榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

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#015 『迷宮を突破せよ!!』

 遊矢が意識を取り戻したのは制裁デュエル当日の朝だった。

 どうやら今回の件で無理をしたこともそうだが、アカデミアに来てから随分疲労が溜まっていたようで、自分が思っていた以上に無理をしていたらしい。

 しかし、制裁デュエル当日に起きられたのはラッキーだった。もし、眠ったままだったら十代達にも迷惑をかけていた所だ。まだ無理をしてはいけないと、保険医の鮎川先生には注意されたが、友の退学がかかっている以上、デュエルをしない訳にはいかなかった。

 

「遊矢、もう大丈夫なのか?」

「寝すぎて体が痛いくらいさ」

「本当に大丈夫っすか? む、むりなら僕が代わりに……」

「平気平気。それに、この日のためにずっと練習してきたんだ。その成果をカイザーや明日香にも見せたい。俺にやらせてくれ」

 

 デュエルフィールドに入る前に十代や翔と合流すると、心配そうな声をかけられたが、遊矢は茶化したようにそう答える。

 実際、体に問題はない。翔も大丈夫だとわかってくれたのか、「じゃあ、お任せするっす」と、安心したように観客席の方へ移動していった。

 十代も、嘘ではないと判断してくれたようで、前のデュエルの後で回収してくれていた《№64古狸三太夫》のカードを遊矢に渡してくる。

 

「結局、隼人の親父さんも、どうやってそのカードを手に入れたか覚えてないってさ」

「気が付くと他人のデッキに入るカードか。不気味なことこの上ないな」

 

 と、ここで、隼人がどうなったのか確認していなかったことを思い出した。

 

「そういえば、あの後どうなった?」

「隼人の親父さんは意識を取り戻して帰って行ったよ。薄っすらデュエルしてたことは覚えてるっぽくて、『今回はお前の友達に免じて許してやる』ってさ。そのカードも、自分の物じゃないから要らないって渡された」

「そうか、無事に解決して良かったよ。カードについては渡されても困るけど、調べるためのサンプルは多いに越したことはないだろうしな」

 

 隼人の問題が解決したならば、後はこちらの問題を解決するだけだ。

 

「行くか」

「おう」

 

 二人でデュエルフィールドに入って行く。どうやら、アカデミアにいる全員が見に来ているようで、客席はほぼ埋まっていた。

 そのまま中央まで歩いていくと、クロノスが今回の制裁デュエルについて、事情を知らない生徒や教師にも分かりやすく説明していく。

 簡単に言ってしまえば、立ち入り禁止区域に入ったことへの罰――なのだが、それだけで退学と言うのは些かやり過ぎだと遊矢は今でも思っている。まるで、立ち入り禁止には見られたくない何かが隠してあるのではないかと疑ってしまうレベルだ。

 

「それでクロノス教諭。対戦相手は?」

 

 観客席の一番前に座っている鮫島校長が、目を輝かせてそう聞いてくる。とても、生徒の退学をかけているとは思えない態度だった。

 この人は、これから始まるデュエルを楽しい催しくらいにしか思っていないのかもしれない。

 そんな風に、遊矢が鮫島校長に僅かな不信を抱くと同時――クロノスが自慢げに対戦相手の紹介を始めた。

 同時に、頭を丸く剃り上げ、額に『迷』『宮』という文字を一字ずつ刻んだ、チャイナ風の服を着込んだ中年の双子が、バク転をしながらデュエルフィールドに入ってくる。

 

「我ら、流浪の番人――」

「――迷宮兄弟」

 

 ポーズを決めながら、双子はそう名乗った。

 クロノスがドヤ顔で、「彼らはかつて、あのデュエルキングと戦ったことのある、伝説のデュエリストなノーネ」と、こちらに伝えてくる。

 

「……十代、あの香港映画みたいな奴ら知ってるか?」

「迷宮兄弟……確か、昔、決闘王国で、遊戯さんを追い詰めたこともあるタッグデュエリストだったはず……」

 

