次の日、遊矢は十代から昨日の詳しい経緯を聞いた。
どうやら、割と真面目にナンバーズを探してくれていた十代は、幽霊寮で生徒が行方不明になっているという話を聞いて、もしかしたらナンバーズと関係があるんじゃないかと考えたようで、翔や隼人を連れて幽霊寮へ行ったらしい。
そこで、過去にこの寮で行方不明になった兄を探している明日香と出会ったようなのだが――何だかんだあって、明日香がタイタンを名乗る謎のデュエリストに連れ去られてしまい、助けるためにデュエルをすることになった。
しかし、ここでもいろいろあって、タイタンと十代がデュエル中に闇の球体に取り込まれてしまったらしい。また、いきなりタイタンが《№22不乱健》を出してきたので、十代はホープを呼んで何とかデュエルに勝利し、闇の中から何とか抜け出して遊矢と合流したというのが一連の流れである。
帰り際に明日香に渡していたのは、明日香の兄の写真のようで、十代達はこれからも明日香の兄捜索を手伝うつもりということだった。
「まぁ、そこまではいいんだけど……」
問題はその後に起きたことだった。
今日の朝、いきなりデュエルアカデミアの倫理委員会なる奴らがレッド寮に乗り込んできて、いきなり十代達が退学にさせられそうになったのだ。
正直、昨日の今日で、いつ委員会が詳しいことを調べたのかとツッコミを入れそうになったが、向こうの言っていることは概ね間違っていない。
とはいえ、このまま十代達が退学したら巻き込んだ自分のせいだ。遊矢もまた学校側に掛け合い、何とか制裁デュエルに勝利すれば退学は免れることになったのだが、学校側はタッグデュエルを指定し、十代と翔をそのメンバーに指定してきた。
しかし、遊矢は、そもそも十代達が立ち入り禁止区域に足を踏み込むきっかけを作ったのは自分だと訴え、またクロノスも本来なら拒否したかったのだろうが、遊矢にナンバーズの件で助けて貰った手前強く出られなかったこともあり、制裁デュエルは十代と遊矢のタッグデュエルに変更になっている。
「なーに、俺と遊矢なら楽勝だよ」
「相手が誰かもわからないんだ。油断してると瞬殺されるぞ」
レッド寮の二強がデュエルをするということで、翔や隼人にも悲壮感はない。
特に、最初にタッグパートナーに指定されていた翔は自分がデュエルすることがなくなり、かなりホッとしていた。十代も仮に相方が翔でも勝つ気満々だったが、遊矢に変わったことで精神的に余裕が出来ている。
しかし、遊矢にその余裕を慢心と窘められ、「わかってるよ」と、唇を尖らせていた。
「あ、そうだ。これ昨日のナンバーズ、渡しておく。それと、やっぱりホープにはナンバーズはナンバーズでしか破壊されないの一文が追加されてなかった」
「そうか。俺の時は、相手のナンバーズはナンバーズ以外では破壊できなかった。けど、ライフをゼロにさえすれば、とりあえずナンバーズの力からは解放されるみたいだ」
十代から《№22不乱健》を受け取る。いろいろ問題は起きてしまったが、昨日の一戦でまた少しずつわかったことが増えてきた。
特にナンバーズを倒さなくても、相手のライフをゼロにすれば助けられるというのは大きな収穫だ。これで遊矢だけでもナンバーズを追うことが出来る。
最初はまだ謎も多かったので、十代の力も当てにしていたが、こんなことが起きてしまった以上、次からは自分だけでナンバーズを追うべきだと遊矢は考えていた。
しかし――
「俺は引かないからな」
「え?」
「遊矢のことだから、一人でナンバーズを追おうとか考えてるんだろうけど、俺は引かないからな」
まるで、こちらの考えはお見通しとばかりの十代の発言に遊矢も困った表情を浮かべる。
正直、ナンバーズは遊矢が考えていた何倍も危険な存在だ。今回のように誰かが攫われるようなイレギュラーが発生する可能性だってある。
「遊矢だって、絶対無敵って訳じゃないんだ。俺が一緒の方が安心だろ?」
「それは……」
遊矢も自分が最強だとは思っていない。世の中上がいるということは、海馬やペガサスとのデュエルで嫌という程わからされている。
確かに、海馬レベルのデュエリストがナンバーズに操られてしまった時、遊矢一人ではどうしようもなくとも、十代が一緒なら何とかなるかもしれない――そう考えてしまった。
「……危険だぞ?」
「俺、割とスリルは嫌いじゃないんだよ。昨日も何とか切り抜けて来ただろ?」
「なるべく危ないことはしないでくれると嬉しいんだけどな」
それは、十代の同行を認める一言だった。
