榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

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#011 『正論過ぎてぐうの音も出なかった』

 月一試験からしばらくして――結局、KCとI2社の調べでも、ショック・ルーラーとホープのカードに何の異常もなかった。

 しかし、ペガサスはどちらも作った記憶がないと言っている。だが、KCのデュエルディスクは正式なカードとして二枚のナンバーズを認めていた。

 意識を取り戻した万丈目に詳しい話を聞いてみると、クロノス教諭らしき人物が自分の買った新パックを譲ってくれたようなのだが、それを受け取った辺りから意識が朦朧として、デュエル中のことは殆ど何も覚えていないらしい。

 当のクロノス教諭は、そんな贔屓のようなことはしていないと供述しており、結局このカード達はどこから来たのかわからなかった。

 とはいえ、ナンバーズの16と39が見つかった以上、少なくとも1から39はあると推測できる。また万丈目のように操られる人間が出て来るとも限らないので、海馬から追加任務でナンバーズの捜索を命じられた。

 

「って言われても、デュエルアカデミア以外にもあるかもしれないしなぁ」

 

 また、自分がそのナンバーズに操られないとも限らない。そこで遊矢は、何故かナンバーズを使っても正気を保っていた十代に協力を要請した。

 ついでに、調査が終わったホープのカードも十代に返している。自分の想像よりも早く帰ってきたことで、十代も嬉しそうにホープをEXデッキに戻していた。

 

「調査だっけ? 全然協力するぜ。また、ナンバーズとデュエル出来るかもしれないしな」

 

 何だかんだ、万丈目との激闘に勝利したことで、またナンバーズとデュエルしたいと感じたらしい。

 デュエル中は敗北を覚悟してまで万丈目を救おうとしていたのに、喉元過ぎれば熱さを忘れるではないが、あの苦境を忘れてしまったようだ。

 

「それに、俺もホープを手に入れたし、もしかしたら今なら遊矢に勝てるかも!」

 

 と、調子に乗る十代に、対して遊矢は無言でデュエルディスクを展開する。

 今度こそ勝つぜ――と、十代もデュエルディスクを展開するが、結局このデュエルも十代の負けで終わった。

 

「ぐわー、せっかくホープを出せたのにー!」

「ホープに固執するからだよ。十代のデッキはあくまでE・HEROデッキだろ? ホープを出そうと躍起にならずに冷静に状況にあった融合モンスターを出せばよかったのに」

 

 とはいえ、新しいカードを使ってみたいという気持ちはわからなくはない。しかし、それで自分のプレイを乱しては本末転倒だ。

 自身でもわかってはいるのだろうが、負けたことが悔しいようで十代も唇を尖がらせている。エクシーズが加わったことで、これまでの融合に重きをおいた構築じゃバランスが悪いということもわかったのか、「デッキ調整もしないとなー」と、呟いていた。

 

「とりあえず、ナンバーズらしいカードや怪しいカードに纏わる話を見つけたらすぐに連絡してくれ。俺も見つけたら十代を呼ぶから」

「オッケー、じゃあ何かあったらまた連絡する」

 

 

 

◇◆

 

 

 

「確かに何かあったら連絡するとは言ってたけど、何でこんな所に……」

 

 十代と別れてから約半日。

 結局、ナンバーズ探しについては特に進展もなく、そろそろ部屋に帰って休むか――と、考えていた所に、十代から「大変だ、遊矢。明日香が攫われた!」と、いう言葉の足らない連絡を受けた。

 折り返し電話をかけても繋がらず、仕方なく十代の携帯端末についているGPSを頼りに、デュエルアカデミアでも立ち入り禁止とされている幽霊寮と呼ばれる場所にやってきたのだが、夜中ということもあって十代や明日香の姿はまだ見えない。

 正直、事情は良くわからないが、明日香が攫われてしまった以上、何かしらの事件に巻き込まれているのは間違いないだろう。十代に助けを頼まれた手前、放置しておく訳にも行かないので、GPSを見ながら十代達を探していく。

 

「行かせないノーネ」

 

 しかし、ようやく寮の中に横穴らしき場所を見つけたと思ったら、その行く先に何故かクロノスが現れて遊矢の行く先を塞いできた。

 

