榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

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#018 『勝利の方程式』

 三沢VS万丈目のクラス入れ替えデュエルは、万丈目が有利に進んでいた。

 しかし、三沢はまだまだこれからと言わんばかりに、デッキからカードをドローする。

 

「俺のターン! よし! 万丈目、これで俺の勝利の方程式は完成した!」

「何だと!?」

「俺は、手札の《デューテリオン》の効果発動! 自分のメインフェイズにこのカードを墓地に捨て、デッキからボンディング魔法・罠カードを手札に加える! 俺は《ボンディング―D2O》を手札に加える!」

「《ボンディング―D2O》だと!?」

「そして、魔法カード、《死者蘇生》を発動! 墓地の《デューテリオン》を特殊召喚する!」

 

 《デューテリオン》

 効果モンスター

 ☆5 水属性 恐竜族

 ATK2000 DEF1400 攻撃表示

 

 泥水を二足歩行型の恐竜にしたような形のモンスターが、三沢の墓地からフィールドに蘇る。

 今までフィールドに出ていたのが磁石の戦士だけに、モンスターの毛色がガラッと変わった感じだ。

 

「《デューテリオン》の効果発動! このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地の《ハイドロゲドン》、《オキシゲドン》、《デューテリオン》のいずれか一体を特殊召喚できる! 戻ってこい、《オキシゲドン》!」

 

 《オキシゲドン》

 効果モンスター

 ☆4 風属性 恐竜族

 ATK1800 DEF800 攻撃表示

 

 効果によって、さらに墓地から全身緑の風を飛行型の恐竜にしたような形のモンスターが蘇生されていく。

 しかし、デュエルを見ていた十代と翔は、三沢がいつ《オキシゲドン》を墓地に送ったのか、全くわからなかった。

 

「《魔力の泉》の効果で墓地に送っていたか……!」

「その通りだ。そして、最後に《ボンディング―D2O》を発動! 自分の手札・フィールドの《デューテリオン》二体と、《オキシゲドン》一体をリリースし、自分のデッキ・手札・墓地から《ウォーター・ドラゴン》、または《ウォーター・ドラゴン・クラスター》一体を《ボンディング―H2O》の効果扱いとして特殊召喚する!」

「貴様の最後の手札は――」

「当然、二体目の《デューテリオン》だ! 手札の《デューテリオン》とフィールドの《デューテリオン》、《オキシゲドン》をリリース! 出でよ、《ウォーター・ドラゴン・クラスター》!!」

 

 《ウォーター・ドラゴン・クラスター》

 効果モンスター

 ☆10 水属性 海竜族

 ATK2800 DEF2600 攻撃表示

 

 二つの頭を持つ、全身が美しい水で出来た龍が三沢のフィールドで咆哮を上げる。

 あれだけの手間をかけて出した以上、このモンスターには強力な効果があるのは間違いない。だが、万丈目はそんな内心を無視したように、強気な声を上げた。

 

「だが! 攻撃力はVWXYZの方が上だ!」

「万丈目、今はもう攻撃力が全ての時代は終わったんだ! 《ウォーター・ドラゴン・クラスター》の効果! このカードが特殊召喚に成功した時、相手フィールドの効果モンスターはターン終了時まで攻撃力がゼロになり、効果も発動できない!」

「なんだと!?」

「そして、俺のフィールドには《ウォーター・ドラゴン・クラスター》と《鳥銃士カステル》がいる。二体の攻撃力の合計は4800、俺の勝ちだ!」

 

 《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》 ATK3000→0

 

「バトルだ! 《ウォーター・ドラゴン・クラスター》で《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》に攻撃! アクア・バニッシュ・クラスター!!」

 

 《ウォーター・ドラゴン・クラスター》 ATK2800 VS《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》 ATK0

 

 双頭の龍の口から、ウォーターカッターのように鋭い水が噴射されていく。

 確かに、この攻撃が全て通れば、万丈目の負けだった。

 

「これで終われるか! 墓地の《超電磁タートル》の効果! 墓地のこのカードを除外することで、バトルフェイズを終了する!」

「なにっ!? そうか、《鳳凰神の羽根》のコストで墓地に送っていたのか……!」

 

 墓地から。先程まで三沢が使っていた磁石の戦士のような、S極とN極の文字を刻んだ電子の亀が現れ、万丈目へ放たれた水を明後日の方向へと弾いていく。

 同時に、バトルフェイズが終了され、またしてもカステルは活躍の場を失った。

 

「その程度の方程式で、この俺を倒せると思うな!!」

「くっ、仕損じたか。カステルを守備表示に変更してターンエンドだ」

「貴様のターンが終了したことで、俺のVWXYZの攻撃力と効果は元に戻る!」

 

 《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》 ATK0→3000

 

 

 三沢 手札0枚 LP2500

 フィールド カステル、クラスター

 魔法・罠 なし

 

 VS

 

 万丈目 手札0枚 LP3300

 フィールド VWXYZ

 魔法・罠 《ユニオン格納庫》、《X・Y・Zコンバイン》

 

 

「俺のターン、ドロー! 魔法カード、《大欲の壺》! ゲームから除外されているカードが三枚以上の時、三枚をデッキに戻してシャッフルし、カードを一枚ドローする!」

 

 万丈目の除外ゾーンにはV、W、X、Y、Zに、VW、そしてバトルフェーダーの七体が除外されている。

 万丈目は、そこからX、Y、Zの三枚を選択してデッキに戻し、カードをドローした。

 

「この引きこそ、俺が強者である証! 《Y-ドラゴン・ヘッド》を再び通常召喚!」

 

 《Y-ドラゴン・ヘッド》

 効果モンスター ユニオン

 ☆4 光属性 機械族

 ATK1500 DEF1600 攻撃表示

 

 召喚されたのはお馴染みの、乗るだけモンスター。

 

