榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

2 / 51
#002 『社長、アクションデュエルに興味を示す』

 遊矢が連れて来られたのは、ビルのかなり高い階層で、どこかの執務室のような場所だった。

 先程、遊矢を連行するように指示した青年は、デスクに腰かけると、品定めをするような目で遊矢を見る。

 

「ふぅん。貴様、名は?」

「えっと、榊遊矢ですけど……」

 

 遊矢の名前を聞くと、青年はすぐにテーブルに置かれているパソコンを操作した。

 どうやら、遊矢について調べているらしい。

 

「該当結果なし、か。貴様、そのデュエルディスクを貸せ」

「えっ、何で……?」

「いいから早くしろ」

 

 偉そうな人だ――と、思いながら、遊矢はデュエルディスクからデッキを外し、青年に渡した。

 青年は渡されたデュエルディスクを興味深そうな目で見ている。

 

「やはり、うちの物ではないな。貴様、このデュエルディスクをどこで手に入れた?」

「どこでって、市販のものですけど……」

「市販のものだと? こんなデュエルディスク、わが社では販売していない」

「あ、ペンデュラム次元で売ってるデュエルディスクです」

「ペンデュラム次元……?」

「えっと、はい。ここは融合次元ですよね? プロフェッサー……いえ、赤馬零王さんに連絡を取ってほしいんですけど」

 

 ようやく、自分の話が出来たと一安心する遊矢。

 だが、逆に青年は眉間に皺を寄せながら、何かを考えているようだった。

 

「赤馬零王……」

「多分、アカデミアにいると思うんですけど」

「……貴様の話を詳しく聞きたい。貴様は何者だ?」

 

 今度は逆に遊矢が首を傾げる。

 

「えっと、榊遊矢。ペンデュラム次元にある遊勝塾所属のプロデュエリストですけど……」

「……先程、ここを融合次元といったな」

「はい。アカデミアがあるのは融合次元だけですから」

「デュエルアカデミアは、俺が作ったデュエリスト養成校だ。当然、職員は全員把握している。だが、赤馬零王などという人物は聞いたことがない」

「えっ……?」

「ついでに融合次元という単語も今、初めて聞いた。その上で、改めて聞く――貴様は何者だ?」

 

 その問いに対し、遊矢はすぐに言葉を返せなかった。いきなりのことに、頭の理解が追い付かないでいる。

 

「俺は……」

 

 少しずつ遊矢は自身のことについて話し始めた。

 

 ペンデュラム次元のこと。

 

 融合次元のこと。

 

 シンクロ次元のこと。

 

 エクシーズ次元のこと。

 

 そしてズァークのこと。

 

 今まで自分の世界で起きたことを簡単に話しつつ、今日自分がズァークを知る黒ずくめの怪しいデュエリストを追ってカードにされそうになった所、この世界に飛ばされたことを説明した。

 

「……ふぅん。にわかには信じがたい話だが、オカルト話に比べればまだ次元移動の方が現実味があるか」

 

 青年はオカルトをあまり信じないタイプのようだが、遊矢の話はどちらかと言えばSFに近い。特に興味を引いたのは、リアルソリッドビジョンによるアクションデュエルだった。

 

「証拠もあることだしな」

 

 そう言って、モニターを出し、先程の遊矢とクロノスのデュエルを再生する。そこには、ペンデュラムからのエクシーズを展開する遊矢が映し出されていた。

 

「やっぱり、ここは融合次元ではないんですか?」

 

 自分の話を聞く青年の反応からうすうす感づいていたが言葉に出さずにはいられなかった。

 

「少なくとも、この世界にズァークなるドラゴンが現れたことはない」

「そう、ですか……」

 

 四つの次元が一つになる所だった大事件が起きていない以上、やはりここは融合次元ではないらしい。

 先攻ドローや禁止カードが使われていたことから変だと思ってはいたが、ここが遊矢の知る世界でないのならそれも納得できる。会場に明日香が居たのは、明日香に似た別人だったのだろう。

