榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

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#028 『もけもけ』

 十代が学園対抗戦の代表に決まった日から、遊矢はクロノスから「今からでも遅くないーノ。シニョール榊に代表になって欲しいノーネ」と頼み込んでくるようになった。

 どうやら、彼の中ではオシリスレッドが代表と言うのは耐えられるものではないらしい。

 しかし、表向き遊矢もオシリスレッドに所属している。仮に、十代を倒して学園代表の座を奪ったとしても、オシリスレッドが代表になることに変わりはなかった。

 ただ、クロノスもそこは理解しているようで、遊矢は新システムのテスターということで特別と自分を納得させたらしい。とはいえ、結局遊矢にその気がないとわかると、肩を落としてどこかに去ってしまった。

 そんな誘いを受けていた遊矢に対し、当の代表である十代は学園対抗戦に向けてデッキの調整をしている。

 E・HEROだけではなく、ホープとの兼ね合いなども考えているのか、デッキ調整に難儀しているように見えた。

 しかし、問題はデッキよりも周りの環境かもしれない。翔や隼人、三沢、明日香が、自分のデッキに入っているカードを使えとデッキ調整に悩んでいる十代に注文をつけているのだ。

 名誉ある学園対抗戦に自分のカードを使ってもらいたいようだが、どのカードも十代のデッキとのシナジーがない。最終的には十代がいつもサボっている屋上へ逃げたのだが、何故かそこで茂木もけ夫というオベリスクブルーの生徒とデュエルすることになった。

 

 聞けば、彼も十代や遊矢と同じく精霊が見えるようで、戦いから精霊を解放したいと考えているらしい。

 その証拠に彼の精霊である《もけもけ》は、とてものんびりしており、戦うことがあまり好きそうではなかった。

 

「言ってることは良くわかんねーけど、デュエルなら受けて立つぜ」

「よーし、行くよ」

「「デュエル!」」

 

 先攻はもけ夫――だが、久しぶりにデュエルをするようで、ドローする動きが何ともぎこちなかった。

 

「僕のターン。僕は手札から、《はぐれ・もけもけ》の効果を発動。このカードを手札から捨て、デッキから《はぐれ・もけもけ》以外のもけもけカードを手札に加えるよ。僕は永続魔法、《怒れるもけもけ》を手札に」

「も、《もけもけ》……?」

「さらにモンスターセット、リバースカードを四枚伏せてターンエンド」

 

 

 もけ夫 手札1枚 LP4000

 フィールド セット1体

 魔法・罠 リバース4枚

 

 VS

 

 十代 手札5枚 LP4000

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

 もけ夫がターンを終了すると同時に、十代を探していた先程の四人が屋上へやってきた。

 あまりの速さに「ゲッ! 何でここが!?」と驚く十代だが、どうも十代にとっては秘密のスポットでも、他のみんなにはバレバレらしく、翔が「いつもアニキ、ここでサボってるし」と言っている。

 

「ま、まぁいいや。今デュエル中なんだから静かにしろよな。俺のターン!」

 

 改めてデュエルを再開していく。

 もけ夫がカードを四枚も伏せて防御を固めたのに対し、十代は開幕から攻めに行くようだった。

 

「魔法カード、《融合》! 手札のフェザーマンとバーストレディを融合し、フレイム・ウイングマンを融合召喚!」

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》

 効果モンスター 融合

 ☆6 風属性 戦士族

 ATK2100 DEF1200 攻撃表示

 

 初手融合からフレイム・ウイングマンはもはや十代の基本と言っていい。

 しかし、まだ通常召喚権が残っているので、十代は続けてモンスターを召喚していった。

 

「さらに、スパークマンを召喚!」

 

 《E・HEROスパークマン》

 通常モンスター

 ☆4 光属性 戦士族

 ATK1600 DEF1400 攻撃表示

 

 稲妻と共にポーズを決めるスパークマン。これで十代のフィールドにはモンスターが二体並んだ。

 

「行くぜ、バトルだ! フレイム・ウイングマンでセットモンスターに攻撃! フレイムシュート!!」

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2100 VS《キーメイス》 DEF300

 

 守備モンスターはレベルⅠのとても小さくて可愛らしい天使だった。しかし、フレイムシュートによって、情け容赦なく焼却されていく。

 

