気が付けば、季節は冬となっていた。
デュエルアカデミアもそろそろ冬休みということで、各寮生の大半が本土にある実家へと戻っていく。しかし、遊矢はこの世界の人間ではなく、KCにもI2社にも特に戻る用事もないということで、デュエルアカデミアに残留する組だった。
どうやら、十代や翔、隼人も居残り組のようで、一緒に冬休みを過ごすことになりそうである。
そんなある日のこと、寮監督の大徳寺を含めて、いつものようにオシリスレッド寮で十代達とデュエルをしながらのんびり餅を食べていると、いきなりオベリスクブルーの生徒が、「サイコ・ショッカーが僕を追いかけてくるぅ!」という、謎の言葉を発しながらドアをぶち破って倒れてきた。
大徳寺の姿を見つけると助けを求めてくる。
聞けば、この高寺という生徒は、オベリスクブルーのオカルト研究グループに所属しているとのことで、ウィジャ盤を使った降霊術でサイコ・ショッカーの精霊を呼び出そうとしたらしい。
ウィジャ盤が三体の生贄を捧げろと文字を示し、それをカードの生贄だと勘違いした高寺達はそれを快諾してしまったようで、結果、研究グループの仲間の向田と井坂が順番に行方不明になってしまったという。
「いけませんね。デュエルの精霊と心霊学を一緒にしては駄目なんだニャ……」
と、大徳寺が高寺を窘めるが、そもそも遊矢はデュエルモンスターズの精霊というものに懐疑的だった。
正確には、全てのカードには意思があると考えている。だから、特別に精霊がいるとは思っていないのだ。
この意識は、元の世界でリアルソリッドビジョンが普及してしまった弊害だろう。リアルソリッドビジョンによって、遊矢の世界ではカード達は自由に動くことのできる体を得てしまった。故に精霊が見えなくとも、カード達は実体化出来るし、自分の意思を伝えてデュエリストと心を通わせることが出来る。
とはいえ、実際にそれが出来るデュエリストはかなり少ないのだが、遊矢は当然のように自分のカード達と心を通わせていた。だからこそ、この強さを持っている。だが、そのせいで、精霊のいるいない、見える見えないという感覚が良くわかっていなかった。
だから、遊矢はこの日、初めて見ることになる。
人間に危害を加える精霊の存在を。
それは突然のことだった。急に電気が落ちて暗くなったかと思ったら、服と帽子で自分の顔を隠したサイコ・ショッカーらしき精霊が高寺を攫って行ったのだ。
これには遊矢も驚きである。一生懸命走って逃げる姿はシュール過ぎて、通常なら笑う場面なのかもしれないが、人生で初めて精霊を見た遊矢は何も反応できなかった。
十代達が慌ててサイコ・ショッカーを追いかけていくので、流れで遊矢もついて行ったが、まさか本当にデュエルモンスターズの精霊が存在して人間を襲っていることに頭が追い付いていない。
発電所の近くで追いついた十代が、サイコ・ショッカーにデュエルを挑み、自分が勝ったらオカルト研究グループの三人を解放。負けたら自分が生贄になるという条件を叩きつけ、それをサイコ・ショッカーが快諾した所で、遊矢もようやくハッと意識を取り戻した。
「待て、十代。流石に危険だ、このデュエルは俺がやる」
「大丈夫だって。あんな奴に負けてたまるかよ」
「SALの時だって結構危うかっただろ。今回は負けましたじゃ済まないんだぞ」
「あのデュエルだって勝ったじゃんか! 今回も負けねーよ!」
遊矢もこれが十代だけの問題なら身を引いたが、このデュエルには捕まった二人の生徒の命もかかっている。
十代は確かに強いが、まだ強さにムラがあった。負けたら生贄にされてしまうようなデュエルをさせるには少し心許ない。
『なら、二人でかかってくるといい。こちらも二人で相手をしよう』
しかし、揉める二人を見ながら、サイコ・ショッカーがそう提案してきた。同時に、サイコ・ショッカーは発電所のエネルギーを利用して二体に分裂する。
『『ただし、負けたらお前も生贄になるのだ』』
どうやら、十代だけではなく、遊矢もサイコ・ショッカーのお眼鏡にかなったらしい。
「タッグデュエルってことか……」
「へっ、俺達にタッグを挑むなんて命知らずな奴だな」
遊矢としては十代を巻き込むこと自体があまり良くないが、十代自身は既にやる気満々だ。
十代もこうなったら引かないだろう。もう説得するのは難しいと判断し、タッグデュエルになっただけ良しと考えた。
『『では行くぞ』』
「『「『デュエル!!』」』」
どうやら、デュエルの精霊はエネルギーをカードとして具現化するようで、サイコ・ショッカー達の回りに五枚のカードが浮かんでいる。
