榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

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#027 『たった一つの隙』

 十代と三沢のデュエルは全てにおいて、三沢の方が優勢だった。十代お得意の《融合》は封じられ、エクシーズまで対策されて、まさに手も足も出ないという状況と言っていいだろう。

 だが、それでも楽しそうな笑みを浮かべているのは、逆転の可能性を諦めていないからだった。そして、そんな人間の前に奇跡は転がってくる。三沢もそれをわかっているが故に、最後の最後まで手を抜くつもりはなかった。

 

「俺のターン!」

 

 三沢としてはここで追撃のモンスターカードを引きたい所。だが、今手札に出せるモンスターはいなかった。

 自身の引きの悪さを若干呪いつつ、勝つためにやることを進めていく。

 

「手札を一枚捨て、速攻魔法、《ツインツイスター》を発動! フィールドの魔法・罠カードを二枚まで破壊する! セットカードと、《バブル・ショット》を破壊する!」

「罠カード、《エレメンタル・チャージ》! 俺のフィールドの『E・HERO』モンスターの数×1000ポイント、ライフを回復する!」

 

 今、十代のフィールドには二体の『E・HERO』がいる。よって、2000ポイントの回復となる。

 

 十代 LP900→2900

 

 だが、同時に装備カードが破壊されたことで、バブルマンの攻撃力が元に戻り、戦闘破壊を肩代わりする効果も発動できなくなった。

 

 《E・HEROバブルマン》 ATK1600→800

 

「これで怖いものはない。バトル! 《ウォーター・ドラゴン》で、攻撃表示のワイルドマンを攻撃! アクア・バニッシャー!!」

 

 《ウォーター・ドラゴン》 ATK2800 VS《E・HEROワイルドマン》 ATK1500

 

 強力な水の一撃が、ワイルドマンを襲っていく。

 

「くっ!」

 

 十代 LP2900→1600

 

「続いて、《マイティ・ウォリアー》でバブルマンを攻撃!」

 

 《マイティ・ウォリアー》 ATK2200 VS《E・HEROバブルマン》 DEF1200

 

 先程、フェザーマンを倒した剛拳がバブルマンを吹き飛ばした。守備表示故に戦闘ダメージはないが、《マイティ・ウォリアー》にはまだ効果が残されている。

 

「《マイティ・ウォリアー》の効果! 戦闘で破壊したモンスターの攻撃力の半分を相手に与える!」

 

 バブルマンの攻撃力800の半分、400が十代のライフから引かれていく。

 

「っ!」

 

 十代 LP1600→1200

 

 この効果がある限り、守備表示でダメージを凌ぐという手段も簡単には使えなかった。

 

「俺はリバースカードを一枚伏せてターンエンド」

 

 

 三沢 手札1枚 LP3900

 フィールド 《ウォーター・ドラゴン》、《マイティ・ウォリアー》

 魔法・罠 《王宮の鉄壁》、《デビリアン・ソング》、リバース1枚

 

 VS

 

 十代 手札0枚 LP1200

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

「へっ、楽しいな。三沢……」

「お前用にチューンした特別デッキだ。とことん味わってくれ」

「ああ、味わわせて貰うぜ。俺のターンだ!」

 

 何とかライフは回復したが、じり貧な状況に変わりはない。だが、それでも十代は笑みを浮かべていた。

この状況を打開しないと、十代に勝ち目はない。そんなギリギリな状況がたまらなく楽しい――そういう笑顔だった。

 

「魔法カード、《ホープ・オブ・フィフス》! 墓地の『E・HERO』を五体選択し、デッキに戻してシャッフル。その後カードを二枚ドローできる!」

「E・HERO版の《貪欲な壺》か……」

 

 十代は墓地から、スパークマン、クレイマン、バーストレディ、フェザーマン、バブルマンの五体を選択してデッキに戻していく。

 

「さらに、このカード発動時に、手札・フィールドに他のカードがない時、もう一枚カードをドローできる。合計三枚ドロー!」

「なっ! 三枚もドローだと!?」

 

