榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

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#032 『命をかけろと言うのなら』

 大徳寺の課外授業で遺跡探検に行くことになった。

 メンバーは、呼び出し人である大徳寺と、半ば強制的に集められた遊矢、十代、翔、隼人のいつものレッド組。さらに、オベリスクブルー女子の明日香の五人だった。明日香としては、普段は火山の近くで立ち入れない遺跡に、行方不明となっている兄の手がかりがないか探しに行くつもりらしい。

 

 険しい山道を超えて、古代の遺跡の前までたどり着いた遊矢達だったが、その遺跡に近づいた瞬間、急に太陽が三つに増え、謎の光によって次元移動させられてしまった。

 全員バラバラに移動したようだが、遊矢だけが、過去の経験から別の次元に移動したことを察する。

 

 しかし、どう見ても現代とは思えぬ場所だった。

 

 何があるかわからないので、隠れて辺りを調べてみると、エジプトでしか見ないようなピラミッドがある。また、先程までいた遺跡にあったものと同じ門があり、ここがかなり古い次元だということがわかった。

 また、この世界にいるのは人間ではなくて、デュエルモンスターズの精霊らしい。人の形こそしているが、人間とは違う特別な力を感じる。

 

 そのまま、この世界のことを調べていると、どうも大徳寺、翔、隼人、明日香の四人は、既にここの住人達に捕まってしまったらしく、墓荒らしとして処刑されそうになっているのがわかった。

 何故か十代だけがいないようだったが、見過ごすわけにはいかないので助けに行くと、遊矢とここの長で試練の儀式――デュエルを行い、勝てば捕まった四人を解放するという約束を取り交わす。

 代わりに負ければ、生きたまま肝を抜かれてミイラにされるらしいが、どの道負ければ墓荒らしとして生きたまま墓に埋められることになるので、どの道結果は同じだった。

 

「もう一人、俺の仲間がこの次元に来てるはずだ。まだ捕まってないみたいだけど、俺が勝ったらそいつも含めた全員の解放を約束して欲しい」

「いいだろう。勝てればの話だがな」

 

 お互いにデュエルディスクを構える。

 負けたら即死ということで、大徳寺、翔、隼人、明日香の四人は既に墓に入れられ、遊矢のデュエルを見上げる形で応援していた。

 

「デュエル!」

「試練、開始」

 

 先攻は長。どうもデュエルディスクは精霊の力で具現化したもののようだが、問題なく動いている。

 

「私のターン、ドロー。私はモンスターをセット。カードを一枚伏せてターンを終了する」

 

 

 長 手札4枚 LP4000

 フィールド セット1体

 魔法・罠 リバース1枚

 

 VS

 

 遊矢 手札5枚 LP4000

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

 手堅い初動と言っていいだろう。相手がどんなデッキなのか、現時点ではまだ謎のままだ。

 しかし、負ければ命を落とすデュエル――サイコ・ショッカーの時と同じかそれ以上の危険度だ。そんな危険な戦いで、のんびりと相手の実力が出るのを待つつもりは毛頭なかった。命をかけろというのなら、相応の対応をさせて貰う。

 

「俺のターン! 俺はスケール3の《相克の魔術師》とスケール8の《相生の魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング!!」

 

 お得意のペンデュラム。両端に二体の魔術師が並び、光の柱が出来たことで、レベル4~7までのモンスターを同時に召喚可能となる。

 

「ペンデュラムスケールだと? 何だそれは?」

「悪いけど、詳しく説明するつもりはない。このまま一気に勝負を決めさせて貰う! 揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚!」

 

 サイコ・ショッカーの時同様、人の命が関わるデュエルで、敵に優しくなどしない。わからない方が悪いと言わんばかりに、遊矢はそのまま自分のターンを進めていく。

 これが普通のデュエルなら、遊矢もここまではしなかっただろう。掟とやらで、人の話も聞かずに命を懸けたデュエルをさせる相手が悪かった。

 

「来い、俺のモンスター達! レベル4、《EMホタルクス》! 同じく、レベル4、《EMラクダウン》! そして、レベル7、雄々しくも美しい二色の眼、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

 

 天空から降りてきた光は三つ――三体のモンスターが同時に召喚されていく。

 

