榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

30 / 51
#030 『蘇れ、サンダー』

 遂に、デュエルアカデミアノース校との対抗戦当日となった。

 ノース校の代表団が港に来る手筈となっているということで、こちらも精一杯お出迎えしようと、本校の生徒の大半が港に集まっている。

 しかし、肝心の代表である十代がまだ来ていなかった。気付いた翔がすぐに探しに行ったが、十代のことだからマイペースにどこかでデッキ調整でもしているのだろう。

 少しすると、噂のノース校から来たと思わしき潜水艦がやってきた。向こうの校長らしき人物を先頭に、次々とノース校生徒達が上陸してくる。

 そんな中、本校の鮫島校長と、ノース校の一ノ瀬校長が挨拶を交わしているのを横目に、遊矢は一人の生徒に目が釘付けになっていた。制服こそ着ていないが、あの偉そうな顔はそうそう忘れられるものではない。

 

「万丈目?」

 

 と、つい遊矢も名前を口に出してしまう。すると、いつの間にかやってきていた十代も気付いたようで、「本当だ、万丈目だ!」と声を上げた。

 

「万丈目さんだ」

「「「「さんだ!!」」」」

「おいコラ、てめぇ一年。サンダーさんのことを馴れ馴れしく呼び捨てにしてんじゃねぇぞ」

「身の程をわからせてやろうか?」

「やめろ、お前達。一応、あれが今日の俺の相手だ」

 

 遊矢ですら、パッと見引いてしまうようなメンツを完全に従えている。

 前も思ったことはあったが、やはり上に立つ人間としてのカリスマのようなものは持っているのだろう。

 

「……ん? 俺の相手ってことは、ノース校の代表って万丈目?」

「万丈目さんだ。無礼者め」

「「「「無礼者め!!」」」」

「お、オーケー、オーケー、つまりお前が俺の相手ってことね」

 

 下手に周りの奴等を刺激すると、本番前に戦争が起こりそうな勢いだったので、流石の十代も苦笑いを浮かべていた。

 同時に、ヘリコプターと思わしき乗り物が急に現れ、凄い風と音が港を支配する。

見ると、ヘリには『万』という字がでかでかと書かれており、着陸するなり中からテレビ関係者と思わしき連中がわらわらと出てきた。

 

 鮫島校長も事情を知らないようで、「何の騒ぎですかな?」と、報道陣に疑問の声をかける。

すると、今回の本校とノース校の対抗戦は、テレビで大々的に生中継するということになったということだった。

 鮫島校長も一ノ瀬校長も寝耳に水の話だが、ヘリから降りてきた二人の人物がその件を仕切っているようで、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。

 

 聞けば、この二人は万丈目の兄のようで、弟のためにこうして大舞台を整えたということだった。各所には既に許可を取っているということで、鮫島校長としてもこうなってはどうしようもないのか、仕方なくテレビ中継を許可している。

 先程まで余裕を見せていた万丈目も、まさか自分の兄達がこんなことをするとは思わなかったらしく、何とも言えない困ったような顔をしていた。

 

 

 

◇◆

 

 

 

「一体、どういうつもりなんだ。兄さん達……?」

 

 誰もいないデュエルアカデミアの男子更衣室で、万丈目はそう兄達に声をかけた。

 まさか、これまでずっと連絡がなかった兄二人が、急にこんな大騒ぎを起こすとは思わず今でも困惑している。

 

「決まっているじゃないか。このテレビ中継は、俺達兄弟の夢を現実に移す一プランなのだよ」

 

 答えたのは一番上の兄の長作だった。

 万丈目が「プラン?」と、首を傾げると、次男の正司が「そうだ」と頷く。それは万丈目もずっと聞かされてきたことだった。長男の長作が政界、次男の正司が財界、そして三男の自分がカードゲーム界の覇権を手にすると言う夢だ。

 正確には夢ではなく、約束というべきか。

 今の万丈目には夢としか思えないが、どうも二人の兄は既に現実として、プランを考えているらしい。

 

「準。クロノスとかいう教諭に聞いたが……お前、三か月程前にここを退学したそうじゃないか」

「それは――」

「良いか、準! お前は元々、俺達兄弟の落ちこぼれ!」

「我が万丈目グループ主催でテレビ中継するからには、絶対に負けることは許さん!!」

 

