモノを守るときに怒ることが出来るのは良いことです。ひとえもしとりも大切なものは絶対に守ってあげてくださいね」
優しくしとりとひとえの頭を撫でてあげ、ずいずいっと二人を押し退けて顔を近付けてきた左之助さんに首を傾げつつ、コツンとおでこを合わせる。
「……まあ、今日はこれでいい」
よしよしと私の頭を撫でる左之助さん。
なんだか、みんなで頭を撫で合っているのは変な光景にも見えてきますね。けど。こういうのも、たまには悪くないと思います。