 《EMホタルクス》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆4 光属性 昆虫族

 ATK1200 DEF1600 守備表示

 

 《EMラクダウン》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆4 地属性 獣族

 ATK800 DEF1800 守備表示

 

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆7 闇属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 蝶ネクタイの一張羅を来たコミカルな蛍を先頭に、シルクハットを被ったコミカルなラクダと、遊矢の相棒であるオッドアイズがフィールドに降臨した。

 流石の長も、モンスターが三体も特殊召喚され、その内の一体が上級モンスターということで動揺が顔に出ている。

 

「バカな! モンスターを一気に特殊召喚したとでもいうのか!?」

「まだだ! 俺はレベル4のホタルクスとラクダウンでオーバーレイ!!」

「オーバーレイ!? 何だそれは!?」

 

 ペンデュラム召喚からのエクシーズ召喚――どうやら、この次元にはペンデュラムもエクシーズも存在していないようで、完全に長はペースを遊矢に握られてしまった。

 

「――漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙! 今、降臨せよ! エクシーズ召喚! 現れよ、ランク4《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!!」

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》

 効果モンスター エクシーズ

 ランク4 闇属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 ペンデュラム召喚からのエクシーズ召喚という十八番を決め、攻撃力2500のドラゴンが二体並ぶ。

 だが、ここからさらに先があった。

 普段は生徒相手だということで自重しているが、命のかかったデュエルで手加減をするなど愚の骨頂――遊矢はこのターンで全てを決めるつもりでデュエルディスクのボタンを押していく。

 

「対立を見定める《相克の魔術師》よ! その鋭利なる力で、異なる星を一つにせよ! 《相克の魔術師》のペンデュラム効果! 一ターンに一度、自分フィールドのエクシーズモンスター一体は、このターンの終わりまでそのランクと同じ数値のレベルのモンスターとして扱う!」

 

 これにより、ダーク・リベリオンはレベル4モンスターとしても扱うことが出来るようになる。

 下で見ている明日香以外は、この効果に覚えがあった。

 それは前にオベリスクブルーのオカルト研究クラブが間違えてサイコ・ショッカーの精霊を呼び出してしまい、そいつらと命をかけたデュエルをした時に見た遊矢の本気の一端。

 

「和合を見定める《相生の魔術師》よ! その神秘の力で、天高く星を掲げよ! 《相生の魔術師》のペンデュラム効果! 一ターンに一度、自分フィールドのエクシーズモンスター一体と、レベル5以上のモンスターを一体選び、そのエクシーズモンスターのランクはターン終了時まで選んだレベル5以上のモンスターのレベルの数値と同じになる!」

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》 ランク4→7

 

 明日香が「これで、レベル7が二体……」と呟く。遊矢が何をしようとしているか、ようやく全貌が見えてきた。

 

「俺は、レベル7の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と、レベル7として扱う《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》でオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!!」

 

 墓の中から、翔が「いけぇ、覇王黒龍!」と叫ぶ。

 だが、覇王黒龍の効果は表側表示のモンスターにしか効果が及ばない。遊矢は即、別のモンスターの召喚を決める。

 

「――二色の眼の竜よ、深き闇より蘇り、怒りの炎で地上の全てを焼き払え!!」

 

 口上が違うことで隼人も「違う! 覇王黒龍じゃないんだな!」と声を上げた。

 大徳寺もまた、覇王黒龍以外にランク7のエクシーズモンスターがいるとは思わず驚いた表情を浮かべている。

 

「エクシーズ召喚! 出でよ、ランク7! 災い呼ぶ烈火の竜、《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》!!」

 

 《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》

 効果モンスター エクシーズ ペンデュラム

 ランク7 闇属性 ドラゴン族

 ATK3000 DEF2500 攻撃表示

 

 全身が真っ赤な鋼殻に包まれたドラゴンが降臨した。

 自身がズァークに飲まれかけていた時に生み出した破壊の化身――だが、前の神楽坂とのデュエルで出したガトリングールもそうだが、今は一つのカードとして力を貸して貰う。

 

「オッドアイズ・レイジング・ドラゴンの効果! オーバーレイユニットを一つ使い、一ターンに一度、相手フィールドのカードを全て破壊する!!」

「なんだと!?」

 