「《Y-ドラゴン・ヘッド》だって!?」

「ってことはまた――」

 

 驚く十代と翔に応えるように、万丈目はカードの効果を発動させていく。

 

「フィールド魔法、《ユニオン格納庫》の効果! 《Y-ドラゴン・ヘッド》が召喚されたことで、デッキから《Z-メタル・キャタピラー》を装備する!」

 

 《Y-ドラゴン・ヘッド》 ATK1500→2100 DEF1600→2200

 

 乗っただけ。

 

「そして、二体を除外して変形合体!」

 

 《YZ-キャタピラー・ドラゴン》

 効果モンスター 融合

 ☆6 光属性 機械族

 ATK2100 DEF2200 攻撃表示

 

 分離して、乗っただけ。

 

「永続魔法、《X・Y・Zコンバイン》の効果! 自分の場の機械族、光属性のユニオンモンスターが除外されたことで、デッキから《X-ヘッド・キャノン》、を特殊召喚!」

 

 《X―ヘッド・キャノン》

 通常モンスター

 ☆4 光属性 機械族

 ATK1800 DEF1500 攻撃表示

 

 デッキに戻されたXが再び現れる。

 

「さらに、《X・Y・Zコンバイン》の効果で、自分フィールドの融合モンスター、《YZ-キャタピラー・ドラゴン》をEXデッキに戻し、除外されている自分のモンスターの中から《Y-ドラゴン・ヘッド》、《Z-メタル・キャタピラー》の二体を特殊召喚!!」

 

 《Y-ドラゴン・ヘッド》

 効果モンスター ユニオン

 ☆4 光属性 機械族

 ATK1500 DEF1600 攻撃表示

 

 《Z―メタル・キャタピラー》

 効果モンスター ユニオン

 ☆4 光属性 機械族

 ATK1500 DEF1300 攻撃表示

 

 これで、再びXYZの三体がフィールドに並んだ。

 

「そして、三体のX、Y、Zをゲームから除外し、変形合体! 現れよ、《XYZ―ドラゴン・キャノン》!!」

 

 《XYZ―ドラゴン・キャノン》

 効果モンスター 融合

 ☆8 光属性 機械族

 ATK2800 DEF2600 攻撃表示

 

 三体が乗っただけ――だが、これで万丈目のフィールドには攻撃力3000と2800のモンスターが並び立った。

 

「フィールドにVWXYZとXYZの二体が……!?」

「いくぞ、三沢! VWXYZの効果発動! 《ウォーター・ドラゴン・クラスター》をゲームから除外する!」

「くっ、させるか! 《ウォーター・ドラゴン・クラスター》の効果! このカードをリリースし、手札・デッキから《ウォーター・ドラゴン》二体を、召喚条件を無視して守備表示で特殊召喚する! この効果は相手ターンでも発動できる!」

「チッ、逃がしたか!」

 

 《ウォーター・ドラゴン》

 効果モンスター

 ☆8 水属性 海竜族

 ATK2800 DEF2600 守備表示

 

 《ウォーター・ドラゴン》

 効果モンスター

 ☆8 水属性 海竜族

 ATK2800 DEF2600 守備表示

 

 まるで、《融合解除》を受けたように、クラスターが二体に分離していく。

 完璧なサクリファイスエスケープだが、本来なら三沢も攻撃表示で《ウォーター・ドラゴン》を呼びたかった所だろう。そうすれば、XYZを相打ちに持ち込める可能性もあったし、万丈目が相打ちを避けて一体は残る可能性もあった。

 しかし、効果で呼べるのは守備表示。こうなれば、余計なことをされる前に万丈目は《ウォーター・ドラゴン》を倒し切る。オーバーレイユニットを使い切っているカステルは通常モンスターと変わらないからだ。

 

「この瞬間、墓地の《ボンディング―D2O》の効果発動! このカードが墓地に存在し、フィールドの《ウォーター・ドラゴン》、又は《ウォーター・ドラゴン・クラスター》が墓地へ送られた場合、このカードを手札に戻す!」

 

 墓地からカードを回収していく。

 とはいえ、今から二体目のクラスターを呼ぶのは不可能に近い。三沢も手札コストとして使うつもりだろう。

 

「ならばバトルだ! VWXYZで《ウォーター・ドラゴン》に攻撃! この瞬間、VWXYZの効果で表示形式を変更する! アルティメット・ディストラクション!!」

 

 《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》 ATK3000 VS 《ウォーター・ドラゴン》 ATK2800

 

 少しでもダメージを与えようと、表示形式が変更されていく。

 三沢はここが勝負所だと判断したようで、デュエルディスクのボタンを押し込んだ。

 

「この瞬間、墓地の《タスケルトン》の効果発動! このカードをゲームから除外して、攻撃を一度だけ無効にする!」

「なにっ!?」

 

 墓地から現れた黒い豚が、《ウォーター・ドラゴン》に変わって、VWXYZの攻撃を受けていく。

 残されたのは、まさに骨だけだが、《ウォーター・ドラゴン》は無傷でフィールドに残っていた。

 

「仕込んでいたのはお前だけじゃないってことさ。まぁ、《タスケルトン》で防げる攻撃は一度が限界だけどな」

「ちっ、なら、《XYZ―ドラゴン・キャノン》で守備表示の《ウォーター・ドラゴン》を攻撃! ハイパー・ディストラクション!!」

 

 《XYZ―ドラゴン・キャノン》 ATK2800 VS《ウォーター・ドラゴン》 DEF2600

 

 流石に二体目は守れなかったようで、XYZの一斉射で《ウォーター・ドラゴン》が破壊されていく。

 本来、《ウォーター・ドラゴン》には、自身が破壊された時に、墓地の《ハイドロゲドン》二体と《オキシゲドン》一体を蘇生する効果があるが、今回は別ルートで特殊召喚したために墓地に《ハイドロゲドン》が存在していなかった。

