翌日、柏崎さんの相手を抽選する。
すでに敗退した闘技者が自分も参加できないかと言い出してしまい、どうしようかと柏崎さんを見れば「ワシはいつでも構わんよ。糸色殿も老い耄れよりましじゃろう」と笑っていますけど。
絶対に負ける気のない笑みです。
そもそも柏崎さんは暗殺もこなせる熟練の接近戦術の格闘家ですし、不老不死のホムンクルスになってしまったため、先ず倒す事は出来ません。
唯一無二の対抗手段はドクトル・バタフライがほとんど回収し、もしものときに備えて錬金術師へと送り返す準備も整えています。
わざとですね。
普通に嫌がらせで遊んでいます。
そういうところは子供に似ないといいんですが、絶対に似ますよね。だって、ドクトル・バタフライはそういうことをしますから。
「ひーもでたーい!」
「ホッホッホッ。どうしようかの」
「かーさま、いーでしょー?」
私の事を見上げながら可愛らしくおねだりしてくるひとえの顔を見つめて、和んでいると戌亥番神が「ガキの遊びじゃねえぞ」と言います。
そのとおりなんですけれど。
「むぅー、ガキじゃないよ!ひとえだよ!」
「ハッハー!相楽とやるために俺もくじ引きに出たいと言いたいところなんだが、そのガキが贔屓で当たるかもしれねえな」
「景はそんなことしねえよ。ひとえ、出たかったらあのバカを倒してみろ」
いきなり、とんでもないことを言い出した左之助さんに戌亥番神が怒ろうとしたその時、ひとえは止める間もなくトタトタと闘技場を歩いて、戌亥番神に近づく。
まだ、私より背丈が小さいんです。
殴るのはダメですからね?!
「チッ。オラ、一発だけだぞ」
「あい!」
渋々と仁王立ちになった戌亥番神へと、ひとえが助走をつけて走り出し、タンと飛び上がりながら右手を開いたまま戌亥番神にビンタを見舞った。
みんなは効かないと思っていたのでしょうが、ひとえのビンタで戌亥番神は誰もいない観客席に向かって吹き飛ばされ、観客席の土台に突き刺さり、動かなくなってしまいました。
「ひーの勝ち!」
「ひとえちゃんは左之助に似たのね」
「ん、ひーちゃんも一緒に出れるね」
「あーい!!」
しとりも嬉しそうに笑いながら、ひとえを抱っこしました。普通の人間だったら、首の骨がへし折れて、亡くなっていたかもしれない一撃でした。
やっぱり、ひとえもすごいですね。
お母さんとしては、どれだけ強くて女の子なので危ないことはしないでほしいです。いえ、怖いものに出会わなければいいんですけど。