 万丈目が何かを口にする前にそう捲し立てられ、何も言えなくなってしまう。

 兄達のプレッシャーは相当のもので、戦う前に押しつぶされそうだった。そんな万丈目の内心に気付いた様子もない次男の正司が、持っていたトランクを万丈目に向ける。

 

「この中には、俺と兄者が金に物を言わせたカードが山のように入っている。これを使い、最強のデッキを組み立てるのだ!」

「いいな、準。決して、万丈目グループの顔に泥を塗るようなことをするなよ?」

 

 もはや、万丈目には黙って頷くくらいしか出来なかった。

 兄達もそんな万丈目の姿を見て、ようやく理解したと判断したのか、満足そうに更衣室を去っていく。

 誰も自分のことなど理解してくれない――その上で、絶対に勝たなくてはいけないという重圧が、せっかくノース校で立ち直った万丈目のメンタルを再び暗雲に包み込んでいく。

 

「よっ、久しぶり万丈目」

 

 だが、そんな暗雲を晴らすかのように、万丈目の前に遊矢が現れた。

 

「榊遊矢……何をしに来た?」

「ちょっと話がしたいと思ってさ。待ってたんだけど、聞こえちゃった……ごめん」

 

 どうやら先程の会話が聞こえていたらしい。

 しかし、あの大声と剣幕では、音が外に漏れても仕方ないだろう。万丈目も「別に謝られることじゃない」と、どうでも良さそうにしている。

 

「けど、良いお兄さん達だったな」

「……は? お前はあれを見て、何でそんな感想が出て来る?」

「だって、話を纏めると、大事な弟がピンチで何かしてやりたくてやってきたってことだろ?」

 

 次男の正司がクロノスに話を聞いたと言っていたが、万丈目と兄達はこの更衣室まで真っすぐに来たので、話をするような時間などなかった。

 つまり、事前に話が伝わっていたということだ。

 大事な弟が学校を退学して行方知れず。行方がわかると、今度はノース校の代表だ。兄としては、盛り上げてやりたいと思ったのだろう。勿論、勝つことが前提としてのことだが、それをサポートするためにカードまで持ってきている。

 

「ポジティブが過ぎる。兄さん達は、俺を自分達の夢を叶えるためのコマくらいにしか思っていない」

「だとしたら、そもそも落ちこぼれになんて期待しないだろ。元々、落ちこぼれだったお前が、デュエルに才能を見せたからお兄さん達は期待したんじゃないのか?」

 

 本当に落ちこぼれなら、最初から期待などしない。政界と財界を支配しようという人間だ。見切りだって一流だろう。

 そんな兄達がこうして舞台まで整えて、万丈目に期待しているのは、同じだけ万丈目を認めていると言うことである。

 

「それは……」

 

 否定していた万丈目の口から言葉が止まった。遊矢の考え方には確かな筋が通っている。

 正直、言葉から愛情など欠片も感じなかったが、あの二人なりに自分を心配してくれたからこういう状況になっているのは事実だ。

 ふと、先程まで暗かった視界が急に開ける。

 遊矢と話をしたことで、先程までずっと感じていた重圧が少し軽くなったような気がした。

 

「怯えるな――だったな」

 

 それは最初のデュエルで遊矢に言われた言葉。

 あの時は、来るべき時代に怯えていた万丈目の心を差しての言葉だったが、それは今の状況にも当てはまる。少し前まで自分は、見えない重圧に押しつぶされて怯えていた。

 

「ああ。期待されるってのは凄い重圧だ。けど、お前にはカードがある。辛くなったら、カードの声に耳を傾けろ。きっとお前を助けてくれる」

「カードの声……」

 

 そう言って万丈目はデッキに目を向ける。

 遊矢は、そこから強い精霊の力を感じ取っていた。ペガサスから渡されたカードをどうしたのか確認に来たつもりだったが、最早見なくても万丈目がペガサスから渡されたカードをデッキに入れているとわかる。

 

「それに、プロになれば、こんなテレビ放送なんて毎日だ。将来の予行演習だと思って気楽に行けよ」

「……フン。十代を倒したら、次は貴様だ。首を洗って待っていろ」

「楽しみにしてるよ」

 