「フレイム・ウイングマンの効果発動! モンスターを戦闘で破壊し墓地へ送った時、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

 フレイム・ウイングマンがもけ夫の前に移動し、全身を燃やしていく。《キーメイス》の攻撃力400がもけ夫のライフから削られた。

 

「あっちちちちち、熱いよぉ」

 

 もけ夫 LP4000→3600

 

「まだだ! スパークマンでダイレクトアタック! いけっ、スパークフラッシュ!!」

 

 《E・HEROスパークマン》 ATK1600 VSもけ夫 LP3600

 

「おっと、罠カード、《ドレインシールド》を発動。相手の攻撃を無効にして、その攻撃力分のライフを回復するよ」

 

 スパークマンの稲妻が吸収され、もけ夫のライフへと変換されていく。

 

 もけ夫 LP3600→5200

 

「させるかよ! 速攻魔法、《ダブル・アップ・チャンス》! モンスターの攻撃が無効になった時、攻撃力を二倍にして再びバトルできる! いけっ、スパークマン!!」

 

 《E・HEROスパークマン》 ATK1600→3200 VSもけ夫 LP5200

 

「うーん、それは駄目かなぁ。罠カード、《ダメージ・ダイエット》。この効果で、僕が受けるダメージは半分になるよ」

 

 しかし、攻撃を防ぐカードではない故、スパークマンの稲妻が直撃する。

 

「いたた……」

 

 もけ夫 LP5200→3600

 

「回復分を取り戻しただけになったか……! 俺はリバースカードを一枚伏せてターン――」

「このエンドフェイズ、永続罠《人海戦術》を発動するよ」

「なにっ!?」

「このカードの効果で、各ターンのエンドフェイズ時、そのターンの戦闘で破壊された自分のレベル2以下の通常モンスターの数だけ、デッキからレベル2以下の通常モンスターを選択して特殊召喚する。僕は《もけもけ》を呼ぶよ」

 

 《もけもけ》

 通常モンスター

 ☆1 光属性 天使族

 ATK300 DEF100 攻撃表示

 

 先程手札から捨てたモンスターによく似た、真っ白な四角いはんぺんに顔が書いてあるような可愛い天使が特殊召喚される。

 シンプルなデザイン故に愛嬌があり、後ろで見ていた明日香や翔が「可愛い~」と黄色い声を上げていた。

 

「さらに、速攻魔法、《地獄の暴走召喚》を発動。相手フィールドに表側表示モンスターが存在し、自分フィールドに攻撃力1500以下のモンスター1体のみが特殊召喚された時、手札・デッキ・墓地から同名モンスターを可能な限り特殊召喚するよ。おいで、《もけもけ》達」

 

 デッキと墓地から《もけもけ》が飛び出してくる。

 

 《もけもけ》×2

 通常モンスター

 ☆1 光属性 天使族

 ATK300 DEF100 攻撃表示

 

 《はぐれ・もけもけ》

 効果モンスター

 ☆1 光属性 天使族

 ATK300 DEF100 攻撃表示

 

「なっ! 同じモンスターが四体も!?」

「一体は《はぐれ・もけもけ》だよ。このカードは、フィールド・墓地に存在する限り、カード名が《もけもけ》となり、通常モンスターとして扱うんだ」

「そうか、このために《はぐれ・もけもけ》を墓地に……」

「《地獄の暴走召喚》の効果で、君もフィールドの表側表示モンスター一体を選んでその同名モンスターを手札・デッキ・墓地から特殊召喚できるよ」

「残念だけど、フレイム・ウイングマンは融合モンスターだし、スパークマンは俺のデッキに一枚だ」

「そっか、じゃあエンドで良いね?」

「ああ、俺はこれでターンエンドだ」

 

 

 十代 手札0枚 LP4000

 フィールド フレイム・ウイングマン、スパークマン

 魔法・罠 リバース1枚

 

 VS

 

 もけ夫 手札1枚 LP3600

 フィールド 《もけもけ》×3、はぐれもけ

 魔法・罠 《人海戦術》

 

 

 もけ夫のフィールドには《はぐれ・もけもけ》を含めて、《もけもけ》が四体並んでいた。

 そんな状況を見て、後ろの三沢は何やらにこやかに笑い、明日香や翔は黄色い声を上げ、隼人に至っては何故か眠そうにしている。

 何というか、いつもと様子が違った。

 

