「俺のターン!」
正直な所、まさか覇王白竜をこうも簡単に対処されるとは――と、内心で遊矢は動揺を隠せずにいた。
しかし、このままターンを渡せばまず間違いなく負ける。少なくとも、あのバスター・ブレイダーを放置しておくわけにはいかなかった。
「俺は、前のターンで手札に加えた《ペンデュラム・ホルト》を発動! カードを二枚ドローする!! 以後、俺はこのターン、デッキからカードを手札に加えることが出来ない!」
新たに引いたカードと、EXデッキ、墓地を確認し、勝利への道を模索していく。
「俺はスケール1の《EMゴムゴムートン》とスケール8の《EMオッドアイズ・ユニコーン》でペンデュラムスケールを再セッティング!」
これで、再びレベル2から7までのモンスターが同時に召喚可能になった。
「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚! EXデッキより現れろ! レベル2、《EMチアモール》! レベル5、《EMダグ・ダガーマン》! レベル6、《EMオッドアイズ・プリースト》! 《EMモンキーボード》!」
《EMチアモール》
効果モンスター ペンデュラム
☆2 地属性 獣族
ATK600 DEF1000 守備表示
《EMダグ・ダガーマン》
効果モンスター ペンデュラム
☆5 地属性 戦士族
ATK2000 DEF600 攻撃表示
《EMオッドアイズ・プリースト》
効果モンスター ペンデュラム
☆6 闇属性 魔法使い族
ATK600 DEF1800 守備表示
《EMモンキーボード》
効果モンスター ペンデュラム
☆6 地属性 獣族
ATK1000 DEF2400 守備表示
フィールドが再び埋め尽くされていく。一気に壊滅しても、ペンデュラムがある限り、ペンデュラムモンスターは不死鳥のように蘇る。
「オッドアイズ・プリーストの効果! デッキから《EMヒックリカエル》をEXデッキへ加える! さらに俺は、手札から《エンタメ・バンド・ハリケーン》を発動!」
「あのカードは!?」
「フィールドの『EM』モンスターの数だけ、相手フィールドのカードを手札に戻すカード!」
入学試験で遊矢がクロノスにやったワンキルへのキーカードだけあって、十代も三沢も強く印象に残っていた。
神楽坂もまたその一人であり、フィールドには四体の『EM』モンスターが存在し、自分のフィールドのカードを戻そうとしていることをすぐに察する。
「俺は、お前のフィールドの《エルフの聖剣士》と左のリバースカード以外のカードを全て手札に戻す!」
「速攻魔法、《神秘の中華なべ》を発動! 自分フィールド上のモンスター一体をリリースし、そのモンスターの攻撃力か守備力分のライフを回復する!」
「なにっ!?」
「俺はバスター・ブレイダーをリリース! さらに、速攻魔法《非常食》で《神秘の中華なべ》とリバースカードの《合成魔獣融合》を墓地へ送り、ライフを2000回復する! これで《エンタメ・バンド・ハリケーン》の効果は《翻弄するエルフの剣士》にのみ適応される!」
武藤遊戯になりきっている神楽坂の、デュエリストとしての本能が、このままカードを戻されるのはまずいと判断していた。
遊矢が唯一選択しなかったリバースカードも、《エルフの聖剣士》の手札があると攻撃出来ないというデメリットを回避するために伏せた《合成魔獣融合》だ。フィールドががら空きになる前に、少しでもライフを回復しようと出来る限りの手を打っていく。
神楽坂 LP4400→12200
「ライフポイント12200……!?」
「《神秘の中華なべ》は効果で上昇した攻撃力分もライフに加算できる優秀なカードだ」
「くっ! なら、ペンデュラム召喚したレベル2のチアモールをチューナー扱いとし、《覚醒の魔導剣士》とチューニング!」
「ペンデュラムモンスターをチューナー扱いにするだと!?」
シンクロモンスターの《覚醒の魔導剣士》が八つの星に別れ、チアモールが本来持ちえないチューナーとしての力を使い、二つの光の輪を作っていく。
「――平穏なる時の彼方から、あまねく世界に光放ち、蘇れ!」
EXデッキからカードが出て来る。
これもまた、カードの半身が白で、半身が緑。
「現れろ、レベル10! 《涅槃の超魔導剣士》!!」
《涅槃の超魔導剣士》
効果モンスター シンクロ ペンデュラム
☆10 闇属性 魔法使い族
ATK3300 DEF2500 攻撃表示
全身が白だった《覚醒の魔導剣士》と比べて、《涅槃の超魔導剣士》は全身が青の鎧に包まれていた。
相変わらず侍にしか見えないが、一応は魔法使い族である。
「《涅槃の超魔導剣士》の効果! このカードがペンデュラム召喚したペンデュラムモンスターをチューナー扱いとしてシンクロ召喚に成功した時、墓地のカードを一枚手札に加えることが出来る! 俺は《融合》を手札に加える!」
「《融合》だと……?」
「そしてそのまま《融合》を発動! フィールドのモンキーボードと、オッドアイズ・プリーストを融合! 電子世界で戦う獣よ、二色の眼の僧侶と一つとなりて、新たな種族として蘇れ!」
召喚条件はEMモンスター+レベル5以上の闇属性モンスター。
モンキーボードがEMモンスター、オッドアイズ・プリーストがレベル5以上の闇属性として召喚条件を満たしていた。
「――融合召喚! 現れろ、レベル8! 《EMガトリングール》!!」
《EMガトリングール》
効果モンスター 融合
☆8 闇属性 悪魔族
ATK2900 DEF900 攻撃表示
自分がズァークとして目覚めかけていた時に使っていたモンスター。だが、今では強力な力を持った仲間だった。
ただ、強すぎる故に、これまではこのカードも使用を禁じていたが、今は神楽坂の為にも全力を出してでも勝たないといけない。
