「俺のターン、ドロー!」
十代の残りライフは1700――しかし、《悪夢の蜃気楼》によって、手札は潤っている。まだまだ逆転の可能性は残されていた。
「魔法カード、《融合回収》! 墓地の《融合》と、バーストレディを手札に戻し――再び《融合》を発動! 手札のスパークマンとネクロダークマンを融合し、《E・HEROダーク・ブライトマン》を融合召喚するぜ!」
光と闇が合わさった新ダークヒーローがフィールドに現れる。
《E・HEROダーク・ブライトマン》
効果モンスター 融合
☆6 闇属性 戦士族
ATK2000 DEF1000 攻撃表示
「行くぜ、バトルだ! ダーク・ブライトマンで《アームド・ドラゴンLV7》を攻撃! この瞬間、スカイスクレイパーの効果! 自身よりも攻撃力が高いモンスターに攻撃をするダメージ計算時のみ攻撃力が1000アップする! ダークフラッシュ!!」
《E・HEROダーク・ブライトマン》 ATK2000→3000 VS《アームド・ドラゴンLV7》 ATK2800
スカイスクレイパーで強化された黒い雷が、《アームド・ドラゴンLV7》へと迫っていく。
「甘いぞ十代! 罠カード、《武装竜の万雷》!」
「「「「「サンダー! サンダー! サンダーボルトォォォォォッ!!」」」」」
ノース校のテンションがヤバいことになっているが、気を取り直す。
このタイミングで発動したということは、攻撃力を変化させるタイプの罠ということだ。
「俺は攻撃対象となっているLV7を対象に効果を発動! LV7以下のレベルを持つ墓地のアームド・ドラゴンモンスターの種類×1000ポイント、LV7の攻撃力をアップする! 俺の墓地には先程送られたLV5がいる! よって、LV7の攻撃力1000ポイントアップ! 迎え撃て、アームド・バニッシャー!!」
《E・HEROダーク・ブライトマン》 ATK2000→3000 VS《アームド・ドラゴンLV7》 ATK2800→3800
これで攻撃力の差は800となり、ダーク・ブライトマンは自身の攻撃を跳ね返されて自爆していく。
「くっ、ダーク・ブライトマン!?」
「ふっ、安心しろ。《武装竜の万雷》で攻撃力が上がったモンスターが相手に与えるダメージはゼロになる。よかったな、致命傷は避けられたぞ」
「そうみたいだな! なら、ここで俺はダーク・ブライトマンの効果を発動! このカードが破壊された時、相手フィールドのモンスター一体を選択して破壊する! LV7にはこのまま退場して貰うぜ!」
「甘いと言っている! 永続魔法、《武装竜の震霆》の効果で、『アームド・ドラゴン』モンスターが効果で破壊される時、このカードを代わりに墓地へ送ることで破壊を免れる!」
死なばもろともと、ダーク・ブライトマンがLV7に向かって再び黒い稲妻を放つが、身を守る雷の守りによってLV7は破壊から守られた。
「くっ、これも対処してくるのか……!」
「当たり前だ! 貴様がデュエルアカデミアでぬくぬくと遊んでいる間、俺は地獄を這い上がってきたんだ! それに比べれば、貴様の攻撃など蚊のようなものだ!」
「へっ、蚊を舐めてると後で痛い目見るぜ! 俺はモンスターをセット、リバースカードを一枚伏せてターンエンドだ」
十代 手札1枚 LP1700
フィールド セット1体
魔法・罠 スカイスクレイパー、リバース1枚
VS
万丈目 手札1枚 LP3100
フィールド LV7×2、LV3
魔法・罠 なし
「フン。でかい口を叩いておいて早速逃げの一手か! 俺のターン!」
万丈目がカードをドローしていく。
これで手札は二枚。その内の一枚は先程のターンで墓地から回収しておいた《アームド・ドラゴンLV5》だ。
「スタンバイフェイズに、再び《アームド・ドラゴンLV3》の効果を発動! このカードを墓地へ送り、手札の《アームド・ドラゴンLV5》を特殊召喚する! レベルアップ! 出でよ、《アームド・ドラゴンLV5》!!」
