先見を越える動き───。
左袈裟と思えば右薙ぎに変化しました。
左切上げと思えば脛斬りに変化し、手順も手番も目まぐるしく変化し、予測と推測で組み立てる剣客達と違い、私としとりとひとえは四乃森蒼紫と緋村剣心の剣劇を肉眼でとらえています。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
斬る。
────永遠に思えるほど緋村剣心と四乃森蒼紫の攻防は拮抗し、紙一重の刹那の瞬間を見極め、逃げるのではなく攻め込み。
お互いに次の手を崩す。
斬って、往なして、斬って、捌き、斬って、逸らし、斬って、ずらし、斬って、と小太刀の銀閃が煌めき、倭杖の木製の刀身を削っていく。
緋村剣心は倭杖で受ける度、武器を失う。逆刃刀を求めれば明神君は直ぐに投げ渡すでしょうが、左之助さんと最後の喧嘩をした緋村剣心は逆刃刀でした。
ある意味では、最良の出来事です。
あの日を境に緋村剣心は逆刃刀を本当の意味で明神君に譲ることが出来たように思います。
「飛天御剣流、龍巣閃」
「乱撃の一点集中型だな」
「ん、父様と戦うならわたしもあーする」
「へえ?」
「重ねて打てば強い父様も倒せる」
しとりはそう言うと竹刀を撫でた。
「二人とも仕合を見ましょうね」
「おう」「ん!」
私の言葉にうなずく二人に苦笑を浮かべつつ、キョロキョロと目を動かしているひとえの目を優しく閉じてあげ、膝枕をしてあげます。
強すぎる光景に視覚は痛めてしまいます。
「ん、すごく疲れてる」
「ひとえは少し力の使い方が下手みたいですね。今は少し休んでいましょう、ね?」
「ぁぃぃ......」
じんわりとひとえの熱が手のひらに移ってきます。私の手は少し冷たいので、こうしておでこや目に重ねると熱を吸って冷やしてあげられます。
安心して眠ってくださいね。
しかし、中々にふたりの拮抗は崩れず、左之助さんもしとりもみんなも見ることに疲れ始めています。............しとりは目の焦点をずらし、普段は視力を制御していますし。私は眼鏡を掛けないと何も見えません。
ひとえだけはまだ対応策を作っていない。遮光の高い眼鏡を作れば下手に視力を痛めたりする弱めたりすることはないはずですけど。
「本当に長いな。いつ終わるんだ」
「お互いに奥の手を使えませんので、決定打を使えない状態です。しとりもこういう場合に備えて、切り札の他に奥の手、最後の手段は用意しましょうね」
「ん、わかったー」