「ガトリングールの効果発動! このカードが融合召喚に成功した時、フィールドのカードの数×200のダメージを相手に与える! 今、お前のフィールドのカードは一枚、俺のフィールドにはカードが五枚ある! よって、1200ポイントのダメージを与える!」
「小賢しい真似を……!」
神楽坂のフィールドには残された《エルフの聖剣士》が一体のみ、対する遊矢のフィールドはペンデュラムゾーンの二枚と、《涅槃の超魔導剣士》、《EMガトリングール》、《EMダグ・ダガーマン》の三体を合わせた計五枚で、合計して六枚だった。
ガトリングールの名の通り、両手で持ったガトリングを神楽坂に向かって一斉射していく。
「ぐぅっ!!」
神楽坂 LP12200→11000
「さらに、このカードがペンデュラムモンスターを素材として融合召喚していた時、相手フィールドのモンスター一体を破壊し、元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」
「なんだって!?」
融合素材であるモンキーボードもオッドアイズ・プリーストも、両方ともペンデュラムモンスターであり、問題なく効果が発動できる。このために、遊矢は神楽坂のフィールドに一体だけモンスターを残していたのだ。
正直、大ダメージを狙うのであれば、バスター・ブレイダーをフィールドに残すのもありだったが、おそらく神楽坂はリバースカードでバスター・ブレイダーだけは守って来ると遊矢は考えていた。
だからこそ、《エンタメ・バンド・ハリケーン》で、バスター・ブレイダーを指定している。結果は、まさかのサクリファイスエスケープだったが、仮にフィールドに残ったとしてもガトリングールで大ダメージ、除去できたならそれで良しという二段構えの策だった。
「ぐっ!」
唯一のモンスターである《エルフの聖剣士》が、ガトリングの雨に晒され、膝を付いて倒れる。同時に、その攻撃力分のダメージが神楽坂に与えられた。
「ぐあああああああぁぁぁっ!!」
神楽坂 LP11000→8900
「バトルフェイズ! 《涅槃の超魔導剣士》で、神楽坂にダイレクトアタック! トゥルース・スカーヴァティ!!」
《涅槃の超魔導剣士》 ATK3300 VS神楽坂 LP8900
攻撃力3300の《涅槃の超魔導剣士》が神楽坂へと迫っていく。フィールドにカードはない。一気にダメージを与えるチャンス――
「俺は、墓地の《クリア・クリボー》の効果を発動! 相手モンスターの直接攻撃宣言時、墓地のこのカードを除外し、デッキからカードを一枚ドローする! そして、ドローしたカードがモンスターカードだった場合、そのモンスターを特殊召喚して攻撃対象を移し替えることが出来る!」
だが、やはりそう簡単にはいかなかった。
神楽坂も一か八か、可能性に賭けて、勢いよくデッキからカードを引いていく。
「引いたカードはモンスターカード、《サクリボー》! このカードを守備表示で特殊召喚し、攻撃対象を変更する!」
《サクリボー》
効果モンスター
☆1 闇属性 悪魔族
ATK300 DEF200 守備表示
ほぼ《クリボー》と言って良いモンスターが、神楽坂を守るために前へと出る。
「なら、《涅槃の超魔導剣士》で《サクリボー》を攻撃! トゥルース・スカーヴァティ!!」
《涅槃の超魔導剣士》 ATK3300 VS《サクリボー》 DEF200
当たり前のように、《サクリボー》がさくりと一刀両断されていく。
「この瞬間、《涅槃の超魔導剣士》の効果発動! このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、相手のライフを半分にする!」
「なっ、ライフを半分だと!?」
上手く凌いだ神楽坂だったが、遊矢もただで済ませる気はなかった。
守備モンスターで攻撃を受け流したと思った神楽坂から4450のライフを頂いていく。結局、神楽坂は《涅槃の超魔導剣士》のダイレクトアタック以上のダメージを受けてしまった。
「ぐぅっ!」
神楽坂 LP8900→4450
「続けて、《EMガトリングール》で、神楽坂にダイレクトアタック!!」
《EMガトリングール》 ATK2900 VS神楽坂 LP4450
再び、ガトリングールのガトリングが神楽坂へ向けて発射されていく。
「手札の《クリボー》の効果発動! このカードを墓地へ送り、戦闘ダメージをゼロにする!」
「《貪欲な壺》のドローで引いていたのか……!」
手札から現れた《クリボー》が巨大化し、神楽坂をガトリングから守る。もし、この《クリボー》がいなければ、神楽坂の残りライフ1550となり、攻撃力2000のダグ・ダガーマンのダイレクトアタックは受けることが出来なかった。
「ありがとう、《クリボー》。お前には何度も窮地を救われている!」
何度も窮地を救われたのは間違いないのだろうが、その相手は本物の武藤遊戯だろう。
その証拠に、精霊の《クリボー》が困ったような顔で、神楽坂の言葉に反応している。
「最後に、《EMダグ・ダガーマン》でダイレクトアタック!」
《EMダグ・ダガーマン》 ATK2000 VS神楽坂 LP4450
ダグ・ダガーマンが手持ちの短剣を投げつけていく。流石にもう防ぎようがないようで、神楽坂も黙ってダメージを受けていた。
「ぐぅっ!」
神楽坂 LP4450→2450
「……まさか、ここまで一気にライフを削られるとはな」
「俺は、これでターンエンドだ」
遊矢 手札0枚 LP1300
フィールド 涅槃、ガトリングール、ダグ・ダガーマン
魔法・罠 なし
ペンデュラム ゴムゴムートン、オッドアイズ・ユニコーン
VS