デュエルディスクが示す先攻は、サイコ・ショッカーだ。二体居てわかりにくいので、以後は先攻がA、次がBで分けていくことにする。
『私のターン。魔法カード、《宇宙の法則》を発動』
ドローと同時に、宙に浮くカードが増え、選択したカードが表になって前に出て来た。
『このカードの効果で、相手は自身の手札、デッキから罠カードを一枚選んでセットできる。セットした場合、私はデッキから《人造人間―サイコ・ショッカー》を一体特殊召喚する。セットしなかった場合、私は《人造人間―サイコ・ショッカー》一体、又はそのカード名が記されたモンスター一体をデッキから手札に加える。さぁ、どうする?』
このタッグのルールでは、最初のターンで相手のターンプレイヤーとなるのは、次のターンプレイヤーとなる。よって、選ぶのは次のターンプレイヤーである遊矢だった。
しかし、罠カードをセットすれば、上級モンスターのサイコ・ショッカーの特殊召喚を許してしまう上、その効果で罠まで封じられるので、実質的に選択肢はないも同じだ。
「俺は、罠カードをセットしない」
『では、《宇宙の法則》の効果で、私は《魔鏡導士サイコ・バウンダー》を手札に加える』
選択されたカードがサイコ・ショッカーAの手札に加わる。
『さらに私は《魔鏡導士サイコ・バウンダー》をそのまま通常召喚』
《魔鏡導士サイコ・バウンダー》
効果モンスター
☆4 光属性 機械族
ATK1700 DEF1000 攻撃表示
体が丸い鏡で出来た魔導師がフィールドに現れる。似たようなモンスターで、《魔鏡導士リフレクト・バウンダー》というモンスターは知っていたが、このカードは初めて見るモンスターだった。
『サイコ・バウンダーの効果発動。このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、《人造人間―サイコ・ショッカー》のカード名が記された魔法・罠カードを一枚手札に加える。装備魔法カード、《電脳増幅器》を手札に加える』
サーチを効果的に使って、手札を整えていく。
遊矢はサイコ・ショッカーの特殊召喚を忌避したが、この調子ではいつサイコ・ショッカーが出てきてもおかしくなかった。
『そして、速攻魔法、《サイキック・ウェーブ》を発動。自分フィールドに機械族モンスターが存在する時、手札・デッキから《人造人間―サイコ・ショッカー》を墓地へ送って600ポイントのダメージを相手に与える』
「くっ!」
遊矢 LP8000→7400
デッキからサイコ・ショッカーを墓地に送って、効果を発動していく。
ダメージ的には大したことないが、遊矢の受けた衝撃は大きかった。普通のデュエルよりも受けるダメージや痛みがかなり強い。
「遊矢! 大丈夫か!?」
「ああ! けど、普通のデュエルよりもダメージが大きい。これも、精霊の力って奴か……!」
十代と遊矢という極上のパワーを持つ二人が揃っていることもあって、現在この場所は精霊が力を発揮しやすくなっている。
ダメージが大きいのも、サイコ・ショッカーが二人に分裂しているのも、その力を利用しているからだろう。言ってしまえば、準闇のデュエルと言った状態だった。
『私は手札から魔法カード、《死者蘇生》を発動。墓地の私、サイコ・ショッカーを特殊召喚する』
《人造人間―サイコ・ショッカー》
効果モンスター
☆6 闇属性 機械族
ATK2400 DEF1500 攻撃表示
サイコ・ショッカーが特殊召喚されると同時に、プレイヤーとしてのサイコ・ショッカーと一体化し、フィールドに実体化していく。
『さらに手札に加えた装備魔法カード、《電脳増幅器》を私自身に装備。これで、私のお互いの罠カードが無効化される効果は、相手の罠カードを無効化するという効果に変更になった』
「なんだって!?」
「つまり、罠を封じられるのはこっちだけってことか……!」
『ただし、この《電脳増幅器》が破壊された時、私も破壊される。リバースカードを二枚伏せてターンエンドだ』
サイコ・ショッカーA 手札1枚 LP8000
フィールド サイコ・バウンダー、サイコ・ショッカー
魔法・罠 《電脳増幅器》、リバース2枚
VS
遊矢 手札5枚 LP7400
フィールド なし
魔法・罠 なし
「俺のターン!」
罠が封じられたのは痛いが、ペンデュラムは魔法を止めなければ止められない。
こんな危険なデュエルは一刻も早く終わらせる――と、遊矢は急いで相手を倒すことを決めた。