それがわかった十代も、「それはナンバーズに言ってくれ」と軽口を返し、遊矢もまた「違いない」と小さく笑みを浮かべていた。
◇◆
午後になると、明日香がレッド寮にやってきた。
一応、十代達は制裁デュエルまで停学扱いとなっているので校舎には行けない。遊矢はテスターという立場もあって停学ではなく、休学という扱いになっているが、十代達と一蓮托生のつもりなので、レッド寮で一緒にデッキの調整をしていた。
だから、会うためにはわざわざレッド寮までやってくる必要性がある。
そんな明日香の第一声は謝罪であり、本来ならば自分も罰を受けなくてはいけないのに何のお咎めもないことや、こちらに何もしてやれないことを悔やんでいるようだった。
しかし、十代は「何もないならラッキーじゃん」と特に気にした様子もなく、翔も自分がデュエルする訳ではないからか「後はアニキと遊矢君を信じるしかないっすよ」と軽口を叩いている。隼人も「何とかなるんだな」と笑っており、誰も明日香を責める様子はない。それは遊矢も同じだった。
「俺達は別に明日香に責任を負って欲しい訳じゃない。けど、罪悪感を覚えているなら、相手をしてくれないか? 十代がタッグデュエルしたことないらしいんだよ」
と、遊矢も困ったような声を出している。
デュエルモンスターズの基本は一対一のシングルデュエルだが、二対二のタッグデュエルもあり、タッグの場合はフィールド・墓地・ライフを共有して交互にデュエルを行う。しかし、知識があっても未経験なのは流石に心配だ。これで「なーに、俺と遊矢なら楽勝だよ」と言っていたのだから驚きである。
「相手って、タッグデュエルでってことよね? 別に構わないけれど、私のパートナーは? 翔君? 隼人君?」
「ぼ、僕なんかが組んでも明日香さんの足を引っ張っちゃうだけっすよ……」
「右に同じなんだな。流石にレベルが違いすぎるんだな」
明日香と組むこともそうだが、特に相手が十代と遊矢ということもあって、二人は尻込みしてしまっていた。
こうなってしまうと、無理にデュエルさせた所でいい結果が出るはずもなく、タッグデュエルのメンバーが足りずに困った顔を浮かべる遊矢。
流石に練習もまともに出来ないのではどうしようもない。そういう意味も込めて、遊矢は明日香に助けを求めていた。
「さっきからこの調子でさ……」
「……まぁ、気持ちはわからなくはないけどね」
オシリスレッドの生徒程度の実力では、オベリスクブルーの生徒すら倒す遊矢や十代の相手は厳しいだろう。翔と隼人がデュエルを嫌がる気持ちもわからなくはない。
だが、それで困るのは遊矢と十代だった。
練習無しで本番をやって負けましたでは済まされない。特に十代は、遊矢と組むことで慢心している様子もあるし、本番前に上手いこと鼻っ柱をへし折っておきたい所でもある。
「……そうね。一人、協力してくれそうな人に心当たりがあるわ」
「おっ、マジか?」
デュエルが出来そうとわかって十代が嬉しそうな声をあげた。
「ええ、ちょっと連絡を取ってみるから少し待っていてくれる?」
「待つ待つ、よろしくな明日香!」
「ありがとう、明日香」
十代と遊矢の期待を背に、明日香が携帯端末を取り出して部屋を出ていく。
明日香としては、迷惑をかけた上に何も出来ないことへのお返しが出来るということで、何としても電話相手に許諾をもぎ取るつもりでいた。
「もしもし、亮? 今、少し時間を借りてもいいかしら――」
◇◆
カイザー亮こと、丸藤亮は翔の実の兄である。
しかし、その能力は弟とは正反対で、亮はデュエルアカデミアでもトップの成績を誇るオベリスクブルーの首席であり、毎日何人ものデュエリストがデュエルを望むカリスマを持っていた。
「いつも、弟が世話になっている」
そんなカイザーは今、オシリスレッド寮で遊矢と十代に頭を下げている。
と、言うのも、今回の一件について話を聞き、流石に兄として感謝を口にしないといけないと感じたからだ。
「アンタがカイザーか」
「翔の本当のお兄さんだっけ……」
「しっかりしたお兄さんなんだな」
「お、お兄さん。僕の為に頭まで下げて……」
しかし、亮がやってきた真の理由は別にあった。
そう、彼は入学試験の時に遊矢のデュエルを見逃しており、これまでも上級生と一年とのデュエルが許可されていなかったことで、遊矢とデュエルが出来ていなかったのだ。
デュエリストであれば、新しい召喚法には興味が尽きない。が、結局、時間が過ぎるだけで遊矢とコンタクトを取れず、ずっともやもやしていた所に今回の話がやってきた。