「クロノス教諭、何故ここに!?」

「ここは立ち入り禁止区域なノーネ、生徒がいる方がおかしいノーネ」

「それは……」

 

 正論過ぎてぐうの音も出なかった。

 

「もし、先に進みたいのであれーば、この私とデュエルをするーのデース!」

「デュエルを? いえ、先生……確かに、立ち入り禁止区域にやってきた俺が悪いのはそうなのですが、今はそれ所ではなくて――」

「デュエルをするーのデース」

「明日香が攫われて――」

「デュエルをするーのデース」

 

 ここで、遊矢はようやくクロノスの様子が何かおかしいことに気が付いた。

 立ち入り禁止区域に来たことを怒りもせずに、デュエルを要求するなど普通ではない。おまけに、こちらが何を言ってもデュエルをしろとしか言わないのだ。いくら、クロノスがオシリスレッド嫌いとしてもここまで話が通用しないはずがない。

 

 よく見れば、クロノスの目は焦点があっておらず、月一試験の時の万丈目の姿が重なって見えた。

 

「まさか――」

 

 クロノスもナンバーズに操られているのでは――と、いう疑念が遊矢の中に生まれる。

 十代のことは心配だが、もしクロノスがナンバーズに操られているとしたら、このまま放置しておく訳にもいかなかった。

 

「……デュエルで先生に勝てば、先に進んでもいいんですね?」

「勿論ですーノ! 勝つことが出来ればですーが」

「ならば、その勝負受けます!」

 

 デュエルを受けると答えた瞬間、クロノスの体から万丈目の時と同じ嫌な気配を感じる。

 やはり、思った通り、クロノスもナンバーズに操られているようだった。

 

「「デュエル!!」」

 

 互いにデュエルディスクを構える。表示されたターンプレイヤーはクロノスだった。

 

「私の先攻、ドローなノーネ!」

 

 もし、クロノスがナンバーズを持っているとしたら、出来ればそれを出す前に一気に勝負を決めたいというのが遊矢の考えだった。

 下手にナンバーズの召喚を許せば、最悪ナンバーズを持っていない遊矢には対処できない可能性もある。ライフをゼロにしても、ナンバーズを倒さないとクロノスが正気に戻らないということも有り得るのだ。

 朝、遊矢が十代にナンバーズを探す手助けを頼んだのも、その可能性があるからだった。しかし、現在十代は危機にあり、とてもじゃないが助けを呼べるような状況ではない。何とか遊矢だけで、この危機を乗り越えなくてはいけなかった。

 

「私はフィールド魔法、《歯車街》を発動ンヌ! このカードの効果により、『アンティーク・ギア』モンスターを召喚する際に、必要なリリースを一体少なく出来るーノ! 私はこの効果で、《古代の機械獣》をリリースなしで通常召喚するノーネ!」

 

 《古代の機械獣》

 効果モンスター

 ☆6 地属性 機械族

 ATK2000 DEF2000 攻撃表示

 

「さらに私は、速攻魔法《サイクロン》を発動ンヌ! 《歯車街》を破壊するノーネ! これにより、《歯車街》の第二の効果が発動しますーノ! このカードが破壊され、墓地へ送られた時、手札・デッキ・墓地から『アンティーク・ギア』モンスター一体を特殊召喚出来るノーネ!」

 

 《古代の機械合成竜》

 効果モンスター

 ☆7 地属性 機械族

 ATK2700 DEF1700 攻撃表示

 

「手札から魔法カード、《スター・チェンジャー》を発動ンヌ! 自分フィールドのモンスター一体のレベルを一つ上げるか、下げることが出来るノーネ! 私は《古代の機械獣》のレベルを一つ上げるノーネ!」

 

《古代の機械獣》 ☆6→7

 

「これで、レベル7のモンスターが二体!?」

「レベル7の《古代の機械合成竜》と、レベル7となった《古代の機械獣》でオーバーレイネットワークを構築するノーネ! エクシーズしょうかーん!」

 