 

「ふぅん。ショックを受けている所悪いが、本題はこれからだ」

「本題?」

「ここに貴様を連れてきたのは、入学試験を行っていた海馬ランドのドームの中から未知の召喚反応を検知したからだ」

 

 先程の映像から見ても、青年が言う未知の召喚反応というのはペンデュラム召喚、エクシーズ召喚のことだろう。

 

「先程の貴様の話は実に興味深かった。ペンデュラム召喚にエクシーズ召喚、そしてまだ見ていないがシンクロ召喚という、この世界には存在しない三つの召喚法に、モンスターを実体化させるリアルソリッドビジョンシステム」

「今は装置がないから、リアルソリッドビジョンを展開するには、フィールド魔法《クロス・オーバー》を使わないと駄目ですけどね」

「ふぅん、ますます興味深い。どうせ、行く当てもないのだろう。条件次第で貴様の面倒を見てやってもいい。元の世界に帰る方法も探してやろう」

「えっと、それは有難いんですけど、条件って?」

「一つ目の条件は、このデュエルディスクのデータとリアルソリッドビジョンのデータをわが社に提供すること」

「それは、悪用しないと約束して頂ければ構いませんが……」

「安心しろ。純粋にデュエルモンスターズ発展のために使ってやる。二つ目は、このデュエルディスクに入っているであろう貴様の世界のカードデータの提供だ」

「カード、データ?」

「そうだ。ペンデュラムやエクシーズ、それにシンクロ。これだけのカードデータ、放置しておくには惜しいからな」

「まぁ、返してもらえるなら別に構いませんけど……」

「最後に、この俺とデュエルをしろ」

「えっ?」

「この俺自ら、貴様の世界のデュエルを見定めてやる」

 

 どうやら、青年はアクションデュエルに興味があるらしい。遊矢へデュエルディスクを返すと、自分の物と思わしきデュエルディスクを手に取り、椅子から立ち上がった。

 

「えっと……」

「ふぅん。確か貴様は一応プロだったな。だが、俺も何度か世界の頂点に立ったことがある。退屈はさせん」

「あ、いえ、そうじゃなくて、まだ名前を聞いてなかったと思いまして……」

「………」

 

 遊矢にそう突っ込まれ、青年はまだ自分が名前を名乗っていなかったことにようやく気付いた。

 青年からすれば、この世界で自分の名前を知らない人間などそうはいないが、遊矢はこの世界の人間ではない。いつもの青年なら話の途中で気づいただろう。だが、思った以上に、新しいカードや新システムの存在に舞い上がってしまっていたらしい。

 青年のこういうミスは珍しいことなのか、部屋の奥で控えていた遊矢を連れてきた黒服も驚いた顔をしていた。

 

 少し気まずい空気の中、青年は出口へと歩きながら――

 

「海場コーポレーション社長、海馬瀬人だ」

 

 ――そう、名乗った。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 海馬と名乗った青年に連れられ、遊矢はコーポレーション内にあるデュエルスペースへやってきていた。

 海馬が室内に入って来たことに気づくと、研究員達が一斉に頭を下げる。

 

「兄サマ!」

 

 そんな中、遊矢とそう年齢が変わらなさそうに見える少年が、海馬を兄と呼び、近づいてきた。

 

「モクバか、今からデュエルをする。すぐにデータを取る準備をしろ」

「わかったぜい。でも、対戦相手は?」

「そこにいる榊遊矢だ」

「榊遊矢?」

 

 兄弟の会話に割り込むのも悪いと、後ろで待機していた遊矢にモクバの視線が移る。

 紹介された以上、黙っているのも悪いと思い、遊矢はモクバへ頭を下げた。

 

「あ、えっと榊遊矢です」

「俺は海馬木馬だ。モクバでいいぜ」

「よろしくお願いします、モクバさん」

「モクバ、こいつのことは後で話す。今はデータの準備をしろ」

「了解、兄サマ!」

 