「……なんか、みんなテンション高くない?」

「そうかもしれないな」

「《もけもけ》可愛い~」

「《もけもけ》いいっすね~」

「なんか眠くなってきたんだな……」

 

 遊矢も、何か他のみんながいつもと違うような気がするが、ターンがもけ夫に移ったことで視線をデュエルに戻す。

 

「僕のターン、ドロー。うーん、予定が少し狂ったけど、まぁいいか。僕は永続魔法、《怒れるもけもけ》を発動」

 

 一ターン目にサーチしてきたカードをようやく発動してきた。

 モンスターの《もけもけ》と同じ名を冠している以上、何らかのサポートカードなのは間違いなさそうだが、遊矢も全てのカードのテキストを覚えている訳ではない。流石にこういうマイナーカードの情報まではわからなかった。

 

「さらに、永続魔法、《補給部隊》を発動するよ。一ターンに一度、自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された時、デッキからカードを一枚ドローできる」

 

 これでもけ夫の手札は0枚。もう何もすることは出来ない。

 

「じゃあ、バトルフェイズに入るよ。《はぐれ・もけもけ》でスパークマンを攻撃するよ~」

「なっ! スパークマンの方が攻撃力は上なんだぞ!?」

「いいからいいから。じゃあ、行っておいで。はぐれもけもけウェ~ブ」

「くっ、迎え撃てスパークマン! スパークフラッシュ!!」

 

 《はぐれ・もけもけ》 ATK300 VS《E・HEROスパークマン》 ATK1600

 

 普通のもけもけと微妙に色が違うもけもけが、スパークマンに攻撃を仕掛けていく。

 しかし、攻撃力の差もあり、当然のように稲妻の反撃で真っ黒焦げにされてしまった。

 

「いっつつ……」

 

 もけ夫 LP3600→2300

 

 しかし、その瞬間、残された三体のもけもけの様子が一変する。

 

「《怒れるもけもけ》の効果。《もけもけ》が自分フィールド上に表側表示で存在している時、自分フィールド上の天使族モンスターが破壊された場合、このターンのエンドフェイズまで自分フィールド上の《もけもけ》の攻撃力は3000になる」

「なんだって!?」

「勿論、今倒された《はぐれ・もけもけ》は天使族。残された三体の《もけもけ》は攻撃力3000になるよ。さらに永続魔法、《補給部隊》の効果でカードを一枚ドロー」

 

 《もけもけ》×3 ATK300→3000

 

「攻撃力3000が三体……!?」

 

 遊矢も気付く。もけ夫はこのために《ドレインシールド》でライフの大幅回復を図ったのだと。

 また、《ダメージ・ダイエット》も、本来なら自爆特攻で受けるダメージを半減させるためのものだろう。戦い方自体は、少し前に十代が戦ったレイに似ている。

 彼女の場合はモンスターをコントロールするためだったが、もけ夫はモンスターを強化するために自爆特攻してきているのだ。

 

「いいぞ~もけもけ~!」

「怒ってる姿もキュートだわ~」

「真っ赤になって可愛い~」

「Zzz……Zzz……」

 

 どうも隼人は完全に眠ってしまったようだが、他の三人もテンションがおかしくなっている。

 遊矢も流石におかしいと感じた。まるで、何かに操られているような――しかし、もけ夫からはナンバーズの気配らしきものは感じなかった。

 

「んじゃ、そろそろ行くよ。《もけもけ》一号で、フレイム・ウイングマンを攻撃。もけもけウェ~ブ」

 

 《もけもけ》 ATK3000 VS《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2100

 

 真っ赤な《もけもけ》が強い念を送ると、フレイム・ウイングマンの体が膨張して爆発していく。

 

「うぉっ!!」

 

 十代 LP4000→3100

 

 見た目以上の破壊力に十代も驚きの声を上げる。しかし、まだもけ夫の攻撃は残されていた。

 

「続けて、《もけもけ》二号で、スパークマンを攻撃。もけもけウェ~ブ」

 

 《もけもけ》 ATK3000 VS《E・HEROスパークマン》 ATK1600

 