「俺はスケール6の《EMギタートル》と、同じくスケール6の《EMリザードロー》でペンデュラムスケールをセッティング!」
『ペンデュラム――』
『――スケール!?』
突如として、コミカルな亀とトカゲによって、フィールドの両端に二つの光の柱が並び立ち、サイコ・ショッカー達が困惑したような声を上げる。
サイコ・ショッカーはこの世界のデュエルの精霊だ。
当然、遊矢の世界で生まれたペンデュラム召喚など知っているはずがないが、人間の命を狙っている奴に詳しい説明など不要とばかりに、遊矢はそのままデュエルを進めていく。
「ギタートルのペンデュラム効果発動! もう片方のペンデュラムゾーンに『EM』カードが発動した場合、デッキからカードを一枚ドローする!」
「けど、同じスケール二つじゃペンデュラム召喚は……」
「大丈夫だよ、十代。俺は、リザードローのペンデュラム効果を発動! もう片方のペンデュラムゾーンに『EM』カードが存在する場合、自身を破壊してカードを一枚ドローする!」
合計二枚のドロー、さらにこれでペンデュラムゾーンに空きが出来た。
「俺は新たにスケール1の《EMモンキーボード》でペンデュラムスケールを再セッティング!」
歯がキーカードになっているコミカルな猿が、リザードローに変わってペンデュラムゾーンに出現し、再びペンデュラムスケールを完成させていく。
「モンキーボードのペンデュラム効果! デッキからレベル4以下のEMモンスターを手札に加える! 俺が加えるのは、《EMペンデュラム・マジシャン》!」
「よし、これでレベル2から5までのモンスターを同時に召喚できるぜ!」
「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚! 現れろ、俺のモンスター達!!」
空から三つの光が降り注ぎ、モンスターを特殊召喚していく。
「まずは、レベル3、《EMウィム・ウィッチ》! レベル4、《EMペンデュラム・マジシャン》! 同じくレベル4、《EMプラスタートル》! そしてEXデッキから、レベル3、《EMリザードロー》!」
《EMウィム・ウィッチ》
効果モンスター ペンデュラム
☆3 闇属性 魔法使い族
ATK800 DEF800 守備表示
《EMペンデュラム・マジシャン》
効果モンスター ペンデュラム
☆4 地属性 魔法使い族
ATK1500 DEF800 攻撃表示
《EM プラスタートル》
効果モンスター
☆4 水属性 水族
ATK100 DEF1800 守備表示
《EM リザードロー》
効果モンスター ペンデュラム
☆3 地属性 爬虫類族
ATK1200 DEF600 守備表示
出てきたモンスターはどれもサイコ・ショッカーより攻撃力が低いということで、相手も驚きはしたが警戒はしていない。
しかし、これで終わる遊矢ではなかった。
「ペンデュラム・マジシャンの効果! このカードが特殊召喚に成功した時、自分フィールドのカードを二枚まで破壊し、その数だけデッキからペンデュラム・マジシャン以外の『EM』モンスターを手札に加える! 俺は、モンキーボードとペンデュラム・マジシャン自身を破壊して、デッキから《EMレインゴート》と《EMドクロバット・ジョーカー》を手札に加える!」
『これだけモンスターを特殊召喚して……』
『手札が殆ど減っていないとは……』
「ウィム・ウィッチのモンスター効果! ペンデュラムモンスターをアドバンス召喚する時、このカードは二体分のリリースに出来る! 俺は、ウィム・ウィッチをリリースして、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をアドバンス召喚!」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》
効果モンスター ペンデュラム
☆7 闇属性 ドラゴン族
ATK2500 DEF2000 攻撃表示
まだ遊矢には通常召喚権が残っていた。相棒のオッドアイズが召喚され、サイコ・ショッカーを威圧するように咆哮していく。
「さらに、プラスタートルのモンスター効果発動! 表側表示モンスターを二体まで対象とし、そのモンスターのレベルを一つ上げる! 俺は、リザードローのレベルを3から4にする!」
《EMリザードロー》 ☆3→4
「そして、俺は、レベル4となったリザードローと、レベル4のプラスタートルでオーバーレイ! 漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙! 今、降臨せよ! エクシーズ召喚!」