 挨拶もそこそこに、海馬はモクバにそう命令する。

 長年の付き合いから、兄がこのデュエルを楽しみにしているのを理解したモクバは、すぐに奥の部屋へ移動し、急いでデータを取る準備を始めた。

 それを見た海馬もフィールドの奥へ移動し、デュエルディスクを構える。

 

「遊矢。貴様も早く準備をしろ!」

 

 デュエルディスクを構えた海馬からは、赤馬零児に匹敵――いや、それ以上の威圧感を感じた。

 遊矢は改めて、目の前にいる人物が只者じゃないと感じ、気を引きしめていく。

 

『フィールド魔法《クロス・オーバー》』

 

 遊矢は海馬の望むアクションデュエルを行うため、フィールド魔法を発動させた。同時にデュエルスペース内に、いくつか足場のようなものが現れる。

 海馬は一番近くの足場に触れると、確かにソリッドビジョンに実体があることを確認した。

 

「ふぅん。成程な」

 

 視線を上に向けると、空中にカードの塊のようなものが見える。どうやら、あれが先程の話にあったアクションカードらしい。

 面白くなってきた――と、海馬は自身の気分が高揚するのを感じながら遊矢へと振り返った。

 

「戦いの殿堂に集いし、デュエリスト達が!」

 

 本来なら、遊矢が率先して口にするはずの言葉を――海馬が口にする。

 ニヤリと、悪い笑みを浮かべる海馬。

 遊矢も事前に話していたとはいえ、まさか先手を打たれるとは思わなかったようで驚いている。

 

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る!」

 

 だが、向こうが乗ってくれるのなら、これ以上嬉しいことはない。続く口上を遊矢が叫び、海馬もまたそれに応えた。

 

「見よ! これがデュエルの最強進化系!」

「アクショーン!」

「「デュエル!!」」

 

 二人の口上と共に、空中に浮いていたアクションカードがフィールド内に飛び散っていく。

 デッキからカードを引き、手札を確認する。デュエルディスクに表示されたターンプレイヤーは海馬。海馬の先攻だ。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 この世界のルールは先攻ドローありで、カードの制限も元の世界とは違った。

 当然、遊矢からすればかなり不利な状況なのだが、相手の海馬がアクションデュエル初心者ということを考えれば、お互いの条件は五分五分だろう。

 実際、デュエルディスクがエラーを出していない以上、遊矢も特に文句を言うつもりはなかった。

 

「俺は手札を一枚捨て、魔法カード《ドラゴン・目覚めの旋律》を発動! このカードの効果で、デッキから攻撃力3000以上で守備力が2500以下のドラゴン族モンスターを2体まで手札に加える。デッキの《青眼の白龍》2枚を手札に」

「《青眼の白龍》だって!?」

 

 スタンダード次元でも滅多に見ることが出来ない激レアモンスターだった。

 通常モンスターの中でも最高峰のスペックを持ったカード。遊矢も実際のカードを見るのは初めてだった。

 

「さらに俺は、《正義の味方 カイバーマン》を召喚!」

 

 《正義の味方 カイバーマン》

 効果モンスター

 ☆3 光属性 戦士族

 ATK200 DEF700 攻撃表示

 

 ブルーアイズの被り物を被ったヒーローのような人物が、海馬のフィールドに現れる。

 だが、このモンスターは海馬にとって、あくまで本命を出すための前座のようなものだった。

 

「さらに、カイバーマンの効果! このカードを生贄に、伝説を見せてやる」

 

 カイバーマンが笑みを浮かべながら光となっていく。同時に、光の中から龍の姿が現れた。

 

「出でよ! 《青眼の白龍》!!」

 

 《青眼の白龍》

 通常モンスター

 ☆8 光属性 ドラゴン族

 ATK3000 DEF2500 攻撃表示

 