 窮地にこそ、デュエリストの真価は問われる。このドローに、三沢は十代の底力を見たような気がした。

 

「俺は、魔法カード、《死者蘇生》を発動! 墓地の《E・HEROネクロダークマン》を守備表示で特殊召喚する!」

「《E・HEROネクロダークマン》……? そうか、《天使の施し》で墓地に送っていたカードか!」

 

 《E・HEROネクロダークマン》

 効果モンスター

 ☆5 闇属性 戦士族

 ATK1600 DEF1800 守備表示

 

 十代の墓地から赤黒い鎧を身に着けたダークヒーローが蘇ってくる。

 

「さらに、魔法カード、《簡易融合》! ライフを1000支払い、レベル5以下の融合モンスターを融合召喚扱いでEXデッキから特殊召喚する! 現れろ、《E・HEROセイラーマン》!」

 

 十代 LP1200→200

 

 これでライフは残り200しかなくなった。代わりにEXデッキから、全身水色で簡素な鎧を着た新たなヒーローが特殊召喚されていく。

 

 《E・HEROセイラーマン》

 効果モンスター 融合

 ☆5 水属性 戦士族

 ATK1400 DEF1000 守備表示

 

「だが、ネクロダークマンはともかく、《簡易融合》で呼び出したモンスターは攻撃も出来ず、エンドフェイズに破壊されてしまうはず……《瞬間融合》か……?」

「何だ、もう忘れたのかよ? お前の《デビリアン・ソング》の効果で、俺のモンスターはレベルが一つ下がるんだぜ」

「ッ! しまった!?」

 

 《E・HEROネクロダークマン》 ☆5→4

 《E・HEROセイラーマン》 ☆5→4

 

「これでレベル4のモンスターが二体揃ったぜ!」

「まさか、力づくで《デビリアン・ソング》の効果を超えてくるとは……!」

 

 三沢の使った《デビリアン・ソング》は、あくまでモンスターのレベルを下げる効果であって、エクシーズ自体を封じるものではない。

 

 十代はそのことに気が付いていた。

 

「俺はレベル4になったネクロダークマンとセイラーマンでオーバーレイ!!」

 

 簡易融合で戦えないモンスターを出したのは、あくまでもエクシーズへの布石。全ては、この状況を逆転させるためのモンスターを出すためだった。

 

「二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! 新たな英雄よ、逆境を跳ね返す力をその手に、平和への礎となれ! エクシーズ召喚!!」

 

 ようやく見えた三沢の隙を突くように、十代はEXデッキからモンスターを召喚していく。

 

「――現れろ、《№39希望皇ホープ》!!」

 

 《№39希望皇ホープ》

 効果モンスター エクシーズ

 ランク4 光属性 戦士族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 十代が持つナンバーズのエクシーズモンスター。

 ずっと警戒していたにも拘わらず、その召喚を許してしまった三沢は悔しそうな顔をしている。

 

「くっ、ホープの召喚を許してしまったか……!」

「まだだ! 装備魔法、《リバース・ブレイカー》をホープに装備! このカードの効果で、装備モンスターが攻撃宣言した時、相手フィールドの魔法・罠カードを選択して破壊できる!」

「なんだと!?」

「さらに、この効果の発動に対して、相手は魔法・罠カードを発動出来ない!」

「ならば、このタイミングで、二枚目の《宮廷のしきたり》を発動! これで、お前はこのカード以外の永続罠を破壊できない!」

「くっ、ここでまた《宮廷のしきたり》か……!」

 

 再び、《宮廷のしきたり》が発動したことで、十代は破壊するカードを固定されてしまった。

 だが、今の十代には攻撃する以外の択はない。

 

「行くぜ! 俺はホープで《マイティ・ウォリアー》を攻撃! ホープ剣・スラッシュ!!」

 

 一気にバトルフェイズへと突入し、ホープが《マイティ・ウォリアー》へと斬りかかっていく。

 

 《№39希望皇ホープ》 ATK2500 VS《マイティ・ウォリアー》 ATK2200

 