タッグデュエルとはいえ、遊矢の相方が一年で暴れているという有名な遊城十代ならば足を引っ張るような問題はないだろう。話を聞いた瞬間、今日の予定を全てキャンセルして、亮はこの話に飛びついた。
「時間が許す限り、俺と明日香で君達の相手をしよう」
「よろしく」
「よろしくお願いします」
「翔も、いい機会だ。このデュエルを良く見ておくと良い」
「は、はい!」
だが、そんな思惑は顔に出さず、亮はあくまで自分がデュエルの相手をしてやるという雰囲気を崩さない。本当は自分が戦いたいだけだが、如何にも助けていますという空気を上手く作っていた。
唯一、亮の内心を理解しているであろう明日香も、下手に突いて亮の機嫌を悪くしてもタッグパートナーがいなくなるだけなので、特にツッコミはせずに黙っている。
しかし、あのカイザー亮が、これでもかというくらいに下級生の世話を焼いているのは、普段の彼の姿を知る人間が見れば信じられないだろうな――と、内心では思っていた。
「聞けば、遊城十代君の方はタッグデュエルが初めてらしいが、俺と明日香も特にタッグ用にデッキの調整をしている訳ではないから、とりあえずはこのまま始めても問題ないと思うが……どうだ?」
「ああ、問題ない。それと十代でいいぜ。俺もアンタのことはカイザーって呼ばせてもらう」
「あ、俺も遊矢でいいです」
「わかった。俺のことは好きに呼んでもらって構わない。敬語も不要だ。では、遊矢、十代、始めよう。明日香もいいな?」
「ええ、大丈夫よ」
「では、行くぞ――」
「「「「デュエル!!」」」」
こうして、遊矢&十代VSカイザー&明日香とのタッグデュエルが始まった。デュエルディスクが示すターンプレイヤーは十代。
よって、十代、亮、遊矢、明日香の順にターンが回って行く。ライフは8000でフィールド、墓地は共有。スタンダードなタッグデュエルと言っていいだろう。
「俺のターン、ドロー! 俺は、モンスターを一体セット。カードを二枚伏せて、ターンエンドだ」
十代 手札3枚 LP8000
フィールド セット1体
魔法・罠 リバース2枚
VS
亮 手札5枚 LP8000
フィールド なし
魔法・罠 なし
「俺のターン、ドロー」
十代が様子見とも言うような感じでターンを終えると、亮がデッキからカードをドローする。
そのまま素早く手札を確認すると、待ち切れないとばかりに手早くカードをデュエルディスクに叩きつけた。
「相手フィールドにモンスターが存在し、自分のフィールドにモンスターが存在しない時、《サイバー・ドラゴン》は手札から特殊召喚することが出来る」
《サイバー・ドラゴン》
効果モンスター
☆5 光属性 機械族
ATK2100 DEF1600 攻撃表示
全身が銀色の機械のドラゴンが、亮のフィールドに現れる。
本来であれば、レベル5のモンスターにはリリースが必要だが、自身の効果によってその枷を上手く外していた。
「さらに、手札から《融合》を発動! 手札にいる二枚の《サイバー・ドラゴン》を手札融合し、《サイバー・ツイン・ドラゴン》を融合召喚する!」
《サイバー・ツイン・ドラゴン》
効果モンスター 融合
☆8 光属性 機械族
ATK2800 DEF2100 攻撃表示
二体の《サイバー・ドラゴン》が融合し、海馬が使った《青眼の双爆裂龍》と同じく、二つ首となった新たな機械のドラゴンが、フィールドに融合召喚されていく。
これで亮のフィールドには攻撃力2000を超えるモンスターが二体並んだ。
「バトルだ。《サイバー・ツイン・ドラゴン》で守備表示モンスターを攻撃! エヴォリューション・ツイン・バースト!!」
セットされた十代の守備モンスターは《カード・ガンナー》、守備力は400だった。
《サイバー・ツイン・ドラゴン》 ATK2800 VS《カード・ガンナー》 DEF400
口から発射されるビームの圧倒的なパワーで、《カード・ガンナー》が破壊されていく。
しかし、守備表示だったことで十代にダメージはない。また、《カード・ガンナー》が破壊されたことで、十代はその効果を発動させた。
「《カード・ガンナー》の効果発動! このカードが破壊され墓地へ送られた時、デッキからカードを一枚ドローする!」
万丈目とのデュエルでホープを入手してから、デッキの改良をして新たに加えたカードの一枚。本来なら、もう一つの効果で墓地も肥やせるのだが、今回は様子見と言うことで守備表示にしており、ドロー効果のみ有効利用していた。