《アームド・ドラゴンLV5》
効果モンスター
☆5 風属性 ドラゴン族
ATK2400 DEF1700 攻撃表示
前のターンでLV5を墓地から回収していたことで、効果を無駄にせずにLV5を呼び出すことが出来た。
これにより、万丈目のフィールドはLV7が二体と、LV5が一体というかなり凶悪な状況となっている。
「さらに、墓地の罠カード、《武装竜の万雷》の効果を発動! 墓地のこのカードをゲームから除外することで、墓地の『アームド・ドラゴン』魔法カードを手札に加える! 俺は永続魔法、《武装竜の震霆》を手札に加える!」
これでまた万丈目は、モンスター強化か、墓地のアームド・ドラゴン回収。そして、効果破壊耐性という強力な効果を得ることが出来るようになった。
「さらに魔法カード、《強欲な壺》でデッキからカードを二枚ドロー!」
少なくなった手札まで補充していく。同時に、その内の一枚を見て、万丈目が笑みを浮かべた。
「フッ、ハハハハハハ! 十代、お前はとことん運が無い奴だぜ! 俺はフィールドの《アームド・ドラゴンLV7》をリリースし、手札の《アームド・ドラゴンLV10》を特殊召喚する! これが最後にして最強のアームド・ドラゴンだ!!」
LV7がさらに大きく、さらに禍々しく姿を変えていく。まさに最終形態に相応しい最強のドラゴンがそこには立っていた。
《アームド・ドラゴンLV10》
効果モンスター
☆10 風属性 ドラゴン族
ATK3000 DEF2000 攻撃表示
「LV10……! LV7よりさらに上があったのか!?」
当然、効果も強力になっており、手札一枚を捨てることで相手フィールドの表側表示モンスター全てを破壊できるようになっている。
とはいえ、十代のモンスターはセット状態なので、今は発動しない効果だった。
「俺はLV10を対象に、《武装竜の震霆》の効果を発動! 墓地のLV7を回収する!」
再び起こる「「「「「ライトニング」」」」」コール。
これで、LV5が守備モンスターを戦闘破壊することさえできれば、エンドフェイズにLV5はLV7へと進化し、万丈目のフィールドはLV7が二体、LV10が一体という完璧な状況になる――いや、正確には、LV10、LV7、LV5が並んでいるこの状況も相当にヤバい状況だった。
「バトルフェイズ! LV5でセットモンスターを攻撃! アームド・バスター!!」
攻撃対象となったことで、セットモンスターが表側表示になっていく。
十代のモンスターは《フレンドッグ》。破壊され墓地へ送られた時、墓地の融合とE・HERO一体を回収できる効果を持つモンスターだった。
《アームド・ドラゴンLV5》 ATK2400 VS《フレンドッグ》 DEF1200
万丈目はてっきり回収したバーストレディだと考えていたようで、少し驚いた様子を見せる。
とはいえ、別に大した問題がある訳でもなく、そのままLV5の一撃で《フレンドッグ》は破壊されていく。
「っ、《フレンドッグ》の効果で、フェザーマンと《融合》を手札に加える!」
「だが、こちらも進化条件を満たしたぞ! その上、まだ二体のアームド・ドラゴンの攻撃が残されている! いけっ、LV7! 十代にダイレクトアタックだ! アームド・バニッシャー!!」
《アームド・ドラゴンLV7》 ATK2800 VS十代 LP1700
「させるか! 速攻魔法、《クリボーを呼ぶ笛》! デッキから《ハネクリボー》を守備表示で特殊召喚する!」
《ハネクリボー》
効果モンスター
☆1 光属性 天使族
ATK300 DEF200 守備表示
LV7の一撃が十代に当たる直前、デッキから《ハネクリボー》が飛び出してきたことで、攻撃の巻き戻しが発生し何とか窮地を凌ぐ。
「ちっ、またそいつか……! お得意の逃げの一手! いつもながら、うざったい雑魚モンスターだ!」