「この瞬間、《リバース・ブレイカー》の効果で、《宮廷のしきたり》を破壊する!」

 

 ホープが《マイティ・ウォリアー》は破壊すると同時に、装備カードの効果で《宮廷のしきたり》も破壊された。

 

「ぐっ!!」

 

 三沢 LP3900→3600

 

「しっかし、これでも突破できねーか……流石は三沢、ガードがかてぇ」

「万丈目戦で使った魔法・罠カードの大半を、お前を封じるカードに変えたからな。そう易々とは破壊されては困る」

「俺はこれでターンエンドだ」

 

 

 十代 手札0枚 LP200

 フィールド ホープ

 魔法・罠 《リバース・ブレイカー》

 

 VS

 

 三沢 手札2枚 LP3600

 フィールド 《ウォーター・ドラゴン》

 魔法・罠 《王宮の鉄壁》、《デビリアン・ソング》

 

 

 ようやく何とか体勢を立て直した十代だが、その代償として残りのライフが200しかない。

 もし、三沢の攻撃を一つでも通せば、その瞬間にライフはゼロとなる。まさに、死と瀬戸際だった。

 

「俺のターン、ドロー! ふっ、良いカードを引いた。俺は、魔法カード、《儀式の下準備》を発動! デッキから儀式魔法カードを一枚と、その儀式魔法カードに名前が記載された儀式モンスター一体をデッキ・墓地から手札に加える! 俺はデッキから《リトマスの死儀式》と《リトマスの死の剣士》を手札に加えるぜ!」

「リトマス……?」

「これは、最初の月一試験の時に、お前達と買った儀式のパックに入っていたモンスターだ。なかなか魅力的な効果でね、使わせてもらっている」

「えっ、あのパックに!?」

 

 在庫処分として引き受けて貰ったはずのパックに、まさかそこまで実用的なカードが入っているとは思わず十代も驚きの声を上げた。

 

「そして、俺はそのまま《リトマスの死儀式》を発動! 手札のレベル8、《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》をリリースし、《リトマスの死の剣士》を儀式召喚!!」

 

 手札のマグネット・バルキリオンの魂を吸収し、騎士服を身に纏った二刀の剣士がフィールドに出現する。

 

 《リトマスの死の剣士》

 効果モンスター 儀式

 ☆8 闇属性 戦士族

 ATK0 DEF0 攻撃表示

 

「攻撃力がゼロ……?」

「このカードがモンスターゾーンに存在する限り、罠の効果を受けず、戦闘では破壊されない。そして、罠カードが表側表示で存在する場合、このカードの攻撃力・守備力は3000になる!」

 

 三沢のフィールドには十代封じの《王宮の鉄壁》と《デビリアン・ソング》が存在しているため、《リトマスの死の剣士》は問題なく条件をクリアしていた。

 十代封じとして永続罠を多く採用しているが故に、デッキとの相性が良いということなのだろう。

 

 《リトマスの死の剣士》 ATK0→3000 DEF0→3000

 

「攻撃力3000!?」

「どうだ! これで、俺のフィールドの二体のモンスターはお前のホープの攻撃力を超えたぞ!」

「くっ!」

「確か、ナンバーズはナンバーズでしか戦闘破壊できないんだったな。しかし、攻撃力が超えていれば問題あるまい」

「……いや、それ以前に、俺のホープにナンバーズでしか戦闘破壊できない効果はない」

「そうか、では遠慮なく行くぞ! バトルフェイズ! 《ウォーター・ドラゴン》で、希望皇ホープに攻撃! アクア・バニッシャー!!」

 

 《ウォーター・ドラゴン》 ATK2800 VS《№39 希望皇ホープ》 ATK2500

 

「ホープの効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、攻撃を無効にする! ムーンバリア!」

 

 圧倒的な威力を持つ水の一撃を、オーバーレイユニットがバリアとなりホープを守っていく。

 

「そうだ、お前にはそうするしかあるまい! 続けて、《リトマスの死の剣士》で希望皇ホープに攻撃!!」

 

 《リトマスの死の剣士》 ATK3000 VS《№39 希望皇ホープ》 ATK2500

 

