秘刃・飛天無限斬。
超神速の太刀筋は一振りに三人を斬る。
では、その秘刃を一呼吸の内に千回も使える剣士がいた場合、どうなるでしょう。答えは、空気中の微粒子さえも逃げ場を失う。使い手を中心に、半径2メートル数センチの間合いとはいえ、受けも往なしも無意味な剣撃の半球体という絶対的脅威に攻め込む必要があります。
「ん、父様見えない」
「お前はまだ見るな?」
秘刃の事はまだ教えることは出来ませんので、しとりは両目を左之助さんの手で覆われてしまい、不満そうに文句を言っています。
しかし、その顔はとてもかわいいです。
「ひーもできる?」
「どう、でしょうか」
ひとえなら出来るかも知れませんが、木刀がひとえの力に耐えられない可能性もあります。そうなると怪我をしてしまうかもしれません。
素早く斬って進む姿お兄様に柏崎さんはトンファーを捨てて、特攻を仕掛けた瞬間、姿お兄様は飛天無限斬を止めて、向かってきた柏崎さんの顎を殴る。
先程の意趣返し!
ちょっとだけお兄様にビックリしながらも柏崎さんは止まらず、姿お兄様の襟元を掴み、一本背負いのごとく肩口に巻き込み、地面に叩きつける。
勢いが強すぎて、着物が裂けている。
「今は姿お姉様だったんですね」
美女剣士だったことに沸き立つ観客席の男の人達の大歓声にビクリと身体を跳ね上げ、ひとえを抱っこしたまま、歓喜の雄叫びが聴こえてきます。
凍座白也の雄叫びも聴こえました。
「あいつ、衆道じゃなかったのか」
「どちらかと言えば、お兄様に恋していますね。今は親友枠に収まって機を伺っているのかと」
そう言うと左之助さんは「姿も大変だな」とつぶやき、私は13年ほど前に描いた左之助さんと緋村剣心の春画の事を思い出しました。
ものすごく好評だったものです。
ふた、更に剣撃は加速しました。
以前のお兄様の最大最速を上回る剣撃に私は首をかたむけ、しっかりと観察する。居合。それも鞘を使わず、斬りかかる瞬間、木刀を手放しています。
構えのとき、遊びを作っている。
しかし、それでは落としてしまう可能性もあります。だというのに、姿お兄様は平然と木刀を手放して、空気から木刀を抜刀している。
達人技とかそういうものではありません。
アレは楽だからそうしている。
他にも出来るけれど。木刀なら、これでいいという気持ちで斬っているのが見え、流石に悪影響そうなので私もひとえの目を手で隠す。
「みえなーい!」
「フフ、今は視ちゃダメです」
とても怖いものですからね。