神楽坂 手札3枚 LP2450
フィールド なし
魔法・罠 なし
「あの状況から一気に五分の状況に持ち込むなんて……流石は遊矢だぜ」
「EXデッキにモンスターが溜まる性質上、ペンデュラム召喚はターンを回すほど脅威になっていく。神楽坂も、本心では速攻で終わらせたいんだろうが、遊矢の驚異的な粘りの前に攻めきれずにいるんだろう」
「でも、そのおかげで神楽坂君のライフがやっと減ったっす……」
「後一息で勝てるんだな!」
問題は、その後一息を許してくれるかどうかという所だがな――と、三沢は内心で思っていた。
遊矢としても、手札がもう厳しい状況だ。本心では、このターンで決め切りたかったはず。神楽坂の引き次第では、このターンで決着も有り得る。
「俺のターン、ドロー! 墓地の《合成獣融合》の効果で、このカードを手札に加える! さらに魔法カード、《天使の施し》! デッキからカードを三枚引き、手札から二枚捨てる!」
ここぞとばかりに手札入れ替えカードを引いてきた。これで、手札の不要カードを処理しつつ、カードを補充することが出来る。
「そして、俺は、《サイレント・マジシャンLV4》を召喚!」
《サイレント・マジシャンLV4》
効果モンスター
☆4 光属性 魔法使い族
ATK1000 DEF1000 攻撃表示
応援している三沢が「あれは、伝説のレベルモンスター!」と、声をあげる。
本来、サイレント・マジシャンは、ファラオの魂ではない器の武藤遊戯が使っていたカードだが、今回のデッキはいろいろな調整がされているので、試験的に投入されていた。
「さらに、魔法使い族であるサイレント・マジシャンをリリースして、《沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン》を特殊召喚する!」
《沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン》
効果モンスター
☆4 光属性 魔法使い族
ATK1000 DEF1000 攻撃表示
小さかったサイレント・マジシャンが一気に垢抜けて、神聖な雰囲気の美女に生まれ変わる。
同時に、先程まで《ブラック・マジシャン・ガール》に熱を上げていた翔も、「サイレント・マジシャンもいいなぁ」と浮気の声を上げていた。
「《沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン》の効果、このカードの攻撃力は自分の手札の数×500ポイントアップする!」
今、神楽坂の手札は3枚なので1500ポイントアップする。
《沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン》 ATK1000→2500
「リバースカードを一枚伏せて、バトルフェイズ! 速攻魔法、《サイレント・バーニング》! 自分フィールドに『サイレント・マジシャン』モンスターが存在し、自分の手札が相手よりも多い時、自分、又は相手のバトルフェイズに発動! お互いのプレイヤーは手札が六枚になるようにデッキからカードをドローする!」
「なんだって!?」
「俺の手札は一枚、お前はゼロ。よって、俺は五枚のカードをドロー!」
「……俺もカードを六枚ドローする」
「そして、《沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン》の効果で、攻撃力が自分の手札の数×500ポイントアップする!」
相手に手札を渡してしまうというデメリットはあるものの、これでサイレント・マジシャンの攻撃力は一気に4000ポイントにまで上昇した。
正直、ここまでしなくても、攻撃力2500あれば、そのままダグ・ダガーマンを攻撃した方が安全だったかもしれない。だが、神楽坂は毎ターン不死鳥のように蘇ってくるペンデュラムを警戒して、出来ればこのターンで勝負を決めきりたかった。
《沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン》 ATK1500→4000
「バトル! サイレント・マジシャンで、ダグ・ダガーマンを攻撃! これで終わりだ!!」
《沈黙の魔術師―サイレント・マジシャン》 ATK4000 VS《EMダグ・ダガーマン》 ATK2000
攻撃力の差は2000――当然、残りライフ1300しかない遊矢は、この攻撃を受ければアウトである。
「どうも迂闊に手札を増やさせたのは失敗だったみたいだぞ。俺は手札の《EMバリアバルーンバク》の効果発動! 自分のモンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に、このカードを手札から捨てることでお互いの戦闘ダメージをゼロにする!」
手札から現れた、全身紫色のコミカルなバクが膨らんでサイレント・マジシャンの攻撃を受け止めていく。
しかし、ダメージこそゼロになったが、衝撃は突き抜け、ダグ・ダガーマンを破壊した。
「くっ、やはり手札誘発カードを引いていたか! ならば、速攻魔法、《ディメンション・マジック》! 自分フィールドに魔法使い族モンスターが存在する時、自分フィールドのモンスター一体をリリースし、手札から魔法使い族モンスター一体を特殊召喚する! 俺はサイレント・マジシャンをリリースし、手札から魔法使い族モンスター、《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》を特殊召喚!」
《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》
効果モンスター
☆7 闇属性 魔法使い族
