榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

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#022 『デュエルキング 武藤遊戯(偽)』

 結局、目が覚めたのは、朝になってからのことだった。サイコ・ショッカー達とのデュエルの後で意識を失ってしまっていたのか、発電所で転がるように全員眠っていたらしい。

 一番に起きたのは遊矢、続いて十代が目を覚まし、その時の物音で応援組の翔、隼人、大徳寺も順番に目を覚ましていく。どうやら、死んだわけでは無さそうで一安心だった。

 

 最初は夢かとも思ったが、全員が同じ夢を見る訳もなく、あれは現実だったと認識している。

 よく見ると、サイコ・ショッカー達がいた方に、オカルト研究グループの高寺と行方不明だった向田と井坂と思われる生徒も倒れていた。大徳寺曰く、意識を失っているだけということで、すぐに彼らを保健室へと運んでいく。

 

 そんな中、遊矢に一つの変化が起きていた。

 

 それは、気絶したオカルト研究グループの生徒達を運んでいる途中のこと、十代の近くに白い羽を生やした茶色い毛玉のようなモンスターが居ることに気付いたのだ。

 しかし、翔や大徳寺には見えないようで首を傾げられる。十代が、「遊矢、ハネクリボーが見えるのか?」と、自分の隣にいる《ハネクリボー》を指さしたことで、それがデュエルモンスターズの精霊で、遊矢もそれが視認できるようになったのがわかった。

 原因はおそらくサイコ・ショッカーとのデュエルだろう。生贄として半身を持っていかれかけたせいか、それとも最後の謎の光のせいかはわからないが、あのデュエルがきっかけで遊矢にもデュエルモンスターズの精霊が見えるようになったのだ。

 ちなみに、隼人は今回の件の前から、デュエルモンスターズの精霊の声が僅かに聞こえるようで、姿こそハッキリとは見えないようだが存在は認知していたらしい。

 

 それからしばらくして、冬休みが終わって生徒達が帰って来ると、またデュエルアカデミアでナンバーズの事件が再発した。

 

 ある日。テニスの授業でボールをクロノスにぶつけた十代が、罰としてテニス部の綾小路という先輩のしごきを受けることになったのだが、何だかんだあって明日香を賭けたデュエルをしろという挑戦をされることになった。

 色恋には全く興味のない十代だが、挑まれたデュエルからは逃げないと宣言し、デュエルを始めたのだが、何とそのデュエルの最中に綾小路がナンバーズに操られてしまったのだ。そのデュエルは十代がホープで何とかしてくれたが、最近落ち着いていたと思えば、また問題が再発してしまったらしい。

 

 また別の日には、オベリスクブルーの生徒達が謎の男に負けてレアカードを奪われるという事件を解決することになり、その男――ラーイエローの小原と大原をデュエルで捕まえようとしたのだが、またしてもデュエルの最中にナンバーズが現れた。

 今回もデュエルをしていたのは十代だったので、何とか対応できたが、いつ誰が操られるかわからなくなってきている。

 

 最後に、最近、黄金のタマゴパンだけを盗んでいる大山という生徒としたデュエルでも、ナンバーズが現れたらしい。

 冬休みが終わってから立て続けに三件もナンバーズの事件が発生したことで、遊矢もてんやわんやになっていたが、その三件を全て解決したのは十代だった。前から思っていたが、遊矢よりも十代の方がナンバーズとの遭遇率が高い。もしかしたら、狙われているのは十代なのかもしれない――と、遊矢が思考を巡らせる。勿論、考え過ぎの可能性もあるが、一応その推測は、念のために報告と一緒にKCとI2社に送ることにした。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 そんなこんなで、冬休みが終わってからも遊矢が忙しく毎日を過ごしていると、デュエルアカデミアで、デュエルキング――武藤遊戯のデッキが公開されることになった。

 それも、本人改修の元、今のルールに合わせた特別デッキということで、生徒達は今か今かとデュエルキングのデッキが来るのを待っている。

 それはオベリスクブルー、ラーイエロー、オシリスレッドの垣根すら超えており、前日に配られた整理券を賭けて、翔が格上のラーイエローの神楽坂という生徒にデュエルを挑むほど盛り上がっていた。

 神楽坂とは、遊矢もデュエルしたことがある。その時は《サイバー・ドラゴン》を使ってきて、亮に似たプレイングをしていた。とはいえ、実態は劣化カイザーでしかなく、遊矢もそこまで苦もなく倒した記憶がある。