「さらに罠発動! 《ヒーロー・シグナル》! 自分のモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、デッキからレベル4以下の『E・HERO』一体を特殊召喚できる! 来い、スパークマン!」
デッキからスパークマンが飛び出してくる。しかし、まだ相手のフィールドには攻撃力2100のモンスターがいるということもあって、ガッチリ腕を組んで守備表示になっていた。
《E・HERO スパークマン》
通常モンスター
☆4 光属性 戦士族
ATK1600 DEF1200 守備表示
「やるな。ならば《サイバー・ドラゴン》でスパークマンを攻撃! エヴォリューション・バースト!!」
《サイバー・ドラゴン》 ATK2100 VS《E・HERO スパークマン》 DEF1600
当然、スパークマンが耐えられずはずもなくビームで蒸発されられていく。
「くっ、スパークマン!」
「これでモンスターはいなくなった。そして、《サイバー・ツイン・ドラゴン》は一ターンに二度、攻撃が出来る! ダイレクトアタック! エヴォリューション・ツイン・バースト!!」
《サイバー・ツイン・ドラゴン》 ATK2800 VS十代 LP8000
二回攻撃出来る所まで、海馬の《青眼の双爆裂龍》に良く似ていた。
フィールドに壁となるモンスターがいなくなったことで、《サイバー・ツイン・ドラゴン》の口からビームが十代へ向かって放たれる。
これを受ければ、ライフを大きく削られてしまう。
「罠発動! 《ヒーロー・スピリッツ》! 自分フィールド上の『E・HERO』と名のついたモンスターが戦闘によって破壊された場合、相手モンスター一体からの戦闘ダメージを0にするぜ!」
「やはり防いできたか! ならば、速攻魔法、《融合解除》! 《サイバー・ツイン・ドラゴン》の融合を解除し、二体の《サイバー・ドラゴン》を墓地から特殊召喚!!」
「何だって!?」
これにより、《サイバー・ツイン・ドラゴン》はEXデッキへと戻り、墓地の素材となった二体の《サイバー・ドラゴン》が復活する。
《サイバー・ドラゴン》
効果モンスター
☆5 光属性 機械族
ATK2100 DEF1600 攻撃表示
《サイバー・ドラゴン》
効果モンスター
☆5 光属性 機械族
ATK2100 DEF1600 攻撃表示
当然、バトルフェイズ中の特殊召喚のため、二体のサイバー・ドラゴンには攻撃する権利が残されていた。
「流石にこれは防げまい? 行け、二体の《サイバー・ドラゴン》! ダブル・エヴォリューション・バースト!!」
《サイバー・ドラゴン》 ATK2100×2 VS十代 LP8000
二体の《サイバー・ドラゴン》のビーム攻撃が十代へと直撃する。
鉄壁とも思われた十代の防御だが、それを易々突破し、亮はダメージを与えてきた。もし、これが普通のシングルデュエルなら、十代のライフはゼロになっていただろう。
奇しくも、タッグデュエルでライフが8000になっていたからこそ、この強力な追撃を凌ぐことが出来た。
「くっ!!」
十代 LP8000→3800
「……悪い、遊矢。ライフを大きく削られた」
「相手が格上なんだ。ゼロになっていないだけマシさ。攻める気持ちだけは切らすなよ」
「ああ!」
正直、どこかで今の自分ならカイザーにも負けないと考えていた十代の慢心も、今の一撃で打ち砕かれた。正直、それだけでもこのデュエルをやった価値があると遊矢は考えている。
対する亮は、十代の方の実力は大体掴めたようで、今度は遊矢に意識を集中させていた。
「俺はリバースカードを一枚伏せてターンエンドだ」
亮 手札0枚 LP8000
フィールド 《サイバー・ドラゴン》×3
魔法・罠 リバース1枚
VS
十代 手札4枚 LP3800
フィールド なし
魔法・罠 なし
ここで、ようやくターンプレイヤーが亮から遊矢に切り替わる。
「俺のターン、ドロー!」
遊矢が想像した以上に、亮は全力でデュエルしてきてくれていた。もし、最初のターンプレイヤーが十代でなく自分だったとしても、大ダメージは避けられなかっただろう。
しかし、だからこそ、その心意気に応えたかった。遊矢も今出来る最大限で、亮の全力に応えていく。
「俺は、手札のスケール1の《EMレディアンジュ》と、スケール8の《EMジェントルード》でペンデュラムスケールをセッティング!!」