 どうやら十代も顔は見たことはないが、噂は聞いたことがあるらしい。

 遊矢はこの次元の人間ではないので、武藤遊戯というデュエリストも名前を聞いたことがあるくらいだ。当然、迷宮兄弟がどれだけ強いのかもわかっていない。

 しかし、十代が嬉しそうにしているってことは、強い相手なのは間違いないだろう。強い相手と戦う時ほど、十代は笑みを浮かべる。遊矢も改めて気を引き締めた。

 

「ルールは基本的なタッグルールですーノ。ライフは共通で8000、フィールド、墓地は共有なノーネ。また、タッグプレイヤー同士の相談は禁止。本来なら生徒側に先攻を上げるくらいーは、してあげたいーのですガ、だがしかしお菓子、今回は罰則によるデュエルなのーで、そういうハンディもなしになっていますノーネ」

 

 つまりは通常のデュエルと同じということだ。

 別段、ハンデを期待していた訳ではないので文句はない。十代も「そうこなくちゃ、面白くないぜ」と笑っていた。

 対する迷宮兄弟も、「我らも学生相手にハンデなしは心苦しいが」、「仕事である以上、全力で行かせてもらう」と、無駄にポーズを決めてそう話している。

 

「んじゃ、始めよーぜ」

 

 と、十代が口にすると、互いにデュエルディスクを構えた。

 同時に、司会のクロノスがデュエルの邪魔にならないようにフィールドから降りていく。

 

「「「「デュエル!!」」」」

 

 デュエルディスクが示した先攻は、迷宮兄弟――兄の迷だった。

 

「私のターン、ドロー。私は手札から《迷宮に潜むシャドウ・グール》の効果を発動する。このカードを手札から捨てることで、デッキから『ラビリンス・ウォール』カード一枚を手札に加える。私はデッキから、フィールド魔法、《ラビリンス・ウォール・シャドウ》を手札に加え、そのまま発動!」

 

 遊矢や十代の背丈ギリギリの壁が現れ、小さな迷宮を作り上げていく。

背伸びをすれば見えるので、全く相手が見えなくなるということはないが、相手のフィールド状況が確認し辛くなった。

 

「このカードが存在する限り、元々のレベルが5以上のモンスターを除く、召喚・反転召喚・特殊召喚されたモンスターは、そのターンには攻撃が出来ない」

「迷宮を突破したければ、それなりのモンスターを召喚しろということだ」

「さらに、相手バトルフェイズ開始時相手フィールドの攻撃力1600未満のモンスター一体を破壊する」

「迷宮に低レベルモンスターは存在できないと知れ」

 

 高レベルモンスター以外では攻撃が出来ないフィールド魔法。厄介なのは、エクシーズ召喚も足止めするという点だ。

 十代ならホープ。遊矢はダーク・リベリオンの召喚を牽制されたに等しい。

 

「さらに、永続魔法カード、《フィールドバリア》を発動。このカードがフィールドに存在する限り、お互いにフィールド魔法は破壊できず、フィールド魔法を発動させることも出来ない」

 

 この世界のルールでは、フィールド魔法は一枚しか存在できず、新たに発動された場合、前に発動しているフィールド魔法は上書きされる。それを嫌ったのだろう。

 だが、逆を言えば、それだけあのフィールド魔法は彼らにとって重要なものだということでもあった。

 

「さらに、《ラビリンス・ウォール・シャドウ》のもう一つの効果を発動する。一ターンに一度、自分のメインフェイズ時に、手札・デッキ・除外状態の《雷魔神―サンガ》、《水魔神―スーガ》、《風魔神―ヒューガ》のいずれか一体を選び、永続魔法扱いで自分の魔法・罠ゾーンにおくことが出来る。私はデッキからサンガを選択し、魔法・罠ゾーンに置く」

 

 おそらく、本命の効果はこちらだろう。三魔神の一角が、迷の魔法・罠ゾーンに出現する。

 顔の部分に中央に大きく雷という文字が書かれ、大きな両腕を持ったモンスターだ。

 遊矢も名前くらいは聞いたことがあるモンスターだった。海馬の持つブルーアイズと同じくらい、遊矢の世界ではレトロなカードとなっている。

 また、十代も三魔神のカードやその合体モンスターである《ゲート・ガーディアン》については知っているようで、迷のプレイングに首を傾げていた。

 