 今回は『アンティーク・ギア』デッキを使っているようで、劣化クロノスという感じだ。翔も多少は苦戦していたが、最近は隼人と一緒にプチ遊勝塾でデュエルの勉強をしているだけあって、何とか勝ちをもぎ取っている。

 

 こうして、明日の公開日にデッキを見に行けることになったのだが、遊矢は正直十代達のテンションについて行けてなかった。

 

 そもそも遊矢はこの世界の人間ではない。当然、デュエルキングである武藤遊戯にしても、名前を少し聞いたことがある程度の認識しかなかった。

 勿論、有名人なのは知っているが、アニオタがリアルアイドルにあまり興味を示さないのと一緒で、この世界の有名人だからといってミーハーな態度を取りはしない。

 逆に十代達は、当日まで待ち切れないようで、事前に武藤遊戯のデッキを見せて貰いに行こうとしていたが、遊矢はパスしておいた。そこまでして見たいものでもないし、順番に全員見られるのであれば、明日見ればいいという考えだ。

 

「……ククク、凄い。このデッキは最強だ。このカードさえあれば、俺は誰にも負けない」

 

 そんなことがあって、我慢できずにデッキを見に行く十代達を見送り、一人残された遊矢。

 暇つぶしに風に当たろうと、レッド寮の回りを散策していたのだが、そこでふと怪しげな人物が海辺に立っているのを発見した。

 

「おーい、なにしてるんだー?」

 

 と、声をかけると、その人物が驚いたように振り返る。それは、ついさっき翔にデュエルで負けていたラーイエローの神楽坂だった。

 

「お前は、確か、神楽坂……だっけ?」

「榊遊矢か。どうやら、このデッキを取り返しに来たようだが……丁度いい。お前なら、このデッキの試運転に不足はないだろう」

「デッキ?」

「構えろ、榊遊矢! この最強のデッキで、今度こそ貴様を倒してやる!」

 

 状況はよくわからないが、デュエルを申し込まれている以上、逃げる訳にもいかないのでデュエルディスクを構える。

 対する神楽坂は、「それでいい」と笑みを浮かべていた。前にデュエルした時や、先程の様子とは別人のような余裕を感じる。

 

「行くぞ!」

「あ、ああ」

「「デュエル!!」」

 

 こうして、状況がよくわからないまま遊矢と神楽坂のデュエルが始まった。

 デュエルディスクの先攻は神楽坂になり、デッキから手札となるカードを引いていく。

 

「俺の先行、カードドロー! 手札から、《幻爪の王ガゼル》を召喚!」

 

 《幻爪の王ガゼル》

 効果モンスター

 ☆4 地属性 獣族

 ATK1500 DEF1200 攻撃表示

 

 大きな角と爪を持ったライオンのようなモンスターが出現する。

 見る人が見れば、武藤遊戯が使った《幻獣王ガゼル》のリメイクカードだと気付くのだろうが、残念ながら遊矢は武藤遊戯についてそこまで詳しく知らなかった。

 

「このカードが召喚に成功した時、デッキから悪魔族・レベル5モンスター一体か、《合成獣融合》を手札に加える! 俺は《合成獣融合》を手札に加え、そのまま発動! フィールドのガゼルと、手札の《大翼のバフォメット》を融合! 現れろ、《幻獣王キマイラ》!!」

 

 《幻獣王キマイラ》

 効果モンスター 融合

 ☆6 風属性 獣族

 ATK2100 DEF1800 攻撃表示

 

 ガゼルとバフォメットの顔を持った四つ足歩行の合成モンスター。

 これも、見る人が見れば、武藤遊戯が使った《有翼幻獣キマイラ》のリメイクカードだと気付くのだが、遊矢には禍々しいモンスターとしかわからなかった。

 

「融合素材として墓地に送られたガゼルの効果発動! デッキから幻想魔族モンスター一体を手札に加える! 《ミラー ソードナイト》を手札に加えるぜ!」

 

 と、神楽坂がカード効果を発動させると同時に、どこからか翔がこちらに走ってくる。

 息を切らせている翔の話を聞くと、どうやら展示会場から武藤遊戯のデッキが盗まれたらしい。

 

 話を聞いたことで、ようやく遊矢も先程のデッキを取り返しに来たというのはそういうことかと納得する。神楽坂がデッキを盗んだのだ。

 普通ならデュエルすればすぐに気付くのだが、遊矢は武藤遊戯のデュエルを知らないので、それがデュエルキングのデッキのカードだとわからず、理解まで時間がかかってしまった。