 フレイム・ウイングマンと同じく、怒った《もけもけ》の念でスパークマンが爆散していく。

 

「ぐっ!」

 

 十代 LP3100→1700

 

「っ、この瞬間、罠発動! 《ヒーローシグナル》! モンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、手札・デッキからレベル4以下の『E・HERO』一体を特殊召喚できる! 来い、バブルマン!」

 

 《E・HERO バブルマン》

 効果モンスター

 ☆4 水属性 戦士族

 ATK800 DEF1200 守備表示

 

 救援に駆けつけたように、バブルマンがフィールドに飛び出してくる。

 

「バブルマンの効果! このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、フィールドと手札に他のカードがない時、デッキからカードを二枚ドローする!」

 

 今、十代に手札はなく、フィールドにはバブルマンしかいなかった。よって、カードを二枚ドローしていく。

 

「でも、僕にはまだもけもけ三号がいるよ~」

「くっ!」

「行くよ。もけもけ三号で、バブルマンを攻撃。もけもけウェ~ブ」

 

 《もけもけ》 ATK3000 VS《E・HEROバブルマン》 DEF1200

 

 三体目の念で、バブルマンも爆発する。しかし、何とかダイレクトアタックは防げた。

 

「僕はカードを一枚伏せる。このエンドフェイズ、《怒れるもけもけ》の効果は切れ、《もけもけ》達の攻撃力は元に戻るよ」

 

 《もけもけ》×3 ATK3000→300

 

「さらに、《人海戦術》の効果で、デッキからレベル2の《ハッピー・ラヴァー》を守備表示で特殊召喚」

 

 額にハートマークをつけた丸い体に四枚の羽根を持った天使が呼び出されていく。

 

 《ハッピー・ラヴァー》

 通常モンスター

 ☆2 光属性 天使族

 ATK800 DEF500 守備表示

 

 罠カード、《人海戦術》は各ターンでレベル2以下の通常モンスターが戦闘で破壊された時に効果が発動する。

 今回、自爆特攻した《はぐれ・もけもけ》は効果モンスターだが、通常モンスターとして扱う効果を持っているため、《人海戦術》でモンスターを呼ぶことが出来た。

 

「ターンエンドだよ」

 

 

 もけ夫 手札0枚 LP2300

 フィールド 《もけもけ》×3、《ハッピー・ラヴァー》

 魔法・罠 《人海戦術》、《怒れるもけもけ》、《補給部隊》、リバース1枚

 

 VS

 

 十代 手札2枚 LP1700

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

 まさか、こんな効果で攻撃力を上げてくるとは――と、遊矢が驚いている中、後ろから三沢が「おーい、十代」とデュエル中の十代に声をかける。

 十代が振り返ると、何故か遊矢以外の奴等が満面の笑みを浮かべているので、「なんだ……お前ら?」と、不気味なものを見るような顔をしていた。

 

「頑張ること、ないぞ」

「そうよ。戦いは良くないわよ。ピースで行きましょう」

「もけもけのように~」

「ZZzz……ZZzz……」

 

 全員して、「「「もけもけ~」」」と言って笑っている。やはり、明らかにおかしい状況だった。

 すると、どこからかデュエルを見ていたらしいクロノスが、変な宇宙服のようなものを来て飛び降りてくる。どうやら、この茂木もけ夫は十代を負けさせるために送られたクロノスからの刺客で間違いないようだった。

 聞けば、もけ夫はかつて、あのカイザーすら上回るオベリスクブルーナンバー1のエリートだったらしい。しかし、ある日、《もけもけ》に出会ってからデュエルが変わってしまい、彼とデュエルした生徒は、やる気をなくしてデュエル・アカデミアから去ってしまったという。

 それは実際にデュエルしなくても周囲に効果が及ぶようで、後ろの三沢や明日香達の様子がおかしくなったのはそのせいだということだった。

 おそらく、クロノスはそのもけ夫の力を悪用して、十代のやる気をなくさせて代表を辞退させようとしたのだろう。

 もけ夫自身としては、最初に言った通り精霊を戦いから解放したいということらしいが、十代の《ハネクリボー》は珍しく目を吊り上げて首を横に振っている。

 

「へっ、残念だったな。相棒はそんなの嫌だってよ。俺のターン!」

 