「まだだ! オーバーレイユニットをもう一つ使い、攻撃を無効にする! ムーンバリア!!」

 

 迫る二刀の剣を、再びオーバーレイユニットをバリアへ変換することで守る。

 しかし、これでホープのオーバーレイユニットはゼロ。次は効果が使えない上、三沢は知らないことだが、ホープにはオーバーレイユニットがない状態で攻撃対象に選択された時、自壊してしまうデメリット効果を持っていた。

 

「次で破壊してやるぞ。俺はこれでターンエンド!」

 

 三沢 手札0枚 LP3600

 フィールド 《ウォーター・ドラゴン》、リトマス

 魔法・罠 《王宮の鉄壁》、《デビリアン・ソング》

 

 VS

 

 十代 手札0枚 LP200

 フィールド ホープ

 魔法・罠 《リバース・ブレイカー》

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 しかし、ピンチではあるものの、ここに来て三沢の手札がようやく尽きた。

 確かに《リトマスの死の剣士》は脅威だが、これで十代はホープに攻撃をさせることが出来れば、三沢の罠を破壊することが出来る。

 

「魔法カード、《アームズ・ホール》を発動! デッキの一番上のカードを墓地へ送り、デッキ・墓地から装備カード一枚を選んで手札に加えることが出来る! ただし、俺はこのターン、通常召喚が出来ない」

「召喚権を放棄してまでサーチしてくるカード……」

「俺はデッキから《エクシーズ・ユニット》を手札に加える!」

「やはり、ホープに装備するカードか!」

「その通り、俺は《エクシーズ・ユニット》をホープに装備! このカードは、装備モンスターの攻撃力をランクの数×200ポイントアップさせる!」

 

 《№39希望皇ホープ》 ATK2500→ATK3300

 

「さらに、オーバーレイユニットを使用して効果を発動する時、このカードをオーバーレイユニットの代わりとして使用することが出来る!」

「つまり、ムーンバリアをもう一回使用出来るようになったということか!」

「へへっ!」

 

 その笑みが答えといわんばかりだが――実は、ハッタリだった。

 装備魔法、《エクシーズ・ユニット》はあくまでオーバーレイユニットを使用する効果を使用する時に、肩代わりする効果であり、オーバーレイユニットになる効果ではない。

 そのため、三沢に自爆特攻されれば、その時点でホープの自壊効果が発動し、ムーンバリアを使う余裕もなくホープは破壊され墓地へ送られる。

 だが、十代はあくまでカードの効果を説明しただけだった。三沢の深読みを誘ってはいたが、一切嘘はついていない。言うならば、三沢が勝手に勘違いしただけだ。

 

「とにかく、これでホープの攻撃力はお前のモンスターを超えた! バトルだ! 希望皇ホープで《ウォーター・ドラゴン》に攻撃! ホープ剣・スラーッシュ!!」

 

 《№39 希望皇ホープ》 ATK3300 VS《ウォーター・ドラゴン》 ATK2800

 

 ホープが二本の剣を構え、《ウォーター・ドラゴン》へと突っ込んでいく。

 

「この瞬間、《リバース・ブレイカー》の効果で今度こそ、《王宮の鉄壁》を破壊する!」

「くっ! まさか、攻撃力を上げるカードを持ってくるとは……!」

 

 三沢のフィールドの《ウォーター・ドラゴン》も《リトマスの死の剣士》もどちらもホープよりも攻撃力が高い。

 故に、攻撃は封じられ、《リバース・ブレイカー》の効果を発動する機会はないと油断したようだが、十代は易々とキーカードを引くサーチカードを引いてきた。

 これにより、《王宮の鉄壁》が破壊され、カードを除外する効果を互いに使用できるようになる。同時に、ホープによって、《ウォーター・ドラゴン》が真っ二つに切り裂かれた。

 

「っ! やるな!」

 

 三沢 LP3600→3100

 

