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男はため息をついた
「なぁ魔法使い」
「何ですか勇者様」
酒場にて、顔の整った男女が酒をちびちびと飲んでいた。男の方は死んだ様な目をしており、女の方は何やらそわそわとしている。
「俺達、八人パーティだったよな、昨日まで」
「はい、勇者様」
「なんで二人なの?」
女は目を逸らした。
「追放したよね、俺いない時に、六人も」
「……はい」
「何で!?」
男は勇者であった。魔王討伐の任を仰せつかり、伝説の武具を探し出し、そろそろ最強カンストへと至りそうな矢先、どういうわけかパーティメンバーの過半数が居なくなっていた。
「六人だぜ六人、普通一人二人だろ!!?」
「一人二人だったら許容されてましたか……」
「しないよ!?ここまで冒険してきた仲間だもん!」
「でも一人二人って……」
「言葉の綾だよ……」
勇者はため息をついた。
「……で、なんで追放したの?」
「恋路の邪魔になりそうだったから」
「……ごめん、何て?」
「聞き取れませんでしたか、難聴系勇者は嫌われますよ」
「お前の発言に驚いてんだよ」
勇者は耳は良かった、そして魔法使いは頭が恋愛脳であった、アホである。
「だって僧侶さんとか絶対勇者様に好意寄せてましたよ?」
「いや……まぁそうかもしんないけど」
「賢者さんだって」
「うん、まぁあいつはね」
「戦士さんだって、騎士さんだって」
「そこなんだよ」
戦士も騎士も男である、なぜ追放したのか勇者は分からなかった。
「戦士さんは貴方に好意を寄せてました」
「いや別に恋愛の邪魔になる訳なく無いか?」
「いえ、邪魔になります、勇者様はあの人に歓楽街連れてかれましたよね?」
「あった様な……」
「ほら邪魔、結婚において友愛は邪魔なんですよ」
四天王の首を取ったかの様に、魔法使いは主張した。勇者は呆れた。
「百歩譲って戦士はいいとして、騎士は?あいつ潔癖だし歓楽街とか行かないぞ」
「騎士さんは貴方に好意を寄せてました、普通に恋愛的な意味で」
「えっ、そうなの?」
「騎士団、男色多いですからね」
「自慢じゃないが俺、男女問わずガチ恋ファン多いからなぁ、結構男にも告られた……待て、よくよく考えたら告白された人間のその後を知らないぞ」
「私は差別はしない主義なので勇者様に告白した輩は男女平等にボコボコにしてます」
「うわぁ……」
「ちなみに騎士さんは結構重めでしたので追放は諦めて殺そうかとも思いましたが、何とか追放しました」
殺そうとまでしていた魔法使いに勇者はドン引きした。
「遊び人は?」
「よくよく考えたら賢者さんいるから要らないかなって」
「お前賢者も追放したじゃん!!!」
魔法使いは照れながら酒を一杯飲んだ。
「ちなみに剣士さんも勇者様がいるので追放しました、そもそも彼は余命短かったのに魔剣とか使ってたので」
「余命短かったのかアイツ、通りで生き急いでた訳だ」
「まぁ魔剣【ヨメイミジカクナール】も没収したのでもう大丈夫ですよ」
「大丈夫そう」
勇者は安心した。
「というか六人とも不自然に思わなかったのか?」
「というと?」
「いやだって……俺いないのに追放とか、不自然だろ」
「そこはほら、私魔法使いですし、変装しました」
「化けちゃったかぁ!」
勇者は驚いた。
「化けちゃいましたね、流石にその手の人間にはバレましたけど」
「まぁ僧侶とか賢者、魔法の知識凄いもんなぁ、何度冒険で助けられた事か」
「いえ、バレたのは遊び人さんです、僧侶さんとか賢者さんは結構すんなり私が勇者だと信じてくれました」
「何で???」
「流石に遊び人さんの本職メイクには及ばなかった……」
「魔法使えよ魔法使い」
魔法使いは恋愛脳であった、かしこさにデバフがかかっていたのかも知れない。
「ちなみに一番手間取ったのは剣士さんでした」
「まぁ復讐とか言ってたもんな」
「いえ、『魔物料理が食えなくなる!』とほざいていたので」
「余命短くなってた原因が判明してしまった、身体に悪そう」
「五臓六腑の過半数は腐っていましたね」
「消化器官にダメージ入ってるだろうしね」
ヨメイミジカクナールは原因では無かったのだな、と勇者は酒を置いた。
「騎士さんも中々揉めましたね、つい即死呪文を撃ってしまいました」
「ついの規模では無い」
「遊び人さんが奇跡的に蘇らせてくれましたね」
「多分今ごろは追放先で賢者になってるな」
「ちなみに賢者さんはそれを見て『私のアイデンティティ……』と言いながら勝手に追放されました」
「脱退だよそれ」
魔法使いは「まぁ脱退も追放も二文字違いですし」とほざいた。
「えーと……僧侶と戦士は?」
「結構すんなりいけましたね、すんなり追放、すん追です」
「無理して略すな、というか後が怖いな」
「というと?」
「こういうのって俺が復讐される奴じゃない?こう……結構無惨に死ぬ感じで」
「私が無惨に死のうとも勇者様だけは死なせません、私は勇者様を愛しているので、私が全力で勇者様を守ります」
「お前が追放してなきゃこんな事にはなってないからいまいち感動できない」
男はため息をついた。