 

「っ、何とか凌ぎきったぜ……」

「ちっ、《タスケルトン》なんてカードを使っているとはな」

「お前も《超電磁タートル》を仕込んでいたじゃないか。お互い様だ。しかし、同じ武藤遊戯のカードを使った俺が言えた話ではないが、比較的手に入りやすい磁石の戦士と違って、強力な効果を持つ《超電磁タートル》はかなり高額で、なかなか手に入るものではないんだけどな」

「フン、所詮は金で解決できる問題だ。俺はこれでターンエンド」

 

 

 万丈目 手札0枚 LP3300

 フィールド VWXYZ、XYZ

 魔法・罠 《ユニオン格納庫》、《X・Y・Zコンバイン》

 

 VS

 

 三沢 手札1枚 LP2500

 フィールド カステル、《ウォーター・ドラゴン》

 魔法・罠 なし

 

 どちらも一歩も引かない。だが、状況的には万丈目が有利だった。

 三沢もここで逆転のカードを引けなければ負けるとわかっているようで、真剣にデッキの上に指を置いている。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 カードを引いて笑みを浮かべる三沢。

 その姿から、万丈目はいつかの遊矢とのデュエルを幻視した。あの時も、圧倒的に有利だった状況を覆され、屈辱的な敗北を喫している。

 

「魔法カード、《天使の施し》! デッキからカードを三枚引いて、手札から二枚捨てる!」

「チッ、またドローカードか!」

 

 タイミングのいい手札交換だった。これで三沢は手札で腐っている《ボンディング―D2O》を処理することが出来る。

 

「そして、今墓地に送った《カーボネドン》の効果発動! 自分のメインフェイズに墓地のこのカードを除外することで、手札、デッキからレベル7以下のドラゴン族通常モンスター一体を守備表示で特殊召喚する! 来い、《ダイヤモンド・ドラゴン》!」

 

 《ダイヤモンド・ドラゴン》

 通常モンスター

 ☆7 光属性 ドラゴン族

 ATK2100 DEF2800 守備表示

 

 全身ダイヤモンドの煌びやかなドラゴンが、三沢のフィールドに特殊召喚されていく。

 

「さらに、カステルを攻撃表示に変更し、魔法カード《受け継がれる力》を発動! 俺は《ダイヤモンド・ドラゴン》を墓地へ送り、《鳥銃士カステル》の攻撃力に、《ダイヤモンド・ドラゴン》の攻撃力をプラスする!」

 

 出てきたばかりだが、即出番終了とばかりに《ダイヤモンド・ドラゴン》が消えていった。

 しかし、その攻撃力はしっかりとカステルへと受け継がれていく。もし、《ダイヤモンド・ドラゴン》の表示形式が攻撃表示だったならば、消えていたのは逆だったかもしれない。

 

 《鳥銃士カステル》 ATK2000→4100

 

「バトルだ! 《鳥銃士カステル》で、《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》を攻撃!」

 

 《鳥銃士カステル》 ATK4100 VS《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》 ATK3000

 

 ようやく来た出番ということで、気合の入ったカステルが、消えていった《ダイヤモンド・ドラゴン》の無念を弾丸に込めて発射していく。弾は一撃で核を貫き、VWXYZをバラバラに破壊していった。

 

「ぐっ!!」

 

 万丈目 LP3300→2200

 

「さらに、《ウォーター・ドラゴン》で《XYZ―ドラゴン・キャノン》を攻撃! アクア・バニッシャー!!」

「相打ち狙いか! 迎え撃て、XYZ! ハイパー・ディストラクション!!」

 

 《ウォーター・ドラゴン》 ATK2800 VS《XYZ―ドラゴン・キャノン》 ATK2800

 

 両者共に攻撃力が同じということで、相打ちとなって墓地へ送られる。だが、これで万丈目のフィールドにはモンスターがいなくなった。

 

「この瞬間、《天使の施し》で墓地に送った《ボンディング―D2O》の効果を再び発動! 《ウォーター・ドラゴン》が墓地へ送られたことで、このカードを手札に戻す!」

 

 これで三沢の手札が再び増える。

 

「メインフェイズ2に、魔法カード、《一時休戦》を発動! お互いのプレイヤーはデッキからカードをドローする。そして、次の相手ターン終了時まで、お互いが受ける全てのダメージはゼロとなる。さぁ、お前もカードを引けるぞ、ドローしろ万丈目!」

「万丈目さんだ! フン、何が、お互いが受ける全てのダメージはゼロになるだ。実質、そのデメリットを受けるのは俺だけではないか……!」

 

 バトルフェイズを終了している故、もう残された三沢のターンで出来る行動は、メインフェイズ2とエンドフェイズのみだった。

 万丈目の言葉通り、《一時休戦》のダメージ0効果は、万丈目のみが一方的に受ける。

 

「フフフ、そう言うな。俺はこれでターンエンドだ。そして、カステルの攻撃力も元に戻る」

 

 《鳥銃士カステル》 ATK4100→2000

 

 

 三沢 手札2枚 LP2500

 フィールド カステル

 魔法・罠 なし

 

 VS

 

 万丈目 手札1枚 LP2200

 フィールド なし

 魔法・罠 《ユニオン格納庫》、《X・Y・Zコンバイン》

 

 

「俺のターン、ドロー! この俺に手札を与えたことを後悔するがいい! 魔法カード、《死者蘇生》を発動! 墓地から蘇れ! 《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》!!」

 

 《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》

 効果モンスター 融合

 ☆8 光属性 機械族

 ATK3000 DEF2800 攻撃表示

 

 墓地から壊された各パーツが蘇り、巨大なロボットへと変形合体していく。

 ようやく倒した強力モンスターが、あっという間にフィールドに戻ってきたことで、流石の三沢も驚いたような顔をしている。

 

