しとりの目標は、あくまで優勝です。
剣路君と仕合えば自分で手加減し、負けてしまう事を想像していましたけれど。その心配は無さそうです。しとりの剣気は強さを増しています。
左之助さんを投げ飛ばせてしまえる怪力のひとえの振るう木刀を受け流し、明神君の使った制極界を使おうとするしとりは勤勉ですが。
やっぱり、不安になります。
いくら強くてもしとりもひとえも女の子です。男の人に手を掴まれたり、肩を掴まれたりしたら、とても怖い気持ちになるかもしれません。
「(私は、よく経験しています)」
それは、貴女が油断するからじゃないの?
「(違います。あと当たり前の様に私の身体に取り憑いてお話しするのは止めてもらえますか?)」
お断りするわ。私はどうしてもカグヤを見つけないといけない。けど、貴女の記憶が正しいのなら、この出会いを壊さないように、あと数年は我慢するわ。
そうしてもらえると助かります。
いきなり私の身体に取り憑いていたとカミングアウトしてきたオオイミ王の直属部下のナナツルギ───そこに私やドクトル・バタフライと同じく、『月光条例』の「物語」に生まれ変わった転生者の彼女が加わった、ハチツルギに溜め息をこぼす。
おそらく彼女は剣士です。
伸びる剣や加速する剣、見えない剣。様々な能力を持つナナツルギの剣士達と違い、彼女の武器は「足刀」と呼称する蹴り技です。
ススハムに近しく、大変です。
「ん、母様も戦えるの?」
「しとり?私は戦ええぇ、可能よ。強いわよ、私はませんから。あの、被せるのはやめてもらえませんか?」
私の懇願なんて無視です。
いえ、分かっていましたけど。もうちょっとだけ、どうにかなりませんか?という気持ちを持ちつつ、しとりが気付くまで私の内側に潜んでいたわけですし。
「左之助さんにバレたら怒りますね。きっと、それはもうものすごく怒ります」
そうなったら、怖いので左之助さんには内緒にするようにしとりとひとえには言っています。そもそも身体は貸しませんし、渡しません。
同じ転生者だというのは、少し予想と違いましたけれど。そういうのは避けたいです。いえ、避けないといけないわけです。
「ん、また悩んでる」
「お母さんは悩み頃なのです」
「ん、じゃあ、わたしもそれにする」
にこやかに宣言してきたひとえに良い子に育って、本当に良かったと安心します。貴女もカグヤさんに会いたいのは母性愛からですね。
母親の役目はおっているわね。
じゃあ、おかあさんですね。