「だが、この瞬間、《ウォーター・ドラゴン》の効果が発動! このカードが破壊され、墓地へ送られた時、墓地の《ハイドロゲドン》二体と《オキシゲドン》一体を特殊召喚できる! 甦れ!」

 

 ウォータードラゴン特殊召喚の際に墓地へ送られた三体のモンスターが復活する。

 

 《ハイドロゲドン》×2

 効果モンスター

 ☆4 水属性 恐竜族

 ATK1600 DEF1000 守備表示

 

 《オキシゲドン》

 効果モンスター

 ☆4 風属性 恐竜族

 ATK1800 DEF800 守備表示

 

「さらに、墓地の《ボンディング―D2O》の効果発動! このカードが墓地に存在し、《ウォーター・ドラゴン》又は《ウォーター・ドラゴン・クラスター》がフィールドから墓地へ送られた場合、このカードを手札に戻す!」

「防御も完璧かよ! 俺は墓地の《置換融合》の効果を発動! 墓地のこのカードを除外して、融合モンスターをEXデッキに戻し、カードを一枚ドローする! 俺はセイラーマンをEXデッキに戻し、カードを一枚ドロー!」

 

 今のターンに使った《アームズ・ホール》によって捨てられたカードだった。

 このカードはルール上、《融合》と扱うので、一見《封魔の呪印》の効果でカードの発動が出来ないように思えるが、墓地から除外して発動する効果はカードの発動ではないので使用できる。

 先程までは《王宮の鉄壁》があって使えない効果だったが、ようやく使えるとばかりに十代がカードをドローした。

 

「カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

 

 十代 手札0枚 LP200

 フィールド ホープ

 魔法・罠 《リバース・ブレイカー》、《エクシーズ・ユニット》、リバース1枚

 

 VS

 

 三沢 手札0枚 LP3100

 フィールド リトマス、《ハイドロゲドン》×2、《オキシゲドン》

 魔法・罠 《デビリアン・ソング》

 

 

 周囲から見ると、十代が押し始めたように見えるが、ホープに自壊効果がある以上、向こうがモンスターで攻撃してくるだけで負けだ。

 だが、十代は諦めていなかった。

 ホープの攻撃力が3300あり、且つ効果も使用できると勘違いさせている今なら起こりうるかもしれない可能性がある。

 一縷の望みだが――もしかしたら、起こり得るかもしれない。そんな、たった一つの展開が起きることに十代は賭けた。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 覚悟を決めた十代とは逆に、三沢は焦っていた。十代封じの大半が瓦解し、十代のフィールドには攻撃力3300のホープが居る。

 次に攻撃を受け、《リバース・ブレイカー》で《デビリアン・ソング》を破壊されれば、《リトマスの死の剣士》の攻撃力もゼロだ。

 何とかこのドローで、逆転のカードを呼びこまんとカードを引いていく。そんな藁にも縋る三沢の願いは――上手く天に聞き届けられた。

 

「よし! 魔法カード、《トランスターン》を発動! 自分フィールドの表側表示モンスター一体を墓地へ送り、そのモンスターと属性・種族が同じでレベルが一つ上のモンスター一体をデッキから特殊召喚する! 俺は、《ハイドロゲドン》を墓地へ送り、《デューテリオン》をデッキから特殊召喚!」

 

 墓地に送られた《ハイドロゲドン》を構成していた泥水が姿を変え、《デューテリオン》へと変化していく。

 

 《デューテリオン》

 効果モンスター

 ☆5 水属性 恐竜族

 ATK2000 DEF1400 攻撃表示

 

「そのモンスターは!?」

「ふっ、《デューテリオン》の効果発動! このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地の《ハイドロゲドン》、《オキシゲドン》、《デューテリオン》のいずれか一体を特殊召喚できる! 俺は《ツインツイスター》のコストで墓地へ捨てた、《デューテリオン》を特殊召喚!」

 

 《デューテリオン》

 効果モンスター

 ☆5 水属性 恐竜族

 ATK2000 DEF1400 攻撃表示

 

 二体目の《デューテリオン》が墓地から復活する。

 これで、三沢のフィールドに《デューテリオン》二体と、《オキシゲドン》一体が揃った。

 