 全ての精霊が戦いを否定している訳ではない。少なくとも、《ハネクリボー》は戦いを嫌がってはいなかった。

 

「俺は魔法カード、《融合回収》を発動! 墓地の《融合》と、融合召喚の素材となったバーストレディを手札に加える!」

 

 バブルマンの効果で増えたカードと合わさって、これで手札は四枚。

 

「そして再び、《融合》を発動! 手札のバーストレディとクレイマンを融合し、《E・HEROランパート・ガンナー》を守備表示で特殊召喚するぜ!」

 

 《E・HERO ランパート・ガンナー》

 効果モンスター 融合

 ☆6 地属性 戦士族

 ATK2000 DEF2500 守備表示

 

 二体目の融合ヒーロー。しかし、十代はもけ夫の戦術の弱点を既に看破していた。

 

「ランパート・ガンナーの効果発動! このカードが表側守備表示の時、与えるダメージを半分にすることで、守備表示のままで相手プレイヤーにダイレクトアタックできる!」

「えっ、ダイレクトアタック?」

「へへっ、天使族を破壊したら《もけもけ》は怒っちまうんだろ? なら、ダイレクトアタックでダメージを与えるだけさ! いけっ、ランパートショット!」

 

 《E・HERO ランパート・ガンナー》 ATK2000 VSもけ夫 LP2300

 

 ランパート・ガンナーの砲撃が、フィールドのモンスターを無視してもけ夫に直撃していく。

 これでは《怒れるもけもけ》はおろか、《人海戦術》も《補給部隊》も役に立たなかった。

 

「うわあああああっ」

 

 もけ夫 LP2300→1300

 

「そして、俺のモンスターが守備表示ならお前は自爆特攻で自分のモンスターを破壊できないぜ」

 

 それが自爆特攻戦術の弱点だった。

 ダメージを受けて効果を発動するレイの《恋する乙女》コンボとは違って、《もけもけ》のコンボはモンスターを破壊されなければ効果が発動しない。

 相手が守備表示では、仮に自爆特攻したとしてもモンスターを破壊されないので、《もけもけ》の攻撃力が上がることはなくなる。これでもけ夫の動きは完全に封じた。

 

「俺はリバースカードを一枚セットしてターンエンドだ」

 

 

 十代 手札0枚 LP1700

 フィールド ランパート・ガンナー

 魔法・罠 リバース1枚

 

 VS

 

 もけ夫 手札0枚 LP1300

 フィールド 《もけもけ》×3、《ハッピー・ラヴァー》

 魔法・罠 《人海戦術》、《怒れるもけもけ》、《補給部隊》、リバース1枚

 

 

「な、なんーで? なんーでドロップアウトボーイはあんなにやる気十分なノーネ? そろそろシニョール茂木の力で、他の奴等のようにやる気がなくなるはずなノーネ」

 

 クロノスの誤算は二つあった。

 一つ目は、十代のやる気はこんなことではくじかれないということ。

 二つ目は、まだ推測の段階だが、強い精霊の力を持つ者は、もけ夫の力を防ぐことが出来るということだ。

 あのクールな三沢や明日香までが変わってしまうような強い力も、遊矢だけは変わらずにいることが出来ている。また、精霊をわずかに感じられる隼人も他の三人とは様子が違った。十代がいつもと変わらずデュエル出来ているのも、この二つの力が掛け合わさっているからだと遊矢は考えている。

 

「僕のターンだ」

 

 もけ夫がカードをドローしていく。しかし、天使族モンスターを破壊できない以上、もうもけ夫に出来ることは何もない。

 

 ――はずだった。

 

「甘いよ。僕は別に戦闘でしか天使を破壊できないとは言った覚えはないよ」

「なにっ!?」

「罠カード、《デストラクト・ポージョン》を発動。自分フィールド上のモンスターを破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分だけ自分のライフを回復する。僕は《ハッピー・ラヴァー》を破壊して800ライフ回復するよ」

 

 もけ夫も、能動的にモンスターを破壊する手段をしっかり用意していた。《ハッピー・ラヴァー》が爆発し、ポーションへと生まれ変わると、もけ夫のライフが回復していく。

 

 もけ夫 LP1300→2100

 