『『エクシーズ召喚だと!?』』
ペンデュラムに続くエクシーズ――これもまたサイコ・ショッカーの知らぬ召喚法だった。
「現れろ、ランク4! 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!」
《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》
効果モンスター エクシーズ
ランク4 闇属性 ドラゴン族
ATK2500 DEF2000 攻撃表示
オッドアイズの隣に並ぶように、降り立ちダーク・リベリオンが声を上げる。
これで攻撃力2500のモンスターが二体並び、遊矢の方が有利な状況になった。
「ダーク・リベリオン効果発動! オーバーレイユニットを二つ使い、相手モンスター一体の攻撃力を半分にし、その攻撃力をダーク・リベリオンの攻撃力に加える! トリーズン・ディスチャージ!!」
『速攻魔法、《不朽の特殊合金》を発動! 自分フィールドに私が存在する場合、私のフィールドの機械族モンスターを対象とする魔法・罠・効果モンスターの効果を無効にする!』
トリーズン・ディスチャージの雷によって攻撃力を吸収しようとするも、サイコ・ショッカーの表面が輝くことで反射していく。
ダーク・リベリオンの効果は相手を対象に取る効果だ。よって、効果は無効となり、ダーク・リベリオンとサイコ・ショッカーの攻撃力は変化せずそのままとなる。
「なら、バトルだ! 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》でサイコ・ショッカーに攻撃! 螺旋のストライクバースト!」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》 ATK2500 VS《人造人間―サイコ・ショッカー》 ATK2400
命を懸けているということもあって、遊矢も若干焦っているのか、珍しく冷静さを欠いたようにオッドアイズに攻撃指示を出していく。
だが、そんな単調な攻撃が通用する相手ではなかった。
『罠カード、《攻撃誘導アーマー》! 自分、又は相手モンスターの攻撃宣言時、攻撃モンスター以外の自分、又は相手フィールドのモンスターに攻撃対象を移し替えてダメージ計算を行う。私は、ダーク・リベリオンを選択』
「なにっ!?」
罠カードによってダーク・リベリオンに派手なアーマーが強制装着され、オッドアイズが釣られるように攻撃対象をダーク・リベリオンに変更する。
オッドアイズの赤い螺旋が鋭く曲がって、ダーク・リベリオンへ向かって行った。対するダーク・リベリオンもまたやられまいと反撃し、二体のドラゴンが衝撃で爆散していく。
「遊矢!?」
「くっ、大丈夫だ! けど、まさか同士討ちさせられるとは……俺は、リバースカードを二枚セットしてターンエンド」
遊矢 手札2枚 LP7400
フィールド なし
魔法・罠 リバース2枚
ペンデュラム ギタートル
VS
サイコ・ショッカーA 手札1枚 LP8000
フィールド サイコ・バウンダー、サイコ・ショッカー
魔法・罠 《電脳増幅器》
ターンが切り替わり、サイコ・ショッカーBのターンとなる。状況が有利と言うことで、雰囲気は余裕綽々だった。
『私のターン、ドロー。手札から《サイコ・ギガサイバー》の効果を発動する。相手フィールドの魔法・罠カードの数が自分フィールドの魔法・罠カードの数よりも多い場合、このカードは手札から特殊召喚できる。私のフィールドの魔法・罠カードは《電脳増幅器》のみ』
「……俺のフィールドには二枚のリバースカードと、ペンデュラムのギタートル」
『成程、やはりそのペンデュラムというのは魔法カード扱いで問題ないのか。確証が得られてよかったよ。では、《サイコ・ギガサイバー》を特殊召喚』
《サイコ・ギガサイバー》
効果モンスター
☆6 闇属性 機械族
ATK2200 DEF1200 攻撃表示
金色のアーマーを着込んだモンスターがフィールドに現れる。
先程のサイコ・バウンダーの時もそうだったが、よく似た《魔導ギガサイバー》というモンスターは知っているが、このモンスターは初めて見るモンスターだった。
『さらに《人造人間―サイコ・ジャッカー》を通常召喚』
《人造人間―サイコ・ジャッカー》
効果モンスター
☆4 闇属性 機械族
ATK800 DEF2000 攻撃表示