 長の驚く声を聞きながら、翼から噴き出す炎が、セットモンスターとリバースカードを薙ぎ払っていく。

 その姿はまさに破壊の化身。相手フィールド全てを破壊するその効果に、墓の中で応援していた四人も声を出せずにいた。

 

「私のフィールドが!?」

 

 セットされていたモンスターは《墓守の使徒》。戦闘破壊された時に、墓守モンスターをリクルートする効果を持っていたが、効果破壊には対応していないため、そのまま姿を見ることなく墓地へ送られている。

 また、リバースカードは《降霊の儀式》で、自分の墓地の墓守モンスターを特殊召喚するカードだった。本来であれば、戦闘破壊された《墓守の使徒》を復活させて、後続に繋げるつもりだったのだろう。しかし、今現在墓地に墓守モンスターは存在していないため、これもまた何も出来ずに破壊されている。

 

「オッドアイズ・レイジング・ドラゴンは、ターン終了時まで破壊したカード一枚につき200ポイント攻撃力がアップする。破壊したカードは二枚。よって、攻撃力は400ポイントアップする」

 

 《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》 ATK3000→3400

 

 相手フィールドの全体破壊に加え、攻撃力上昇効果。もし、カードを五枚破壊出来れば、その時点で相手をワンターンキルすることが出来る。

 いつも強カードを掟破り扱いする翔だが、覇王黒竜同様に、この強力過ぎる効果には言葉も出ないようだった。

 

「ふっ、残念だったな。私のカードがもっと多ければワンターンキルも狙えたのだろうが、ギリギリで私のライフは残る。次のターンで、私の墓守デッキの真の力をお前に――」

「オッドアイズ・レイジング・ドラゴンは一ターンに二度攻撃できる」

「――見せてや……えっ?」

 

 全体破壊と攻撃力上昇だけでも強力なのに、それに加えて一ターンに二度も攻撃が出来る。

 今度こそ長は言葉を失った。召喚を防ぐか、効果を無効にしない限り、オッドアイズ・レイジング・ドラゴンは確定で相手をワンターンキルできるのだ。

 当然、下の四人も、強すぎる効果に声も出ない。

 彼らも、これまで数々のデュエルモンスターズのカードを見てきたが、ここまで強力な効果は見たことがなかった。覇王黒竜や覇王白竜も、この効果の前では可愛く見える。

 

「バトル! オッドアイズ・レイジング・ドラゴンでダイレクトアタック! 憤激のデストラクションバースト!!」

 

 《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》 ATK3400 VS長 LP4000

 

「ぐわあああああああああああああああああああああああぁぁぁっ!!」

 

 容赦のない灼熱のブレスが、長の身を焼いていく。

 語られていなかったが、これは闇のゲームであり、ダメージは通常のデュエルを超える激痛をプレイヤーに与える。

 覇王烈竜の一撃は、長の意識を飛ばす勢いで肉体と精神にダメージを与え、倒れた長は体を起こすことが出来ずにいた。

 

「あ、が、ぐ……」

 

 長 LP4000→600

 

「これで終わりだ。オッドアイズ・レイジング・ドラゴンで――」

「待ってくれ!」

 

 遊矢が長にとどめを刺そうとした瞬間、倒れる長を庇うように黒いフードと布で顔を隠した女性が現れる。

 見た目では性別はわからなかったが、声は女性だった。

 彼女も精霊だ。長が《墓守の長》の化身とするのなら、おそらく彼女は《墓守の暗殺者》の化身なのだろう。

 

「これは闇のゲーム! ダメージは肉体と精神に強い痛みを与える! これ以上攻撃されたら長は――」

「よ、よさぬか! こ、れは、試練の儀式……! 何人たりとも……邪魔立ては、許さん……あ、あまつさえ、敵に情けを、請うなど……恥を知れ!」

 

 息も絶え絶えでそう口にする長だが、その姿が暗殺者の言葉が正しいものなのだと証明していた。

 遊矢が攻撃すれば、長はダメージに耐えられずに死ぬ可能性がある。これがズァークに飲まれていた頃なら迷いなく攻撃しただろうが、流石の遊矢も人を殺すことには抵抗があった。