「くっ、こんなに早くVWXYZを復活させてくるとは……!」

「VWXYZは召喚条件を満たせば、いつでも墓地からの特殊召喚も可能なのだ! そして、貴様の《一時休戦》は、あくまでダメージをゼロにする効果であって、モンスターの効果を無効にするカードではない! VWXYZの効果で、カステルを除外!」

 

 長くフィールドに留まっていたカステルも、遂に除外されてしまった。

 三沢は内心、万丈目の引きの強さに冷や汗をかいている。もし、前のターン、保険をかけて、《一時休戦》を発動させていなかったら、このターンで敗北していたかもしれないのだ。

 

「……一瞬たりとも油断はできない訳だ」

「俺は、これでターンエンド! これで《一時休戦》の効果も終了する!」

 

 

 万丈目 手札1枚 LP2200

 フィールド VWXYZ

 魔法・罠 《ユニオン格納庫》、《X・Y・Zコンバイン》

 

 VS

 

 三沢 手札2枚 LP2500

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

 互いに追い込まれても、すぐに体勢を立て直してくる。

 見ているクロノスは、三沢を勝たせるという邪念に囚われていて気付いていなかった。このデュエルの内容は既に、オベリスクブルーの三年生にも簡単には出来ないものであるということに。

 

「俺のターン、カードドロー! 魔法カード、《貪欲な壺》を発動! 墓地の磁石の戦士三体と、《デューテリオン》、《ウォーター・ドラゴン》をデッキに戻し、シャッフル。カードを二枚ドロー!」

 

 再び、ドローカードで三沢が手札を増やしていく。

 おそらく、多様性を求めるが故に、そういうカードを意図して多く入れてあるのだろう。また、三沢は自身がデュエルの運において凡才だと理解している。十代や万丈目のような運命的なドロー力は、自身にはないとわかっているが故に、キーカードを引き込める可能性を、ドローソースを増やすことで上げているのだ。

 

「俺は《電磁石の戦士α》を召喚!」

 

 《電磁石の戦士α》

 効果モンスター

 ☆3 地属性 岩石族

 ATK1700 DEF1100 攻撃表示

 

 新たに出てきたそれは、どこか《磁石の戦士α》の面影を感じるモンスターだった。

 

「また新たな磁石の戦士か!?」

「このカードが召喚、特殊召喚に成功した時、デッキからレベル8の『磁石の戦士』モンスター一体を手札に加える! 俺は《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》を手札に加える!」

「《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》だと……?」

「さらに、ライフを2000支払い、魔法カード《同胞の絆》を発動!」

 

 三沢 LP2500→500

 

「このカードを発動するターン、俺はバトルフェイズを行えず、ターン終了時までこのカード以外の効果で特殊召喚も出来ない!」

「何だ、遂に手詰まりか!?」

「いや、次の反撃への下拵えだよ。《同胞の絆》の効果! フィールドの《電磁石の戦士α》と同じ種族・属性・レベルで、カード名が異なるモンスター二体をデッキから特殊召喚する!」

「まさか……!?」

「当然、飛び出すのは――《電磁石の戦士β》、《電磁石の戦士γ》!」

 

 《電磁石の戦士β》

 効果モンスター

 ☆3 地属性 岩石族

 ATK1500 DEF1500 守備表示

 

 《電磁石の戦士γ》

 効果モンスター

 ☆3 地属性 岩石族

 ATK800 DEF2000 守備表示

 

 やはり、磁石の戦士と同じく、この電磁石の戦士にもβとγが存在した。

 この二体もα同様に、それぞれ《磁石の戦士β》、《磁石の戦士γ》の面影をどこか感じる。

 

「さらに、《電磁石の戦士β》の効果! このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから《電磁石の戦士β》以外のレベル4以下の『マグネット・ウォリアー』モンスター一体を手札に加える! 《磁石の戦士δ》を手札に!」

 

 サーチ効果で手札を増やしていく。

 

「電磁石の戦士! こいつも滅茶苦茶格好いいぜ!」

「でも、三沢君は《同胞の絆》の効果でこれ以上、このターンに特殊召喚が出来ないから、これ以上の展開は……」

「なに、三沢も考えてるはずだ」

 

 十代が新たな磁石の戦士に喜び、翔が三沢を心配する中、遊矢だけが三沢からちょっとした余裕のようなものを感じていた。

 正確にはゆとりがあるというべきか。

 逆に有利な状況のはずの万丈目はずっと追い詰められた表情をしている。笑顔もなく、デュエルが楽しいと思えていないのだろう。

 

「万丈目……」

 

 ペガサス会長がくれたカード。

 本当ならあのカードを、現状を打破するきっかけにして欲しかった。だが、万丈目は既にそのカードをデッキから抜いている。

 

「俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

 

 三沢 手札3枚 LP500

 フィールド 《電磁石の戦士α》、《電磁石の戦士β》、《電磁石の戦士γ》

 魔法・罠 リバース1枚

 

 VS

 

 万丈目 手札1枚 LP2200

 フィールド VWXYZ

 魔法・罠 《ユニオン格納庫》、《X・Y・Zコンバイン》

 

 

「俺のターン!」

 

 守勢に回った三沢を見て、ここで一気に追い込むと意気込む万丈目。

 デッキからカードをドローするなり、即座にメインフェイズへと移行していく。

 

「魔法カード、《ハリケーン》を発動! フィールドの魔法、罠カードを全て手札に戻す!」

 

 遊矢の世界では禁止のカードだった。魔法・罠を戻すというのは除去以外にもいろいろ悪用が出来る。

 実際、万丈目もリバースカード除去というよりも、別の目的で《ハリケーン》を発動させたようだった。

 

「おっと、なら罠カード発動! 《ブレイクスルー・スキル》! 相手モンスター一体の効果をエンドフェイズまで無効にする! これで、VWXYZの除外と表示形式変更効果は無効になる!」

 