『くりくりー!』
「フン。いっちょ前に怒ってやがる」
一見、たわいもない会話に見えるが、万丈目は確かに精霊と話をしていた。
先程、遊矢が更衣室で会った時ももしかして――と、思ったが、やはり万丈目も精霊が見えるようになったらしい。
十代の《ハネクリボー》の動きや仕草を正確に理解しているし、先程会った時もデッキから凄い精霊の力を感じた。
前にカードを渡した時は遊矢もまだ精霊を見る力が覚醒していなかったので、全ては推測になるが、おそらく《光と闇の竜》に導かれて、その力が覚醒したのではないかと遊矢は見ている。
『でもアニキぃ……あいつならオイラの兄弟のことを知ってるかもしれないよぉ? なぁ、オイラをデュエルに出して聞いてみておくれよぉ』
「うるさい! この大事なデュエルにお前の出番などあるか!」
『そんなこと言わずにアニキぃ~! お願いだよ~!』
急に万丈目が一人で怒り出した。
遊矢がいる応援席からだと小さ過ぎてよく見えないが、万丈目の肩に黄色い精霊らしきモンスターの姿が見える。
どうやら、十代の《ハネクリボー》もその精霊に気付いたようで、身振り手振りで十代にその存在を教えていた。
「えっ、何だって、万丈目のデッキに……? あっ、本当だ! なぁ、万丈目、それってもしかしてお前の――」
「なっ、マズい! 早く引っ込め! このっ! お前なんか使う訳ないじゃないか! さっさと引っ込まんか!」
まるで蠅でも叩くかのように精霊を消すと、万丈目は改めて十代に方へ振り返る。
「貴様など、本来なら攻撃にも値しない雑魚――」
『くりくりー!!』
「――だが、フィールドに残しておいても面倒だ! いけっ、《アームド・ドラゴンLV7》! アームド・バニッシャー!!」
《アームド・ドラゴンLV7》 ATK2800 VS《ハネクリボー》 DEF200
LV7の強烈な一撃で、《ハネクリボー》が粉砕されていく。
しかし、そのおかげで、このターンはもう十代が戦闘ダメージを受けることはなくなった。
「俺は、リバースカードを一枚伏せてエンドフェイズ! 《アームド・ドラゴンLV5》の効果を発動! 戦闘で相手モンスターを破壊したLV5を墓地へ送り、手札から《アームド・ドラゴンLV7》を特殊召喚する!!」
《アームド・ドラゴンLV7》
効果モンスター
☆7 風属性 ドラゴン族
ATK2800 DEF1000 攻撃表示
永続魔法、《武装竜の震霆》で手札にLV7を戻しておいたおかげで、再びLV7が二体並んだ。
おまけに、最強のLV10も一緒だった。万丈目のフィールドはターンを終える毎に盤石になっていく。
「ターンエンドだ」
万丈目 手札0枚 LP3100
フィールド LV10、LV7×2
魔法・罠 《武装竜の震霆》、リバース1枚
VS
十代 手札3枚 LP1700
フィールド なし
魔法・罠 スカイスクレイパー
こうして段階的にモンスターが強力になり、さらに十代の猛攻を全て凌いでいるという状況はテレビ的にも大盛り上がりになっていた。
万丈目の兄二人も、「「準も場の盛り上げ方をわかっているではないか!」」と絶賛。誰がどう見ても、万丈目有利な状況としか見えない。
ただ、対峙している万丈目だけは理解していた。こういう危機的状況になるほど、遊城十代という男は底力を見せてくるということを。
「俺のターン! よし、魔法カード、《HEROの遺産》を発動! 墓地に存在するヒーローモンスターを融合素材とする融合モンスター二体――フレイム・ウイングマンとダーク・ブライトマンをEXデッキに戻し、カードを三枚ドローするぜ!」
「三枚のドローだと!?」
これで、十代の手札は6枚まで増えた。
何かしてくると、改めて警戒する万丈目。
「俺は再び《融合》を発動! 手札のフェザーマンとバーストレディを融合し、フレイム・ウイングマンを融合召喚する!」