 正確には、人ではなく人型の精霊だが、それでも手にかけることには抵抗がある。

 サイコ・ショッカーの時のように倒しても精霊界に帰るだけなら迷わなかった。しかし、ここは彼らの世界であり、死は間違いなく消滅を意味する。だが、勝たなくては下の四人を助けることが出来ない。迷いが遊矢の動きを止めていく――

 

「貴様っ、私に……情けを、かけるつもりか? この……試練を、超えねば……貴様の仲間は、生きたまま、墓に沈められるのだぞ……!?」

 

 そうだ、仲間を助けるための最短の道として覇王烈竜を呼んだのだ。ここで手を抜いたら、それも全て意味がなくなる。

 

「攻撃しろ……攻撃、するのだ……!」

「俺は……」

 

 長の必死な目と、その隣で懇願するかのような暗殺者の目を見て、遊矢は迷う――しかし、最後は後者の目にやられた。

 

「俺は――リバースカードを一枚伏せてターンエンド」

 

 遊矢がターンを終えたことで、オッドアイズ・レイジング・ドラゴンの効果も切れ、攻撃力も元に戻っていく。

 

 《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》 ATK3400→3000

 

 

 遊矢 手札0枚 LP4000

 フィールド 覇王烈竜

 魔法・罠 リバース1枚

 ペンデュラム 相克、相生

 

 VS

 

 長 手札4枚 LP600

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

 デュエルは続行――試練に手を抜かれたことで、長はその怒りで体を起こした。

 

「試練で……手を、抜かれるとは……何たる、屈辱……!」

 

 まだフラフラしている長を支えようとする暗殺者だが、要らぬとばかりに長につきとばされてしまう。

 

「触るな……! この、恥さらしめが! 試練の、儀式で……敵に、慈悲を請うた……裏切り者! 貴様も、この試練が終われば処刑してやる……!」

「そんな! その人はアンタを心配して……!」

「黙れ、罪人め! 試練の儀式を舐めたこと……後悔させてくれるっ! 私の、ターン!」

 

 そう言って、長はカードをドローした。

 

「魔法カード、《強欲な壺》を、発動……! デッキ、から、カードを……二枚、ドローする……!」

 

 息も絶え絶えと言う様子だが、長はそのまま引いたカードの効果を発動させていく。

 

「私は、手札の《墓守の司令官》の効果を、発動……! この、カードを、手札から捨て、デッキよりフィールド魔法、《王家の眠る谷―ネクロバレー―》を、手札に加える!」

 

 少しずつ息が整ってきたのか、長も動きが少し元に戻ってきたように見える。

 

「そのまま、フィールド魔法、《王家の眠る谷―ネクロバレー―》を発動……! これにより、このカードが、フィールドゾーンにある限り、お互いに墓地のカードを除外できず、墓地へ及ぶ効果は無効化され、適用されない……!」

 

 墓地の利用を封じられた。昨今のデュエルモンスターズは、墓地が第二の手札とも言われるくらいに重要視されている。

 その利用を封じられるのは、かなりの痛手だ。普通のデュエリストであれば――

 

「私は、手札から、《墓守の霊術師》を召喚!」

 

 《墓守の霊術師》

 効果モンスター

 ☆4 闇属性 魔法使い族

 ATK1500 DEF1500 攻撃表示

 

 アヌビスの面を被った女性術師が現れる。

 

「ネクロバレーの、さらなる効果発動! フィールドの、墓守モンスターの攻撃力と守備力を、500ポイントアップさせる!」

 

 《墓守の霊術師》 ATK1500→2000 DEF1500→2000

 

「そんな効果も持っていたのか!?」

「さらに、《墓守の霊術師》は、フィールドに、ネクロバレーが存在する時……魔法使い族の融合モンスターによって決められた、フィールドのこのカードを含む融合素材モンスターを手札、フィールドより墓地へ送ることで、その融合モンスターを特殊召喚できる!」

 

 そのまま、手札を一枚、遊矢に見せてきた。

 

「私は、手札の《墓守の暗殺者》と、フィールドの、《墓守の霊術師》を融合し、《墓守の異能者》を融合召喚する!」

 