 当然のように二体のアンティーク・ギアモンスターをオーバーレイユニットへと変化させていく。

 おまけに、レベル7だ。エクシーズモンスターも、ランクが高いモンスターの方が強力な効果を持っていることが多い。

 構築されたオーバーレイネットワークから飛び出してきたのは間違いなくナンバーズだった。遊矢がクロノスから感じる負の力が全て、そのカードに集約されているのを感じる。

 

「現れるーノ! 《№11ビッグ・アイ》!!」

 

 《№11ビッグ・アイ》

 効果モンスター エクシーズ

 ランク7 闇属性 魔法使い族

 ATK2600 DEF2000 攻撃表示

 

 出てきたモンスターは、円錐のような形をし、先端の方には土星の環のようなリングが自身を囲うように付いている。

 また、最大の特徴は、その名前の通り大きな目玉だった。大きな一つ目が、まるで獲物を探すかのように遊矢へと向けられていく。

 見れば、クロノスの頬に11という文字が刻まれている。やはり、ナンバーズの数字こそがプレイヤーとナンバーズを繋ぐ鍵のようだった。

 

「リバースカードを一枚セットしてターンエンドなノーネ!」

 

 

 クロノス 手札1枚 LP4000

 フィールド ビッグ・アイ

 魔法・罠 リバース1枚

 

 VS

 

 遊矢 手札5枚 LP4000

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

 やはり、クロノスはナンバーズを持っていた。

 一体どこで入手したのか、少しでも手がかりを探したい所だが、先程の様子を見る限り、話しかけてもデュエルを進めるように言われるだけだろう。

 

「俺のターン!」

 

 デッキからカードをドローする。とりあえず、遊矢に出来るのは速攻でクロノスのライフをゼロにすることだけだった。

 

「俺はスケール3の《相克の魔術師》と、スケール8の《相生の魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

 万丈目が使っていたショック・ルーラーのように魔法を無効にされない限り、ペンデュラムを止められることはない。

 二つの光の柱が出現し、これでレベル4から7までのモンスターが同時に召喚可能となった。

 

「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚!!」

 

 遊矢が空に手を広げる。出てきたのは三体のモンスターだった。

 

「現れろ、俺のモンスター達! まずはレベル4、《EM シルバー・クロウ》! 同じくレベル4、《EM オッドアイズ・ミノタウロス》! そして、レベル7、雄々しくも美しく輝く二色の眼! 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

 

 《EM シルバー・クロウ》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆4 闇属性 獣族

 ATK1800 DEF700 攻撃表示

 

 《EM オッドアイズ・ミノタウロス》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆4 闇属性 獣戦士族

 ATK1200 DEF1600 攻撃表示

 

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆7 闇属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 召喚された三体のモンスターの攻撃力は、全てビッグ・アイの攻撃力以下だが、この状況に操られているクロノスは既視感を感じているはずだ。

 その証拠に、「あのときーノ……」と、無意識に言葉を呟いている。入学試験のデュエルで、遊矢がプレイした状況に、現状はかなり酷似していた。

 

「《相生の魔術師》のペンデュラム効果! 相手フィールドより自分フィールドのカードが多い場合、このカードのペンデュラムスケールは4になる」

 

 《相生の魔術師》 ペンデュラムスケール8→4

 

「さらに俺は、レベル4のシルバー・クロウとオッドアイズ・ミノタウロスでオーバーレイ!」

 

 シンクロとエクシーズが普及し始め、クロノス自身もナンバーズを使っている。

 もう遊矢だけの召喚ではなくなったが、それでもクロノスにとって遊矢のエクシーズ召喚は特別だった。

 

「――漆黒の闇より、愚鈍なる力に歯向かう反逆の牙。今ここに降臨せよ! エクシーズ召喚!」

 

 遊矢がEXデッキからカードを引き抜く。そのモンスターこそ、クロノスに敗北を突きつけたモンスター。

 

「現れろ、ランク4! 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!」

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》

 効果モンスター エクシーズ

 ランク4 闇属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 漆黒のドラゴンがクロノスに向かって咆哮する。

 攻撃力ではビッグ・アイの方が勝っているはずなのに、無意識にクロノスの体は震えを起こしていた。

 