「……けど、いくら魔法・罠ゾーンに三魔神を貯めても、お得意の《ゲート・ガーディアン》は呼べないんじゃないか?」

「ふっ、どうやら我らの切り札について、一応は知っているようだが……所詮は学生、まだまだ甘いな」

「なんだと……!」

「兄者。まずは小手調べだ。見せてやるといい」

「ああ、私は《迷宮の重魔戦車》を攻撃表示で召喚する」

 

 砲身に多数の赤いドリルをつけた、全身青色の重戦車が召喚されていく。

 

 《迷宮の重魔戦車》

 効果モンスター

 ☆7 闇属性 機械族

 ATK2400 DEF2400 攻撃表示

 

 攻撃力2400の大型モンスター。本来であれば、二体のリリースが必要にも関わらず、当たり前のように出てきた《迷宮の重魔戦車》を見て、流石の遊矢も驚きの声を出す。

 

「レベル7のモンスターをリリースなしで召喚した!?」

「このカードはリリースなしで召喚が可能なのだ。まぁ、その代償として、召喚したターンに攻撃が出来ないというデメリットもあるがね」

「成程、今は一ターン目だから、攻撃できなくても問題ないってことか」

「その通りだ。貴様は、そっちの小僧よりは学があるようだな」

 

 再び馬鹿にされた十代が「なんだとー!」と、怒りの声を上げるが、おそらくは挑発だ。

 遊矢も「乗せられるな、十代」と声をかけて十代を諫めていく。

 

「だが、攻撃は出来なくとも、効果は発動できる。このカードも、《ラビリンス・ウォール・シャドウ》同様に、一ターンに一度、自分のメインフェイズ時に、手札・デッキ・除外状態の《雷魔神―サンガ》、《水魔神―スーガ》、《風魔神―ヒューガ》のいずれか一体を選び、永続魔法扱いで自分の魔法・罠ゾーンにおくことが出来る。私はデッキからヒューガを選択し、魔法・罠ゾーンに置く」

 

 これで、三魔神の内、二体が魔法・罠ゾーンに置かれた。風魔神は、雷魔神に比べると小柄で、全身が丸く、雷魔神と同じく中央に大きく風という文字が書かれている。

 

「そして私は、魔法・罠ゾーンのサンガとヒューガをゲームから除外し、EXデッキから《雷風魔神―ゲート・ガーディアン》を特殊召喚する! 出でよ、雷風魔神!」

 

 二体の三魔神が一つになっていく。サンガがヒューガに乗っただけではあるが、二体が合体したことで一際大きなモンスターとなった。

 

《雷風魔神―ゲート・ガーディアン》

 効果モンスター 融合

 ☆9 光属性 雷族

 ATK2500 DEF2200 攻撃表示

 

「ふっ、本来の《ゲート・ガーディアン》の攻撃力には遠く及ばんが、弟者の言う通り、まずは小手調べよ」

 

 小手調べという割に、フィールドには攻撃力2400を超えるモンスターが二体並んでいる。

 しかし、本来の《ゲート・ガーディアン》が三体合体だということを考えると、彼らの言う通りまだ様子見の段階なのだろう。それだけ強いデュエリストということでもあった。

 

「雷風魔神の効果発動! 自分のメインフェイズに三魔神のカード名が全て書かれた魔法・罠一枚をデッキから手札に加える! 私は罠カード、《地雷蜘蛛の餌食》を手札に加え、カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 これ見よがしにカードを伏せていく。

 おそらく、サーチした《地雷蜘蛛の餌食》だとは思うが上手く手札を入れ替えていた場合は違うカードということも有り得た。

 

 

 迷宮兄弟・迷 手札3枚 LP8000

 フィールド 重魔戦車 雷風魔神

 魔法・罠 《ラビリンス・ウォール・シャドウ》、《フィールドバリア》、リバース1枚

 