 風の渦がカードを巻き上げる中、金色の光がVWXYZを包み効果を無効にしていく。

 次に、万丈目のフィールド魔法、《ユニオン格納庫》と、永続魔法、《X・Y・Zコンバイン》が手札に戻るが、《ブレイクスルー・スキル》は効果を発動したため、墓地へ送られた。

 

「チッ、小賢しい真似を! ならば、バトルフェイズだ!」

「おっと、勝手に攻撃に移って貰っては困るな! 俺はお前のバトルフェイズ開始時に、電磁石の戦士の共通効果を発動する!」

「なっ、共通効果だと!?」

「そう! 電磁石の戦士達は、相手ターンに自身をリリースすることで、デッキからレベル4以下の『マグネット・ウォリアー』モンスターを特殊召喚できる! 俺はα、β、γの三体をリリースして、デッキから《磁石の戦士α》、《磁石の戦士β》、《磁石の戦士γ》を守備表示で特殊召喚する!」

 

 《磁石の戦士α》

 通常モンスター

 ☆4 地属性 岩石族

 ATK1400 DEF1700 守備表示

 

 《磁石の戦士β》

 通常モンスター

 ☆4 地属性 岩石族

 ATK1700 DEF1600 守備表示

 

 《磁石の戦士γ》

 通常モンスター

 ☆4 地属性 岩石族

 ATK1500 DEF1800 守備表示

 

 三体の電磁石の戦士が光となって消えると、α、β、γの磁石の戦士がデッキよりフィールドに舞い戻る。

 

「《貪欲な壺》で戻した磁石の戦士達か……!」

「《電磁石の戦士α》は通常召喚したせいで攻撃表示のままだったからな。悪いが、これ以上のライフポイントを削らせる訳にはいかないんだ」

「チッ、ならばバトルフェイズ! VWXYZで《磁石の戦士β》に攻撃! アルティメット・ディストラクション!!」

 

 《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》 ATK3000 VS《磁石の戦士β》 DEF1600

 

 全砲門が向けられ、《磁石の戦士β》が砲撃によって吹き飛ばされていく。

 

「だが、守備表示故に戦闘ダメージはゼロだ!」

「俺はメインフェイズ2で魔法カード、《手札抹殺》を発動! 互いのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた枚数分ドローする! 俺は手札を二枚捨て、二枚ドロー!」

 

 これで万丈目は不要となった《ユニオン格納庫》と《XYZコンバイン》を上手く処理しつつ、手札を補充することが出来た。

 

「くっ、ベルセリオンを捨てさせられたか……! 俺も手札を三枚捨て、カードを三枚ドローする!」

 

 対する三沢はキーカードを捨てさせられたが、もう一枚の腐っている《ボンディング―D2O》が処理できたので悪い状況ではない。

 

「リバースカードを一枚伏せて、《強化支援メカ・ヘビーウェポン》を通常召喚!」

 

 《強化支援メカ・ヘビーウェポン》

 効果モンスター ユニオン

 ☆3 闇属性 機械族

 ATK500 DEF500 攻撃表示

 

 万丈目のフィールドに新たな飛行型メカが登場する。

 

「効果発動! 自分フィールドの機械族を対象とし、このカードを装備して攻撃力、守備力を500ポイントアップする! さらに、装備したモンスターが戦闘・効果で破壊される場合、代わりにこのカードを破壊できる!」

 

 ヘビーウェポンが変形、分離し、VWXYZのパーツとして組み合わさっていく。

 上手いこと隙間を縫っているようで、見た目は重厚感が増して強そうに見えた。

 

 《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》 ATK3000→3500

 

「これでターンエンドだ!」

 

 

 万丈目 手札0枚 LP2200

 フィールド VWXYZ

 魔法・罠 ヘビーウェポン、リバース1枚

 

 VS

 

 三沢 手札3枚 LP500

 フィールド 《磁石の戦士α》、《磁石の戦士γ》

 魔法・罠 なし

 

 

「俺のターン!」

 

 三沢がカードをドローする。本来であれば、このターンでマグネット・ベルセリオンを出して勝負を決めるつもりだった。

 先程のターンで万丈目に捨てさせられた《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》は墓地の電磁石の戦士三体を除外することで特殊召喚ができ、墓地のレベル4以下の『マグネット・ウォリアー』モンスターを除外することで、フィールドのカードを破壊できる。

 墓地には戦闘破壊された《磁石の戦士β》がおり、手札のカードとも合わせ、三沢はそれでVWXYZを破壊して直接攻撃で勝負をつけるつもりだった。だが、万丈目のデュエリストとしての才能が無意識にその敗北への道を拒否したのだろう。

 

「魔法カード、《馬の骨の対価》発動! フィールドの通常モンスター、《磁石の戦士α》を墓地へ送って、カードを二枚ドロー!」

 

 しかし、三沢もまだ勝負はこれからとばかりに、再びカードをドローしていた。

 豊富なドローソースによる多様性が三沢の強み。手札が多いほど、三沢はあらゆる行動に対策を練ってくる。

 どうやら、余程デッキのバランスが良く出来ているのか、欲しい時に欲しいカードを引けているようだった。

 

「いくぞ! 速攻魔法、《マグネット・リバース》発動! 自分の墓地、及び除外されている自分のモンスターの中から、機械族か岩石族の通常召喚出来ないモンスター一体を特殊召喚できる! 甦れ、《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》!」

 

 《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》

 効果モンスター

 ☆8 地属性 岩石族

 ATK3500 DEF3850 攻撃表示

 

 除外されていたマグネット・バルキリオンが異次元より帰還していく。

 ベルセリオンはまだ召喚条件を満たしていないので、墓地からの特殊召喚は不可能だった。

 

「チッ、またマグネット・バルキリオンか……!」

「装備魔法、《シンクロ・ヒーロー》をマグネット・バルキリオンに装備! 装備モンスターのレベルを一つ上げ、攻撃力を500ポイントアップする!」

 