 

「とりあえず、事情はわかった。でも、向こうはデッキを返す気はないようだから、このデュエルで勝って取り返すよ」

「頼むっす。僕はアニキ達を呼んでくるから……!」

 

 そう言って、再び走ってきた方へ戻っていく翔。

 そんな翔を見送る遊矢を見ながら、神楽坂は不敵な笑みを浮かべていた。

 

「俺に勝ってデッキを取り戻す……ね。やれるものなら、やってみな! 俺は、キマイラのモンスター効果を発動! このカードが融合召喚した時、エンドフェイズに相手の手札を一枚墓地へ送る!」

 

 ハンデス――しかし、効果がエンドフェイズと遅い。このタイムラグに意味はあるのかと遊矢は内心で首を傾げる。

 

「さらに、墓地の《合成獣融合》の効果を発動! 自分のメインフェイズにこのカードが墓地に存在し、自分フィールドか墓地に《有翼幻獣キマイラ》が存在する時、このカードを手札に加えるか、このカードを除外してデッキ・墓地から《幻獣王ガゼル》と《バフォメット》を一体ずつ特殊召喚することが出来る!」

「《有翼幻獣キマイラ》……?」

「ふっ、《幻獣王キマイラ》は、フィールド、墓地では《有翼幻獣キマイラ》としても扱うことが出来るのさ。俺は、一つ目の効果を使い、このカードを墓地から回収する!」

 

 そう笑いながら、墓地の《合成獣融合》を回収していく神楽坂。

 ここまでのプレイングには無駄なものが何一つとしてない。確かに、デュエルキングのデッキというだけのことはありそうだった。

 

「俺は再び、《合成獣融合》を発動! フィールドの《有翼幻獣キマイラ》として扱う《幻獣王キマイラ》と、手札の幻想魔族《ミラー ソードナイト》を融合! 現れろ、《幻想魔獣キマイラ》!!」

 

 《幻想魔獣キマイラ》

 効果モンスター 融合

 ☆8 闇属性 幻想魔族

 ATK3100 DEF2800 攻撃表示

 

 さらなる融合によって、キマイラの両腕に剣が装備され、羽根は四枚羽となって二足歩行へと変化していく。

 攻撃力3100――手札二枚消費で出していいレベルのモンスターではなかった。

 

「《幻想魔獣キマイラ》も、《幻獣王キマイラ》と同じく、フィールド、墓地に存在する限り《有翼幻獣キマイラ》として扱う」

「……まさか、また《合成獣融合》を回収する気か?」

「そうしたい所だが、あの回収効果は一ターンに一度しか使えないという制限があってな」

 

 無制限なら、最強の手札コストになりかねない。一ターンに一度という制約は妥当なものだろう。

 

「先攻は最初のターン、攻撃できない。俺はリバースカードを一枚セットしてターンエンド。そして、このエンドフェイズ、《幻獣王キマイラ》の効果で、お前は手札をランダムに一枚墓地へ送らなくてはいけない」

 

 遊矢が手札を裏側にしてシャッフルし、一枚を墓地へ送っていく。

 最初のターンで、手札4枚スタートは厳しいが、元の世界のルールで先攻を取ったと考えることにした。あちらの世界では先攻ドローが禁止されているので、手札は5枚からスタートする。

 

 

 神楽坂 手札3枚 LP4000

 フィールド 《幻想魔獣キマイラ》

 魔法・罠 リバース1枚

 

 VS

 

 遊矢 手札4枚 LP4000

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

 神楽坂がターンを終了すると同時に、翔に連れられて十代達が走ってきた。しかし、十代と一緒に行った隼人はわかるが、何故か三沢まで一緒に居る。

 

 十代は神楽坂にデッキを返すように声をかけるが、やはり神楽坂は聞き耳を持たなかった。

 

「やっぱり駄目か。今ならクロノス先生も大事にはしないって言ってるのに……」

「デュエルキングのデッキを使っていることで、気が大きくなっているんだろう。こうなれば、後は遊矢に任せるしかない」

「がんばれー、遊矢くーん!」

「絶対勝つんだなー!」

 

 そんな声援を受けつつ、デュエルを再開していく。

 熱心な応援を受ける遊矢に対して、完全なアウェイの神楽坂は「ふっ、俺にはこのデッキのカード達がついてるぜ!」と、意味不明な発言をしていた。

 

「俺のターン!」

 

 遊矢がデッキからカードをドローする。これで手札は5枚、改めて先攻ドローがどれだけのアドバンテージを持っているかよくわかった。

 