「いくぞ! 俺は手札から《ボンディング―D2O》を発動! 自分の手札・フィールドの《デューテリオン》二体と、《オキシゲドン》一体をリリースし、自分のデッキ・手札・墓地から《ウォーター・ドラゴン》、または《ウォーター・ドラゴン・クラスター》一体を《ボンディング―H2O》の効果扱いとして特殊召喚する! フィールドの《デューテリオン》二体と、《オキシゲドン》一体をリリース! 出でよ、《ウォーター・ドラゴン・クラスター》!!」

 

 《ウォーター・ドラゴン・クラスター》

 効果モンスター

 ☆10 水属性 海竜族

 ATK2800 DEF2600 攻撃表示

 

 万丈目戦でも活躍した双頭の水のドラゴンが出現する。これこそ、三沢の切り札だった。

 

「けど、まだ攻撃力はホープの方が上だ!」

「万丈目戦でも言ったはずだ! 力が全ての時代は終わったと! 《ウォーター・ドラゴン・クラスター》の効果! このカードが特殊召喚に成功した時、相手フィールドの効果モンスターはターン終了時まで攻撃力がゼロになり、効果も発動できない!」

「しまった、そうだった!」

 

 《№39希望皇ホープ》 ATK3300→0

 

「バトル! これで終わりだ! 《ウォーター・ドラゴン・クラスター》で希望皇ホープに攻撃! アクア・バニッシュ・クラスター!!」

 

《ウォーター・ドラゴン・クラスター》 ATK2800 VS《№39希望皇ホープ》 ATK0

 

 双頭の龍の二つの口から放たれる水のブレスが、攻撃力0のホープへと迫っていく。

 

 しかし、十代は笑みを浮かべた。

 

 これだ――この状況になるのを、ずっと待っていたのだ。

 

「罠カード、《魂の一撃》! 自分のライフが4000以下の時、自分フィールド上のモンスターが相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時、ライフを半分支払って発動!」

 

 十代 LP200→100

 

「選択したモンスターの攻撃力は、相手のエンドフェイズ時まで、自分のライフポイントが4000よりも下回っている数値分アップする!」

「なにっ!」

「サンキューな三沢! お前がホープの効果を無効にしてくれたおかげだ! 実は、ホープってオーバーレイユニットがない時に攻撃されると自壊する効果があるんだわ!」

「なっ!」

 

 十代は最初から、三沢が《ウォーター・ドラゴン・クラスター》を呼ぶのを待っていた。

 万丈目戦で見た、効果の発動を無効にする効果、これがあれば生き残れるとずっと考えていたのだ。

 しかし、それには賭けが必要だった。

 三沢が素直にモンスターの攻撃力を上げるカードではなく、《ウォーター・ドラゴン・クラスター》を呼ぶカードを引くという賭けが。

 だが、キーカードの《ボンディング―D2O》は手札にあり、《オキシゲドン》もフィールドにいる。後は《デューテリオン》二体を手札がフィールドに呼ぶだけなら、可能性は十分にあった。

 後は三沢が上手く展開してくれるのを待つだけ。《デューテリオン》の出現に驚いたのも、万丈目のようなセリフを言ったのも、《ウォーター・ドラゴン・クラスター》の効果を忘れたような声を出したのも、全ては演技。

 

 全ては、《ウォーター・ドラゴン・クラスター》の効果を発動できない効果で、ホープが攻撃対象になっても自壊しなくなるようにするためだった。

 

「俺のライフは100。よって、ホープの攻撃力は3900アップする!」

 

《ウォーター・ドラゴン・クラスター》 ATK2800 VS《№39 希望皇ホープ》 ATK0→3900

 

 攻撃力が上がったホープが剣で水を切り裂き、逆に《ウォーター・ドラゴン・クラスター》へと迫っていく。

 

 だが、まだ《ウォーター・ドラゴン・クラスター》には効果が残されていた。

 