 VS

 

 十代 手札5枚 LP8000

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

「俺のターン! 《強欲な壺》を発動! カードを二枚ドロー!」

 

 相手のターンが終わり、新たなターンプレイヤーとなった十代がデッキからカードをドローしていく。

 同時に、引いた《強欲な壺》で、さらに手札を増やしていった。相手が強いなら、最初から全力で行ってやると、その表情が物語っている。

 

「俺は《融合》を発動! 手札のフェザーマンとバーストレディを融合して、《E・HEROフレイム・ウイングマン》を融合召喚するぜ!」

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》

 効果モンスター 融合

 ☆6 風属性 戦士族

 ATK2100 DEF1200 攻撃表示

 

 フェザーマンとバーストレディが合わさり、十代お得意のフレイム・ウイングマンが登場していく。しかし、相手との攻撃力の差はまだ300以上もあった。

 

「さらに、《H-ヒートハート》を発動! これで、フレイム・ウイングマンは攻撃力が500ポイントアップする!」

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2100→2600

 

「なんと! 《迷宮の重魔戦車》はおろか、雷風魔神の攻撃力すら超えて来たか!」

「バトルだ! フレイム・ウイングマンで、雷風魔神に攻撃! フレイムシュート!!」

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2600 VS《雷風魔神―ゲート・ガーディアン》 ATK2500

 

 攻撃力が上回ったことで、フレイム・ウイングマンの炎の一撃が、雷風魔神を破壊しようと迫っていく。

 

「が、甘い。墓地の《迷宮に潜むシャドウ・グール》の効果を発動! 相手モンスターが戦闘を行うダメージステップ開始時、自分のフィールドに『ラビリンス・ウォール』カードがある場合、墓地のこのカードを除外することでその相手モンスターを破壊する! フレイム・ウイングマンを破壊!」

 

 迷宮の壁から突如飛び出してきたシャドウ・グールが背後からフレイム・ウイングマンを強襲して破壊していった。

 

「ぐっ、フレイム・ウイングマン!?」

「さて、これでモンスターはいなくなってしまったな?」

「まだバトルフェイズを続けるかね?」

「……俺はモンスターをセット。永続魔法、《悪夢の蜃気楼》を発動し、リバースカードを一枚伏せてターンエンド」

 

 攻撃を防がれる所か、モンスターまで破壊されてしまったことで、十代も守りを固めていく。

 どうやら、この迷宮を突破して相手にダメージを与えるのは、そう簡単ではなさそうだった。

 

 

 十代 手札0枚 LP8000

 フィールド セット1体

 魔法・罠 《悪夢の蜃気楼》、リバース1枚

 

 VS

 

 迷宮兄弟・迷 手札3枚 LP8000

 フィールド 重魔戦車 雷風魔神

 魔法・罠 《ラビリンス・ウォール・シャドウ》、《フィールドバリア》、リバース1枚

 

 

「では、私のターンだ!」

 

 迷宮兄弟の弟――宮の方にターンが移っていく。

 

「この瞬間、《悪夢の蜃気楼》の効果発動! 相手のスタンバイフェイズに手札が四枚になるようにドローする!」

 

 このカードも遊矢の世界では禁止のカードだった。

 相手のスタンバイフェイズに四枚ドローして、次の自分のスタンバイフェイズに引いた枚数分ランダムに捨てるという単純な効果だが、墓地肥やしとして見てもかなり優秀だろう。

 しかし、それだけなら禁止カードになるほどではない。このカードの真の魅力は別にあった。

 

「ふっ、貴様は手札を補充できたとして、次のターンのスタンバイフェイズで引いた枚数のカードを捨てさせられる。このままだと、貴様の相方の手札はなくなるぞ?」

「ああ、だからそのままにはしないさ! 速攻魔法、《非常食》! このカード以外の自分の魔法・罠カードを任意の枚数墓地へ送り、送ったカードの数×1000ポイントのライフを回復する! 俺は、《悪夢の蜃気楼》を墓地へ送り、ライフを1000回復するぜ!」