 そう言って、遊矢は更衣室から出て行った。

 結局、遊矢が何のために自分に会いに来たのか――と、いう万丈目の疑問は解消されなかったが、先程まで感じていたプレッシャーは消え、今ならデュエルとしっかりと向き合えるような気がする。

 結局、絶対に勝たなくてはいけないのは間違いないのだ。それにプレッシャーなど感じる必要はない。俺は俺の意思で、必ず勝つと誓った。それを果たすだけだ。

 万丈目は兄達から貰ったカードを手に取った。こうなれば自棄だ。今のデッキに合うカードがあれば何でも使ってやると、残りの時間を使って更なるデッキ調整へと乗り出した。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 万丈目と十代がデュエルリングに上がると、鮫島校長と一ノ瀬校長によって対抗戦の始まりが告げられた。

 司会のクロノスはカメラを向けられカチカチになっているが、何とか選手の紹介をしていく。流石にもうオシリスレッドが代表なのは諦めたらしい。

 先に十代の紹介がされると会場も盛り上がってきた。しかし、十代の紹介が終わると同時、万丈目は無理矢理クロノスからマイクを奪い取っていく。

 

「俺の紹介は自分でする……お前達! この俺を覚えているかぁ!?」

 

 先程まで盛り上がっていた本校生徒の声が止む。

 覚えている奴は勿論いるだろう。だが、今は声を出すことが出来なかった。

 

「この学園で俺が消えて清々したと思っている奴! 俺の退学を自業自得だとほざいた奴!」

 

 指を差した訳ではない。だが、一部のオベリスクブルーの生徒が苦しそうな表情を浮かべる。

 

「知らぬなら言って聞かせるぜ! その耳の穴かっぽじって良く聞くがいい! 地獄の底から不死鳥の如く復活した俺の名は――」

 

 人差し指を立てて、腕を上に上げていく。

 

「一! 十!」

「「「「「百! 千!」」」」」

 

 万丈目の掛け声と共に、ノース校の生徒達も、その台詞を口にする。そう、今、この場にいる人物こそ、自分達を倒して新しいキングの座を奪った英雄――

 

「――万丈目サンダー!!」

「「「「「サンダー! サンダー! うおおおおおおぉぉぉっ! 万丈目サンダァァァァァッ!!」」」」

 

 ノース校全ての生徒が両手を上げて喝采する。

 港の時も思ったが、万丈目がノース校についてから、そう長い時間は経っていないはずなのに、既に全生徒の人心を掴み取っていた。

 それこそ、万丈目準という人物が持つ、デュエリストとしての圧倒的カリスマ――会場の空気は、間違いなく万丈目が支配している。

 

「俺は!」

「「「「「サンダー!!」」」」」

「万丈目――」

「「「「「サンダー!!」」」」」

 

 遊矢は思わず笑みを浮かべた。プロの中にも、ああして会場を盛り上げるタイプは少なくない。

 実際、まだプロではないが、身内にも見たようなノリの、沢渡というエンターテイナーがいた。

 

「行くぞ、十代。このデュエル、俺が必ず勝つ!!」

「来い、万丈目!!」

「万丈目さんだ!!」

「「デュエル!!」」

 

 長い舌戦が終わりようやくデュエルが始まる。

 先攻は万丈目。まるで、カメラに見せつけるかのように勢いよくドローを決めていく。

 

「俺のターン! スタンバイフェイズに速攻魔法、《武装竜の霹靂》を発動!」

「「「「「フラッシュ!!」」」」」

 

 もはや、ライブ会場と言ってもいい勢いで、万丈目が発動させたカード名がコールされる。

 

「デッキから、レベル3のアームド・ドラゴンモンスター一体を守備表示で特殊召喚する! 来い、《アームド・ドラゴンLV3》!!」

 

 その効果でデッキから、全身に鎧を纏い、顎が発達した小さなオレンジ色のドラゴンを呼び出していった。

 

 《アームド・ドラゴンLV3》

 効果モンスター

 ☆3 風属性 ドラゴン族

 ATK1200 DEF900 守備表示

 

「あれは伝説とも言えるレベルモンスター……! 万丈目の奴、一体どこで手に入れたんだ?」

 