 二体の墓守モンスターが一つとなり、褐色で白髪の太陽をモチーフにした杖を持った男性型モンスターが現れる。

 

 《墓守の異能者》

 効果モンスター 融合

 ☆7 闇属性 魔法使い族

 ATK2000 DEF2000 攻撃表示

 

 どうやら、これが長の切り札のようだった。

 

「《墓守の異能者》の攻撃力、守備力は、このカードの融合素材としたモンスターの元々のレベル×100ポイントアップする!」

「なっ、《墓守の霊術師》のレベルは4で……」

「《墓守の暗殺者》も4、よって800ポイント、攻撃力と守備力がアップする!」

 

 《墓守の異能者》 ATK2000→2800 DEF2000→2800

 

「さらにネクロバレーの効果で攻撃力、守備力500ポイントアップ!」

 

《墓守の異能者》 ATK2800→3300 DEF2800→3300

 

「オッドアイズ・レイジング・ドラゴンの攻撃力を超えてきたか……!」

「それだけではない。私のフィールドにネクロバレーが存在する限り、このカード及び、自分のフィールドゾーンのカードはカード効果では破壊されん」

 

 つまり、オッドアイズ・レイジング・ドラゴンの効果でも破壊されない。フィールド魔法を除去して弱体化させることは出来ないということだった。

 

「最後に、永続魔法、《ネクロバレーの祭殿》を発動。フィールドに墓守モンスター及び、ネクロバレーが存在する場合、このカードがフィールド上に存在する限り、お互いに墓守モンスター以外のモンスターを特殊召喚出来ない。これで、貴様のなんちゃら召喚は封じた!」

 

 墓守以外の特殊召喚制限――これがもし先攻一ターン目に発動されていたら、遊矢は今のように落ち着いていることは出来なかっただろう。

 しかし、今の遊矢にはまだオッドアイズ・レイジング・ドラゴンが残されていた。

 

「……もう、大丈夫そうだな」

「何がだ?」

「いや、あんたの体力がさ。ライフがゼロになっても耐えられそうかなって」

「世迷言を、貴様はこれで終わりだ! 《墓守の異能者》でオッドアイズ・レイジング・ドラゴンを攻撃!」

 

 《墓守の異能者》 ATK3300 VS《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》 ATK3000

 

 異能者の呪いが、オッドアイズ・レイジング・ドラゴンを倒そうと苦しめていく。

 

「悪いけど、負ける気はないよ! 罠発動、《分断の壁》! 相手フィールドのモンスターの攻撃力を相手モンスターの数×800ポイントダウンする!」

「なにぃっ!?」

「これで、再び攻撃力はオッドアイズ・レイジング・ドラゴンの方が上になった! 反撃だ! 憤激のデストラクションバースト!!」

 

 《墓守の異能者》 ATK3300→2500 VS《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》 ATK3000

 

 攻撃力が上回ったことで、呪いを跳ね返し、オッドアイズ・レイジング・ドラゴンが反撃の一撃を放つ。

 

「くっ、ならば、手札の《シャブディのお守り》の効果! このカードを手札から捨てることで、墓守モンスターへの戦闘ダメージをゼロにする!」

「だが、モンスターへの戦闘ダメージをゼロにしても、プレイヤーへの戦闘ダメージは発生する!」

 

 モンスターへの戦闘ダメージをゼロにすると言うのは、戦闘破壊されなくなるという意味だ。

 プレイヤーへの超過ダメージはゼロにしていないので、そのまま追加ダメージを受ける。

 

「ぬおっ!!」

 

 長 LP600→100

 

 苦しそうな表情を浮かべる長だが、先程に比べれば大したことは無さそうだった。

 どうやら、一撃のダメージが少なければ、そこまで命に係わるようなことにはならないようで、少し苦しそうにしているが長も立っている。

 これなら、ライフを少しだけ削ることが出来れば、殺さずに倒すことが出来るはずだ。

 

「モンスターは倒し損ねたが、これで《墓守の異能者》は守れた。次のターンで確実に破壊してくれる! 私はカードを一枚伏せ、エンドフェイズに《墓守の異能者》の効果発動! デッキから、《墓守の巫女》を手札に加える! 私はこれでターンエンド!」