 同時に、天使族モンスターが破壊されたことで、《怒れるもけもけ》の効果が発動し、再び《もけもけ》三体が顔を真っ赤にして怒り始めた。

 

 《もけもけ》×3 ATK300→3000

 

「さらに、永続魔法、《補給部隊》の効果で、カードを一枚ドローするよ」

 

 おまけに手札の補充まで忘れていない。

 元オベリスクブルーのエリートというのは伊達ではないようで、全ての行動に無駄がなかった。十代の守備作戦も、簡単に打ち破られている。

 

「バトルだよ。《もけもけ》一号で《E・HEROランパート・ガンナー》を攻撃。もけもけウェ~ブ」

 

 《もけもけ》 ATK3000 VS《E・HEROランパート・ガンナー》 DEF2500

 

 攻撃力3000となってしまった今、ランパート・ガンナーに《もけもけ》の攻撃を防ぐすべはなく、その体が念によって爆散していく。

 これで十代のフィールドにはモンスターが居なくなった。

 

「これで終わりだよ。《もけもけ》二号で、プレイヤーにダイレクトアタック。もけもけウェ~ブ」

 

 《もけもけ》 ATK3000 VS十代 LP1700

 

「おっと! それは通せないな! 速攻魔法、《クリボーを呼ぶ笛》! デッキから《ハネクリボー》を守備表示で特殊召喚する!」

 

 十代に《もけもけ》の念が迫る中、笛の音に呼ばれ、《ハネクリボー》が主を守るように飛び出してくる。

 

 《ハネクリボー》

 効果モンスター

 ☆1 光属性 天使族

 ATK300 DEF200 守備表示

 

「それは、君の精霊……!」

「ああ、そうだ! 俺を助けるために戦ってくれるってよ!」

「でも、《もけもけ》には敵わないよ。君のフィールドにモンスターが増えたことで、攻撃対象を変更する。《もけもけ》二号で《ハネクリボー》を攻撃。もけもけウェ~ブ」

 

 《もけもけ》 ATK3000 VS《ハネクリボー》 DEF200

 

 ステータスの差はまさに圧倒的としか言いようがなく、《もけもけ》の攻撃で《ハネクリボー》も破壊されていく。

 苦しそうな『くり~』という声が聞こえ、もけ夫は少し辛そうな顔をしていた。

 

「やっぱり、戦いは精霊を苦しめるだけだ。これで終わらせよう。僕は《もけもけ》三号で――」

「《ハネクリボー》の効果! このカードが破壊され墓地へ送られた時、このターン、俺が受ける戦闘ダメージはゼロになる!」

「まだ続けるの? もうやめようよ」

「止めないね。ここで止めたら、俺を信じて戦ってくれているカード達に申し訳が立たない」

「カードに、申し訳が立たない……?」

「確かにお前の言う通り、戦いたくない精霊ってのもいるのかもしれない。けど、全ての精霊がそうとは限らないだろ。少なくとも、俺の《ハネクリボー》は戦うことを選んだし、苦しみながらも次に繋いでくれた。俺がその希望の糸を次に繋がなかったら、それこそ《ハネクリボー》は無駄死だ」

 

 ――だから諦めない。十代の目はそう口にしていた。

 

「……僕は、メインフェイズ2で、魔法カード、《融合》を発動。フィールドの《もけもけ》三体を融合させて、《キング・もけもけ》を守備表示で融合召喚するよ」

 

 三体の《もけもけ》が一つになり、何十倍も巨大な《もけもけ》へと姿を変えていく。

 

 《キング・もけもけ》

 効果モンスター 融合

 ☆6 光属性 天使族

 ATK300 DEF100 守備表示

 

「で、でかい……!」

「茂木さんは、守備を固めてきたな」

 

 後ろの遊矢がデュエルを見ながらそう呟く。もう、遊矢以外のメンバーは隼人のように眠ってしまっていた。

 それはクロノスも同様で、何故か宇宙服のようなもののヘルメットが割れて爆睡している。

 そんな中、遊矢は冷静にデュエルを見ていた。

 先程のターンは《デストラクト・ポーション》で能動的に《もけもけ》を強化できたが故に大丈夫だったのだろうが、本来《もけもけ》を攻撃表示で残しておくというのはかなりリスクがある。