 全身が白い体、青い目の龍。

 まさに名前の通りだが、その美しさは神秘的という言葉では表せないレベルであり、またその力強い咆哮は、遊矢の体をすくませてくる。攻撃力と守備力が高いだけのノーマルモンスターとは思えない迫力だった。

 どうやら、先程のカイバーマンは、自身をリリースすることで、手札のブルーアイズを特殊召喚する効果を持っていたらしい。

 

「俺は、カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

 

 

 海馬 手札3枚 LP4000

 フィールド 《青眼の白龍》

 魔法・罠 リバース1枚

 

 VS

 

 遊矢 手札5枚 LP4000

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

「これが《青眼の白龍》。伝説のモンスターか……」

「ふぅん。次は貴様の番だ。ご自慢のペンデュラムとやらを見せてみろ」

 

 そう言いながら、海馬はフィールドのブルーアイズに近づき、その体に触れる。

 リアルソリッドビジョンによって、実体化した青眼に手を置いた海馬は「悪くない」と言うと、そのままブルーアイズの体に飛び乗った。

 主を背中に乗せ、ブルーアイズが吠える。

 カードとデュエリストがお互いを認めあっているのがそれだけでよくわかった。そんな海馬が遊矢には堪らなく格好良く見える。

 

「俺のターン!」

 

 だが、カードとの絆なら遊矢も負けるつもりはなかった。

 

「俺は、スケール1の《EMゴムゴムートン》とスケール6の《EMギタートル》でペンデュラムスケールをセッティング! これでレベル2から5までのモンスターが同時に召喚可能!」

「来るか、ペンデュラム召喚!」

 

 遊矢のフィールドの両端に、コミカルな羊と亀が現れ、二つの光の柱が出現する。

 

「《EMギタートル》のペンデュラム効果! もう片方のペンデュラムゾーンに『EM』モンスターが置かれたことで、デッキからカードを一枚ドロー!」

「ふん、なかなかに勿体ぶる」

「本番はここからだ。揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚!!」

 

 フィールドに現れた光の数は二つ。

 

「現れろ、俺のモンスター達! レベル4、《EMラクダウン》! 同じくレベル4、《EMアメンボート》!」

 

 《EMラクダウン》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆4 地属性 獣族

 ATK800 DEF1800 守備表示

 

 《EMアメンボート》

 効果モンスター

 ☆4 水属性 昆虫族

 ATK500 DEF1600 守備表示

 

 シルクハットを被ったコミカルなラクダと、ボートの形をしたコミカルなアメンボが光の中から飛び出してきた。

 

「どちらも攻撃力1000以下の低級モンスター。だが、モンスターのレベルはどちらも4!」

「俺は、レベル4のラクダウンとアメンボートでオーバーレイ!」

 

 二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築していく。

 

「――漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙! 今、降臨せよ! エクシーズ召喚! 現れよ、ランク4《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!」

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》

 効果モンスター エクシーズ

 ランク4 闇属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 先程のクロノスとのデュエルで遊矢を勝利へ導いたモンスター。全身真っ黒のドラゴンが、伝説の龍に負けじと咆哮している。

 

「来たか、ダーク・リベリオン!」

 

 ようやく出てきたかと言わんばかりに、海馬が楽しそうな笑みを浮かべた。

 逆に、奥のモニター室でデュエルを見ていたモクバや海場コーポレーションの研究員達は、初めて見るペンデュラムやエクシーズに驚いたような顔をしている。

 

「なんだ、あのモンスターは!?」

「いや、それよりもモンスターを同時に召喚したぞ!」

「これは、先程検知したものと同じ、謎の召喚反応です!」

「データはちゃんと取ってるな?」

「はい!」

「兄サマがわざわざデータを取らせるくらいだから何かあるとは思ったけど、まさかこんなとんでもないものを見ることになるなんて……」

 

 モニター室が騒ぎになっている中、遊矢はダーク・リベリオンの効果を発動させた。

 