ATK2100 DEF2500 攻撃表示
フィールドには魔法使い族のサイレント・マジシャンがいるため、条件は満たされている。サイレント・マジシャンがフィールドから消え、代わりに全身が陰で出来た《ブラック・マジシャン》に似たモンスターが特殊召喚されていく。
「このカードは、モンスターゾーンに存在する限り、《ブラック・マジシャン》として扱う! そして、《ディメンション・マジック》の追加効果で、相手フィールドのモンスター一体を破壊する! 《涅槃の超魔導剣士》を破壊!」
「くっ!」
一番、攻撃力の高い《涅槃の超魔導剣士》が《ディメンション・マジック》の効果であっさり破壊される。
これで遊矢のフィールドに残されたのは、攻撃力2900のガトリングールだけだった。
「さらに手札から速攻魔法、《黒魔術の秘儀》を発動! 融合モンスターカードによって決められた《ブラック・マジシャン》、又は《ブラック・マジシャン・ガール》を含む融合素材モンスターを手札・フィールドから墓地に送り、その融合モンスターをEXデッキから特殊召喚できる! 俺は、フィールドの《ブラック・マジシャン》として扱うブラック・イリュージョンと、手札のレベル7の戦士族、《暗黒騎士ガイアロード》を融合し、《竜魔導騎士ブラック・マジシャン》を融合召喚する!」
《竜魔導騎士ブラック・マジシャン》
効果モンスター 融合
☆8 闇属性 ドラゴン族
ATK2900 DEF2400 攻撃表示
その名の通り、ドラゴンに乗りランスを構えた《ブラック・マジシャン》が現れる。
ドラゴンは《カース・オブ・ドラゴン》によく似ており、上に乗っているのはガイアだったら、《竜騎士ガイア》になっていたかもしれない。
「当然、バトルフェイズ中の特殊召喚なので、攻撃が出来る! 行けっ、《竜魔導騎士ブラック・マジシャン》! 《EMガトリングール》を攻撃!」
「攻撃力は同じ! 相打ちのつもりか!?」
《竜魔導騎士ブラック・マジシャン》 ATK2900 VS《EMガトリングール》 ATK2900
神楽坂は無言で攻撃を続ける。しかし、遊矢は何かあると直感し、ここで攻撃を避けることを選んだ。
「《EMゴムゴムートン》のペンデュラム効果! 一ターンに一度、相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時に発動! その自分のモンスターはその戦闘では破壊されない!」
「手札から速攻魔法、《サイクロン》を発動! その厄介なペンデュラムカードを破壊する!」
小さな竜巻が、ペンデュラムゾーンで魔法カード扱いとなっているゴムゴムートンを破壊していく。
これでゴムゴムートンの守りはなくなり、ガトリングの弾丸を受けながら、《竜魔導騎士ブラック・マジシャン》がガトリングールにランスを突き立てる。攻撃力は同じ故、遊矢の言う通り相打ちとなった。
「この瞬間、《竜魔導騎士ブラック・マジシャン》の効果発動! このカードが破壊された場合、《ブラック・マジシャン》と《竜騎士ガイア》を一体ずつ、手札・デッキ・EXデッキ・墓地から選んで特殊召喚できる!」
《ブラック・マジシャン》
通常モンスター
☆7 闇属性 魔法使い族
ATK2500 DEF2100 攻撃表示
《竜騎士ガイア》
通常モンスター 融合
☆7 闇属性 ドラゴン族
ATK2600 DEF2100 攻撃表示
どちらも、武藤遊戯が使った有名なカードだった。《ブラック・マジシャン》は墓地から蘇り、《竜騎士ガイア》はEXデッキから召喚条件を無視して特殊召喚される。
本来、同じ融合素材であれば、神楽坂は《超魔導騎士―ブラック・キャバルリー》を呼ぶことも可能だった。
また、《マスター・オブ・ブラック・イリュージョン》は、表側表示で存在する限り一度だけ、自分が魔法・罠カードを発動させた場合、墓地の《ブラック・マジシャン》を特殊召喚する効果がある。
神楽坂はやろうと思えば、《黒魔術の秘儀》にチェーンする形で《ブラック・マジシャン》を蘇生し、今回と似たような状況を作ることが出来た。
ブラック・キャバルリーは攻撃力2800だが、その効果で互いの墓地の魔法・罠の数×100ポイント攻撃力がアップできる。確実にガトリングールを破壊できたが、神楽坂は万が一、またダメージを防がれることを警戒して《竜魔導騎士ブラック・マジシャン》を選択していた。
このカードであれば、仮に相打ちが失敗してガトリングールが破壊できなかったとしても、こうして破壊されて後続に繋げることが出来る。ブラック・キャバルリーと《ブラック・マジシャン》の連撃よりも、《竜魔導騎士ブラック・マジシャン》からの《ブラック・マジシャン》、《竜騎士ガイア》の連撃の方が、攻撃に使えるモンスターが一体多いのも選択理由の一つだった。
「まだバトルフェイズなので、当然攻撃できる! 行けっ、《ブラック・マジシャン》! ブラック・マジック!!」
《ブラック・マジシャン》 ATK2500 VS遊矢 LP1300
これ以上ないレベルの連続攻撃で、確実に遊矢を倒しにいく神楽坂。
「墓地の《EMバリアバルーンバク》の効果! 相手モンスターの直接攻撃宣言時、手札の《EMクレイブレイカー》を墓地へ送り、このカードを墓地から守備表示で特殊召喚する!」
《EMバリアバルーンバク》
効果モンスター
☆6 風属性 獣族
ATK1000 DEF2000
だが、遊矢はまだ耐えていた。墓地から復活したバリアバルーンバクが遊矢を守っていく。
「なら、そのモンスターを破壊しろ、ブラック・マジック!!」
《ブラック・マジシャン》 ATK2500 VS《EMバリアバルーンバク》 DEF2000