 今、もけ夫のライフは2100。もし、攻撃力2400以上のモンスターで攻撃されれば、その時点でライフがゼロになってしまう。万が一のことを考えれば、守備表示にしておくのは重要なことだ。

 

「さらにリバースカードを一枚セットしてターンエンドだよ」

 

 もけ夫も《人海戦術》の効果を使いたいだろうが、あのカードの効果は戦闘破壊しか対応していない。今回のターンは、効果破壊しかしていないので、効果を発動できなかった。

 

 

 もけ夫 手札0枚 LP2100

 フィールド 《キング・もけもけ》

 魔法・罠 《人海戦術》、《怒れるもけもけ》、《補給部隊》、リバース1枚

 

 VS

 

 十代 手札0枚 LP1700

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

「俺のターン! 魔法カード、《ホープ・オブ・フィフス》! 墓地の『E・HERO』――フェザーマン、バーストレディ、クレイマン、ランパート・ガンナー、バブルマンの五体を選択し、デッキに戻してシャッフル。カードを三枚ドロー!」

 

 E・HERO版の《貪欲な壺》。フィールドと手札にカードがない場合は、追加で一枚ドローできる。これで、一気に手札は三枚に増えた。

 

「魔法カード、《O-オーバーソウル》発動! 墓地のE・HERO通常モンスターを特殊召喚できる! 甦れ、スパークマン!」

 

 墓地に残されていたスパークマンが蘇り、いつものようにポーズを決めていく。

 

 《E・HEROスパークマン》

 通常モンスター

 ☆4 光属性 戦士族

 ATK1600 DEF1400 攻撃表示

 

「さらに、《H-ヒートハート》を発動! 自分フィールド上の表側表示モンスター一体の攻撃力をターン終了時まで500アップさせ、守備モンスターを攻撃した時、その攻撃力が守備力を超えただけ相手に貫通ダメージを与える!」

 

 《E・HEROスパークマン》 ATK1600→2100

 

 スパークマンの攻撃力が上昇し、エッジマンのように貫通能力も得た。これで《キング・もけもけ》を攻撃すれば、もけ夫のライフを100に出来る。

 いくら他にモンスターを破壊する手段があるとはいえ、ライフが少なくなれば、自ずと自爆特攻もしにくくなり、もけ夫も戦いにくくなるはずだ。

 

「いけっ、スパークマン! 《キング・もけもけ》を攻撃! スパークフラッシュ!!」

 

 《E・HEROスパークマン》 ATK2100 VS《キング・もけもけ》 DEF100

 

「それは通せないね。罠カード、《攻撃の無敵化》を発動。僕はこのカードの効果で、僕への戦闘ダメージをゼロにするよ」

 

 だが、ダメージは防げても、モンスターの破壊は防げない。《キング・もけもけ》がスパークマンの稲妻を受けて爆発していく。

 

「この瞬間、《キング・もけもけ》の効果が発動するよ。このカードがフィールドを離れた時、墓地に存在する《もけもけ》を可能な限り特殊召喚できる」

「なっ、そんな効果が!?」

 

 巨大な《キング・もけもけ》が爆散する中、分裂するように《もけもけ》達がフィールドに蘇る。

 

 《もけもけ》×3

 通常モンスター

 ☆1 光属性 天使族

 ATK300 DEF100 守備表示

 

 《はぐれ・もけもけ》

 効果モンスター

 ☆1 光属性 天使族

 ATK300 DEF100 守備表示

 

「そうか、また《はぐれ・もけもけ》まで……!」

 

 遊矢が想像した以上の鉄壁の守備。これで、《もけもけ》を四体倒さないともけ夫のライフは削れなくなった。

 

「さらに《補給部隊》の効果で、カードを一枚ドローするよ」

「俺は、リバースカードを一枚セットしてエンドフェイズ。スパークマンの攻撃力と効果が元に戻る」

 

 《E・HEROスパークマン》 ATK2100→1600

 

「ターンエンドだ」

 

 もけ夫は今回のターンも、《人海戦術》は使えずにいる。戦闘破壊された《キング・もけもけ》はレベル2以下の通常モンスターではないので効果が適用されなかったのだ。

 

 

 十代 手札0枚 ライフ1700

 フィールド スパークマン

 魔法・罠 リバース1枚

 