白い帽子を被り、桃色の羽をもつ天使のような少女と、黒のシルクハットを被り、漆黒の羽を持った悪魔のような少年によって、両端に二つの光の柱が出現する。
これで遊矢はレベル2から7までのモンスターが同時に召喚可能になった。
噂にはずっと聞いていたが、ペンデュラムを直で見るのが初めてな亮は、これから行われるペンデュラム召喚に心を震わせている。
「ジェントルードのペンデュラム効果! もう片方のペンデュラムスケールにレディアンジュが存在し、自分フィールドのモンスターが存在しない、又は全てがペンデュラムモンスターの場合、デッキから『オッドアイズ』カードを一枚手札に加える! 俺はデッキから《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を手札に加える!」
「行けぇ、遊矢!」
「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚!!」
全ての準備が整い、十代が遊矢を後押しする。遊矢もまたその声援を受け、ペンデュラム召喚を行った。
空から降り注ぐ光は3つ――
「まずはレベル2、チューナーモンスター、《EMオッドアイズ・シンクロン》! 続いて、レベル4《EMペンデュラム・マジシャン》! そして、レベル7! 雄々しくも美しき二色の眼、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」
《EMオッドアイズ・シンクロン》
効果モンスター チューナー ペンデュラム
☆2 闇属性 魔法使い族
ATK200 DEF600 攻撃表示
《EMペンデュラム・マジシャン》
効果モンスター ペンデュラム
☆4 地属性 魔法使い族
ATK1500 DEF800 攻撃表示
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》
効果モンスター ペンデュラム
☆7 闇属性 ドラゴン族
ATK2500 DEF2000 攻撃表示
「ペンデュラム・マジシャンの効果発動! このカードが特殊召喚に成功した時、自分フィールドのカードを二枚まで破壊し、その数だけデッキからペンデュラム・マジシャン以外の『EM』モンスターを手札に加える! 俺はペンデュラムゾーンのレディアンジュとジェントルードを破壊して、デッキから《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》と《EMドクロバット・ジョーカー》を手札に加える!」
手札の補充。だが、代わりにペンデュラムスケールにカードが存在しなくなった。
「フィールドで破壊されたペンデュラムモンスターは墓地へは行かず、EXデッキに表側表示で加わる! 俺は《EMジェントルード》のモンスター効果を発動! このカードがEXデッキに表側表示で存在する場合、手札からペンデュラムモンスターを一体捨て、このカードを手札に加える! 俺はオッドアイズ・ディゾルヴァーを捨て、ジェントルードを手札に!」
目まぐるしく手札を入れ替えていく遊矢。
十代も、ここまでじっくり下準備をする遊矢を初めてみるということで、どんなことが起こるのかワクワクしてきている。
「さらに俺は、《EMドクロバット・ジョーカー》を通常召喚!」
《EMドクロバット・ジョーカー》
効果モンスター ペンデュラム
☆4 闇属性 魔法使い族
ATK1800 DEF100 攻撃表示
紫色のシルクハットを被ったコミカルな奇術師がポーズを決めていく。
「このカードが召喚に成功した時、デッキから『EM』、『オッドアイズ』モンスター、『魔術師』ペンデュラムモンスターのいずれか一体を手札に加える! 《EMダグ・ダガーマン》を手札に!」
ドクロバット・ジョーカーのサーチでカードを加えると、続けて遊矢は手札二枚をオープンした。
「俺は、スケール2の《EMダグ・ダガーマン》とスケール8の《EMジェントルード》でペンデュラムスケールを再セッティング!!」
「だが、ペンデュラム召喚は一ターンに一度しか行えないはず!」
新たに短剣をいくつも手に持った奇術師を加えて、再びジェントルードと共にペンデュラムをセッティングしていく。
だが、にわか知識ではあるが、亮もまたペンデュラム召喚については事前に勉強していた。もうペンデュラム召喚は出来ない。それくらいのことは理解できている。