 

 十代 LP8000→9000

 

 それが、これである。永続魔法は墓地へ送ると効果がなくなる――が、それまで発生した効果までは無効にならない。

 手札を補充した段階で、《悪夢の蜃気楼》を処理できれば、四枚ドローだけが出来るという破格のドローカードと化すのだ。

 

「これで、遊矢の手札を捨てさせる心配はなくなったな」

「だが、リバースカードを使い切った! 私はフィールド魔法、《ラビリンス・ウォール・シャドウ》と《迷宮の重魔戦車》の効果を発動! 私のデッキから、サンガとスーガを魔法・罠ゾーンに置く」

 

 再びサンガが現れる。そして、最後の三魔神――スーガも現れた。

 スーガもまた他の二体と同じく、体の中央に大きく水という文字がかかれ、腕の代わりに大きな足を持ったモンスターだった。おそらく、ヒューガの下に接続されるように出来ているのだろう。

 

「さらに、私のフィールドに《ラビリンス・ウォール・シャドウ》が発動していることで、《迷宮の重魔戦車》の追加効果を発動! 相手モンスター一体を破壊する!」

 

 セットモンスターがそのまま破壊され、墓地へ送られていく。

 

「まだだ! 破壊され墓地へ送られた《ハネクリボー》の効果発動! このターン、俺が受ける戦闘ダメージはゼロとなる!」

「なんと、そんな効果を隠し持っていたとは……」

 

 迷宮兄弟のフィールドには攻撃力2500の雷風魔神に、さらに攻撃力2400の重魔戦車までいた。

 合計攻撃力は4900。もし、このターン、《ハネクリボー》の効果で戦闘ダメージをゼロにしていなければ、致命的なダメージを受ける所だっただろう。

 否、もしリバースカードが《地雷蜘蛛の餌食》だった場合、攻撃力2100の罠モンスターが追加され、ライフをもっと削られていた可能性すらあった。

 

「私は魔法・罠ゾーンのサンガとスーガをゲームから除外し、《水雷魔神―ゲート・ガーディアン》を特殊召喚する! 出でよ、水雷魔神!!」

 

 再び二体の三魔神が一つになっていく。またも、サンガがスーガに乗っただけの姿ではあるが、雷風魔神に負けない大きさを持っていた。

 

 《水雷魔神―ゲート・ガーディアン》

 効果モンスター 融合

 ☆9 水属性 水族

 ATK2550 DEF2300 攻撃表示

 

「そして私は、雷風魔神の効果で、私はデッキから速攻魔法、《魔風衝撃波》を手札に加える! が……ふむ、これ以上は展開しても無駄か……」

「しかし、ライフは削らせて貰おう弟よ」

「そうだな兄者。私はリバース魔法、《フォース・オブ・ガーディアン》を発動!」

 

 リバースカードは《地雷蜘蛛の餌食》ではなかった。そう読ませた上のブラフだったのだ。

 

「自分のライフが相手より低い場合、相手のライフを半分にし、元々のカード名に『ゲート・ガーディアン』を含むモンスター一体の攻撃力をその数値分アップする! 私は、水雷魔神の攻撃力をアップさせる!」

「「なにっ!?」」

 

 十代のライフは非常食で回復して9000まで上がっていた。よって効果が適用され、9000の半分、4500が削られ、水雷魔神の攻撃力がアップしていく。

 

「ぐぅっ!!」

 

 十代 LP9000→4500

 

 《水雷魔神―ゲート・ガーディアン》 ATK2550→7050

 

「攻撃力7050!?」

「さらに、この効果は永続効果だ。ターンを終えても、水雷魔神の攻撃力は上がったままとなる。私は、カードを二枚伏せてターンエンドだ」

 

 

 迷宮兄弟・宮 手札5枚 LP8000

 フィールド 重魔戦車、雷風魔神、水雷魔神

 魔法・罠 《ラビリンス・ウォール・シャドウ》、《フィールドバリア》、リバース2枚

 