しかし、神楽坂も防がれるであろうことは読んでいた。だからこそ、とどめをさせるようにモンスターを二体呼んでいたのだ。
「これで終わりだ、《竜騎士ガイア》でダイレクトアタック! ダブル・ドラゴン・ランス!」
《竜騎士ガイア》 ATK2600 VS遊矢 LP1300
流石にもう防御手段はないはず――そう考える神楽坂だが、遊矢はさらにその先を行っていた。
「俺は墓地の《EMユニ》の効果発動! 墓地のこのカードと《EMオッドアイズ・ミノタウロス》をゲームから除外して、戦闘ダメージをゼロにする!」
不可視の守りが《竜騎士ガイア》の槍から遊矢を守る。まさか、この連続攻撃すら凌がれるとは――と、神楽坂は内心焦りを感じていた。
結果的に、《サイレント・バーニング》を発動させなかった場合や、ブラック・キャバルリーを融合召喚していた場合でも、遊矢にダメージは与えられなかった訳だが、このターンで決め切るつもりだったが故に、相手にもカードを大量にドローさせてしまっている。
このままでは返しのターンにライフをゼロにされる可能性があった。このカードに全て賭けると、神楽坂も最後のカードを発動させていく。
「魔法カード、《終わりの始まり》を発動! 自分の墓地に闇属性モンスターが七体以上いる時、五体を除外して三枚ドローする! 俺の墓地には、《幻想魔獣キマイラ》、《バフォメット》、クリボー五兄弟、《クリバビロン》、《ブラック・マジシャン・ガール》、《サクリボー》、《暗黒騎士ガイアロード》、《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》の十三体の闇属性がいる。この中から、《クリバビロン》と、《クリボー》を除く四体の兄弟の計五枚を除外して、三枚ドロー!」
前のターンに《貪欲な壺》を使って尚、こんなカードが使用可能だった。
下手をすれば、同じカードがもう一枚使えるレベルだ。ここに来ての三枚ドローで、遊矢も少し苦しそうな表情を浮かべている。
「リバースカードを三枚伏せてターンエンド!」
手札を一気に伏せて防御を固めてきた。これで出来ることは全てと、神楽坂もまた全力で遊矢に備えている。
神楽坂 手札0枚 LP2450
フィールド ブラマジ、竜ガイア
魔法・罠 リバース4枚
VS
遊矢 手札4枚 LP1300
フィールド なし
魔法・罠 なし
ペンデュラム オッドアイズ・ユニコーン
「俺のターン! 俺はスケール3の《EMゴールドファング》でペンデュラムスケールを再セッティング!」
金色のコミカルな狼が、崩れていたペンデュラムスケールを復活させていく。これで、レベル4~7までのモンスターが同時に召喚可能となった。
フィールドの状況は負けているが、手札は潤っている。出来れば、一気に勝負をかけていきたい所だった。
「俺は再びペンデュラム召喚! EXデッキから現れろ! レベル4、《相生の魔術師》! レベル5、《EMダグ・ダガーマン》! レベル6、《EMオッドアイズ・プリースト》! 《EMモンキーボード》!!」
《相生の魔術師》
効果モンスター ペンデュラム
☆4 光属性 魔法使い族
ATK500 DEF1500 攻撃表示
《EMダグ・ダガーマン》
効果モンスター ペンデュラム
☆5 地属性 戦士族
ATK2000 DEF600 攻撃表示
《EMオッドアイズ・プリースト》
効果モンスター ペンデュラム
☆6 闇属性 魔法使い族
ATK600 DEF1800 攻撃表示
《EMモンキーボード》
効果モンスター ペンデュラム
☆6 地属性 獣族
ATK1000 DEF2400 守備表示
スケールの数字が大きい故に、先程まで呼べていたレベル3以下のモンスターは呼び出せなくなっていた。
それでも、四体のモンスターが再び遊矢のフィールドを埋め尽くしていく。
「墓地の《EMクレイブレイカー》の効果! このカードが墓地に存在し、自分が二体以上のモンスターを同時にペンデュラム召喚した時、このカードを手札に戻す! さらに手札から、《EMキャスト・チェンジ》を発動! 手札の《EMクレイブレイカー》、《EMラフメイカー》をデッキに戻し、戻した『EM』カード+一枚をドローする! 三枚ドロー!」
再び手札を入れ替え、有効カードを引き入れる。
「《EMダグ・ダガーマン》の効果! このカードがペンデュラム召喚に成功したターンのメインフェイズ、手札の《EMコン》を墓地へ送りデッキからカードを一枚ドローする!」
さらに念入りな手札交換――これで、仮に遊矢が手札事故を起こしていたとしても解消された。ここから一気に攻めると言わんばかりに、遊矢がカードを展開していく。
「俺はレベル6の《EMモンキーボード》をリリースして、手札から《オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン》をアドバンス召喚! このカードはレベル8だが、レベル5以上のモンスターをリリースすることでアドバンス召喚が出来る!」
《オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン》
効果モンスター
☆8 闇属性 ドラゴン族
ATK3000 DEF2500 攻撃表示
見た目はオッドアイズによく似ているが、羽根が一回り大きく空を飛んでいた。
「《オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン》の効果! このカードがアドバンス召喚に成功した時、相手フィールドのモンスター一体を選んで破壊し、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える! 俺は《竜騎士ガイア》を選ぶ!」