「ダーク・リベリオンの効果発動! オーバーレイユニットを二つ取り除き、相手モンスター一体の攻撃力を半分にし、その攻撃力分、ダーク・リベリオンの攻撃力をアップする! トリーズン・ディスチャージ!!」

 

 オーバーレイユニットを全消費すると共に、宝玉が光り、翼の各所がスライドして雷が発生していく。その効果は伝説のブルーアイズですら逃れることは出来ず、攻撃力を吸収していった。

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》 ATK2500→4000

 《青眼の白龍》 ATK3000→1500

 

 これで、ダーク・リベリオンの攻撃力が《青眼の白龍》を上回る。遊矢も、即座にメインフェイズからバトルフェイズへと進めて攻撃態勢に入った。

 

「バトルだ! ダーク・リベリオンで《青眼の白龍》を攻撃! 反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

 

《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》 ATK4000 VS《青眼の白龍》 ATK1500

 

 クロノスの《古代の機械巨人》を屠った、ダーク。リベリオンの咢の一撃が、攻撃力の下がった青眼へと迫っていく。

 

「甘いぞ、遊矢! リバースカードオープン! 速攻魔法、《青き眼の威光》! 手札・デッキから『ブルーアイズ』モンスター1体を墓地へ送り、フィールドの表側表示モンスター1体の攻撃を封じる! デッキから最後の青眼を墓地へ!」

 

 フィールドに、墓地へ送られた《青眼の白龍》の姿が現れ、その目が光り輝く。

 攻撃力の下がった青眼へ攻撃を仕掛けようとしたダーク・リベリオンは、その威光に驚いたように攻撃をキャンセルしてしまった。

 

「ダーク・リベリオン!?」

「さらに、この効果で攻撃を封じたモンスターは、フィールドに表側表示で存在する限り攻撃できない!」

「攻撃そのものを封じる効果……!?」

「ふぅん。そのモンスターの効果は先程のデュエルで既に確認済みだ。一度見ている以上、同じ効果はそう簡単には通用せんぞ!」

 

 先程、海馬は「退屈はさせない」と言ったが、退屈させない所ではなかった。

 この一連の流れで、遊矢は海馬が高い次元のデュエリストであることを感じ取り、油断はできないと冷や汗を流す。

 

「俺は、リバースカードを一枚セットしてターンエンド」

 

 

 遊矢 手札2枚 LP4000

 フィールド ダーク・リベリオン

 魔法・罠 リバース1枚

 ペンデュラム ゴムゴムートン、ギタートル

 

 VS

 

 海馬 手札3枚 LP4000

 フィールド 《青眼の白龍》

 魔法・罠 なし

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 これで海馬の手札は四枚。だが、フィールドのブルーアイズはダーク・リベリオンの効果で攻撃力が半分になっている。

 対する遊矢のダーク・リベリオンは、攻撃こそ封じられたが攻撃力は4000。そう簡単に攻略出来るものではないはずだ。

 

「などと、考えているのなら大間違いだ! 魔法カード、《滅びの爆裂疾風弾》発動! 自分フィールドに《青眼の白龍》が存在する時、相手フィールドの全てのモンスターを破壊する!」

「何だって!?」

 

 ブルーアイズの口元に光が収束し、その爆裂疾風弾がダーク・リベリオンを破壊する。

 簡単にダーク・リベリオンを破壊され、遊矢の顔が苦し気に歪んだ。戦闘破壊だったら、ゴムゴムートンのペンデュラム効果で一度だけ防ぐことが出来たが、効果破壊はどうしようもない。

 

「ただし、この効果を使用したターン、《青眼の白龍》は攻撃出来ない」

 

 攻撃が出来ないなら一安心――とは言えなかった。

 海馬のターンはまだ始まったばかりなのだ。まだメインフェイズは続いている。ここからどう動いてくるか、遊矢もすぐに動けるように体に力を入れていた。

 