 VS

 

 十代 手札4枚 LP4500

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

「悪い、遊矢。凌いだと思ったんだけど……」

「いや、相手が想像以上に強い。上がったライフを逆利用されるとはね」

 

 おまけに、本命である三体合体のゲート・ガーディアンは温存されているという状況だ。

 舐められていると見て間違いないが、ライフやフィールドの状況が負けている以上、文句を言える立場ではなかった。

 

「俺のターン!」

 

 まずは、あの強力なモンスター達を倒す事――そう考え、遊矢もカードをプレイしていく。

 

「《EMドクロバット・ジョーカー》を通常召喚!」

 

 《EMドクロバット・ジョーカー》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆4 闇属性 魔法使い族

 ATK1800 DEF100 攻撃表示

 

 もはや、オッドアイズと並んで毎度お馴染みとなりつつあるサーチ役。召喚と同時に、遊矢のデッキに向けて両手を振っている。

 

「ドクロバット・ジョーカーの効果発動! このカードが召喚に成功した時、デッキから『EM』、『オッドアイズ』モンスター、『魔術師』ペンデュラムモンスターのいずれか一体を手札に加える! 《EMトランプ・ウィッチ》を手札に!」

 

 ドクロバット・ジョーカーのサーチで準備を終えると、遊矢はいつものようにカードをデュエルディスクの両端へと置いていく。

 

「俺は、スケール4の《EMトランプ・ウィッチ》と、スケール6の《EMリザードロー》でペンデュラムスケールをセッティング! そして、リザードローのペンデュラム効果! 反対側のペンデュラムゾーンにリザードロー以外の『EM』モンスターが存在する場合、このカードを破壊し、カードを一枚ドローする!」

 

 髑髏の杖を持ち、顔を黒い仮面で隠したコミカルな魔女と、マジシャンの衣装を着たコミカルなトカゲによって、二つの光の柱がフィールドの両端に出現するが、リザードローが何かを思い出したようにその場から消えて遊矢の手札へと変化していく。

 

「続けて、スケール8の《相生の魔術師》でペンデュラムスケールを再セッティング!!」

 

 消えたリザードローの代わりに、弓を携えたオレンジ色の民族衣装に身を包んだ魔術師によって、二つの光の柱が再びフィールドの両端に出現した。

これで遊矢は、レベル5~7までのモンスターが同時に召喚可能になる。

 

「これが噂のペンデュラムとやらか!」

「新システムだ! 油断するな弟よ!」

 

 流石の迷宮兄弟も警戒を見せた。この世界でペンデュラムを使うことが出来るのは遊矢だけな以上、知識としてはあっても彼らにとっては初見の召喚法だ。

 

「――揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚!! 現れろ、俺のモンスター達!!」

 

 天空から大きな光が二つ降りてくる。

 

「来い、レベル7、《降竜の魔術師》! 同じく、レベル7、雄々しくも美しく輝く二色の眼、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

 

 竜の形をした杖を持った魔術師と、相棒であるオッドアイズがフィールドに出現する。

 

 《降竜の魔術師》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆7 闇属性 魔法使い族

 ATK2400 DEF1000 攻撃表示

 

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆7 闇属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 デュエルアカデミアの生徒も、そろそろ慣れてきたペンデュラム召喚だが、やはり初見の人間からすると、高レベルのモンスターがリリースもなく同時に召喚されるのは圧巻のようだった。

 しかし、迷宮兄弟は動かない。確かに、すごい同時召喚ではあるものの、呼ばれたモンスターの攻撃力は全て2500以下。ライフが8000フルである今、慌てる必要性すら感じないのだろう。

 

「俺は、トランプ・ウィッチのペンデュラム効果発動! 自分フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、融合モンスター一体をEXデッキから融合召喚する!」

 

 融合――と、聞いて、ターンプレイヤーである弟の宮が一瞬反応したが、まだだとばかりに動きを止める。

 おそらく、先程サーチした《魔風衝撃波》を使うタイミングを計っているのだろう。攻撃力の高いゲート・ガーディアンがいるが故にギリギリまで温存する考えのようだ。

 