「罠カード、《無限泡影》発動! 相手フィールドのモンスター一体の効果をターン終了時まで無効にする!」
一気にとどめを刺そうとした遊矢だったが、流石にそう簡単にはいかないようで、上手く効果を躱される。
「なら、《EMオッドアイズ・プリースト》の効果! ペンデュラム召喚したターンのメインフェイズ、このカードが攻撃表示の時、このカードを除外し、自分の墓地のEMモンスター、又はオッドアイズモンスターを特殊召喚できる! 俺は、オッドアイズ・プリーストを除外して、墓地の《EMガトリングール》を特殊召喚する!」
今まで守備表示でEXデッキを蓄えていたオッドアイズ・プリーストがその身を犠牲にして、墓地からガトリングールを復活させていく。
《EMガトリングール》
効果モンスター 融合
☆8 闇属性 悪魔族
ATK2900 DEF900 攻撃表示
「さらに、《相生の魔術師》の効果発動! 一ターンに一度、《相生の魔術師》は、このカード以外の自分フィールドのモンスター一体の攻撃力と同じになる! 俺は《オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン》の攻撃力をコピーする!」
《相生の魔術師》 ATK500→3000
これで攻撃力3000が二体、2900が一体、2000が一体と、強力な布陣となった。
「ただし、《相生の魔術師》の戦闘で発生する相手への戦闘ダメージはゼロになる」
「だが、モンスターは破壊できる……!」
「そういうこと! バトルだ! 《オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン》で、《ブラック・マジシャン》を攻撃!」
《オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン》 ATK3000 VS《ブラック・マジシャン》 ATK2500
「甘いぜ! 罠カード、《魔法の筒》!! 相手モンスターの攻撃宣言時、そのモンスターの攻撃を無効にし、攻撃力分のダメージを相手に与える! これで、今度こそ終わりだ!!」
アドバンス・ドラゴンの攻撃と同時に《ブラック・マジシャン》の頭上に二つの筒が現れる。一つがアドバンス・ドラゴンの攻撃を吸収し、もう一つが攻撃を跳ね返していく。
状況が一転して遊矢のピンチとなり、「遊矢!!」と、十代が悲痛な声を上げた――
「速攻魔法、《瞬間融合》! フィールドの《オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン》と《EMダグ・ダガーマン》を墓地へ送り、融合召喚する!」
速攻魔法による融合召喚――これにより、融合素材となったアドバンス・ドラゴンの攻撃は無効となり、対象を失った《魔法の筒》は不発。ダメージ効果も無効となった。
同時に、融合のエフェクトに合わせて遊矢が両手を合わせる。
「――二色の眼の巨龍よ、比類なき短剣使いと一つとなりて、目の前の敵を薙ぎ払え!! 融合召喚! 現れよ! 《EMオッドアイズ・メタル・クロウ》!!」
《EMオッドアイズ・メタル・クロウ》
効果モンスター 融合
☆8 闇属性 ドラゴン族
ATK3000 DEF2000 攻撃表示
鎧を着た二足歩行の狼が咆哮を上げる。指にはかぎ爪をつけて、如何にも狼な姿だが、これでもドラゴン族だった。
「バトルフェイズ中の融合召喚のため、当然攻撃が可能!」
「攻撃力3000……だが!」
神楽坂の墓地には、二ターン前に《クリア・クリボー》の効果で呼び出され、戦闘破壊された《サクリボー》がいた。
このカードは戦闘時に墓地から除外することでモンスターの破壊を防ぐ効果がある。また、リバースカードは《六芒星の呪縛》。相手モンスターの攻撃を封じる効果があった。
全ての効果を駆使すれば攻撃は受けきれる。
そして、《瞬間融合》で出した融合モンスターはエンドフェイズに破壊されるデメリットがあった――このターンさえ凌げば、まだ神楽坂にも勝機はある。
「続けてバトル! 《EMオッドアイズ・メタル・クロウ》で《竜騎士ガイア》を攻撃! この瞬間、《EMオッドアイズ・メタル・クロウ》の効果! このカードの攻撃宣言時、自分フィールドの全てのモンスターはバトルフェイズ終了時まで攻撃力が300アップする! 行けっ、鋼狼双爪斬剣!!」
「くっ、攻撃力を上げてきたか……!」
《EMオッドアイズ・メタル・クロウ》 ATK3000→3300 VS《竜騎士ガイア》 ATK2600
咆哮と共にバフがかかっていく。これによって、オッドアイズ・メタル・クロウだけでなく、遊矢の全てのモンスターの攻撃力が300上がった。
《相生の魔術師》 ATK3000→3300
《EMガトリングール》 ATK2900→3200
しかし、神楽坂にはもう予定通りにカードを発動させる以外の手段は残されていない。
「永続罠、《六芒星の呪縛》! 《EMオッドアイズ・メタル・クロウ》は攻撃できず、表示形式も変更できない! 」
六芒星の呪いがオッドアイズ・メタル・クロウの動きを封じていく。
「なら、《相生の魔術師》で、《竜騎士ガイア》を攻撃!!」
《相生の魔術師》 ATK3300 VS《竜騎士ガイア》 ATK2600
杖から放たれる魔法が、《竜騎士ガイア》を破壊せんとばかりにぶつかる。
「墓地の《サクリボー》の効果! 自分のモンスターが戦闘で破壊される場合、代わりにこのカードを墓地から除外できる! そして、《相生の魔術師》の効果で戦闘ダメージはゼロになる!」
「まだだ、《EMガトリングール》で《竜騎士ガイア》を攻撃!」
《EMガトリングール》 ATK3200 VS《竜騎士ガイア》 ATK2600