「最後に魔法カード、《死者蘇生》を発動! 墓地から、《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》を特殊召喚!」
《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》
効果モンスター ペンデュラム
☆8 闇属性 魔法使い族
ATK2000 DEF2600 攻撃表示
それは、先程コストで墓地に捨てられたモンスターだった。長い青色の髪を靡かせながら、魔法の杖を亮に向けて構えている。
「これで、全ての準備が整った!!」
そう口にする遊矢のフィールドには五体のモンスターが存在していた。しかし、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》以外のモンスターでは、亮の《サイバー・ドラゴン》を破壊できない。
しかし、チューナーや同じレベルのモンスターが複数存在していることから、遊矢がこのままメインフェイズを終わらせるつもりがないということは、火を見るよりも明らかだった。
「俺は、レベルの4のペンデュラム・マジシャンとドクロバット・ジョーカーでオーバーレイ! 漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙! 今、降臨せよ!」
二体のモンスターが変質し、オーバーレイネットワークを構築していく。亮もまた、エクシーズについては月一試験の時にパックを買うくらいには勉強しており、ここから強力なモンスターが出て来るであろうことは理解していた。
「――エクシーズ召喚! 現れろ、ランク4《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」
《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》
効果モンスター エクシーズ
ランク4 闇属性 ドラゴン族
ATK2500 DEF2000 攻撃表示
遊矢が信頼する四天の龍の一体が、同じ四天の龍であるオッドアイズの横に並ぶ。
漆黒のドラゴンは声を上げ、それに同調するようにオッドアイズもまた声を上げた。
「俺は、ダーク・リベリオンの効果発動! オーバーレイユニットを二つ使い、相手モンスター一体の攻撃力を半分にし、その数値分自身の攻撃力に加える! トリーズン・ディスチャージ!!」
オーバーレイユニットを全消費し、紫電の稲妻と共に《サイバー・ドラゴン》の攻撃力を吸収していく。
《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》 ATK2500→3550
《サイバー・ドラゴン》 ATK2100→1050
「さらに、ダグ・ダガーマンのペンデュラム効果! このカードを発動したターンのメインフェイズに一度、墓地の『EM』モンスター一体を手札に加える! オーバーレイユニットとして墓地に送ったドクロバット・ジョーカーを手札に!」
このターンはもう通常召喚出来ないが、これで次のターンの布石も打つことが出来る。
「続けて、《EMオッドアイズ・シンクロン》の効果発動! 一ターンに一度、自分のペンデュラムゾーンに存在するカードを、効果を無効にして特殊召喚し、そのカードと自身でシンクロ召喚する! 来い、ダグ・ダガーマン!!」
《EMダグ・ダガーマン》
効果モンスター ペンデュラム
☆5 地属性 戦士族
ATK2000 DEF600 攻撃表示
遊矢の声に従うように、ペンデュラムゾーンからダグ・ダガーマンが飛び出してきた。
ここで、遊矢がわざわざペンデュラムスケールを再セッティングした理由をようやく全員が理解する。
フィールドだけでなく、ペンデュラムをも利用したシンクロ召喚――それこそが榊遊矢にのみ許された特別な召喚法。
「そして、レベル5の《EMダグ・ダガーマン》に、レベル2の《EMオッドアイズ・シンクロン》をチューニング!」
オッドアイズ・シンクロンが2つの光の環となり、5つの星に変換されたダグ・ダガーマンと光の道を作っていく。
「――その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て! シンクロ召喚!」
エクシーズ召喚に続くシンクロ召喚――いくら、この二つの召喚法が普及し始めたとはいえ、一ターンに同時に行うのは遊矢くらいのものだろう。