 出てきたドラゴンモンスターを見て、三沢が驚きの声を上げる。

 遊矢もレベルモンスターに詳しい訳ではないが、前に神楽坂が盗んだ武藤遊戯のデッキにもサイレント・マジシャンというレベルモンスターが入っていたのを覚えていた。おそらく、それと似た系列のモンスターだと考えていいだろう。

 また、離れた席に座っている、鮫島校長が「あれは、ノース校秘宝のカード!?」と驚愕を露わにし、隣に座る一ノ瀬校長がニヤリと悪い笑みを浮かべている。万丈目の兄達はそこまでデュエルに詳しくはないが、とりあえず弟が凄いモンスターを呼び出したということだけはわかったようだった。

 

「まだだ! 俺はスタンバイフェイズで《アームド・ドラゴンLV3》のモンスター効果を発動! このカードを墓地へ送り、手札・デッキから《アームド・ドラゴンLV5》を一体特殊召喚できる! レベルアップだ! 出でよ、《アームド・ドラゴンLV5》!」

 

 まだ小竜とも言うべきアームド・ドラゴンがどんどん成長し、黒くなった鋼殻に、真っ赤な体と強力な咢を持った巨竜へと変化していく。

 

 《アームド・ドラゴンLV5》

 効果モンスター

 ☆5 風属性 ドラゴン族

 ATK2400 DEF1700 攻撃表示

 

「レベルアップだって!?」

「そうだ、レベルモンスターは毎ターン条件をクリアするごとに進化していく!」

「スタンバイフェイズに特殊召喚したのは、その条件を満たすためってことか。やるなぁ、万丈目」

「万丈目さんだ!! それに、これで終わりではない! 俺はさらに魔法カード、《武装竜の襲雷》を発動!」

 

 再び、そのカード名である「「「「「ブリッツ!!」」」」」というコールが、ノース校から飛び交う。

 

「自分フィールドのアームド・ドラゴンモンスター一体を選択し、その同名モンスター一体をデッキ、墓地から選び手札に加えるか、召喚条件を無視して特殊召喚する! 出でよ、二体目の《アームド・ドラゴンLV5》!!」

 

 《アームド・ドラゴンLV5》

 効果モンスター

 ☆5 風属性 ドラゴン族

 ATK2400 DEF1700 攻撃表示

 

 まだ一ターン目にも関わらず、万丈目は攻撃力2400の強力モンスターを二体並べた。

 おまけに、消費したカードはたったの二枚。流石の十代も、「やべぇ」と冷や汗をかいている。

 

「ただし、この効果で特殊召喚したモンスターは相手プレイヤーへ直接攻撃が出来ず。このターン、俺はドラゴン族モンスターしか特殊召喚できなくなる――が、俺はこのターン、ドラゴン族以外に特殊召喚などするつもりはない」

「おまけに、先攻は攻撃できないからダイレクトアタックが出来ないのも関係ないって訳か」

「そういうことだ! バカなお前にしては状況理解が早いじゃないか」

「へへっ、褒めんなって」

「褒めてない! 全く、貴様と話していると馬鹿が移る。俺は、永続魔法、《武装竜の震霆》を発動!」

 

 当然のように、「「「「「ライトニング!!」」」」」と声が上がっていく。

 

「一ターンに一度、自分フィールドのアームド・ドラゴンモンスター一体を対象として、そのモンスターの攻撃力をレベル×100上げる。もしくは、そのモンスターのレベル以下のレベルを持つアームド・ドラゴンモンスター一体を墓地から手札に加えることが出来る。俺はLV5を対象に墓地から《アームド・ドラゴンLV3》を回収する!」

 

 モンスター強化か、モンスター回収の二択。どちらも強力な効果を持つ永続魔法だった。

 先程使った二枚の魔法もそうだが、まさかアームド・ドラゴンに専用のサポートカードがあるとは――と、使用した万丈目自身が驚いている。

 実は、このカード達は、万丈目の兄達がおいて行ったトランクの中にあったカードに入っていたものなのだ。一ノ瀬校長からはアームド・ドラゴン本体とレベル関係のカードこそ借り受けたが、アームド・ドラゴンをサポートするようなカードは何一つとしてなかった。

 勿論、万丈目自身、レベルモンスターがかなりのレアカードで、そのサポートとなればそう簡単に手に入るものではないとわかってはいるが、それをあっさり調達した兄達の手腕には感心と感謝の気持ちを抱いている。