続けて、お得意のガトリングで、《竜騎士ガイア》を抹殺しようとしていく。
「ならば、罠カード、《ディメンション・リフレクター》発動! 自分フィールドのモンスター二体を除外することで、相手モンスター一体と同じ攻撃力、守備力を持つ効果モンスターとしてこのカードを攻撃表示で特殊召喚する! 俺は、《竜騎士ガイア》と《ブラック・マジシャン》を除外して《EMオッドアイズ・メタル・クロウ》のステータスをコピーした《ディメンション・リフレクター》を特殊召喚!」
《ディメンション・リフレクター》
罠カード 効果モンスター
☆4 闇属性 魔法使い族
ATK3300 DEF2000 攻撃表示
元々の攻撃力ではないため、強化された攻撃力が反映される。これで、ガトリングールは攻撃を仕掛けることが出来なくなった。
「さらに、この効果でこのカードが特殊召喚に成功した時、このカードの攻撃力分のダメージを相手に与える!」
「手札の《EMレインゴート》の効果発動! 自分にダメージを与える魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、このカードを手札から捨てることで効果ダメージをゼロにする!」
「くっ、まだそんなカードを……!」
しぶとい――と、神楽坂も表情を歪める。
だが、バーンダメージこそ、上手く対応されてしまったが、遊矢のフィールドにいる全てのモンスターの攻撃はこれで終わった。
――凌いだ。
こちらには《ディメンション・リフレクター》が残っている。次のターンで攻撃力が元に戻った《相生の魔術師》に攻撃を仕掛ければ、それで遊矢のライフはゼロになり自分の勝利――そう思い、神楽坂が笑みと共に前を見ると、遊矢が手札から一枚の魔法カードをこちらに向けてきた。
「速攻魔法、《ライバル・アライバル》! 自分、又は相手のバトルフェイズに発動! モンスター一体を召喚できる!」
「なにっ!?」
「俺は六芒星で動けない《EMオッドアイズ・メタル・クロウ》と《相生の魔術師》をリリースして、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をアドバンス召喚!!」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》
効果モンスター ペンデュラム
☆7 闇属性 ドラゴン族
ATK2500 DEF2000 攻撃表示
それは遊矢が一番信頼を置いているモンスターだった。
当然、バトルフェイズ中の召喚の為、オッドアイズには攻撃権利が残されている。
「だ、だが、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の攻撃力は2500だ! 攻撃力3300の《ディメンション・リフレクター》には及ばない!」
「それはどうかな? お楽しみはこれからだ!! 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》で、《ディメンション・リフレクター》に攻撃! 螺旋のストライク・バースト!!」
「バカな! 自爆特攻する気か!?」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》 ATK2500 VS《ディメンション・リフレクター》 ATK3300
オッドアイズが放つ赤い螺旋が、《ディメンション・リフレクター》にぶつかっていく。しかし、攻撃力が負けている故、このままでは神楽坂の言う通り自爆特攻にしかならなかった。
「この瞬間、《EMオッドアイズ・ユニコーン》のペンデュラム効果を発動! このカードがペンデュラムゾーンに存在する限り一度だけ、自分の『オッドアイズ』モンスターの攻撃宣言時、そのモンスター以外の『EM』モンスター一体の元々の攻撃力分、攻撃モンスターの攻撃力をアップする! 俺はガトリングールを選択し、オッドアイズの攻撃力を上げる!」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》 ATK2500→5400
ガトリングールの攻撃力をプラスしたことで、オッドアイズの攻撃力が《ディメンション・リフレクター》の攻撃力を2100上回った。
オッドアイズから放たれる赤い螺旋の波動がさらに大きくなり、そのまま《ディメンション・リフレクター》の全身を包み込んでいく。
「だが、まだライフは残る!」
「いや、残らない! オッドアイズの効果発動! 相手モンスターとの戦闘で発生するダメージを2倍にする! リアクション・フォース!!」
これで、神楽坂が受けるダメージは4200となる。仮にライフが満タンだったとしても耐えられるものではない。
「バカな! 俺が、俺のデッキが……!」
神楽坂 LP2450→0
勝敗が着くと同時に、ソリッドビジョンが消える。ギリギリで、遊矢が差し切った。
しかし、その姿に余裕はない。前のターンで与えられた大量の手札を全部消費して、何とか勝ちをもぎ取ることが出来たが、何かが違えば負けていたのは遊矢の方だっただろう。
久しぶりの激闘だった。
「俺が、負けた……?」
信じられないというように膝を付く神楽坂。
実際、神楽坂は良くやっていた。結果的に多少のミスはあったようだが、それでも与えられた手札で良く戦ったというべきだろう。だが、仮に戦っていたのが、本物の武藤遊戯であればおそらく負けていたのは遊矢だった。
神楽坂自身、それがわかるからこそ、自分の敗北を信じられずにいる。自分は武藤遊戯として、このデッキを操って見せた。にも、関わらず負けている。
「……なんでだ? このデッキは最強だ。負けるはずがない……!」