「俺は魔法カード、《黙する死者》を発動! 《青き眼の威光》の効果で墓地へ送った通常モンスター、《青眼の白龍》を守備表示で特殊召喚!」

 

 海馬のフィールドに二体目のブルーアイズが特殊召喚される。

 しかし、このターンは《滅びの爆裂疾風弾》の効果で《青眼の白龍》は攻撃が出来ない。否、仮に次のターンになっても《黙する死者》の効果で特殊召喚されたモンスターは攻撃をすることは出来なかった。

 攻撃のできないモンスターをわざわざ特殊召喚したことに、遊矢は何か嫌なものを感じ取る。

 

 ――その予感は、すぐに的中した。

 

「そして、俺は二体のブルーアイズを墓地へ送り、融合デッキから《青眼の双爆裂龍》を特殊召喚!」

 

 《青眼の双爆裂龍》

 効果モンスター 融合

 ☆10 光属性 ドラゴン族

 ATK3000 DEF2500 攻撃表示

 

 二体が一つとなり、双頭の龍となったブルーアイズがフィールドに降臨する。

 

「ブルーアイズの融合モンスターだって!?」

「フハハハハハ! 《青眼の双爆裂龍》はフィールドの青眼二体を墓地へ送ることで、《融合》の魔法カードなしで融合召喚できるのだ!」

「っ!」

 

 当然、《青眼の白龍》ではないので、《青眼の双爆裂龍》は攻撃することが出来た。

 対する遊矢のフィールドはがら空き――この攻撃を通せば、3000の大ダメージを受ける。遊矢は靴に仕込んであるローラーを起動させると、アクションカードを探すため、フィールド内を走り出した。

 

「バトルだ! 《青眼の双爆裂龍》で遊矢にダイレクトアタック! 撃滅のツインバースト!!」

 

 《青眼の双爆裂龍》 ATK3000 VS遊矢 LP4000

 

 双頭の龍の口から放たれる破滅の光線が、走っている遊矢に迫っていく。しかし、直撃する直前、遊矢は目的の物を見つけることが出来た。

 

「よし! アクションマジック、《回避》! 相手の攻撃を一度だけ無効にする!」

「なにっ、アクションカードは相手ターンでも発動できるのか!?」

 

 遊矢がギリギリで使った《回避》の効果で、その名の通りツインバーストの一撃は逸れて直撃を回避する。

 デュエル中にカードを拾って使うと聞いていた海馬だが、まさか相手ターンに手札から発動できるとは思っていなかったのか、驚きを隠せないでいた。

 流石にデュエルの最終進化系というだけのことはあって、こちらの予想を超える展開に、海馬の表情には自然と笑みが浮かんだ。

 長らく経営者として実戦から離れていたからか、自分の中のデュエリストとしての本能が徐々に呼び覚まされていくのを感じる。だが、その感覚も決して悪いものではなかった。

 

「面白い、俺はこれでターンエンドだ」

 

 

 海馬 手札2枚 LP4000

 フィールド 双爆裂龍

 魔法・罠 なし

 

 VS

 

 遊矢 手札2枚 LP4000

 フィールド なし

 魔法・罠 リバース1枚

 ペンデュラム ゴムゴムートン、ギタートル

 

 

「俺のターン!」

 

 ターンが変わり、遊矢がデッキからカードをドローする。間一髪で攻撃を回避したが、危機的状況であることに変わりはない。

 海馬のフィールドには、依然として攻撃力3000の大型モンスターがいる。簡単に攻略できるような生易しい状況ではなかった。

 

「俺は、罠カード、《ペンデュラム・バック》を発動! 自分のペンデュラムゾーンにカードが二枚存在する時、そのペンデュラムスケールでペンデュラム召喚可能な自分の墓地のモンスター二体を手札に加える! アメンボートとラクダウンを手札に!」