 

 

 長 手札1枚 LP100

 フィールド 異能者

 魔法・罠 ネクロバレー、《ネクロバレーの祭殿》、リバース1枚

 

 VS

 

 遊矢 手札0枚 LP4000

 フィールド 覇王烈竜

 魔法・罠 なし

 ペンデュラム 相克、相生

 

 

「俺のターン!」

 

 カードをドローする。引いたカードを見て、遊矢は再び勝利を確信した。

 

「悪いけど、このまま勝たせてもらうよ!」

「やれるものならやってみろ!」

「俺は、再びオッドアイズ・レイジング・ドラゴンの効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、相手フィールドのカードを全て破壊し、破壊したカードの数×200ポイント攻撃力をアップする!」

「無駄だ! 《墓守の異能者》の効果で、このカードとネクロバレーは破壊されない! さらに、オッドアイズ・レイジング・ドラゴンの効果にチェーンして罠カード、《ライジング・エナジー》を発動! 手札を一枚捨て、《墓守の異能者》の攻撃力をターン終了時まで1500ポイントアップする!」

 

 前のターン、《分断の壁》で攻撃力が800下がった異能者の攻撃力が上昇する。

 

 《墓守の異能者》 ATK2500→4000

 

 続けて、覇王烈竜の効果で、《ネクロバレーの祭殿》が破壊され、攻撃力が400ポイント上昇した。

 

 《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》 ATK3000→3400

 

「攻撃力は400程上がったようだが、これで攻撃力は逆転したぞ!」

「いや、そっちが攻撃力を上げてくることは読んでいた! お楽しみはこれからだ!」

 

 そう言って、遊矢はドローカードをデュエルディスクに叩きつける。

 

「俺は、手札から《EMチアモール》を通常召喚!」

 

 《EMチアモール》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆2 地属性 獣族

 ATK600 DEF1000 攻撃表示

 

 前に神楽坂のデュエルでも出したコミカルなモグラのチアガール。だが、あの時は、《涅槃の超魔導剣士》を出すためのチューナーとして使われたため、その効果は謎のままだった。

 

「チアモールの効果発動! 一ターンに一度、自分のメインフェイズに、元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つモンスターが存在する時、そのモンスターの攻撃力が、元々の攻撃力より高い場合、そのモンスターの攻撃力を1000アップする!」

「なにっ?!」

「当然、対象はオッドアイズ・レイジング・ドラゴンだ!」

「このために、一見無駄にしか見えない破壊効果を使ったのか!?」

「アンタが《ネクロバレーの祭殿》を発動させてくれたおかげさ!」

 

 《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》 ATK3400→4400

 

 これで再び《墓守の異能者》の攻撃力が覇王烈竜の数値を下回った。その差は残りライフ100の長に凌げる数値ではない。

 

「ぐっ!」

「バトルだ! オッドアイズ・レイジング・ドラゴンで《墓守の異能者》を攻撃! 憤激のデストラクションバースト!!」

 

 《覇王烈竜オッドアイズ・レイジング・ドラゴン》 ATK4400 VS《墓守の異能者》 ATK4000

 

 チアモールの効果で攻撃力が上がった覇王烈竜が、再び《墓守の異能者》に攻撃を仕掛けていく。

 

「っ、攻撃力の差は400!」

「そして、アンタのライフは100! これで終わりだ!」

 

 先程の戦闘で、受けるダメージが小さいほど、プレイヤーが受けるダメージも小さくなることがわかった。

 だからこそ、遊矢は死んでしまうような大きなダメージを与え過ぎないように調整を重ねていたのだ。最初は、手を抜いたことに怒りを露わにしていた長だったが、手を抜かれて尚、自分の戦術の上を行った以上、もう遊矢を認めるしかなかった。

 

「……ぐぅ、見事」

 

 長 LP100→0

 

 ソリッドビジョンが解除される。長も死ぬほどのダメージではなかったことで、今度は問題なさそうだった。

 

「まさか、一ポイントのダメージも与えられないとは……いや、それ以前に本当なら最初のターンで私は負けていたか」

 

 前のターンは怒りに満ちていた長だったが、手も足も出ずに負けたことで逆にスッキリしたのか、清々しい表情を見せている。

 