「そのデッキはお前が作った物じゃない。いくら作った強いデュエリストになりきったって、いざという時に頼りになるのはデッキとの信頼だ。その信頼は、製作者自身じゃないと持つことは出来ないんだよ」
試行錯誤して作ったデッキ――そのかけた時間が、デッキとの信頼を作る。
神楽坂はデッキを信じていたのだろう。しかし、デッキは神楽坂を信じていなかった。武藤遊戯へのリスペクト精神に応えて力は貸してくれたかもしれないが、本物の武藤遊戯が使えば遊矢はもっと早くに瞬殺されていたはずだ。海馬やペガサスとのデュエルから、その光景が簡単に目に浮かぶ。
信頼というものは、なりきりなんかで誤魔化しが効くようなものではない。
「こんな凄いデッキを使っても、俺は勝てないのか……やっぱり、俺にはデュエルの才能がなかったんだ……」
「それは――」
「いや、そうでもないさ」
遊矢が泣き崩れる神楽坂の言葉を否定しようとした瞬間、十代達が居る方向とは別の場所から声が聞こえてきた。
「カイザー!?」
「お兄さん!?」
十代や翔も驚いた声を出す。今の今までいなかったはずのカイザー亮が、明日香を連れてそこに立っていたのだ。
「明日香まで? また隠れて遊矢のデュエル見てたのかよ……!」
「うるさいわね! 私達も一足早くデッキを見せて貰おうと展示会場へ行ったのよ。そうしたら、ケースは割れてデッキは消えていた。それで辺りを探してみたら、あなた達を見つけたってだけよ」
「止めようかとも思ったが、止めるには惜しいデュエルだったんでな」
亮の言葉に、三沢が「そりゃそうだ」とツッコミを入れる。
武藤遊戯のデッキVS新システムのテスター榊遊矢の対決だ。デュエリストなら当然、最後まで結果を見たいと思うだろう。
「それに、どうやら見ていたのは俺達だけじゃないようだ」
と、言いながら、亮が目線を崖上に向ける。
同時に、レッド、イエロー、ブルー、各寮から十代達のように武藤遊戯のデッキを一足早く見ようと抜け駆けしていた生徒達が出てきた。
どれだけ隠れていたんだというレベルの人数で、ラーイエローの生徒も今まで猿真似しか出来ないと馬鹿にしていた神楽坂の実力に、「いやぁ、凄いデュエルだった」、「良いもん見させてもらった」、「参考になるデュエルだった」と喜びの声を上げている。
「確かに、他人のデッキを勝手に持ち出したのは許されない行為だ。しかし、その武藤遊戯のデッキが戦い、力を発揮する姿をみんなが見たがっていたのも事実。みんなも、ここは大目に見るだろう」
亮の言葉に全員が頷く。流石はカイザーと呼ばれる男だけあって、静かに全員を納得させてしまった。
ふと、遊矢の視界に隠れてこちらの様子を見るクロノスの姿が映る。完全に目があったので、とりあえず、「あー、みんながそう言ってくれるなら良かったー」と大きめの声を出した。
クロノスも内心では神楽坂を罰したい所だろうが、事件を解決してくれた遊矢を始め、他の生徒が誰一人神楽坂を責めないのでは罰するのは難しいと考えたのだろう。苦笑いでOKマークを出してきた。どうやら、今回は見逃してくれるらしい。
「さて、デュエルは俺が勝った訳だけど、デッキは返してくれるか?」
「ああ、勿論だ。デュエルしてくれてありがとう、榊遊矢」
「遊矢でいいよ。俺も全力を出せたし、楽しいデュエルだった」
「……そうだな。俺も、今までで一番楽しいデュエルだった!」
そう言って笑いながら、神楽坂がデュエルディスクからデッキを外そうとする。
「ちょーっと待ったー!」
しかし、そこに十代が待ったをかけた。
「……どうした、十代?」
「遊矢だけ遊戯さんのデッキとデュエルしてズルい! なぁ、神楽坂、俺ともデュエルしてくれよ!」
「いや、でも、このデッキを返さないと……」
「どうせ、展示は明日の朝なんだから、今返しても明日返しても一緒だろ? なら、デュエルした方がお得だぜ」
出た、十代の我が儘攻撃。こうなると、遊矢だけではとても止められない。
仕方なく、隣の亮に目線で「止めるのを手伝ってくれ」と、お願いしようとしたが、まさかの亮まで懐からデッキを取り出していた。
「……カイザー?」
「いや、十代の言うことにも一理ある。まだ時間はあるんだ。そのデッキのまだ見ていない所も見たいと思わないか?」
「明日香?」
「ごめんなさい、遊矢。私もやってみたいわ」
「三沢?」
「右に同じ」
ちなみに三沢の右にいるのは十代である。
「……俺はもう知らない。怒られても助けないからな」
付き合っていられないとばかりに、一足早くレッド寮に戻ろうとする遊矢。
そんな後ろでは、神楽坂にデュエルを挑む生徒達で混雑していた。隠れているクロノスが目線で遊矢に助けを求めてくるが、もう遊矢も疲れきっている。あれだけのデュエルの後で、暴徒達を止めるような力の余裕は残っていなかった。
原作との変化点。
・#19『VS遊戯デッキ(後編)』より、遊矢が激闘を制した。
久しぶりに遊矢も本気を出した。それでも負けそうだった辺り、遊戯さんデッキ強すぎワロリンヌ。
・他のみんなもデュエルをした。
十代を筆頭に戦いを挑んだ。カイザーが引き分けに持ち込んだ以外は全員負けている。この勝利の味を覚えた神楽坂は、後日自分で遊戯デッキを再現することを決意した。二代目デュエルキングにおれはなる!
デュエル内容変更点。
・オッドアイズ・アドバンス・ドラゴンの効果が、対象を取らない効果だっため内容を変更しました。
変更後は、ワタポンをなかったことにして、ディメンション・リフレクターでチェーンするのではなく、無限泡影を発動しています。また、ディメンション・リフレクターの発動タイミングを変更し、除外するモンスターをブラマジとガイアに変更しました。