亮はそのタクティクスに、気持ちが昂るのを抑えきれなくなってきていた。
「現れろ、レベル7! 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!!」
《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》
効果モンスター シンクロ
☆7 風属性 ドラゴン族
ATK2500 DEF2000 攻撃表示
三体目の四天の龍がフィールドに現れる。全身が真っ白のドラゴンは、先程のダーク・リベリオンと同じく、仲間に同調するように声を上げた。
「最後に、オッドアイズ・ディゾルヴァーの効果発動! 融合モンスターカードに決められた、このカードを含む融合素材モンスターを自分フィールドから墓地へ送ることで融合召喚できる! この際、自分のペンデュラムゾーンに存在するモンスターも融合素材に出来る! 俺は、闇属性のオッドアイズ・ディゾルヴァーとジェントルードを融合!」
ペンデュラムゾーンからジェントルードが飛び出し、オッドアイズ・ディゾルヴァーと一つになっていく。
「――闇夜を照らす二色の眼、悪魔の紳士と一つとなりて、新たな道を指し示せ!」
両手を合わせ、エクストラデッキからモンスターを呼び出す。十代ももう裏でこのモンスターを何度も見ているので、すぐに誰が出て来るかわかったようだった。
「融合召喚! 現れろ、飢えた牙持つ毒龍! レベル8、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!!」
《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》
効果モンスター 融合
☆8 闇属性 ドラゴン族
ATK2800 DEF2000 攻撃表示
これで四天の龍が全て揃った。全身紫色の禍々しいドラゴンが声を上げると、残りの三体も声を上げる。
隣で見ていた十代は、その格好良さに体を震わせていた。
「スターヴ・ヴェノムの効果発動! 融合召喚に成功した時、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター一体を選択し、その攻撃力分だけスターヴ・ヴェノムの攻撃力をターン終了時までアップする! 俺は、《サイバー・ドラゴン》を選択!」
召喚時の効果で、スターヴ・ヴェノムが《サイバー・ドラゴン》の攻撃力をプラスしていく。
《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》 ATK2800→4900
ペンデュラムからのエクシーズ、シンクロ、融合――おまけに、オッドアイズというエースまで召喚している。
亮はこれだけで、遊矢の実力が自分と同等――いや、それ以上の実力を持っていると確信した。本来であれば胸を貸す立場だが、自分が胸を借りる可能性が頭によぎる。
「バトルだ! 《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》で《サイバー・ドラゴン》を攻撃!!」
一番攻撃力の高いスターヴ・ヴェノムからの攻撃。いくつもの光がスターヴ・ヴェノムに集まり、《サイバー・ドラゴン》へと発射されていった。
《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》 ATK4900 VS《サイバー・ドラゴン》 ATK2100
咄嗟に亮は、フィールドの状況と、自身のセットカード、それら全てを加味してこのまま攻撃を受けることを選択する。
「くっ!」
亮 LP8000→5200
相棒である《サイバー・ドラゴン》が破壊され、大ダメージを受けていく。しかし、まだ大型ドラゴンモンスターは三体も残されていた。
「続けて、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》で《サイバー・ドラゴン》を攻撃! 反逆のライトニング・ディスオベイ!!」
《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》 ATK3550 VS《サイバー・ドラゴン》 ATK2100
ダーク・リベリオンの咢が二体目の《サイバー・ドラゴン》に迫る。それでも亮は黙ってダメージを受け入れていた。
「――ッ!」
亮 LP5200→3750