「ダーク・リベリオンの効果発動! オーバーレイユニットを二つ取り除き、相手モンスター一体の攻撃力を半分にし、その数値分自身の攻撃力に加える! トリーズン・ディスチャージ!!」

 

 もはや毎度お馴染みとなりつつある効果。オーバーレイユニットを全消費し、発生した紫電の稲妻を相手にぶつけることで攻撃力を吸収していく。

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》 ATK2500→3800

 《№11ビッグ・アイ》 ATK2600→1300

 

 ナンバーズはナンバーズでしか破壊できないという効果がこいつにあったとしても、戦闘ダメージは通る。

 ダーク・リベリオンで2500を与え、残りのオッドアイズの効果で戦闘ダメージを二倍にし2400のダメージを与えれば、クロノスのライフはゼロだった。

 

「バトルだ! 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》で《№11ビッグ・アイ》を攻撃! 反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》 ATK3800 VS《№11ビッグ・アイ》 ATK1300

 

 ダーク・リベリオンが自慢の咢で敵を粉砕しようと進んでいく。しかし、されるがままのクロノスではなかった。

 

「罠カード、《重力解除》を発動するノーネ! このカードの効果で、フィールドの全ての表側表示モンスターは表示形式が変更されマース!」

 

 まるで重力に押しつぶされるかのように、ダーク・リベリオンやオッドアイズは身動きが封じられ、守備表示へと変更されていく。当然、攻撃もキャンセルされた。

 おまけに、ビッグ・アイも守備表示となり、ナンバーズ以外の戦闘では破壊されない鉄壁の盾となる。このまま守備表示でターンを凌がれるだけでも遊矢にとっては厳しい状況だった。

 

「同じ手は二度通じないってことか。流石は、操られていても実技担当最高責任者……俺は、リバースカードを一枚セットしてターンエンド」

 

 

 遊矢 手札0枚 ライフ4000

 フィールド オッドアイズ ダーク・リベリオン

 魔法・罠 リバース1枚

 ペンデュラム 相克、相生

 

 VS

 

 クロノス 手札1枚 LP4000

 フィールド ビッグ・アイ

 魔法・罠 なし

 

 

「私のターン、ドロー! 魔法カード、《天使の施し》を発動ンヌ! デッキからカードを三枚ドローし、その後手札から二枚を捨てるノーネ!」

 

 無条件でデッキからカードを二枚ドローする《強欲な壺》に並ぶ、禁止ドローカード。

 しかし、この世界ではまだ制限カードとして登録されているため、《強欲な壺》同様に使用が許可されている。だが、デッキから三枚もカードを加え、不要カードを墓地へ捨てるという効果は、あまりにも強力過ぎた。

 

「手札から《死者蘇生》を発動し、《天使の施し》で墓地へ捨てた《トロイホース》を特殊召喚するノーネ!」

 

 《トロイホース》

 効果モンスター

 ☆4 地属性 獣族

 ATK1600 DEF1200 攻撃表示

 

 木で出来た馬のモンスターが召喚される。これは遊矢との入学試験デュエルで使われたダブルコストモンスターだった。

 

 と、すると、当然この後召喚されるのは――

 

「私は、《トロイホース》をリリースして《古代の機械巨人》をアドバンス召喚ンヌ! 《トロイホース》は地属性モンスターをアドバンス召喚する時、二体分のリリースになりますーノ!」

 

 《古代の機械巨人》

 効果モンスター

 ☆8 地属性 機械族

 ATK3000 DEF3000 攻撃表示

 

 遊矢の知っている『アンティーク・ギア』デッキは融合を使う型が多いが、どうやらクロノスはどちらかというと《古代の機械巨人》をベースにした構築にしているようだ。

 生徒相手ということで、普段は《融合》を使うことを禁止にしているのだろう。でなければ、いくら十代が強いと言っても、入学試験でそう簡単に勝てはしない。

 問題は、その手加減が遊矢にも利いているかどうかだった。今はクロノスの手札がないからまだいいが、もし融合を多用されると、遊矢でも相手をするのは少し厳しくなってくる。

 

「さらにこの瞬間、ビッグ・アイの、効果を発動しマース! 一ターンに一度、オーバーレイユニットを一つ使い、相手モンスターのコントロールを得ることが出来るノーネ! この効果で、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》のコントロールを得ますーノ!」

