やはり、逆刃刀は帯刀していません。
緋村剣心は腰に佩いていた倭杖を抜き、石動雷十太も巨大な木刀「カジキ」を担ぎ、現れる。一見すると柔と剛のように見えるけれど。
老いて尚も最強たる緋村剣心です。
しかし、当の本人は自分の強さに意味はあるのかと悩み始めて、今回の大会も剣路君の元服前の指南という目的を隠している。
「いざ、尋常に────始めェ!!」
操さんが叫んだ刹那、飯綱の乱射で空気が裂け、砂塵が舞い上がる。砂塵の距離と風切り音を頼りに飯綱を回避し、緋村剣心は石動雷十太に詰め寄る。
カジキを振るって攻め込む緋村剣心を拒み、地面に振り下ろした木刀が地鳴りを起こす。長身かつ巨体の石動雷十太の強力はかなり左之助さんや悠久山和尚に近く、パワーは間違いなく緋村剣心より上です。
「飛天御剣流、龍槌閃」
しとりが、そう呟くと緋村剣心は龍槌閃を放つ。
次々と技の名前を攻撃する前に呟くとしとりに左之助さんも気付き始めました。しとりは、もう緋村剣心の動きを見切っている。
いえ、俯瞰して見える場所というアドバンテージを持っている今の状況だけと仮定しましょう。もしも完璧に見切っているのなら目を見開く訳がありません。
「しとり、技を覚えているんですか?」
「ん、飛ぶ技がほしい」
「飛ぶ技……飛ぶ技?」
にこりと笑うしとりの言葉に私は困惑し、飛天御剣流の技は確かにジャンプしますが、飛んでいる訳ではない気がします。
そう思いながら、緋村剣心が倭杖を逆手に握って擬似的に双龍閃を放つ。一撃目は目眩ましの右手を振るい、続けて逆手の倭杖がカジキを握る右腕を打つ。
強烈な一撃を受けてカジキを落とす石動雷十太は左手でカジキを振り抜き、素早く体勢を立て直して、緋村剣心を見据える。
「剣心はやっぱり強えなァ…!」
左之助さんも嬉々として笑い、他の闘技者も老いて衰えたと思っていた緋村剣心の強さは健在という事実に笑みを浮かべています。
石動雷十太も僅か数手しか戦っていなかった過去よりも強くなり、緋村剣心と渡り合えることに歓喜し、この十余年間で培った技術をぶつけていく。
まるで、勉強の成果を報告するように───。
負けず、折れず、研鑽を重ねた剛刀が緋村剣心と切迫し、緋村剣心も必然的に微笑みを浮かべて鍔迫り合いに持ち込み、木刀をぶつけ合う。
強すぎる。
「(私の記憶より強くなっている?)」
元々、緋村剣心は病を患う筈でした。幸運にもこの世界の緋村剣心は発病しておらず、年老いたことで老獪さを身に付けています。
強く、さらに強く、より強く。