「俺はスケール1の《EMモンキーボード》と、スケール8の《EMオッドアイズ・バレット》でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

 遊矢お得意のペンデュラム――二つの光の柱が出現し、これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能となる。

 

「モンキーボードのペンデュラム効果! デッキからレベル4以下のEMモンスターを手札に加える! 俺が加えるのは、レベル1の《EMトランプ・ウイッチ》!」

 

 しかし、レベル1故、ペンデュラム召喚で特殊召喚することは出来ない。それでも問題ないとばかり、遊矢はそのままプレイを続けた。

 

「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚! 現れろ、俺のモンスター達!」

 

 天空からモンスターゾーンへ降り注ぐ光は二つ。

 

「まずは、レベル4、《EMオッドアイズ・ミノタウロス》、そしてレベル6《EMオッドアイズ・プリースト》!」

 

《EMオッドアイズ・ミノタウロス》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆4 闇属性 獣戦士族

 ATK1200 DEF1600 守備表示

 

 《EMオッドアイズ・プリースト》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆6 闇属性 魔法使い族

 ATK600 DEF1800 守備表示

 

 コミカルな牛魔人と、コミカルな僧侶がフィールドに現れる。

 

「オッドアイズ・プリーストの効果! このカードがペンデュラム召喚に成功したターンのメインフェイズ、このカードが守備表示の時、デッキから『EM』ペンデュラムモンスター、又は『オッドアイズ』ペンデュラムモンスター一体を選び、自分のEXデッキに加えるか墓地に送る! 《EMダグ・ダガーマン》をEXデッキに加える!」

 

 フィールドに闇属性のモンスターが二体。遊矢とのデュエルを何度もしている十代や三沢は、遊矢が何を狙っているのかすぐに気付いた。

 

「俺は手札から《EMトランプ・ウィッチ》を通常召喚!」

 

 《EMトランプ・ウィッチ》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆1 闇属性 魔法使い族

 ATK100 DEF100 攻撃表示

 

「トランプ・ウィッチの効果発動! このカードをリリースし、デッキ・墓地から《融合》を手札に加える!」

「《融合》だと!?」

「ああ、そっちが融合で攻めて来るなら、こっちも融合だ! 手札から《融合》を発動! フィールドの闇属性オッドアイズ・ミノタウロスと、オッドアイズ・プリーストを融合! 二色の眼を持つ獣戦士よ、二色の眼の聖職者と一つとなりて、新たな道を指し示せ!」

 

 EXデッキからモンスターを出し、両手を合わせていく。

 

「融合召喚! 現れろ、飢えた牙持つ毒龍! レベル8、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》!!」

 

 《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》

 効果モンスター 融合

 ☆8 闇属性 ドラゴン族

 ATK2800 DEF2000 攻撃表示

 

 遊矢のエースの一体。四天の龍の中でも随一の攻撃力を持つドラゴンが呼び出された。

 

「そのモンスターは確か……」

 

 前に迷宮兄弟との制裁デュエルでも使ったので、神楽坂にも見覚えがあるのだろう。

 ただ、流石に数ヶ月前のことで、すぐには効果が思い出せないのか、何とも言えない顔をしている。

 

「スターヴ・ヴェノムの効果発動! 融合召喚に成功した時、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター一体を選択し、その攻撃力分だけスターヴ・ヴェノムの攻撃力をターン終了時までアップする! 俺は、《幻想魔獣キマイラ》を選択!」

「なら、墓地の《ミラー ソードナイト》の効果発動! 自分フィールドに《有翼幻獣キマイラ》が存在し、相手フィールドのモンスターが効果を発動した時、フィールド、墓地のこのカードを除外して、その効果を無効にする!」

「躱されたか! なら、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》のもう一つの効果! 一ターンに一度、相手フィールドのレベル5以上のモンスターと同じ元々のカード名と効果を得る! 俺は、《幻想魔獣キマイラ》を選択してカード名と効果を得る!」

 

 どうやら、二度目の効果は防ぎきれないようで、スターヴ・ヴェノムの効果で名前と効果がコピーされていく。

 神楽坂の《幻想魔獣キマイラ》には四つの効果があった。

 一つ目は、フィールド、墓地に存在する限り、《有翼幻獣キマイラ》として扱う効果。

 二つ目は、一度のバトルフェイズに融合素材としたモンスターの数だけ攻撃できる効果。

 三つ目は、このカードがモンスターと戦闘を行う場合、その二体は戦闘で破壊されない効果。

 四つ目は、このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、相手モンスターの攻撃力をゼロにし、効果を無効にする効果だ。