「何だって!?」

 

 ビッグ・アイのオーバーレイユニットが一つ消費されると同時に、目の光が変わったダーク・リベリオンがクロノスのフィールドへと移動していく。

 

「ただし、案山子、この効果を使用するターン、ビッグ・アイは攻撃できないノーネ! 残念無念なノーネ」

 

 皮肉も良い所だった。ダーク・リベリオンの効果は永続的に続くので、ビッグ・アイは攻撃力が下がったまま、逆にダーク・リベリオンの攻撃力は上がったままだ。

 ビッグ・アイは攻撃できなくとも戦闘破壊出来ない盾となり、クロノスを守る。そして、奪われたダーク・リベリオンが矛となって、遊矢に襲い掛かってくる。独特な言葉とは裏腹に、抜け目のない状況を作ってくる辺り、やはりクロノスも油断できない。

 

「《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》を攻撃表示に変更して、バトルフェイズ! 《古代の機械巨人》で、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を攻撃なノーネ! アルティメット・パウンド!」

 

《古代の機械巨人》 ATK3000 VS《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》 DEF2000

 

「《古代の機械巨人》の効果発動ンヌ! このカードが攻撃する時、相手はダメージステップ終了時まで、魔法・罠カードを発動できないノーネ! さらに守備モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、相手に貫通ダメージを与えますーノ!」

「くっ!!」

 

 大きな腕を振りかぶって、一撃でオッドアイズが粉砕されていく。

 伏せカードも発動できず、守備表示のオッドアイズが破壊されたことで遊矢に貫通ダメージが与えられた。

 

「ぐぅっ!!」

 

 遊矢 LP4000→3000

 

「《相生の魔術師》のペンデュラム効果! フィールドのカードが並んだことで、ペンデュラムスケールが8に戻る!」

 

 《相生の魔術師》 ペンデュラムスケール4→8

 

「ですーが、これが通れば終わりですーノ! 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》で、シニョール榊へダイレクトアタックなノーネ!」

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》 ATK3800 VS遊矢 LP3000

 

「そっちは通さない! 罠カード、《ガード・ブロック》! 戦闘ダメージをゼロにし、デッキからカードを一枚ドローする!」

 

 クロノスの《古代の機械巨人》のダメージステップ終了時まで魔法・罠を発動できない効果は、あくまで《古代の機械巨人》が攻撃する時のみ、それ以外には発動できた。

 向かってくるダーク・リベリオンの一撃を防ぎ、追加でカードをドローしていく。しかし、状況は圧倒的クロノス有利だった。

 

「私はこれで、ターンエンドなノーネ」

 

 

 クロノス 手札0枚 LP4000

 フィールド ビッグ・アイ、ダーク・リベリオン、《古代の機械巨人》

 魔法・罠 なし

 

 VS

 

 遊矢 手札1枚 ライフ3000

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 ペンデュラム 相克、相生

 

 

 相手モンスターのコントロールを永続的に奪う効果――ショック・ルーラーも凄い効果だったが、ビッグ・アイの効果も負けていない。

 

「俺のターン!」

 

 だが、ここで諦める選択肢などなかった。

 

「俺は、魔法カード、《シャッフル・リボーン》を発動! 自分フィールドにモンスターが存在しない場合、墓地のモンスター一体を特殊召喚する! 甦れ、《EM シルバー・クロウ》!」

 

 オーバーレイユニットへと変質したペンデュラムモンスターは、EXデッキへ行くルールが適応されない。

 よって、ダークリベリオンの効果で使用された二体のペンデュラムモンスターは墓地へ送られていた。その内の一体、シルバー・クロウが蘇生効果でフィールドに舞い戻ってくる。

 

 《EM シルバー・クロウ》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆4 闇属性 獣族

 ATK1800 DEF700 攻撃表示

 

「さらに、俺は、セッティング済みのペンデュラムスケールで、ペンデュラム召喚! EXデッキから現れろ! 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

 

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆7 闇属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 逆にオッドアイズは戦闘で破壊されたことで、EXデッキに行っていた。