「俺は、闇属性の《降竜の魔術師》とドクロバット・ジョーカーを墓地へ送り、融合! 竜の力を纏いし魔術師よ、常闇の奇術師と一つとなりて、新たな道を指し示せ!」

 

 ――両手を合わせる。

 

「融合召喚! 現れろ、飢えた牙持つ毒龍! レベル8、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!!」

 

《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》

 効果モンスター 融合

 ☆8 闇属性 ドラゴン族

 ATK2800 DEF2000 攻撃表示

 

 この状況を打破できるのはお前しかいないと、遊矢の期待を背負って出てきたスターヴ・ヴェノム。

 効果が強力過ぎる故に、アカデミアの学生とのデュエルでは意外と召喚されない方ではあるが、こういう時は逆に頼りになった。

 

「スターヴ・ヴェノムの効果発動! 融合召喚に成功した時、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター一体を選択し、その攻撃力分だけスターヴ・ヴェノムの攻撃力をターン終了時までアップする! 俺は《水雷魔神―ゲート・ガーディアン》を選択!」

 

 まるで力を吸収するかのように、相手の攻撃力を自身の攻撃力にプラスしていく。

 

 《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》 ATK2800→9850

 

「こ、攻撃力9850だと!? 強化された攻撃力すらコピーできるというのか!?」

「落ち着け、弟よ! 我らのゲート・ガーディアンは最強!」

「そ、そうであったな。私は、水雷魔神の効果を発動! 自分、相手ターンに二度まで、相手フィールドの表側表示モンスター一体の攻撃力をターン終了時までゼロにする!」

 

 強化された数値を上書きするように、水を浴びせられ、攻撃力が0まで下がる。

 

  《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》 ATK9850→0

 

「なら、こちらもスターヴ・ヴェノムのモンスター効果発動! 一ターンに一度、相手フィールドのレベル5以上のモンスター一体の名前と効果をターン終了時まで得る! 俺は再び、《水雷魔神―ゲート・ガーディアン》を対象に効果を発動!」

「くっ、我らのゲート・ガーディアンの攻撃力をゼロにするつもりか!」

「させん! リバースカードオープン! 速攻魔法、《魔風衝撃波》! 自分フィールドに『ゲート・ガーディアン』モンスターが存在する場合、フィールドのカード一枚を破壊できる! 私は《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》を破壊する!」

 

 雷風魔神となっている風魔神が作り上げる風が、スターヴ・ヴェノムを切り裂いて破壊していく。

 

「この瞬間! スターヴ・ヴェノムの効果を発動! 融合召喚されたこのカードが破壊された時、相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを全て破壊する!」

 

 だが、この瞬間を待っていたのは遊矢の方だった。スターヴ・ヴェノムが破壊されたことで最後の効果が発動し、相手のフィールドをリセットしていく。

 相手はペンデュラム初見ということもあり、ペンデュラム召喚自体を妨害してくるのは無理でも、トランプ・ウィッチのペンデュラム効果に《魔風衝撃波》を使って、融合を止めておくべきだったのだ。

 とはいえ、それは結果論でしかない。

 迷宮兄弟がスターヴ・ヴェノムの効果を知らない以上、最後まで様子を見ようとしたのも決して間違いではなかった。

 

「だが、我らのゲート・ガーディアンはただではやられぬ! 水雷魔神の効果で、オッドアイズの攻撃力をターン終了時までゼロにする!」

 

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》 ATK2500→0

 

「さらに雷風魔神、水雷魔神の効果を発動! 特殊召喚された表側表示のこのカードが相手によってフィールドから離れた場合、除外状態の三魔神一体を特殊召喚できるのだ!!」

 

 正確には、雷風魔神は素材となって除外されたサンガとヒューガのどちらかを、水雷魔神は素材となって除外されたサンガとスーガのどちらかを特殊召喚できるという効果だった。

 スターヴ・ヴェノムの誘爆によって、爆散していくゲート・ガーディアンだったが、その置き土産によって、サンガとヒューガがそれぞれ除外ゾーンから呼び戻される。

 