 《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》 ☆8→9 ATK3500→4000

 

「バトルフェイズ! マグネット・バルキリオンでVWXYZを攻撃! マグネット・セイバー!!」

 

 《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》 ATK4000 VS《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》 ATK3500

 

 装備魔法によって、マグネット・バルキリオンの攻撃力が相手を上回り、先程のように一刀両断しようと剣を振っていく。

 

「甘い! 罠カード、《プライドの咆哮》! 戦闘ダメージ計算時、自分のモンスターの攻撃力が相手よりも低い場合、その攻撃力の差の分だけライフを支払って発動! ダメージ計算時のみ、自分のモンスターの攻撃力は相手モンスターとの攻撃力の差+300ポイントアップする!」

 

 まるで、プレイヤーである万丈目に呼応するかのように、フィールドに咆哮が響き渡り、VWXYZの攻撃力を上げていった。

 

 万丈目 LP2200→1700

 

 《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》 ATK3500→4300

 

「これで攻撃力はVWXYZの方が上だ!」

 

 《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》 ATK4000  VS《VWXYZ―ドラゴン・カタパルトキャノン》 ATK4300

 

 攻撃力が逆転したことで、VWXYZの砲撃がマグネット・バルキリオンを消し飛ばしていく。

 盾で防ごうとしたようだが、その盾も貫通し、マグネット・バルキリオンがバラバラに破壊されていった。

 

「くっ! マグネット・バルキリオンが!?」

 

 三沢 LP500→200

 

「貴様は言ったな! 攻撃力が全ての時代は終わったと! ならば、俺のVWXYZを超えて見ろ!」

「……俺はメインフェイズ2で魔法カード、《戦線復活の代償》を発動! 自分フィールドの通常モンスター《磁石の戦士γ》を墓地へ送り、自分又は相手の墓地からモンスター一体を選択して自分フィールドに特殊召喚し、このカードを装備する。蘇れ、マグネット・バルキリオン!」

 

 《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》

 効果モンスター

 ☆8 地属性 岩石族

 ATK3500 DEF3850 守備表示

 

 γの命と引き換えに再びフィールドにマグネット・バルキリオンが復活する。

 このままターンを渡せば、三沢は耐え切れない。ここはマグネット・バルキリオンに任せるしかなかった。

 

「また性懲りもなく、マグネット・バルキリオンか!」

「ただし、このカードがフィールドから離れた時、装備モンスターは破壊される。俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド!」

 

 

 三沢 手札1枚 LP200

 フィールド マグネット・バルキリオン

 魔法・罠 《戦線復活の代償》、リバース1枚

 

 VS

 

 万丈目 手札0枚 LP1700

 フィールド VWXYZ

 魔法・罠 ヘビーウェポン

 

 

 攻めたはずの三沢が完全に守りに入ってしまった。それだけ、万丈目の迎撃は強烈だったのだ。

 ドローカードで絶えず手札を増やして策を練っても、攻め切れない所か反撃までされて、デュエルの流れはどんどん万丈目に傾いて来ている。それは、見ている遊矢にも感じ取れていた。

 

「……今の反撃は痛かったな。流れは万丈目に傾きつつある」

「遊矢君! 三沢君が負けるって言うんすか!?」

「客観的に見た状況を口にしただけだよ」

「……確かに、万丈目はマジで強ぇ。前に俺とデュエルした時よりも、また強くなった感じがする」

「アニキまで……」

「けど、三沢だって負けてない! あいつの目はまだ死んじゃいない! 俺達も諦めずに応援しようぜ!」

「そうっすね!」

 

 再び、「がんばれー」という声が響き、三沢がフッと笑みを浮かべる。追い詰められつつはあるが、まだ精神的な余裕はあるようだった。

 対照的に、有利なはずの万丈目は相変わらず追い詰められているかのような表情でデュエルをプレイしている。

 前の自分とのデュエルで感じた怯えとは違う。何というか、目の前の三沢ではなく、何か別のものと戦っているような気がするのだ。

 

「俺のターン、ドロー! VWXYZの効果発動! マグネット・バルキリオンをゲームから除外する!」

 

 ミスだ――と、遊矢はすぐに気づいた。

 

 おそらく、何度も蘇ってくるマグネット・バルキリオンに業を煮やしたのだろう。だが、ここは冷静に《戦線復活の代償》を狙うべきだった。

 装備カードである《戦線復活の代償》には、このカードがフィールドから離れた時、装備モンスターを破壊するデメリットがある。モンスターよりも守りにくい魔法を狙った方がマグネット・バルキリオンを確実に除去出来た。

 

「罠カード、《マグネット・フォース》! このターン、元々の種族が機械族、又は岩石族のフィールドのモンスターは自身以外の相手モンスターの効果を受けない!」

 

 その証拠に、三沢の罠によって、万丈目はVWXYZの効果を事実上無効にされている。これでは守備表示のマグネット・バルキリオンは処理できず、このターン攻撃を仕掛けることが出来なくなってしまった。

 

「チッ、なら俺はカードを一枚伏せてターンエンド」

 

 とはいえ、何とか凌いではいるが、もう三沢にも猶予はない。

 おそらく、次のターン――次のターンで三沢が勝負を決められなければ、このデュエルは万丈目が制する。遊矢は本能的にそう直感した。

 

 

 万丈目 手札0枚 LP1700

 フィールド VWXYZ

 魔法・罠 ヘビーウェポン、リバース1枚

 

 VS

 

 三沢 手札1枚 LP200

 フィールド マグネット・バルキリオン

 魔法・罠 《戦線復活の代償》

 

 

「俺のターン、ドロー!! 魔法カード、《アドバンスドロー》発動! フィールドのレベル8以上モンスターをリリースして、デッキからカードを二枚ドローする!」

「なっ!? まさか貴様――」

「俺は、マグネット・バルキリオンをリリースしてカードを二枚ドローする!」

 