魔法カード、《HEROの遺産》のコストとして、フレイム・ウイングマンがEXデッキに戻ったことで再び召喚が可能となっていた。
《E・HEROフレイム・ウイングマン》
効果モンスター 融合
☆6 風属性 戦士族
ATK2100 DEF1200 攻撃表示
「何を狙っている……?」
「さらに魔法カード、《R-ライトジャスティス》! 自分フィールドの『E・HERO』の数だけ相手の魔法・罠カードを破壊する! 俺は永続魔法、ライトニングを破壊するぜ!」
アームド・ドラゴンを守る防御を狙ってきた。
永続魔法、《武装竜の震霆》が破壊されたことで、アームド・ドラゴン達を効果破壊から守るすべはなくなり、攻撃力もスカイスクレイパーで上回る。
もし、この後モンスターが追加召喚され、全てのアームド・ドラゴンが戦闘及び効果で破壊された場合、その勢いでライフをゼロにされる可能性は十分にあった――僅かな思考で、そう判断した万丈目は即座にリバースカードを発動させる。
「速攻魔法、《神秘の中華なべ》を発動! LV10をリリースし、その攻撃力3000のライフを回復する!」
フレイム・ウイングマンの効果で大ダメージを受ける前に、万丈目はLV10をリリースしてライフを回復していく。
万丈目 LP3100→6100
「気付かれたか! けど、まだ射程範囲だぜ! 俺は魔法カード、《スカイスクレイパー・シュート》を発動!」
「《スカイスクレイパー・シュート》だと!?」
「自分フィールドの『E・HERO』融合モンスターを対象に、その融合モンスターより攻撃力の高い相手フィールドのモンスターを全て破壊する!」
前に遊矢と組んだ迷宮兄弟とのタッグデュエルでも使用したカードだった。今、十代のフィールドには『E・HERO』の融合モンスターはフレイム・ウイングマンしかいない。
つまり、その攻撃力2100以上の攻撃力を持つモンスターは全て破壊される。二体のLV7は攻撃力2800のため、当然全て破壊されていった。
「ぐっ、これを狙ってたのか!」
「さらに! フィールドに摩天楼が発動している場合、この効果で破壊して墓地に送られたモンスター全ての元々の攻撃力分のダメージを相手に与えるぜ!」
「何だと!?」
もし、万丈目が《神秘の中華なべ》を使っていなかったら、合計ダメージは8600となり余裕のワンキルだった。
しかし、万丈目の計算によって回復したライフのおかげで、ギリギリLV7二体の攻撃力合計である5600を受けきっている。
「ぐぅっ!!」
万丈目 LP6100→500
「凌がれたけど、俺の場にはまだフレイム・ウイングマンがいるぜ! いけっ、ダイレクトアタックだ!!」
「――悪いが、バトルフェイズは終了させて貰う! 墓地の《超電磁タートル》の効果で、このカードを墓地から除外することでバトルフェイズを終了させる!」
三沢曰く、高額のレアカード。
デュエルアカデミアを旅立った際に、デッキのカードは全て駄目になってしまった万丈目だが、兄達が金に物を言わせて持ってきたカードの中にこのカードがあったことで窮地を救われていた。
万丈目からしてみると、このデュエルの大半は兄達が持ってきたカードに救われている。
「有難う、兄さん達……!」
微妙な勘違いがあるにしろ、おかげで助かったのは間違いない。危うく、あの状況から負ける所だった。いつもの敗北パターンということで警戒していただけのことはあったようだ。
一見してピンチになった万丈目だが、十代の方ももう手札が一枚しかなく、バトルフェイズを終了させられた以上、攻め手は残っていなかった。
「俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」
十代 手札0枚 LP1700
フィールド フレイム・ウイングマン
魔法・罠 スカイスクレイパー、リバース1枚
VS
万丈目 手札0枚 LP500
フィールド なし