 奇しくも、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》は融合モンスターであり、二つ目の融合素材となったモンスターの数だけ攻撃できる効果が共有できる。

 これにより、三つ目と四つ目の効果を悪用し、自爆特攻するだけで相手モンスターの攻撃力をゼロにし、効果を無効にする効果を発動した後に、追加攻撃をしかけることが出来た。

 

 コピーしたカードテキストを確認していた遊矢も、そのことに気付いたようで、すぐにバトルフェイズに移っていく。

 

「バトル! 《幻想魔獣キマイラ》として扱う、《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》で、《幻想魔獣キマイラ》を攻撃! この瞬間、効果が発動し、互いのモンスターは戦闘で破壊されず、このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、キマイラの攻撃力をゼロにし、効果を無効にする!」

「甘いぞ、榊遊矢! 罠カード、《聖なるバリア―ミラーフォース―》!」

「なにっ!?」

「相手の攻撃宣言時、相手の攻撃表示モンスターを全て破壊する!!」

 

 スタンダードに強力な効果だった。

 スターヴ・ヴェノムに破壊耐性はない。バリアによって跳ね返された自身の攻撃で爆散していく。

 

「だが、スターヴ・ヴェノムの効果発動! 融合召喚したこのカードが破壊された時、相手フィールドの特殊召喚モンスターを全て破壊する! これで、キマイラも破壊だ!」

「っ、キマイラ!!」

 

 道連れにするようにスターヴ・ヴェノムの爆発に飲み込まれ、キマイラも爆散する。これで、互いのフィールドにモンスターの姿はいなくなった。

 

「俺はリバースカードを一枚セット!」

「俺は墓地の《幻獣王キマイラ》の効果! 相手ターンに墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の獣族・悪魔族・幻想魔族モンスター一体を特殊召喚する。蘇れ、ガゼル!」

 

 《幻爪の王ガゼル》

 効果モンスター

 ☆4 地属性 獣族

 ATK1500 DEF1200 攻撃表示

 

 再びガゼルが復活し、フィールドに飛び出していく。

 相手のターンでも墓地からモンスターを特殊召喚できる効果――本来なら、蘇生制限を満たしている《幻想魔獣キマイラ》も特殊召喚できるはずだが、おそらくは《幻爪の王ガゼル》の特殊召喚時の効果を狙ってそちらを優先したのだろう。

 

「ガゼルの効果発動! このカードが特殊召喚に成功した時、デッキから悪魔族、レベル5のモンスター、又は《合成獣融合》を手札に加える! 俺はレベル5の悪魔族、《バフォメット》を手札に加える!」

「……俺はこれでターンエンドだ」

 

 

 遊矢 手札0枚 LP4000

 フィールド なし

 魔法・罠 リバース1枚

 ペンデュラム モンキーボード、オッドアイズ・バレット

 

 VS

 

 神楽坂 手札4枚 LP4000

 フィールド 《幻爪の王ガゼル》

 魔法・罠 なし

 

 

 相手のターンでも、当たり前のように効果を挟んでくる。おまけに、こちらのスターヴ・ヴェノムの効果を完封させられた。

 最後のフィールドリセット効果を使った後ですら、当たり前のようにモンスターを展開されている。これが、デュエルキング――武藤遊戯のデッキが持つ力。

 十代、三沢、翔、隼人も、たった一ターンの攻防で、そのとてつもないポテンシャルを感じ取っているようだった。

 

「当然だけど、流石は遊戯さんのデッキ……あの遊矢が簡単に押し込められてる」

「十代の言う通り、遊矢のスターヴ・ヴェノムは、高攻撃力な上、相手の効果をコピーでき、自身が破壊されると相手のフィールドの特殊召喚モンスターも倒せる強力なモンスターだが、それも全て対応されている」

「流石はデュエルキングのデッキってことっすか?」

「いや、デッキだけじゃない。神楽坂自身も、あの強力なデッキをまるで手足のように使い熟している。余程、武藤遊戯の研究をしたんだろうな。普通のデュエリストでも、ああは使い熟せまい」

「じゃ、じゃあ、このままじゃ遊矢は……」

 

 隼人が口を濁す。負けるかもしれない――その言葉を口に出せなかった。

 

 だが――

 

「負けるつもりはない」

 

 そう、遊矢は力強く答えた。

 