一度EXデッキに加わってしまえば、レベル7のモンスターでも何度でも召喚できる。それがペンデュラムモンスターの強みだった。

 

「魔法カード、《置換融合》を発動! フィールドの闇属性、シルバー・クロウとオッドアイズを融合! 二色の眼を持つ竜よ、闇の獣と一つとなりて、新たな道を指し示せ!」

 

 両手を合わせ、エクストラデッキからモンスターを呼び出す。このモンスターで、クロノスをナンバーズから解放する。

 

「融合召喚! 現れろ、飢えた牙持つ毒龍! レベル8、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!!」

 

 《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》

 効果モンスター 融合

 ☆8 闇属性 ドラゴン族

 ATK2800 DEF2000 攻撃表示

 

 禍々しい紫色のドラゴンがフィールドに爆誕する。エースであるオッドアイズを融合素材にしてまで出したモンスターに、クロノスも自然と警戒心を上げていた。

 

「スターヴ・ヴェノムの効果発動! 融合召喚に成功した時、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター一体を選択し、その攻撃力分だけスターヴ・ヴェノムの攻撃力をターン終了時までアップする! 俺は、奪われたダーク・リベリオンを選択!」

 

 スターヴ・ヴェノムの光がダーク・リベリオンから攻撃力を移していく。

 ダーク・リベリオンは自身の効果で攻撃力が1300ポイント上がっており、スターヴ・ヴェノムはその上昇値を含めた全ての攻撃力を自身にプラスする。

 

 《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》 ATK2800→6600

 

「こ、攻撃力6600ですート!?」

「まだだ! スターヴ・ヴェノムの更なる効果発動! 一ターンに一度、相手フィールドのレベル5以上のモンスター一体の名前と効果をターン終了時まで得る! 俺は《古代の機械巨人》を対象に効果を発動!」

 

 これにより、スターヴ・ヴェノムは自身の攻撃時にダメージステップ終了時まで魔法・罠を発動できない効果と、守備モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば貫通ダメージを与える効果を得た。

 奪われたダーク・リベリオンを攻撃しても2800、《古代の機械巨人》を攻撃しても3600しかダメージを与えられない。だが、守備表示のビッグ・アイならば話は別だった。

 

「グ、ぬぬ……」

 

 クロノスが恨めしそうに自分のデュエルディスクに視線を移す。

 ビッグ・アイの守備力は2000しかない。《古代の機械巨人》の効果をコピーしたスターヴ・ヴェノムでの貫通ダメージは4600――余裕でクロノスのライフをゼロに出来た。

 遊矢としても、もし次にクロノスへターンを渡せば、ビッグ・アイの効果で今度はスターヴ・ヴェノムを奪われ、デュエルに負けていただろう。本当にギリギリの勝負だった。

 

「バトルだ! 《古代の機械巨人》の名と効果をコピーしたスターヴ・ヴェノムで、《№11ビッグ・アイ》に攻撃!」

 

 《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》 ATK6600 VS《№11ビッグ・アイ》 DEF2000

 

 スターヴ・ヴェノムの全身にある宝玉が輝き、いくつもの帯状の光が集中していく。

 

「この瞬間、コピーした《古代の機械巨人》の効果! このカードが攻撃する時、相手はダメージステップ終了時まで、魔法・罠カードを発動できない! さらに守備モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、相手に貫通ダメージを与える! いけっ!!」

 

 収束された光が全て、ビッグ・アイに向かって発射された。

 ナンバーズはナンバーズでしか破壊できなくとも、貫通ダメージによってクロノスのライフはゼロとなる。

 

「マンマミーヤ!?」

 

 クロノス LP4000→0

 

 何とか、デュエルには勝利した。

 問題はナンバーズを破壊しなかったことで、クロノスが正気に戻らないかもしれない点だが、遊矢の考えは杞憂だったようで、しっかりとデュエルは終わり、クロノスも憑りついていたものが取れたように意識を失っている。

 倒れるクロノスは、万丈目の時同様に完全に気を失っており、すぐには起きそうもなかった。

 仕方なく、「後で返します」と一声かけて、《№11ビッグ・アイ》のカードをクロノスのデュエルディスクから抜き取る。やはり、ショック・ルーラーと同じで、嫌な気配は消えてなくなっていた。