 まさかのマグネット・バルキリオンをリリースするという暴挙に、対戦相手の万丈目すら動揺している。応援している十代や翔も「何してるんだ三沢ー!」、「自棄になっちゃ駄目っすー!」と、悲鳴のような声を上げていた。

 だが、遊矢は悪くない手段だ――と、感心していた。実際の所、仮にマグネット・バルキリオンでVWXYZを攻撃しても、破壊を肩代わりするヘビーウェポンがあるせいで戦闘破壊は出来ない。次のターンになれば、三沢は敗北するしかなくなる。ならば勝てる可能性がある方に賭けたのだろう。

 

 三沢もまた、このターンでケリを付けなければ駄目だと、論理的に理解している。故の暴挙――しかし、引いたカードを見て三沢は笑みを浮かべた。

 

「今度こそ、勝利の方程式は完成した! 俺は、魔法カード、《死者転生》を発動! 手札を一枚捨て、墓地のモンスター一体を手札に加える! 俺が手札に加えるのは、《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》!」

「《手札抹殺》で捨てさせたカードを回収しただと!?」

「俺は《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》の効果を発動! 手札・フィールド・墓地の《電磁石の戦士α》、《電磁石の戦士β》、《電磁石の戦士γ》を除外し、自身を特殊召喚できる! 俺は、墓地の三体の電磁石の戦士を除外! 来い、マグネット・ベルセリオン!!」

 

 《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》

 効果モンスター

 ☆8 地属性 岩石族

 ATK3000 DEF2800 攻撃表示

 

 マグネット・バルキリオンと同じく、三体の電磁石の戦士が合体して姿を変えていく。

 マグネット・バルキリオンは聖騎士という印象が強いが、こちらはどちらかというと狂戦士という感じで、何か恐ろしさのようなものを感じる。

 

「だが、攻撃力はVWXYZの方が上!」

「だから言っただろう。攻撃力が全ての時代は終わったんだ! マグネット・ベルセリオンの効果! 墓地からレベル4以下の『マグネット・ウォリアー』モンスターを一体除外することで、フィールドのカードを破壊する! 俺は《磁石の戦士α》を除外して、VWXYZを破壊!」

 

 三沢の墓地からカードが除外され、《磁石の戦士α》の幻影がVWXYZに突撃していく。

 

「ヘビーウェポンの効果! VWXYZが破壊されるとき、このカードを破壊することで身代わりとする!」

 

 だが、装備していたヘビーウェポンが分離することで盾となり、幻影の攻撃を防いでいった。

 

 《VWXYZ-ドラゴン・カタパルトキャノン》 ATK3500→3000

 

「ならば、もう一度だ! マグネット・ベルセリオンの効果は、墓地にレベル4以下の『マグネット・ウォリアー』モンスターが居れば何度でも発動できる!」

「なんだと!?」

 

 万丈目の記憶では、三沢の墓地にはまだ《磁石の戦士β》と《磁石の戦士γ》がいる。つまり、二回も破壊効果が使えるということだった。

 

「俺は《磁石の戦士β》を除外してVWXYZを破壊!」

 

 再びカードが墓地から除外され、《磁石の戦士β》の幻影がVWXYZに突撃していく。流石に今度は耐え切れず、VWXYZが破壊されていった。

 

「くっ、VWXYZが!」

「さらに、《磁石の戦士γ》を除外して、リバースカードを破壊!」

「まだだ! 罠カード、《逢魔ノ刻》! 自分、または相手の墓地の通常召喚出来ないモンスター一体を自分フィールドに特殊召喚する! 俺は、貴様の墓地から《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》を特殊召喚!」

 

 最後のγの一撃を透かすように、万丈目がリバースカードを発動させた。

 本来であれば、VWXYZを蘇生させるための罠だったのだろうが、相手の墓地に攻撃力3500のモンスターがいる以上、そちらを優先させるのは当然の判断と言える。

 

 《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》

 効果モンスター

 ☆8 地属性 岩石族

 ATK3500 DEF3850 攻撃表示

 

 今まで散々三沢のフィールドで活躍したマグネット・バルキリオンが、今度は万丈目のフィールドに蘇生された。

 マグネット・バルキリオンの攻撃力は3500、マグネット・ベルセリオンの攻撃力は3000、このままでは三沢は何も出来ない。

 

「さらに、これで貴様は墓地の磁石の戦士を使い切った!」

「果たしてそうかな? 言っただろう! 今度こそ、勝利の方程式は完成したと! 万丈目、お前は一つ見落としている!」

「なにっ!?」

「俺は既に墓地へ送っていたのさ。新たな磁石の戦士を! 俺は、墓地の《磁石の戦士δ》を除外して、マグネット・ベルセリオンの効果を発動!」

「《磁石の戦士δ》だと!?」

 

 そう、それは万丈目の《手札抹殺》の効果で、墓地へ送ったレベル4以下の磁石の戦士モンスターだった。

 万丈目もすっかり忘れていたらしい。

 サーチした後、そのまま捨てさせたことで、意識にも残っていなかったのだろう。だが、このモンスターも間違いなく、レベル4の磁石の戦士だった。

 

「マグネット・バルキリオンを破壊する!」

「くっ!?」

 

 三沢の墓地からカードが除外され、見覚えのない磁石の戦士が幻影となってマグネット・バルキリオンへ突撃していく。

 万丈目にこれを防ぐ手段はなく、フィールドからマグネット・バルキリオンが破壊され、今度こそフィールドが空になった。

 

「いいデュエルだった――《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》で、万丈目にダイレクトアタック!!」

 

 《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》 ATK3000 VS万丈目 LP1700

 

 マグネット・ベルセリオンが真っすぐに万丈目へと突っ込んでいく。

 手札にも、フィールドにも、墓地にも、もうその攻撃を防ぐ手段は残されていなかった。

 