魔法・罠 なし
「俺のターン!!」
だが、ピンチの後にはチャンスがやってくる。
先程まで押されていた十代が、逆転の手を作ってきたように、万丈目もこの逆境を打破すべく必要なカードをドローしていく。
「墓地の《ミンゲイドラゴン》の効果発動! 自分のスタンバイフェイズにこのカードが墓地に存在し、自分フィールドにモンスターがいない場合、このカードを表側攻撃表示で特殊召喚できる!」
《ミンゲイドラゴン》
効果モンスター
☆2 地属性 ドラゴン族
ATK400 DEF200 攻撃表示
最初のターンの《天使の施し》で、《超電磁タートル》と共に墓地へ送られていたトーテムのようなドラゴンが蘇っていく。
本来、《ミンゲイドラゴン》は墓地にドラゴン族以外のモンスターがいる時、効果が発動できないデメリットがあるが、先程《超電磁タートル》が除外されたことで、そのデメリットも解除されていた。
「さらに、魔法カード、《貪欲な壺》! 墓地のLV3、LV5、LV7二体、LV10をデッキに戻してシャッフル! カードを二枚ドローする!」
万丈目が気合を入れてドローしていく。
精霊の力を強く感じる――遊矢には、万丈目があのカードをドローしたことがわかった。
また、対峙している十代も、何かヤバい気配を感じたのか、「何だ、この感覚……!」と、不思議なものを見るような表情を浮かべている。
「《ミンゲイドラゴン》の効果! このカードは、ドラゴン族モンスターをアドバンス召喚する時、二体分のリリースとすることが出来る! 俺は、二体分となった《ミンゲイドラゴン》をリリースし――」
――カードが光る。強い精霊の力が、実体化する前から溢れていた。
「――《光と闇の竜》をアドバンス召喚!!」
会場中が光に包まれ、あまりの眩しさに目を開けることが出来なくなる。
段々と光が収まり、視界が回復した時には、万丈目のフィールドに圧倒的存在感を放つ二色の竜が君臨していた。
《光と闇の竜》
効果モンスター
星8 光属性 ドラゴン族
ATK2800 DEF2400 攻撃表示
「す、すっげぇ! 滅茶苦茶かっこいいドラゴンだ!」
「これで終わりだ。俺に《光と闇の竜》を使わせたことを満足して敗れるがいい!!」
このテレビ放送を、ペガサス会長は見てくれているだろうか――貴方から頂いたカードと共に、俺はデュエルキングへの道を歩き出します。
そんな感謝の気持ちを心の中で抱きながら、万丈目はバトルフェイズへと突入していった。
「行くぞ、《光と闇の竜》でフレイム・ウイングマンを攻撃! シャイニングブレス!!」
《光と闇の竜》 ATK2800 VS《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2100
口から神々しい光のブレスが発射され、フレイム・ウイングマンを飲み込もうとしていく。
攻撃力の差は700――攻撃を受けてもまだ余裕はあるが、十代は何かあると判断して防御のためにリバースカードをオープンした。
「速攻魔法、《融合解除》! フレイム・ウイングマンの融合を解除して分離する!」
「無駄だ! 《光と闇の竜》の効果! 攻撃力と守備力を500ポイント下げることで、あらゆるカードの発動を無効にして破壊する!」
「なっ、カードの発動を無効にするだって!?」
観客席の翔が、「そんなのインチキカードじゃないか!」とお得意の文句を言っている。
他に文句こそ出なかったが、その強力な効果に三沢や明日香も驚いた様子を見せていた。
《光と闇の竜》 ATK2800→2300 DEF2400→1900
裁きの光によって、《融合解除》は発動を封じられ、フレイム・ウイングマンはそのまま光の一撃に飲まれていく。
「けど、俺のライフはまだ残るぜ!」
「終わりだと言っただろう! 《光と闇の竜》の効果にチェーンして、速攻魔法、《竜皇神話》を発動! 自分フィールドのドラゴン族モンスターの攻撃力はターン終了時まで二倍になる!」