続けて、サイコ・ショッカーに似たドレッドヘアーのモンスターが現れる。髪の先端は端子になっており、不気味にうようよと動いていた。
『サイコ・ジャッカーはフィールド・墓地に存在する限り、サイコ・ショッカーとして扱う。さらに、効果を発動。このカードをリリースし、デッキからサイコ・ジャッカー以外の『人造人間』モンスターを手札に加える。私が加えるのは、当然《人造人間―サイコ・ショッカー》』
まだフィールドのサイコ・ショッカーすら処理できていないというのに、早くも二体目をサーチされてしまった。
このデュエル――まず罠カードは使えないと考えた方がいいかもしれないと、遊矢が苦しそうな表情を浮かべる。
『さらに、相手の魔法・罠ゾーンにセットされたカードがある場合、それらを全て確認し、その中の罠カードの数まで手札から『人造人間』モンスターを特殊召喚できる』
「なんだって!?」
『さぁ、リバースカードを見せるのだ』
「くっ!」
オートでカードが表向きにされていく。
遊矢がセットしていたのは、速攻魔法《超カバーカーニバル》と罠カード《ダメージ・ダイエット》。後者はブラフ兼十代がサイコ・ショッカーを処理した時に使おうと思っていたのだろう。
しかし、今回その考えが裏目に出てしまった。
『罠カードが一枚存在することで、私をフィールドに特殊召喚する』
《人造人間―サイコ・ショッカー》
効果モンスター
☆6 闇属性 機械族
ATK2400 DEF1500 攻撃表示
二体目のサイコ・ショッカーが現れ、再びプレイヤーとしてのサイコ・ショッカーと一体化していく。
「なら、こちらも速攻魔法、《超カバーカーニバル》を発動! 自分のデッキ・手札・墓地から《EM ディスカバー・ヒッポ》を特殊召喚し、その後自分のフィールドにカバートークンを可能な限り特殊召喚できる! 来い、ヒッポ!」
デッキからヒッポを守備表示で特殊召喚し、追加効果でカバートークンを可能な限り特殊召喚していく。
これで、カバートークンを含めた五体のモンスターを倒さないと、遊矢には戦闘ダメージを与えることが出来なくなった。
《EM ディスカバー・ヒッポ》
効果モンスター
☆3 地属性 獣族
ATK800 DEF800 守備表示
《カバートークン》×4
☆1 地属性 獣族
ATK0 DEF0 守備表示
ヒッポを含めた五体のカバが、フィールドで踊りまくっている。
『面倒な。ならば、手札の《脅威の人造人間―サイコ・ショッカー》の効果発動。自分、又は相手フィールド・墓地に罠カードが存在する時、このカードを手札から特殊召喚できる』
サイコ・ショッカー達の墓地には、先程使った《攻撃誘導アーマー》があるため、条件は問題なくクリアしていた。
《脅威の人造人間―サイコ・ショッカー》
効果モンスター
☆7 闇属性 機械族
ATK2400 DEF1500 攻撃表示
見た目はサイコ・ショッカーと全く同じモンスターが特殊召喚されていく。
しかし、レベル7であり、効果も本家と違い、罠カードを封じる効果ではなかった。
『ただし、この方法で特殊召喚したこのカードのレベルはターン終了時まで6になる』
《脅威の人造人間―サイコ・ショッカー》 ☆7→6
これで、サイコ・ショッカーのフィールドには五体のモンスターが並んだ。
『では、バトルフェイズだ』
「《超カバーカーニバル》の効果で、カバートークンを特殊召喚したターン、ターン終了時までお前はカバートークン以外のモンスターを攻撃できない!」
『ならば、カバートークン四体を圧殺する! サイコ・ショッカー三体とギガサイバーで、カバートークンへ攻撃!』
《人造人間―サイコ・ショッカー》 ATK2400 VSカバートークン DEF0
《人造人間―サイコ・ショッカー》 ATK2400 VSカバートークン DEF0
《脅威の人造人間―サイコ・ショッカー》 ATK2400 VSカバートークン DEF0
《サイコ・ギガサイバー》 ATK2200 VSカバートークン DEF0
四体の攻撃力2000モンスターの攻撃で、カバートークンが瞬殺されていく。
唯一残ったヒッポは破壊されないとわかっているが、急に仲間がいなくなったことであわあわと困った様子を見せていた。
「くっ、けどこれでもうお前は攻撃が出来ない!」
『メインフェイズ2へ移行……そういえば、先程は面白いものを見せてくれたな。エクシーズ召喚だったか』
「エクシーズ……?」
『私達の仲間の中で謎の存在が一つあったのだが、その謎が解けたよ。あれはエクシーズモンスターだったのだな』