 

「やっぱり、カードテキストにナンバーズの記述がない……」

 

 スターヴ・ヴェノムの攻撃でビッグ・アイを破壊できなかった以上、ナンバーズはナンバーズでしか戦闘破壊出来ないはずだが、その記述がカードからはなくなっていた。

 結局、何がどうなっているのかよくわからないが、すぐに十代達のことを思い出し、再びGPSで現在地を探ろうとする。しかし、何故か十代のいる位置が表示されなかった。

 

「故障か? こんな時に……!」

 

 クロノスもこのまま放置しておく訳にもいかないが、現在位置がわからない十代達の方が危ないと判断して、奥まで助けに行くことにする。

 そのまま真っすぐ奥へ進んでいくと、何やら黒い球体のようなものが遊矢の目に入ってきた。

 

「遊矢君!」

「遊矢!」

「翔、隼人、無事だったか。十代と明日香は?」

「明日香さんは向こうの棺桶の中で気を失ってるっす」

「十代は……あの中なんだな」

 

 そう言って、隼人が指さしたのは目の前の黒い球体だった。こうして見ているだけでも、普通では有り得ない力を感じる。

 

「とりあえず、明日香を連れてくる。その後、十代を助けよう。話を聞くのはその後だ」

 

 薄気味悪い棺桶に入れられている明日香を助け、そのまま翔や隼人達の方へ移動していく。

 とりあえず、明日香を助けることは出来たが、これからどうするか――と、遊矢が考えていると、黒い球体の下の方に裂け目が出来て、中から十代が飛び出してきた。

 

「「十代!」」

「アニキ!」

 

 出てきた十代に駆け寄っていく。

 本人もキョロキョロしながら、「どうやら、無事に出られたみたいだな……」と呟いていた。

 

「大丈夫か、十代!」

「遊矢、助けに来てくれたのか?」

「当たり前だろ」

「へへっ、サンキュ。とりあえず大丈夫だ。後、ナンバーズ回収したぜ」

「……こっちも一枚回収した」

 

 遊矢が遅れてきた理由に得心がいったようで、十代も「成程ね……」と呟いている。しかし、詳しい話をしている時間はないようで、十代が出てきた黒い球体が放電を始めていた。

 

 咄嗟に伏せるように声をかける。

 

 だが、運よく爆発するようなことなく、黒い球体はそのまま消えたみたいだった。とはいえ、このままここに居ても危険なので早く脱出することにする。

 

 横穴の外に出る頃には明日香も意識を取り戻したようで、ふらつきながらも自分の足で立っていた。

 対して、遊矢が倒して置き去りにしてきたクロノスは意識を失ったまま倒れている。それを見た十代が、遊矢の相手はクロノスだったのだとすぐに理解した。

 

「俺はとりあえずクロノス教諭を保健室まで連れて行くよ。このままには出来ないしな。みんなも、もう遅いから早く寮に帰って来いよ」

 

 そう言って、遊矢が重そうにクロノスを担いで歩いていく。

 とりあえず、十代は幽霊寮で見つけたものを手早く明日香に渡すと、遊矢の後について行ってクロノスを担ぐのを手伝い始める。

 明日香に手渡されたものは写真であり、そこにはオベリスクブルーの制服を着たどことなく明日香に似た男性の姿が映っていた。

 

 

 




 原作との変化点。

・遊矢が十代にナンバーズ捜索の手伝いを頼んだ。
 十代君は操られない! ふしぎ!

・#5『闇のデーモンデッキ』、#6『ハネクリボーの奇跡』より、遊矢と十代が別行動を取っていた。
 十代は原作通りタイタンと戦っていたが、途中からナンバーズを出して急に操られ出した。遊矢はクロノスを倒している。

・時系列的には月一試験から少ししているので10月上旬くらい。
 デュエルアカデミアは9月スタート! 外国と一緒だよ!


 デュエル変更点。

・ビッグアイの効果で奪ったダーク・リベリオンを攻撃表示に変更するのを忘れていたので修正しました。


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