「仮に、デュエルの相手が本物のデュエルキングだったとしても、俺は負けるつもりでデュエルなんかしない」

 

 遊矢の言葉に呼応するように、四天の龍の精霊が遊矢の回りに出現する。

 それが見えるのは精霊が見える十代だけだったが、その迫力ある光景に、十代は無意識にゴクリと息を飲んだ。

 

 対する神楽坂は、遊矢が自分に勝つと宣言したことで、それまで余裕を浮かべていた表情が怒りの表情に変わった。

 この状況においても、自分をたいしたことのない相手だと言わんばかりの遊矢の余裕が癪に障ったのである。

 

「流石は新システムのテスター、大した余裕だな。だが、このデッキは、今の環境に合わせて調整がしてあるんだ。お前でも勝つことは不可能! 俺のターン!」

 

 神楽坂がカードをドローする。前のターンに使ったガゼルによる《バフォメット》のサーチで、手札は5枚まで回復していた。

 

「魔法カード、《強欲な壺》! デッキから、カードを二枚ドローする!」

 

 これで、さらに手札は6枚まで増強される。

 

「さらに俺は、ガゼルをリリースして、《バフォメット》をアドバンス召喚!」

 

 《バフォメット》

 効果モンスター

 ☆5 闇属性 悪魔族

 ATK1400 DEF1800

 

 羊の顔をした悪魔が、フィールドに召喚される。しかし、レベル5の割にステータスとしては少し貧弱だった。

 

「《バフォメット》の効果発動! このカードが召喚、反転召喚に成功した時、デッキから《幻獣王ガゼル》を手札に加える! さらに、墓地の《合成魔獣融合》の効果! 墓地に《有翼幻獣キマイラ》が存在することで、このカードを手札に戻す!」

「またキマイラか……」

「心配するな。もう、キマイラは出さない。代わりに、魔法カード、《ティンクル・ファイブスター》を発動! 自分のフィールドのモンスターが、レベル5モンスター一体の時、そのモンスターをリリース! クリボー五兄弟を手札・デッキ・墓地から特殊召喚する! 来い、クリボー五兄弟!!」

 

 リリースされた《バフォメット》が五つの星となり、導かれるように五体の《クリボー》が特殊召喚されていく。

 

 《クリバー》

 効果モンスター

 ☆1 闇属性 悪魔族

 ATK300 DEF200 守備表示

 

 《クリビー》

 効果モンスター

 ☆1 闇属性 悪魔族

 ATK300 DEF200 守備表示

 

 《クリブー》

 効果モンスター

 ☆1 闇属性 悪魔族

 ATK300 DEF200 守備表示

 

 《クリベー》

 効果モンスター

 ☆1 闇属性 悪魔族

 ATK300 DEF200 守備表示

 

 《クリボー》

 効果モンスター

 ☆1 闇属性 悪魔族

 ATK300 DEF200 守備表示

 

 最後に現れた《クリボー》は、十代の《ハネクリボー》の羽根のないバージョンということもあって遊矢も見覚えがあった。

 ただ、残りの四体も色が違うだけで、見た目は《クリボー》とそこまで変わらず、あまり強そうにも見えない。

 

「《ティンクル・ファイブスター》の効果で特殊召喚したこいつらはアドバンス召喚のためのリリースには出来ない。だが、《クリバー》の特殊効果発動! フィールドのクリボー五兄弟をリリースして、デッキから《クリバビロン》を特殊召喚!」

 

 《クリバビロン》

 効果モンスター

 ☆5 闇属性 悪魔族

 ATK1500 DEF1000 攻撃表示

 

 クリボー五兄弟が一つとなって、《クリバビロン》へと変身していく。

 見た目はクリボーだが、大きさは何倍も大きく、鋭い目に一角獣のような角を持っているのが特徴的だった。

 

「《クリバビロン》の効果! このカードの攻撃力は墓地の『クリボー』モンスター一体の数×300ポイントアップする! そして、クリボー五兄弟はルール上、『クリボー』カードとして扱う! よって、合計1500ポイントアップだ!」

 

 《クリバビロン》 ATK1500→3000

 

「攻撃力3000!?」

「バトル! 《クリバビロン》で、プレイヤーにダイレクトアタック!」

 

 《クリバビロン》 ATK3000 VS遊矢 LP4000

 

 こうも簡単に何度も攻撃力3000超えのモンスターを出してくる神楽坂に驚く遊矢。

 しかし、驚いてばかりもいられなかった。壁モンスターがいない今、この攻撃は致命傷になりかねない。

 