万丈目は自身のカードの特性を完璧に理解していた。《光と闇の竜》は、自分と相手のあらゆるカードの発動を強制的に無効にする最強の効果を持っているが、同一チェーン上で無効にできるのは一度のみであることを。
今、《光と闇の竜》は《融合解除》を解除するために、その無効効果を使った。それに対して、万丈目は攻撃力を上げる《竜皇神話》をチェーン発動させた訳だが、それにチェーンして《光の闇の竜》の効果で《竜王神話》を無効にするということは出来ない。
これはノース校の生徒も知らない万丈目の切り札だった。当然、初見の十代に、そんなことがわかる訳がない。
いわば、代表決定戦の時の三沢の気分だ。あの時の三沢もホープの効果がわからずに、十代にわからん殺しを受けている。まさか、それが自分にも跳ね返ってくるとは――と、十代は走馬灯のように三沢とのデュエルを思い出していた。
《光と闇の竜》 ATK2300→4600 VS《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2100
残りライフ1700の十代に、この攻撃を受けきれるはずもなく、フレイム・ウイングマンが光に飲まれていく。
同時に、その攻撃力の差、2500が十代のライフから削られていった。
十代 LP1700→0
「うわぁ、負けたぁ! くっそー、勝てると思ったんだけどなー!」
ソリッドビジョンが消え、十代が尻もちを付いて倒れる。
勝った――ペガサスから貰ったカードを使い、一ノ瀬から伝説のアームド・ドラゴンを借り受け、兄達の補助を受けてようやくだが、それでも万丈目の勝利に違いはなかった。
喜びが足元から全身に上り詰めてくる。長くデュエルモンスターズをやってきた万丈目だが、こんなに勝ったことが嬉しいのはそれこそ初めてデュエルで勝利した時以来だった。
逆に負けた十代は、普段遊矢に負け慣れているだけあって特に変わった様子はない。
しかし、これまで遊矢や亮のような極端に強い生徒以外、それこそ一年では負け知らずの十代が負けてしまったことで、デュエルアカデミア本校の生徒も信じられないというような顔を浮かべている。対するノース校は「サンダー」コールが止むことがなかった。
「ガッチャ。楽しいデュエルだったぜ、万丈目」
「万丈目さんだ! 全く馴れ馴れしい奴め。しかし、これで前回の敗北は返したぞ」
「あれは半分ナンバーズのせいなんだから、別にカウントしなくても良くね?」
「ならば、一番最初のデュエルの負けを清算しておけ。手を抜いたとはいえ、あれも負けは負けだ。とにかく、まだまだ勝負はこれからだぞ」
「ああ、わかってる。俺はいつでも受けて立つぜ!」
互いの健闘を称え合う当人達だが、決着がついたことで、鮫島校長が崩れ落ち、一ノ瀬校長が両手を上げて勝利を喜んでいる。
テレビ的にも完璧な内容だったということで、万丈目の兄達も満面の笑みで万丈目の元へやってきた。
「よくやったぞ、準。いやぁ、一瞬負けたかと思って冷や冷やしたが、あれも逆転のための演出とは憎い奴め」
「しかし、何故、俺の持ってきたカードを使わなかったのだ? あのカードを使えばもっと楽に戦えただろう」
「えっ? 今回使用したカードの大半は、兄さん達が持って来てくれたカードですが……?」
「ん、そうなのか? あんなカード用意した覚えはないのだが……」
「まぁまぁ、正司。勝ったのだからいいではないか。しかし、準。心配していたが、ちゃんとやっているようで安心したぞ。これからもその調子で、我らが約束の為に邁進するのだ」
心配していた――遊矢の言った通りだった。
何だかんだ自己中心的な兄達だが、それでも自分のことを心配はしてくれている。その期待に応えられたことが、万丈目にとって何より嬉しいことだった。
