四乃森蒼紫が飛び退いて、小太刀を構えた。
倭杖で回天剣舞を防ぐ事は先ず無理です。度重なる鍔迫り合いで倭杖の木製の刀身は削れ、あと一撃か二撃を打てば砕けてしまう。
刹那、四乃森蒼紫が剣舞を放つ。
一瞬にして闘技場に無数の刀傷が刻まれ、剣心の身体に斜め十字の傷が幾つも刻まれる。けれど、致命傷は避け、胸の傷を押えています。
「…母様、五十回回ると何回?」
「百です。百の剣劇───いえ、剣幕と称する方が正しく思えますね。正直に言うと、倭杖の様に木製の刀剣でアレを受けるのは不可能です」
「じゃあ、どうするんだ」
私の言葉に左之助さんが鋭い目付きで聞いてきました。近くにいる明神君や薫さん、斎藤一もそうです。みんな、私が答えを知っていると思っている。
しかし、剣舞の弱点は円の中心です。
唯一、剣を振るう瞬間、ほんの二秒にも満たない時間、素早く鋭く旋回する四乃森蒼紫は無防備な状態でその場に停止し、踏み込めなくなる。
頭上の一点。
四乃森蒼紫の脳天に隙は生まれるものの、回天剣舞を掻い潜り、踏み込み、翔ぶなど少なくとも無謀です。届いたとしても足を切断される可能性だってある。
「───問題は剣舞の数ではなく左回天と右回天の連携です。回天剣舞は左右どちらにも旋回でき、切り裂く。その場を動かない神速です。対し、緋村さんは破れる天翔龍閃を使えません」
「出所は二つ……だが、それを見極める以前に、踏み込んで切り裂く天翔龍閃が無いんじゃ打つ手がないってことか」
明神君は私の言葉に自分の持つ逆刃刀を投げ込むべきかを考え、剣路君も心配そうに緋村剣心の事を見つめています。
「……あるだろう。阿呆が」
斎藤一が呟き、みんなが彼を見る。
「飛天御剣流は多人数と戦闘する事を想定し、戦国時代に生まれた剣術だ。お前達も一度ぐらい見ているだろう、地面を切り裂く技だ」
「ん、飛天御剣流、土龍閃」
「京の町は石を敷き詰めた道も幾つかあった。礫は目眩まし、急所への打撃にもなる」
「そういや、オレも受けたことあるな。アレは確かに痛かった」
ウンウンと頷く左之助さん。
私の知らないところで……いえ、大怪我を負って長屋に帰ってきたときがありましたね。おそらく、あのときに土龍閃を受けたのでしょう。
「ん、わたしのために使っていいよ?」
「阿呆が。お前がやったら関銃になる」
かんじゅう?
ああ、機関銃のことですね。
変はところで区切りますね。いえ、この時代だと当たり前なのでしょうざ、少し気になります。勝ったのは、緋村剣心でした。