「くっ、《ウォーター・ドラゴン・クラスター》の効果発動! このカードをリリースして、手札・デッキから《ウォーター・ドラゴン》二体を、召喚条件を無視して守備表示で特殊召喚する!」

 

 十代の使った《魂の一撃》は攻撃宣言時に発動する効果故に、フリーチェーンで発動する《ウォーター・ドラゴン・クラスター》の第二の効果が発動できる。

 クラスターが分裂し、二体の《ウォーター・ドラゴン》へと姿を変えていく。

 

 《ウォーター・ドラゴン》

 効果モンスター

 ☆8 水属性 海竜族

 ATK2800 DEF2600 守備表示

 

 《ウォーター・ドラゴン》

 効果モンスター

 ☆8 水属性 海竜族

 ATK2800 DEF2600 守備表示

 

「危ない所だった……!」

「ちっ、逃がしたか!」

「メインフェイズ2で、俺は《リトマスの死の剣士》を守備表示に変更し、エンドフェイズ」

「このエンドフェイズ、《魂の一撃》と《ウォーター・ドラゴン・クラスター》の効果が切れ、ホープの効果と攻撃力は元に戻る」

 

 《№39希望皇ホープ》 ATK3900→3300

 

「くっ、ターンエンドだ」

 

 

 三沢 手札0枚 LP3100

 フィールド リトマス、《ハイドロゲドン》、《ウォーター・ドラゴン》×2

 魔法・罠 《デビリアン・ソング》

 

 VS

 

 十代 手札0枚 LP200

 フィールド ホープ

 魔法・罠 《リバース・ブレイカー》、《エクシーズ・ユニット》

 

 

「残念だったな三沢。素直に攻撃してりゃ、お前の勝ちだったぜ」

「そうみたいだな……惜しいことをした」

 

 ホープの自壊効果を知っていれば三沢の勝ちだった――が、それを責めるのは酷と言うものだろう。

 ホープのしっかりとしたテキストを知っているのは、デュエルアカデミアだと所有者の十代と預かったことのある遊矢だけだ。

 三沢からすれば、どうにかして攻撃力3300のホープを攻略する必要があった。故の《ウォーター・ドラゴン・クラスター》だ。そこにミスはない。しかし、十代はそこに罠を仕掛けていた。嵌められたのだ。

 

「こうなれば、しばらくは守備で凌がせてもらうぞ」

「へへっ、逃がすかよ。俺のターン、ドロー! 魔法カード、《強欲な壺》! デッキからカードを二枚ドロー!」

 

 十代が手札を増やしていく。

 この状況で、当たり前のようにドローカードを引き当てる。それこそが、十代が粘って辛抱して耐え抜いたことへの、天からの報酬のように見えた。

 

「墓地のネクロダークマンの効果発動! 墓地にこのカードがある時、『E・HERO』モンスター一体をリリースなしで召喚できる! 俺は《E・HEROエッジマン》をリリースなしで通常召喚!!」

 

 《E・HERO エッジマン》

 効果モンスター

 ☆7 地属性 戦士族

 ATK2600 DEF1800 攻撃表示

 

 十代のデッキで唯一の融合無しで攻撃力が2500を超えている大型モンスター。また、守備モンスターを攻撃した時、貫通ダメージを与える効果も持っていた。

 

「エッジマン……貫通ダメージ持ちのモンスターか! だが、仮に《リバース・ブレイカー》で《デビリアン・ソング》を破壊して、《リトマスの死の剣士》の守備力をゼロにしても、まだ俺のライフは残る!」

「それはどうかな? 魔法カード、《受け継がれる力》を発動! 自分フィールド上のモンスター一体を墓地へ送り、送ったモンスターとは別の自分フィールド上のモンスター一体を選択する! 選択したモンスターの攻撃力はエンドフェイズまで墓地に送ったモンスターの攻撃力分アップする!」

「なにっ、そのカードは!?」

 

 それは、万丈目戦で三沢も使ったカードだった。

 

「俺は、ホープを墓地へ送り、エッジマンの攻撃力をホープの攻撃力2500分アップさせる!」

 

 ホープがエネルギーに変換され、エッジマンのパワーを2500上げていく。

 