 VS

 

 もけ夫 手札1枚 LP2100

 フィールド 《もけもけ》×3、はぐれもけ

 魔法・罠 《人海戦術》、《怒れるもけもけ》、《補給部隊》

 

 

「僕のターン、二枚目の《ハッピー・ラヴァー》を攻撃表示で召喚」

 

 《ハッピー・ラヴァー》

 通常モンスター

 ☆2 光属性 天使族

 ATK800 DEF500 攻撃表示

 

 攻撃表示で呼び出したということは、自爆特攻要因と見て間違いないだろう。

 今、もけ夫のフィールドに《もけもけ》ははぐれを含めて四体居る。これら全部が攻撃力3000になれば、受けきるのはかなり難しかった。

 

「バトルだよ。《ハッピー・ラヴァー》でスパークマンに攻撃。ハッピー・バーニング」

「迎え撃てスパークマン! スパークフラッシュ!!」

 

 《ハッピー・ラヴァー》 ATK800 VS《E・HEROスパークマン》 ATK1600

 

 当然、スパークマンの攻撃力が上なので、稲妻によって《ハッピー・ラヴァー》は破壊されていく。

 

 もけ夫 LP2100→1300

 

「けど、これで《怒れるもけもけ》の効果が発動し、《もけもけ》達の攻撃力は3000になる」

 

 《もけもけ》×3 ATK300→3000

 《はぐれ・もけもけ》 ATK300→3000

 

「さらに《補給部隊》の効果で一枚ドローするよ」

 

 これで、もけ夫の手札は二枚。

 一枚は戦闘ダメージをゼロにする罠カード《ガード・ブロック》、もう一枚はモンスターを破壊して自分と相手に1000ダメージを与える罠カード《破壊指輪》だった。

 仮に、何らかの手段で、十代がこのターンの総攻撃を凌いだとしても、次のターンで起こる十代の反撃も、完璧に受けきることが出来る――そう、もけ夫は確信した。

 

「終わらせるよ。まずは、《はぐれ・もけもけ》でスパークマンを攻撃! はぐれもけもけウェ~ブ」

 

 《はぐれ・もけもけ》 ATK3000 VS《E・HEROスパークマン》 ATK1600

 

「ああ、終わらせようぜ! 罠カード、《異次元トンネル―ミラーゲート―》発動! 相手の攻撃宣言時、攻撃してきた相手モンスター一体と、攻撃対象となった自分の『E・HERO』のコントロールを入れ替えてダメージ計算を行う!」

 

 この効果により、《はぐれ・もけもけ》が十代のフィールドに、スパークマンがもけ夫フィールドに移る。

 

 《E・HEROスパークマン》 ATK1600 VS《はぐれ・もけもけ》 ATK3000

 

「しまった。攻撃力の差は1400……!」

「そして、お前のライフは1300だぜ!」

 

 十代のフィールドに移った《はぐれ・もけもけ》が、念でスパークマンを破壊していく。

 その姿は、もけ夫のフィールドにいた時とは打って変わって、やる気に満ち溢れていた。

 とても同じ精霊とは思えないその姿に、精霊を争いから解放すると言っていたもけ夫も驚いている。

 

「ぼ、僕の《もけもけ》が、あんなにやる気に!?」

 

 もけ夫 LP1300→0

 

 デュエルが終わり、ソリッドビジョンが解除されていく。

 どうやらもけ夫も、精霊にもいろいろな側面があるということを理解してくれたようだった。また、これからはもう少しデュエルも頑張ってみると言っている。

 しかし、今回のデュエルで疲れてしまったようで、すぐに昼寝を始めてしまった。当然、先程からずっと眠っているメンバーも目を覚まさず、グースカと気持ちよさそうに寝ている。

 そんな中で、ずっと正常だった遊矢だけが、「ガッチャ」――と、十代の奮闘を労っていた。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・#24『脱力! もけもけデュエル』より、遊矢にはもけ夫の力が通じなかった。
 精霊のパワーで防御しているという独自解釈。

・はぐれもけもけを使うためだけにデュエルを書いた!
 ぶっちゃけ、スキップでも良かったけど、もけもけ好きだから書きたかった! 締めに悩んだ結果、原作をリスペクトすることに。


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