しとりの傍にいるひとえが、ものすごく剣路君を嫌がっています。警戒しているというより何だか不満そうにも見えてしまいますね。まるで、宝物を取られたようにも見えます。
「だめっ」
「ん、どうしたの?」
「ねーさま、ひーのだよ!」
そう言うと剣路君に文句を言いつつ、ひとえは私の方を見ます。かわいいですけど、そういうのはもうちょっと控えましょうねら、
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛」
「やー!!!」
「あらあら」
ガッチリと抱きつくせいで、ひとえの怪力が決まっているのか。ものすごく苦しそうにするしとりと、離れないとするひとえの攻防を見ます。
やっぱり、とてもかわいいです。
「お義母さん、すみません」
「いえいえ」
「義父とは呼ぶな」
まだ、それを言うんですか?と視線を向けると左之助さんは「お前は何で、そんなに平気そうなんだ」と言われるものの、女の子は嫁ぐものなので。
そういうものだと割り切っているんです。
いえ、割り切っているわけではないですね。もっと、こう、好きな人といるのがいいんです。好きで、好きで、好きで、好きで、堪らなくなるのが女の子です。
左之助さんは分からないですかね?
「しとりはどうしますか?」
「ん?なにが?」
「私達と一緒にいるがです」
折角の新婚なのに嫌じゃないですか?と告げると、嬉しそうにするばかりです。しとりはいつもかわいく笑いますね。
ソーキュートです。
「ねーさま、行っちゃだめなの!」
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!?」
へし折れるんじゃないかと心配になる締まりに剣路君が近づくと「にーさまはだめ!」と言われ、しょんぼりとしています。
左之助さんが近づきます。
「とーさまもだめ!」
「なんでだよ!?」
「ん゛ん゛ん゛ん゛!!」
ミシミシと聞こえたところで、ひとえの頭を優しく撫でてあげます。ひとえは寂しいだけなんです。ずっと傍にいたはずのお姉ちゃんがいなくなると勘違いしているのは分かりますけど。
「ん、ひーちゃん落ち着いた?」
「...ぁぃ」
「ん、いいこ。私は家にいるよ」
よしよしと私の代わりにひとえの頭を優しく撫で始めたしとりに安心します。しかし、困りましたね。左之助さんがひとえに嫌われてショックを受けています。
「左之助さん、なれましょう?まだひとえの分も残っていますから、ね?」
「いやだ!聞きたくねえ!!」
まるで、子供のような駄々をこねる左之助さんに苦笑を浮かべつつ、どうやって説得したものかと私は静かに悩みます。