「ぐぅっ!!」

 

 万丈目 LP1700→0

 

 万丈目のライフがゼロになると同時に、ソリッドビジョンが解除されていく。

 ギリギリの勝負だった。もし、このターンで決着がつかなければ、それこそ三沢が負けていただろう。いや、もっと言えば、万丈目がミスをしなければ三沢は負けていたのだ。

 

 遊矢はこのデュエルで、ずっと万丈目が前を向いてデュエルをしていないことに気が付いていた。

 

 先程も思ったが、前を向いているのに向いていない。目の前の三沢ではなく、もっと別の人物と戦っているような――目の前に集中できていない状態だった。そんな状態でデュエルをすれば、ミスの一つもするだろう。

 

 ただ、それでも勝ちを掴みかけていただけ、万丈目にはデュエルの才能があるということでもあった。

 

「……ふぅ、流石は万丈目。そう簡単に勝てるとは思っていなかったが、想像以上に苦戦させられたよ」

「フン、おだてた所で結果は変わらん。負けは負けだ……」

 

 三沢が握手を求めるも、万丈目はそれを拒否した。

 そして、デュエルの結果が出たことで、クロノスが三沢の方へと歩いていく。

 

「シニョール三沢。YOUのオベリスクブルーへの編入を認めるノーネ」

「……いえ、今回は辞退させて頂きます」

「OH!? 何故なノーネ!?」

「今回のデュエル、勝つには勝てましたが、どちらが勝ってもおかしくありませんでした。俺はオベリスクブルーに上がる時は、学年で一番になった時と入学式の時に決めたんです」

 

 そう言いながら、三沢は十代に視線を向ける。

 

「十代。オベリスクブルーに入るのは、お前を倒してからだ」

「よし、それなら今すぐデュエルをしようぜ! 俺もお前とデュエルしたくてうずうずしてた所さ」

「残念だが、今回は遠慮しておく。このデュエルで、またこのデッキの改善点も見えた。今のデッキではお前には勝てないだろう。お前と戦うのは、このデッキの調整を終えた時だ」

 

 と、十代と三沢が二人で密かに燃え上がる中、思い出したようにクロノスは万丈目の方へやってきた。

 

「シニョール万丈目。YOUはオベリスクブルーからラーイエローへ降格なノーネ」

「……はい」

「待って下さい、クロノス教諭。万丈目の降格には少々不服があります」

 

 しかし、遊矢がそこに待ったをかける。

 確かに、結果だけを見れば、万丈目はオシリスレッドとラーイエローに続けて負けたということになるが、その内容は降格させるようなレベルのものではなかった。 

 

「ハッキリ言いますね。新召喚のテスターとして、この学校の生徒と多くデュエルをした私の意見ですが、万丈目を降格させるなら現在のオベリスクブルー生の九割を降格させるべきだと思っています」

「きゅ、九わーり!?」

「どうも、この学校では結果だけを全てとしか捉えていないようですが、デュエルは内容も大切です。負けはしても、万丈目はオベリスクブルーに恥じないプレイングをしていました。むしろ、勝った側をもっと褒めるべきでしょう。実際、万丈目がラーイエローに降格したとして、現在のオベリスクブルーで彼に勝てる生徒は……まぁ、明日香――天上院くらいではないかと」

 

 長い目で見れば、ラーイエローに万丈目を落とした所で意味がないのだ。万丈目の実力ならすぐにオベリスクブルーに戻ってくる。

 むしろ、これを機にオベリスクブルー全体のレベルをもっと強くしたいと遊矢は考えていた。海馬も言っていたが、一年ブルーはエリート意識が高いだけでデュエルのレベルは低い。

 だからこそ、下手に降格させて万丈目のプライドを折るのではなく、何とか立ち直らせたかった。立ち直った万丈目に無双して貰い、オベリスクブルーの生徒にも自分達も降格するのではという危機意識を覚えさせたかったのだ。

 

「榊遊矢、余計なことをするな。俺は負けた。それが結果だ」

 

 しかし、心配する遊矢を他所に、万丈目はそう言って立ち去って行く。

 追い詰められた人間特有の目をしていた。ああなると、人間何をするかわからない。しばらくは目を光らせておこう――そう考えつつも、クロノスへの進言は取り下げなかった。

 クロノスもまた、新システムのテスターである遊矢の意見を無視する訳にも行かず、結果的に万丈目の降格は取り消して現状維持とすることにしたが、次の日には万丈目はデュエルアカデミアからいなくなっていた。

 

 

 




 原作との変化点。

・三沢がギリギリで勝ちを拾ったが、原作のようにデッキを捨ててないからみじめになっていない。
 とはいえ、原作通り、一度アカデミアを出ていく。

・遊矢が万丈目を庇った。
 実際、万丈目がイエローなら全員イエローでもおかしくない。この学校は基準が意味不明すぎる。

・三沢のデッキは原作ごった煮デッキ。
 ここにリトマスも入る。また、相手によって、その都度魔法・罠のバランスも変える。基本は相手をメタるデッキ。今回はVWXYZ用に効果を無効にするカードを増やしていたが、そこまで引けていない。ドロー力は並。



 デュエル内容変更点。

・ハリケーン、ブレイクスルースキル、VWXYZ、電磁石の戦士とチェーンを繋げたのですが、VWXYZがチェーン出来ないらしいので修正しました。
 修正後は、素直にバトルフェイズで電磁石の戦士三体の効果を使っています。

・電磁石の戦士βの特殊召喚時効果を忘れていたので発動させました。
 磁石の戦士δをサーチしています。

・マグネット・バルキリオンに魔導師の力を装備させたのですが、手札の魔法を伏せて強くなりすぎるのでカードを変えました。
 修正後はシンクロ・ヒーローを装備しています。


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