「ふぅん。またペンデュラム召喚か」

「さらに、魔法カード、《EMキャスト・チェンジ》を発動! 手札の『EM』モンスターを任意の数だけ相手に見せ、デッキに戻してシャッフル。その後、デッキに戻した数+一枚のカードをデッキからドローする! 俺は今戻した、アメンボートとラクダウンをデッキに戻し、三枚ドロー!」

 

 明らかに苦しい状況。このドローに、遊矢の全てがかかっている。

 

「よし! 俺は、チューナーモンスター、《EMオッドアイズ・シンクロン》を通常召喚!」

 

 《EMオッドアイズ・シンクロン》

 効果モンスター チューナー ペンデュラム

 ☆2 闇属性 魔法使い族

 ATK200 DEF600 攻撃表示

 

 大きな星の飾られた白いシルクハットを被り、大きなオッドアイを持つ、全身が丸い二頭身のコミカルなモンスターが遊矢のフィールドに現れた。

 

「チューナーモンスター、だと?」

「さらに、《EMオッドアイズ・シンクロン》の効果! 一ターンに一度、自分のペンデュラムゾーンのカードを一枚選択し、効果を無効にして特殊召喚する! 来い、ゴムゴムートン!」

 

 《EMゴムゴムートン》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆5 地属性 獣族

 ATK900 DEF2400 守備表示

 

 オッドアイズ・シンクロンの効果で、ペンデュラムゾーンのゴムゴムートンがフィールドに飛び出してくる。

 

「そして、オッドアイズ・シンクロンの効果で、特殊召喚したモンスター1体とこのカードでシンクロ召喚する!」

「遂に来るか、シンクロ召喚!」

「俺は、レベル5の《EMゴムゴムートン》に、レベル2の《EMオッドアイズ・シンクロン》をチューニング!」

 

 ゴムゴムートンがその姿を五つの星に変え、オッドアイズ・シンクロンが二つの光の環となり、五つの星を導いていく。

 

「――その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て! シンクロ召喚!!」

 

 エクストラデッキから呼び出すのは、ダーク・リベリオンと同じく、遊矢の切り札の一体。

 光の環に導かれた星が光へと変わり、天空から光の柱が降り注ぐと、中から新たなモンスターがその姿を現した。

 

「現れろ、レベル7! 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》!!」

 

 《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》

 効果モンスター シンクロ

 ☆7 風属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 ダーク・リベリオンとは対照的に、全身が真っ白なドラゴンが咆哮を上げる。青眼が神秘的な美しさなら、クリアウィングは輝くような美しさだった。

 

「レベル7のモンスター……確か、先程墓地へ送られたオッドアイズ・シンクロンとゴムゴムートンのレベルの合計も7」

「ご名答! シンクロ召喚はチューナーとそれ以外のモンスターを墓地へ送ることで、そのモンスターの合計のレベルを持つモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する召喚法です!」

「成程、この召喚法もまたエクシーズ召喚と同じく、低級モンスターに利用価値を与える。これまでのデュエルモンスターズの常識を覆す召喚法だ」

 

 この世界のデュエルモンスターズの主流は、高攻撃力モンスターによるビートダウン。

 そのせいで、ステータスの低いカードは使われることがなく扱いも酷い。

 海馬も攻撃力の高いモンスターで戦うパワーデッキを使っているが、これまでの戦いで低級モンスターもまた利用価値があることを理解している。カイバーマンがその一例だった。

 しかし、もしこの世界でエクシーズ召喚やシンクロ召喚を流行らせることが出来れば、今まで日が当たらなかったカード達もまた使われる日が来る。このデュエルを通じて、海馬はそれを確信した。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・遊矢が海馬に拾われた。
 代わりに、シンクロ、エクシーズ、ペンデュラムのカードデータ、リアルソリッドビジョンのデータを提供している。これがGXの時代にシンクロ、エクシーズ、ペンデュラムが爆誕するきっかけとなった。

・遊矢と海馬がデュエルすることになった。
 困ったらとりあえずデュエルすればなんでも解決する。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。