 

 しかし、当の兄達は「「ふむ、そんなカードもあるのだな」」と、よくわかっていない様子だった。

 それもそのはず――実は、今、万丈目が使ったカード達は、兄達が持ってきたカードではなく、兄達が持ってきたカードが万丈目の精霊の力によって変質したものだった。更衣室での遊矢との会話で吹っ切れた万丈目の精霊の力がカードを書き換えたのだ。

 

 それは昔、遊矢が初めてペンデュラムカードを作った時と同じ現象だった。

 

 ただ、アームド・ドラゴン本体自体にも同じ変化は起きていたのだが、万丈目の力が足りずに変質出来ずにいる。

 後に、アームド・ドラゴンを一ノ瀬に返しそびれた万丈目が、デッキのアームド・ドラゴンのカードが変質し、驚愕するという事件が起きるのだが――それはまた別の話。

 

「さらに、魔法カード、《天使の施し》! デッキからカードを三枚引き、手札から二枚捨てる。俺はリバースカードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

 

 万丈目 手札3枚 LP4000

 フィールド 《アームド・ドラゴンLV5》×2

 魔法・罠 《武装竜の震霆》、リバース1枚

 

 VS

 

 十代 手札5枚 LP4000

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

「いくぜ! 俺のターン、ドロー! 魔法カード、《融合》を発動! 手札のフェザーマンとバーストレディを融合し、フレイム・ウイングマンを融合召喚するぜ!」

 

 当然のように手札融合を決め、序盤からフェイバリットモンスターを出していく。

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》

 効果モンスター 融合

 ☆6 風属性 戦士族

 ATK2100 DEF1200 攻撃表示

 

 それを見た万丈目が「相も変わらずフレイム・ウイングマンか。芸のない奴だ」と、馬鹿にしたような表情を浮かべた。

 

「いつになったって、永遠のマイフェイバリットカードだぜ! ってことで、装備魔法、《フェイバリット・ヒーロー》発動! フィールド魔法が発動している時、装備モンスターの攻撃力を守備力分アップさせ、相手の効果の対象にならなくなる!」

「だが、今貴様のフィールドにフィールド魔法はない……またお得意のスカイスクレイパーか!」

「その通り! 行くぞ、バトルフェイズ! この瞬間、《フェイバリット・ヒーロー》の二つ目の効果を発動! 手札・デッキからフィールド魔法カードを一枚選んで発動できる! 俺はデッキから、《摩天楼―スカイスクレイパー―》を発動!」

 

 フィールド魔法が発動したことで、場がビル群に埋め尽くされていく。

 同時に、《フェイバリット・ヒーロー》の効果で、フレイム・ウイングマンの攻撃力が守備力分アップした。

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2100→3300

 

「攻撃力3300! だが、攻撃力が上がったことで――」

「ああ、攻撃力がアームド・ドラゴンを超えたから、スカイスクレイパーの効果は発動しない!」

 

 だが、後々低い攻撃力のモンスターを出した時、このカードの真価は発揮する。万丈目もそれをすぐに理解した。

 

「バトル! フレイム・ウイングマンで、ダイレクトアタックを封じられていない《アームド・ドラゴンLV5》を攻撃! フレイムシュート!!」

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK3300 VS《アームド・ドラゴンLV5》 ATK2400

 

 攻撃力が上がったことで威力も上がった必殺の一撃が、アームド・ドラゴンへと迫っていく。

 

「永続罠、《安全地帯》! このカードを攻撃対象となった《アームド・ドラゴンLV5》を対象に発動! これにより、このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、対象のモンスターは相手の効果の対象にならず、戦闘及び効果では破壊されない!」

「逃がしたか……だが、ダメージは受けて貰うぜ!」

 

 攻撃力の差、900が、万丈目のライフから削られる。

 

「くっ、必要経費だ!」

 

 万丈目 LP4000→3100

 

「《安全地帯》で守られているモンスターは相手にダイレクトアタックできないデメリットが科される。これで、俺の二体のアームド・ドラゴンは貴様にダイレクトアタックが出来なくなった」

 