 《雷魔神―サンガ》

 効果モンスター

 ☆7 光属性 雷族

 ATK2600 DEF2200 攻撃表示

 

 《風魔神―ヒューガ》

 効果モンスター

 ☆7 風属性 魔法使い族

 ATK2400 DEF2200 攻撃表示

 

「なかなかやるではないか、一瞬ヒヤッとさせられたぞ」

「さて、どうするね? 攻撃力0で攻撃してくるかね?」

 

 出来る訳がない。否、仮に攻撃できたとしても、遊矢も三魔神の共通効果くらいは知っていた。レトロなカードだが、それ故に有名な効果だ。

 三魔神はそれぞれ、表側表示で存在する限り、一度だけ自身に攻撃してきた相手モンスターの攻撃力をゼロに出来る。つまり、仮にオッドアイズの攻撃力が通常時でも攻撃を仕掛ければ、攻撃力をゼロにされて返り討ちにされるということだった。

 

 だが、まだやれることは残っている。

 

「俺は魔法カード、《螺旋のストライクバースト》を発動! 自分フィールドに『オッドアイズ』カードが存在する場合、フィールド上のカード一枚を破壊する! 俺は、その厄介な《迷宮の重魔戦車》を破壊する!」

「ぬぅ、我らが重魔戦車が……!」

 

 通常召喚された《迷宮の重魔戦車》だけは、スターヴ・ヴェノムの効果破壊から逃れていた。

 とはいえ、放置して置けば、毎ターン三魔神をサーチされる上、こちらのモンスターも破壊される。とても捨て置けなかった。

 

「猪口才な効果を――」

「だが、まだまだよ!」

「……攻め切れないな。俺は魔法カード、《ペンデュラム・ホルト》を発動! 自分のEXデッキの表側表示ペンデュラムモンスターが三種類以上存在する場合、デッキからカードを二枚ドローする!」

 

 遊矢のEXデッキにはリザードロー、刻剣、ドクロバット・ジョーカーの三種類がいる。よって、発動条件を満たしていた。

 

「ただし、このカードの発動後、ターン終了時まで俺はデッキからカードを手札に加えることは出来ない。リバースカードを二枚セットしてターンエンド」

 

 遊矢のターンが終了したことで、オッドアイズの攻撃力ももとに戻る。

 

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》 ATK0→2500

 

 

 遊矢 手札0枚 LP4500

 フィールド オッドアイズ

 魔法・罠 リバース2枚

 ペンデュラム トランプ・ウィッチ、相生

 

 VS

 

 迷宮兄弟・宮 手札5枚 LP8000

 フィールド サンガ、ヒューガ

 魔法・罠 《ラビリンス・ウォール・シャドウ》、《フィールドバリア》、リバース1枚

 

 

 ゲート・ガーディアンは何とか対処できたが、それでもモンスターを場に残されてしまい、攻め切ることが出来ずにいる。

 舐めていた訳ではないが、伝説のデュエリストを追い詰めたことがあるというのは伊達ではないようだ。困ったような笑みを浮かべる遊矢に対し、十代は厳しい状況になっていくにつれて嬉しそうな笑みを増していた。

 

 

 




 原作との変化点。

・#10『十代&翔! タッグデュエル(前編)』より、十代、遊矢のデュエルが始まった。
 実はゲート・ガーディアンカードが出たことで内容を全て書き直しているため、多分他のデュエルに比べてもどこかにミスがある可能性が高いです。すみません。

・迷宮兄弟は様子見中。
 最初から三体合体は見せない。学生相手に様子見中という感じ。



 デュエル内容変更点。

・スターヴ・ヴェノムの破壊効果にチェーンして水雷魔神の効果を使い忘れていたので、修正しました。
 修正後はオッドアイズの攻撃力がゼロになったので、螺旋のストライクバーストで重魔戦車を倒し、ペンデュラムホルトで二枚ドローしています。修正後はペンデュラム前にリザードローで数を嵩増ししました。

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