「罠カード、《ガード・ブロック》! 戦闘ダメージを0にして、デッキからカードを一枚ドローする!」

 

 見えない壁が、《クリバビロン》の攻撃を防いでいく。同時に、遊矢はデッキからカードを一枚ドローした。

 

「防いだか! なら、《クリバビロン》の効果発動! メインフェイズかバトルフェイズに、このカードを手札に戻し、クリボー五兄弟を手札・墓地から攻撃表示で特殊召喚する! 甦れ、クリボー五兄弟!」

 

 攻撃を終えた《クリバビロン》が、元のクリボー五兄弟へと分裂していく。

 

 《クリバー》

 効果モンスター

 ☆1 闇属性 悪魔族

 ATK300 DEF200 攻撃表示

 

 《クリビー》

 効果モンスター

 ☆1 闇属性 悪魔族

 ATK300 DEF200 攻撃表示

 

 《クリブー》

 効果モンスター

 ☆1 闇属性 悪魔族

 ATK300 DEF200 攻撃表示

 

 《クリベー》

 効果モンスター

 ☆1 闇属性 悪魔族

 ATK300 DEF200 攻撃表示

 

 《クリボー》

 効果モンスター

 ☆1 闇属性 悪魔族

 ATK300 DEF200 攻撃表示

 

「バトルフェイズ中の特殊召喚の為、クリボー五兄弟は続けて攻撃が出来る! 行けっ、クリボー五兄弟!!」

「オッドアイズ・バレットのペンデュラム効果! 一ターンに一度、相手モンスターの攻撃宣言時、自分のEXデッキのペンデュラムモンスターの数×300ポイント攻撃力をダウンさせる!」

 

 今、遊矢のEXデッキには、《EMダグ・ダガーマン》、《EMオッドアイズ・ミノタウロス》、《EMオッドアイズ・プリースト》、《EMトランプ・ウィッチ》の四体がいる。

 

 よって、攻撃力は1200ダウンするが――

 

「だが、それで防げるのは最初に攻撃する《クリバー》のみ! 残り四体の攻撃を受けろ!!」

 

《クリバー》、《クリビー》、《クリブー》、《クリベー》、《クリボー》 ATK300-1200、ATK300×4 VS遊矢 LP4000

 

 先頭にいる《クリバー》の攻撃力が300から1200下がるが、《クリバー》のみが攻撃力0になるだけで、残りの兄弟の攻撃力は変わらず遊矢へダメージを与えていく。

 

「くっ!!」

 

 遊矢 LP4000→2800

 

 小さい毛玉が連続してぶつかってくる。一体一体の攻撃力は大したことはないが、こうも連続で攻撃されるとダメージも馬鹿にならなかった。

 ようやくまともにダメージを与えられたということで、神楽坂も満足そうに「いいぞ、クリボー五兄弟」と、クリボー達を褒めている。どうやら、武藤遊戯になり切っているらしいが、本人を見たことがない遊矢には似ているかどうかはわからなかった。

 

「俺はメインフェイズ2で、《クリベー》の効果発動! フィールドのクリボー五兄弟をリリースし、自分のデッキ・墓地から《クリバンデット》一体を手札に加え、その後手札から悪魔族モンスター一体を召喚できる。来い、《クリバンデット》!」

 

 再びクリボー五兄弟が一つになり、《クリバンデット》へと変身していく。

 

 《クリバンデット》

 効果モンスター

 ☆4 闇属性 悪魔族

 ATK1000 DEF700 攻撃表示

 

 海賊帽に眼帯と、見た目はいかにも海賊という感じのクリボーだが、攻撃力はそこまで高くなかった。

 

「リバースカードを三枚セットし、エンドフェイズ! 《クリバンデット》の効果発動! このカードをリリースして、デッキの上からカードを五枚めくる。その中から、魔法・罠カードを一枚選んで手札に加えることが出来る!」

 

 神楽坂はデッキからカードを五枚めくると、ニヤリと笑う。そのまま、「最高のカードだ」と呟くと、一枚のカードを選んでこちらに見せてきた。

 

「俺は魔法カード、《死者蘇生》を手札に加える! そして、残りのカードは全て墓地へ送る。これでターンエンドだ」

 

 

 神楽坂 手札5枚 LP4000

 フィールド なし

 魔法・罠 リバース3枚

 

 VS

 

 遊矢 手札1枚 LP2800

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 ペンデュラム モンキーボード、オッドアイズ・バレット

 

 