 とはいえ、先程のように上のレベルへレベルアップし、別のモンスターとなればそのデメリットも解かれるので、ほぼないも同然の効果だった。

 十代にしてみれば、破壊できなかったという事実の方が厳しい。

 フレイム・ウイングマンが装備している《フェイバリット・ヒーロー》には、攻撃力を守備力分アップし効果の対象にならなくなる効果と、バトルフェイズ中にフィールド魔法を発動する効果に加えて、さらにもう一つ効果があった。

 それは、装備モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した時、《フェイバリット・ヒーロー》を墓地へ送ることで、装備モンスターが続けて攻撃できるという効果だ。

 

 十代の予定では、一体目の《アームド・ドラゴンLV5》を破壊し、その攻撃力分のダメージを与えた後、最後の効果を使用してフレイム・ウイングマンの攻撃力を元の2100に戻した上で再攻撃。スカイスクレイパーとのコンボで二体目の《アームド・ドラゴンLV5》を倒してワンターンキルの予定だった。

 

「そう簡単にはいかないか……俺は永続魔法、《悪夢の蜃気楼》を発動。さらに、カードを一枚伏せてターンエンドだ」

 

 

 十代 手札0枚 LP4000

 フィールド フレイム・ウイングマン

 魔法・罠 スカイスクレイパー、《フェイバリット・ヒーロー》、《悪夢の蜃気楼》、リバース1枚

 

 VS

 

 万丈目 手札3枚 LP3100

 フィールド 《アームド・ドラゴンLV5》×2

 魔法・罠 《武装竜の震霆》、《安全地帯》

 

 

 十代も文字通り全力でぶつかったが、万丈目のアームド・ドラゴンを倒すことは出来なかった。

 しかし、先制のダメージは与えている。勝負はまだ始まったばかりだ。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 ターンが変わり、万丈目がカードをドローしていく。

 

「このスタンバイフェイズに《悪夢の蜃気楼》の効果で、俺はカードを四枚ドロー!!」

「ならば、こちらも魔法カード、《レベルアップ!》を発動! 《安全地帯》で守られていない方の《アームド・ドラゴンLV5》を墓地へ送り、デッキから《アームド・ドラゴンLV7》を、召喚条件を無視して特殊召喚する! 出でよ、《アームド・ドラゴンLV7》!!」

 

 黒かった鋼殻が銀色へと進化し、よりスマートに大きく進化していった。

 

 《アームド・ドラゴンLV7》

 効果モンスター

 ☆7 風属性 ドラゴン族

 ATK2800 DEF1000 攻撃表示

 

「これが、レベル7……!」

「驚くのはまだ早い! 俺は、再び永続魔法、《武装竜の震霆》の効果を《アームド・ドラゴンLV7》を対象に発動! 墓地の《アームド・ドラゴンLV5》を手札に加える!」

「攻撃力を上げる効果を発動すれば、俺のフレイム・ウイングマンを倒せるのに……?」

「フン、いいカードを引いたのさ。魔法カード、《スタンピング・クラッシュ》を発動! 自分フィールドにドラゴン族モンスターが表側表示で存在する場合、フィールド上の魔法・罠カード一枚を選択して破壊し、500ポイントのダメージを与える! 貴様の厄介な装備魔法を破壊する!」

「くっ、なら速攻魔法、《非常食》! 《フェイバリット・ヒーロー》と《悪夢の蜃気楼》を墓地へ送り、ライフを2000回復する!」

 

 十代 LP4000→6000

 

 相手に、《フェイバリット・ヒーロー》が破壊される前に自分から墓地へ送っていく。これで、フレイム・ウイングマンの攻撃力と耐性も元に戻ってしまったが、《悪夢の蜃気楼》のデメリットを回避しつつ、効果ダメージを与えられることも無くなった。

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK3300→2100

 

「ふっ、面白いことを教えてやる。《アームド・ドラゴンLV7》は手札のモンスターを捨てることで、その捨てたモンスターの攻撃力以下のモンスターを全て破壊できる効果を持っている」

「なんだって!?」

 

 ちなみにLV5は単体破壊だが、同じように捨てたモンスターの攻撃力以下のモンスターを破壊できる。LV7になって、効果が全体となり強力になったのだ。

 