二体目の《サイバー・ドラゴン》も破壊され、亮のライフが削られていく。十代同様、もしこれがシングルデュエルだったなら、この時点で亮は負けていただろう。
亮もまた、この時点で自分が格上だという驕りを捨てた。
「まだだ! 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で最後の《サイバー・ドラゴン》に攻撃! 螺旋のストライクバースト!!」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》 ATK2500 VS《サイバー・ドラゴン》 ATK1050
最後に残った《サイバー・ドラゴン》は、ダーク・リベリオンの効果で攻撃力が下がっている。
また、オッドアイズにはモンスターとの戦闘で発生するダメージを倍にする効果があり、この攻撃を受ければライフはもう残り僅かとなってしまう。
だが、流石の亮もこれ以上の攻撃を許すつもりはなかった。
「この瞬間、罠カード《アタック・リフレクター・ユニット》を発動! 自分フィールドの《サイバー・ドラゴン》をリリースして、手札・デッキから《サイバー・バリア・ドラゴン》を守備表示で特殊召喚する!」
《サイバー・バリア・ドラゴン》
効果モンスター
☆6 光属性 機械族
ATK800 DEF2800 守備表示
首の回りに盾のようなものを付けた新たな《サイバー・ドラゴン》が特殊召喚される。
「《サイバー・バリア・ドラゴン》の守備力は2800。残る《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》と《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の攻撃力は2500だ。この壁は超えきれまい」
もし、先に《サイバー・バリア・ドラゴン》を特殊召喚していれば、破壊される順番が変わるだけでモンスターは全滅し、もっと大きなダメージを受けていただろう。
この状況になるまで我慢した亮の冷静な判断に、遊矢も感銘を受けていた。
「やるなぁ。俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド。そして、このエンドフェイズ、スターヴ・ヴェノムの攻撃力は元に戻る」
《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》 ATK4900→2800
遊矢 手札1枚 LP3800
フィールド オッドアイズ、ダーク・リベリオン、クリアウィング、スターヴ・ヴェノム
魔法・罠 リバース1枚
ペンデュラム なし
VS
亮 手札0枚 LP3750
フィールド サイバー・バリア
魔法・罠 なし
互いにワンターンで4000ダメージを超える攻撃を叩き出した亮と遊矢。
それにより、十代からは慢心が、亮からは驕りが消えた。また、互いのライフはほぼ互角という状況。この先、どういう展開になっていくのか。
正直、自分には少し荷が重いかも――と感じ始めた明日香にターンが回ってきた。
原作との変化点。
・#7『翔の乗り物(ビークロイド)デッキ』より、制裁デュエルのパートナーが翔から遊矢に変更になった。
おかげで翔が逃げるくだりは全部カット。十代と遊矢がデュエルするってことで、楽勝ムードである。
・#8『最強! サイバーエンド・ドラゴン』より、翔のくだりがカットされたことで、カイザーとのデュエル理由が変わった。
明日香を経由してのタッグデュエルに内容が変わっている。
・タッグデュエルは、基本的にタッグフォースルール。
フィールド・墓地・ライフだけ共有。後は順番にデュエッ!
追記.先行のターン終了時に、本来なら亮ではなく、最後のターンプレイヤーである明日香の名前を表示するのがタッグフォースルールらしいのですが、そこだけはオリジナルルールで最初のターンのターンプレイヤーは次のプレイヤーにさせて下さい。
デュエル内容変更点。
・サイバー・ツインが連続じゃなくても二回攻撃できるようなので、サイバー・ツイン二連打からサイドラダイレクトの流れを変更しました。
変更後は、サイバー・ツイン、サイドラ、サイバー・ツインの順で攻撃しています。
・ダグ・ダガーマンのペンデュラム効果を忘れていたので変更しました。
変更後は先にダーク・リベリオンの効果を使ってから、ダグ・ダガーマンの効果を発動しています。