「……まさか!?」
『私は、レベル6の私とサイコ・ギガサイバーでオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚! 出でよ、ランク6、《人造人間―サイコ・レイヤー》!』
《人造人間―サイコ・レイヤー》
効果モンスター エクシーズ
ランク6 闇属性 機械族
ATK2400 DEF1500 攻撃表示
見よう見真似という感じで、エクシーズ召喚を行い、オーバーレイユニットを二つ纏ったサイコ・ショッカーに似たモンスターが現れる。
見た目はそこまで大きく変わった様子はないが、服の肩の部分が二重になって大きくなっており、全身に稲妻を迸らせているように見えた。
『フフフ、さらに私を素材としたことで、お互いの罠を無効にする効果は消え、《電脳増幅器》を付けた私の効果のみが有効となる』
また、自身を素材としたことで、サイコ・ショッカーBの意識がサイコ・レイヤーへと憑依したようで、サイコ・レイヤーの口から言葉が発せられている。
『私はリバースカードを二枚セットし、永続魔法『エクトプラズマー』を発動。お互いのプレイヤーは、それぞれのエンドフェイズに一度だけフィールド上の表側表示モンスター一体をリリースすることで、そのモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与える。私はサイコ・バウンダーをリリースして、850のダメージを与える』
「手札の《EMレインゴート》の効果! このカードを墓地に送り、効果ダメージをゼロにする!」
『まさか、読んでいたのか!?』
「モンスターの攻撃を封じれば、効果ダメージを狙ってくるだろうとは思ってたよ。お前が単純で助かった!」
サイコ・バウンダーが生命エネルギーに変換され突撃していくが、遊矢も効果ダメージ対策はしっかりしていた。
『くっ、さらにこのエンドフェイズ、《脅威の人造人間―サイコ・ショッカー》のレベルも元に戻る』
《脅威の人造人間―サイコ・ショッカー》 ☆6→7
『これでターンエンドだ』
サイコ・ショッカーB 手札0枚 LP8000
フィールド サイコ・ショッカー、脅威ショッカー、サイコ・レイヤー
魔法・罠 《電脳増幅器》、《エクトプラズマー》、リバース2枚
VS
遊矢 手札1枚 LP7400
フィールド ヒッポ
魔法・罠 リバース1枚
ペンデュラム ギタートル
厳しい状況だったが何とか凌いだ。
しかし、十代に大きい口を叩いておきながら何たる体たらく。何をしているんだ俺は――と、遊矢が無言で自分の失態を嘆く中、向こうのエンド宣言を聞いた十代が遊矢の方へ寄ってきた。
「あのさ、遊矢。ずっと難しい顔してるけど、そんなに焦んなくてもいいんじゃないか?」
「……焦る?」
「ああ、俺の目にはそう見えるぜ。確かに、あのサイコ・ショッカー達は想像以上に強い。デュエル前は俺もちょっと調子に乗ってたし、それが不安にさせたのかもしれないけど、普段のお前はもっと余裕があるじゃんか。何か、らしくないぜ」
そう言われて、初めて自分が焦っていたことを自覚する遊矢。
人の命がかかったデュエルということで、知らぬうちに気負い過ぎていたのかもしれない。十代くらい――とまではいかなくても、もっと余裕を持たないと、いざという時に対応できなくなる。
「……そうだな。ちょっと焦ってたかも」
「このデュエルは俺もいるんだ。大船に乗ったつもりでいろよ」
「言ったな? ちゃんと、俺のターンまで回してくれよ?」
「へへっ、任せとけって!」
普段の調子を取り戻した遊矢と十代が、改めてサイコ・ショッカー達に目線を向ける。
その、先程までとは違う眼力の強さに、サイコ・ショッカー達も内心で寒気のようなものを感じた。強い力を持つ故に生贄として選んだが、それはそれだけの実力を持つ証拠でもある。
このデュエル――まだ決まらない。サイコ・ショッカーは無意識のうちにそんなことを感じ取っていた。
原作との変化点。
・#14『VSサイコショッカー!?』より、十代と遊矢のタッグデュエルになった。
遊矢も精霊は見えないが、強い力を持っているので、サイコショッカーの標的となった。
・十代が遊矢を落ち着かせた。
ARCVでも割と命がけのデュエルはしてきたが、やはりプレッシャーはかかっている。十代のおかげで余裕を取り戻せた。こういうやり取りがすこなんだ。
・この時代のショッカーは制限カード!
危うく、三体くらい並べる所だった。危ない!