今度は、しっかりと応えられる。「はい!」と、弟の自信に満ち溢れた返事を聞いたことで、二人の兄達は満足そうにデュエルアカデミアから去って行った。
◇◆
対抗戦で勝った方に与えられる褒美というのは、購買部のトメさんからのキスだった。
どうやら、トメさんはミスデュエルアカデミアとも呼ばれているらしく、キスをされた一ノ瀬校長が人には見せられないくらいににやけた顔をしている。逆に鮫島校長はそんな姿を見ていられないとばかりに、泣きながら校長室に走って行った。
自分達はこんなことのためにデュエルをしたのか――と、苦笑いを浮かべる十代と万丈目だが、そんな中、遊矢は何故亮が今回の対抗戦出場をあんな簡単に辞退したのかを納得する。
彼は去年、既にこの茶番を見ていたのだ。
だからこそ、十代にその役を譲ったのだろう。何だかんだでデュエルバカの亮が素直に身を引いておかしいと感じていたが、これでその謎も解けた。
こうして全てのイベントが終わり、ノース校生が潜水艦に乗り込んでいく中、万丈目はここに残ると告げる。どうやらノース校には帰る気はなく、ここで十代や遊矢との因縁にケリをつけるということで、アカデミア本校に戻るのを希望していた。
いきなりのことに驚くノース校生達だが、万丈目の決意が固いと察すると、涙ながらに「サンダー」コールをして去って行く。また、一ノ瀬校長も幸せのあまり、万丈目からアームド・ドラゴンを回収するのを忘れていた。
そんなこんなでデュエルアカデミア本校に戻ってくることになった万丈目だが、約三か月も出席日数が足りないということで、オベリスクブルーでの進級は不可能。出席日数の関係ないオシリスレッドに在籍することになり、翔や十代に歓迎されている。
「この俺がオシリスレッドだと……信じられん」
「文字通り、これからは同僚ってことっすね」
「同じ寮で同僚とかけたつもりか? 寮の字が違うだろ、馬鹿め。そんなこともわからないのか、オシリスレッドは」
「まぁまぁ、よろしく頼むぜ、同僚」
「ふざけるな十代! 俺はオシリスレッドなんて死んでも納得しないぞ!」
「そう言わずに、別にオシリスレッドも悪い所じゃないよ」
「そもそも、貴様はいつまでオシリスレッドでいるつもりだ遊矢! とっくにオベリスクブルーになっていてもおかしくないだろう!?」
何だかんだオシリスレッドでの環境が心地よくて、ずっとレッドに居座っている遊矢だったりする。
しかし、今はそんなことどうでもいいとばかりに、万丈目のデュエルアカデミア帰還を祝うムードだった。
「そんじゃあ! 万丈目のオシリスレッド入りを祝して!」
「って、勝手に決めるな!」
しかし、そんなツッコミを入れている間にカウントはスタートしていた。
「「「「「一!」」」」」
「「「「「十!」」」」」
「「「「「百!」」」」」
「「「「「千!」」」」」
「万丈目サンダー!!」
コールされると乗ってしまうのは、ノース校での名残だろう。
「「「「「サンダー! サンダー! 万丈目サンダー!!」」」」」
だが、アカデミア本校生も、もうノース校に負けないくらいその掛け声が染みついていた。
こうして、無事に万丈目はデュエルアカデミア本校に帰り、みんなに受け入れられていく。
その夜、レッド寮の裏で帰ってきた万丈目と、とある人物のデュエルが行われることになったのだが、それを知るのはオシリスレッドでも限られたメンバーだけだった。
原作との変化点。
・#26『VS万丈目サンダー(後編) アームドドラゴンレベル7』より、万丈目が勝利した。
まさに全ての力を振り絞っての勝利。光と闇の竜を出すと決めた時から、この結末は決まっていた。
・家族との仲が良くなった。
万丈目兄達もこれにはにっこり。
・一ノ瀬がカードを回収し忘れた。
幸せ気分で、帰った後に気付いた。次に会う頃には原型がなくなる予定。
・万丈目ととある人物がデュエルした。
俺達のバトルシティは終わらない。