「……そうか、フレイム・ウイングマンの攻撃力を下げたのはその効果を使うため! さっきからアームド・ドラゴンを回収していたのもコストのためか!」

「そうだ――と、言いたい所だが、いささか事情が変わったのでな。今回はその効果は使わない」

 

 罠カード、《安全地帯》を装備したLV5はダイレクトアタックが出来ないので、モンスターを効果破壊するメリットが薄くなったのだ。

 

「俺は手札から、《アームド・ドラゴンLV3》を攻撃表示で召喚!」

 

 《アームド・ドラゴンLV3》

 効果モンスター

 ☆3 風属性 ドラゴン族

 ATK1200 DEF900 守備表示

 

 再びアームド・ドラゴンの幼体がフィールドに召喚されていく。

 

「バトルだ! 俺は《アームド・ドラゴンLV5》で、フレイム・ウイングマンを攻撃! アームド・バスター!!」

 

 《アームド・ドラゴンLV5》 ATK2400 VS《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2100

 

 罠カード、《安全地帯》のデメリットでLV5はダイレクトアタックを封じられているが故にわざわざ攻撃を仕掛けてきたのだろう。

 しかし、わかっていても、今の十代にこの攻撃を防ぐすべは残されていなかった。

 LV5の一撃で、フレイム・ウイングマンが破壊され、その差300が十代のライフから引かれていく。

 

「うおっ!!」

 

 十代 LP6000→5700

 

「まだまだ行くぞ! 《アームド・ドラゴンLV7》と《アームド・ドラゴンLV3》で十代にダイレクトアタック! 行けっ、アームド・バニッシャー!! アームド・スマッシュ!!」

 

 《アームド・ドラゴンLV7》 ATK2800 &《アームド・ドラゴン》 ATK1200 VS十代 LP5700

 

 二体のアームド・ドラゴンの攻撃が十代へと迫る。同時に見えるが、順番的にはLV7の方が先で、LV3が後だった。

 

「ぐわあああああっ!!」

 

 十代 LP5700→2900→1700

 

 それでも受けたダメージは4000ということで、かなりの衝撃が十代を襲った。

 

「あ、あぶねぇ……!」

「フン。あまり早く済ませても観客達が動揺するからな。今回はこのくらいにしてやる」

「へへっ、そりゃどーも」

「俺はリバースカードを一枚伏せてエンドフェイズ。《アームド・ドラゴンLV5》の効果を発動!」

「このタイミングでLV5の効果って……まさか!?」

「そう、戦闘で相手モンスターを破壊したLV5は、エンドフェイズに自身を墓地へ送ることで、手札・デッキから《アームド・ドラゴンLV7》を特殊召喚できるのだ! レベルアップ! 出でよ、二体目の《アームド・ドラゴンLV7》!!」

 

 《アームド・ドラゴンLV7》

 効果モンスター

 ☆7 風属性 ドラゴン族

 ATK2800 DEF1000 攻撃表示

 

 フィールドに二体のLV7が並び立つ。同時に、LV5が墓地へ送られたことで、装備されていた《安全地帯》も破壊され墓地へ送られていった。

 

「何がこのくらいにしてやるだよ! ちゃっかり進化してんじゃねーか!」

「フン。どうとでも言うがいい。俺はこれで、ターンエンドだ」

 

 

 万丈目 手札1枚 LP3100

 フィールド LV7×2、LV3

 魔法・罠 《武装竜の震霆》、リバース1枚

 

 VS

 

 十代 手札4枚 LP1700

 フィールド なし

 魔法・罠 スカイスクレイパー

 

 

 序盤から押せ押せの万丈目に、反撃の隙を窺う十代。しかし、十代の方も隙があれば、万丈目の喉元を噛み千切ろうと牙を隠している。

 勿論、万丈目もそれに気づきつつ、デュエルは中盤へと突入しようとしていた。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・#25『VS万丈目サンダー(前編) アームドドラゴンの脅威』より、兄達のプレッシャーに飲み込まれそうになっていた万丈目を遊矢が救った。
 光と闇の竜の様子を見に来たが、落ち込んでいた万丈目を励まして吹っ切らせた。

・万丈目の精霊の力でカードが書き換わった。
 遊戯王世界でカードが書き換わるとか常識だぜ。いずれ、アームドドラゴン達もサンダーになる。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。