《E・HERO エッジマン》 ATK2600→5100

 

「攻撃力5100だと!?」

 

 予想外の攻撃力に驚く三沢。

 しかし、三沢は万全の防御陣形を敷いていた。ホープがリリースされ、《リバース・ブレイカー》がなくなった今、仮に《リトマスの死の剣士》を攻撃されてもダメージは2100。《ウォーター・ドラゴン》を攻撃されてもダメージは2500で済む。

 

 ――だが、一点。

 

 たった一点だけ、防御に移行した三沢が処理し損ねた重大な隙が存在した。

 

「しまった! 俺の《ハイドロゲドン》の守備力は1000……!」

 

 エッジマンの攻撃力が2600のままなら問題なかったが、攻撃力が2500上がったことで合計4100の貫通ダメージを受ける。

 仮にライフが初期値のままであっても、受けきれないダメージだった。

 

「もう《リバース・ブレイカー》も《エクシーズ・ユニット》も必要ない! これで終わりだからな! 行けっ、エッジマン! 《ハイドロゲドン》に攻撃! パワー・エッジ・アターック!!」

 

《E・HERO エッジマン》 ATK5100 VS《ハイドロゲドン》 DEF1000

 

 デュエルモンスターズは強いモンスターを倒した方の勝ちではなく、あくまで相手のライフをゼロにした方が勝ちと言うゲームだ。

 故に、十代は三沢が見せたこの一瞬の隙を見逃さなかった。エッジマンが《ハイドロゲドン》を細切れにし、その差4100のダメージを三沢のライフから削る。

 

「ぐっ!!」

 

 三沢 LP3100→0

 

 三沢のライフがゼロになるのと同時にデュエルが終了し、ソリッドビジョンが消えていく。

 結局、三沢はホープへの対処に一杯一杯になる余り、他のモンスターへの対処を蔑ろにしてしまった。融合がなくても、ヒーロー同士の力を組み合わせて戦うのが十代の本領だ。

 とはいえ、三沢も途中までは十代を完封していた。

 もし、十代がホープを呼べなかったら負けていたのは十代の方だったかもしれない。

 

「し、勝者、シニョール十代ぃ……」

 

 ソリッドビジョンが解除されるのを見ながら、クロノスがそう小さく口にする。

オシリスレッドが代表など認めたくないという気持ちが全面的に顔に出ていた。しかし、こうして代表決定デュエルまでしてしまった以上、クロノスであっても結果を覆すのは難しいだろう。

 

「負けたよ、まさかあの包囲網を力づくで突破してくるとはな……」

「お前がホープの効果を知ってたら、結果は変わってたかもしれないな」

「所詮はたらればだ。だが、次は勝たせてもらう。今回のデータを元に、更なる改良を加えた俺のデッキでな」

「へっ、楽しみにしてるぜ。ガ――」

「ガッチャ。楽しいデュエルだったぜ」

「って、それ俺のセリフ!」

 

 こうして、ノース校との対抗戦に出るのは十代に決まった。

 また、この裏で一人のジャーナリストがデュエリストとしての気持ちを思い出して、悪事から足を洗うということが起きていたが、フィールドにいる十代や三沢。応援席にいる遊矢や翔達もそのことに気付くことはなかった。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・#22『融合封じ! 十代VS三沢(後編)』より、十代が力技でエクシーズした。
 レベル5はリリースが一体いるので、まさかこんなに早く揃えられるとは思わず、三沢も一瞬効果を忘れてしまう程だった。

・ホープ専用の装備魔法を使った。
 どこで手に入れたとかは気にしたら負け。

・国崎が遊矢に出会わず帰った。
 意味深なことだけ言ってもう出番がないので、合わせる必要もなかった。



 デュエル内容変更点。

・リバース・ブレイカーの効果に対して、魔法・罠の発動が出来ないのを忘れていたので修正しました。
 偽物のわなを発動していましたが、修正後はリバース・ブレイカーの装備にチェーンする形で、二枚目の宮廷のしきたりを発動しています。





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