 正直、前の自分のターンで《幻想魔獣キマイラ》を特殊召喚して、ひたすらビートしてきてくれた方が余程やりやすかったと遊矢は考える。

 デュエルキングのデッキは、十代のHEROや、遊矢のEMのように、カテゴリーが統一されている訳でもないのに、攻撃バリエーションが多彩で読みにくい。

 逆に、一歩間違えば、いつ事故が起きてもおかしくないデッキと言ってもいいだろう。しかし、神楽坂はまるで手足のようにそのデッキを使い熟していた。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・遊矢が精霊を見られるようになった。
 やはり見えないと不都合なので。

・#15『青春のデュエルテニス』をスキップした。
 カードが無さ過ぎてデュエルにならん。

・#16『闇夜のキングゴブリン』をスキップした。
 内容がイマイチ纏らなかったのでスキップした。

・#17『ドロー! ドロー! ドロー!』をスキップした。
 ドローを上手く使うデッキが難しくて断念した。

・#18『VS遊戯デッキ』より、遊矢と神楽坂がデュエルすることになった。
 遊戯さんのデッキかなり強化してあるので、遊矢に相手をお任せした。流石の遊矢も久しぶりに本気を出すレベル。

・時系列的に、今は一月の終わりくらい。
 二月に入って、レイ、代表決定戦、もけもけデュエル、三月に入ってサンダー戦って感じ。



※多分、先に言った方がいいと思うから書きます。

 遊矢のターン、モンキーボードでペンマジサーチしてP召喚、ペンマジ効果でPゾーンの二体割って、ドクロジョーカーとトランプウィッチサーチ、トランプPセッティング、ドクロ召喚すれば、スターヴとダークリベリオン両方呼べるっていうのは、作者もわかっています。

 ただそれだと、ぶっちゃけモンキーボードがいると、毎回ドクロ、ペンマジサーチから確定でダークリベリオンが呼べ、ワンパターンになってデュエルが詰まらなくなります。
 他にも、ドクロ召喚、モンキーサーチセッティング、ペンマジサーチで同じようなこと出来ますし、ドクロかモンキーいればこの動きが高確率で出来ます。

 そりゃ強い動きですが、強い動きして毎回同じようなデュエルするだけじゃ物語にならないです。
 程よく苦戦して主人公が逆転するから物語は面白いのであり、そのためにもいろいろな展開を見せることが大切です。

 なので、今回はスターヴ出して様子見、ダークリベリオン温存という考えで、違うプレイをしていると考えて下さい。
 多少ネタバレになりますが、この一ターン目の動きが後のターンにも繋がっていきますし、別に上のモンキーからの強い流れを金輪際一切しない訳ではありません。あくまで、今回は違うプレイをしているというだけです。

 中には、なめプという人もいるかもしれませんが、これはあくまで物語であり、リアルデュエルではありません。人間ミスはあるものですし、最善ばかり突き詰めなくてもいいと私は考えています。

 ぶっちゃけ、それでも納得出来ないなら見なくて大丈夫です。デュエルをちゃんと書ける人の小説を見てください。

 どうも、最近多少は読む人も増えてきたからか、感想欄以外にも、遊矢ならこうするとか、十代ならこうするみたいな意見も来るようになりました。
 ただ、作者はにわかであり、どうしても多少のプレイミスは出てきます。それが致命的なもの、例えば発動タイミングが違うとか、効果を間違えているとかならまだしも、デュエルの流れを根本から否定されてもぶっちゃけ困ります。

 例えば、第一話で、時読み星読みではなく、相克相生をだぜば覇王烈竜出してワンキル出来るのにやらないのはおかしいとか言われても、時読み星読みを出したのはARCV一話のオマージュでもあり、覇王系の竜を温存していたのも、物語を盛り上げるのにいろいろ考えていたからです。

 他にも、第四話で一ターン目にほぼバニラのオッドアイズ出さずに、こういう流れ(その方の好きな展開)で他の四天出せとかいう人もいましたし、SAL戦でも十代は最後にホープ使え(わざわざ展開を書いて)みたいな意見もありました。 

 まぁ、正確には、こんな流れもありますがどうでしょうかみたいな感じで、その人達も善意でやってくれているのでしょうが、失礼ながら自分で書いてくれという話です。
 こっちは別に揚げ足を取って欲しい訳ではありませんし、余程おかしくない限りは内容は変えません。

 今回で言えば、上記の流れをしろという人は必ず出てくるので、先んじて言っておくことにしました。長文失礼しました。


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