柏崎さんと姿お兄様の仕合。
どちらも特別参加のため会場の雰囲気は少し微妙です。しかし、忍び装束を纏った柏崎さんと木刀の二刀流で構えた姿お兄様に期待は高まります。
緩やかに動き始めた姿お兄様にヤジを飛ばす観客席でしたが、気がつけば剣呑な雰囲気に呑まれ、ひたすらに早く振るわれる木刀に目を見開く。
軽やかに、しなやかに、木刀は舞う。
しとりのように鮮烈さは無く、純然に強いと見せつける姿お兄様に観客席は息を飲み、見守る。
姿お兄様はとくに気にした様子もなく、平然と木刀を振り抜き、トンファーを構えた柏崎さんに笑みを浮かべ、後ろに飛び退く。
逃げたわけではありません。
間合いを広げて、技を繰り出すつもりですね。
「景、どうなる」
「どうなると言われましても……左之助さんのほうが分かっていますよね?」
「まあな」
私の見えるものは姿お兄様が優勢に攻めているところですし、柏崎さんが荒々しくトンファーを旋回させ、木刀の衝撃を相殺し、攻める。
「そうさつ」と書いて、「そうさい」です。
これは誤字でなく、そういう類いの技と判断でき、柏崎さんほトンファーのパンチに合わせて振るう打突部位を木刀で受け止めた姿お兄様。───ですが、その打突は一撃ではなく、縦軸の振り上げも加わります。
トンファーは旋回し、姿お兄様が顎に突き上げ、お兄様は血を吐く。
流石は御庭番衆です。
しかし、姿お兄様は顎を擦って目付きを変える。
柏崎さんを敵と断定し、倒すことにしたのは直ぐに分かりました。
走る。
駆ける。
早く。
さらに速く。
更にもっと疾く。
やがて、姿お兄様は消えるほどに迅く。
神速の足さばきと縮地の融合によって姿お兄様の身体は肉眼で捉えることは、ほぼ不可能になり、地面を踏みつける重低音が時折、聴こえる。
────刹那、柏崎さんが防ぐ。
見えず、追えず、捉えられない。
その攻撃を熟練の経験で補っています。強さ以上に経験の豊富さで姿お兄様に迫り、一手先を読んでいる柏崎さんに歓声が起こる。
目に見える達人というものです。
それほどに柏崎さんは強く見えるわけです。
しかし、強すぎるわけではなく、あれは技巧です。技術を総動員しなければ負けると柏崎さんは感じているのでしょう。
「オレの目じゃ追えねえな」
「ん、わたしは見える」
「ひーも見えるよ!」
二人の言葉に左之助さんは悩ましげに闘技場を見つめて、みんなで闘技場を見下ろし、見つめて、動きを必死に観察しています。
私は、辛うじて見えますね。
見えるだけで追えませんけど。