「これで、みんなを解放してくれるな?」

「ああ、何であれ、試練の儀式を超えたのだ。文句は言わん」

 

 そう言うと、墓の中の四人の身動きを縛っていた包帯が解かれ、四人も解放された。

 

「前にも、この試練の儀式を受けてこの場所を去った者が一人だけいたが、その者も君ほどの腕ではなかった。素直に驚嘆だ」

「どうも……」

「それと、もう一人仲間がいるということだが、今の段階で捕まっていないということは、余程上手く隠れているか、ここには居ない可能性がある」

 

 結局、十代はまだ姿を現さない。隠れているだけならいいのだが、あの十代がこんなに長い時間隠れていることなど出来るとは思えなかった。

もし、長の言う通りこの次元にいないとなると、また少し面倒なことになってくる。

 

「いや……もしかしたら、伝説の竜の地に落ちたのかもしれん」

「伝説の竜の地……?」

「我々のいるこの場所の側に、伝説の竜が眠る地が存在する。そこはあまりにも危険故、我らでも立ち入らない禁断の聖地。もしかしたら、そこに貴様らの仲間がいるかもしれん」

 

 厄介事に巻き込まれる達人の十代のことだ。素直に隠れているより、そちらの方が可能性は高そうだった。

 

「……その聖地ってどこにあるんですか?」

「あまり行くのはお勧めしない。伝説の竜の怒りに触れるぞ」

「多分、もう手遅れだと思うんで……」

 

 もし、十代がそこにいたとしたら、とっくに怒りに触れているだろう。戻ってきた他の四人も同意見のようで、苦笑いで頷いている。

 そして、何だかんだでデュエルになる――これまでの経験からそこまでは推測できた。

 

「ならば、これを持って行くといい」

 

 そう言って、長が自身の首にかけていた、半分に割れたペンダントのようなものを渡してくる。

 

「これは? 半分しかないけど……?」

「もう半分は、同じ試練を乗り越えたもう一人が持っている。お前が再び闇のゲームに関わらざるを得なくなった時、そのアイテムがきっと力を与えてくれるだろう」

「……じゃあ、ありがたく」

 

 と、言いつつ、遊矢はこれを十代に渡そうと考えていた。

 今居ないのもそうだが、自分以上に危険に巻き込まれやすい体質だし、前のサイコ・ショッカーの時のような闇のゲームに巻き込まれることは十分考えられる。

 遊矢と違って、まだ実力にムラのある十代にこそ、こういうアイテムが必要だろう。

 

「……少年。もし、そのアイテムの半身を持っている人に会ったら伝えて欲しい。サラは例え異世界にいても、貴方のことを忘れません。またいつかお会いできる日を信じています。と」

 

 聞けば、このペンダントのもう半分を持っている人物と《墓守の暗殺者》(サラという名前らしい)は知り合いらしく、ただならぬ関係のようだった。

 翔が何やら悔しそうにしているが、無視してそのまま長と一緒に、伝説の竜の聖地とやらに向かうことにする。途中、墓守のモンスターらしき精霊達がこちらを見ていたが、長をノーダメージでボコボコにした遊矢にビビッているようで近づいてくることはなかった。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 聖地と言っても、普通の遺跡のようなものだった。正直、どうやって十代を探そうかと思っていたが、入り口の前で十代らしき人物が呆然とした様子で立っている。

 見た感じ、怪我をしている様子はなく手に何かカードのようなものを持っていた。

 

「十代!」

 

 声をかけると、ハッとした様子で十代がこちらに振り返る。

 何やら考え込んでいたようだが、すぐに手持ちのカードをデッキに収めてこちらに走ってきた。

 

「遊矢! それにみんなも、無事でよかった!」

「それはこっちのセリフだよ。どこにいたんだよ」

「いや、それがよくわかんなくてさ……」

 

 苦笑いでそう話す十代。

 聞けば、こことはまた別の場所に飛ばされてしまったらしいのだが、いろいろ迷っているうちに真っ暗な空間に入ってしまい、そこでデュエルをしたという。

 やはり、デュエルをしていたのか――と、呆れる遊矢達だが、どうもそのデュエルは闇のデュエルだったようで、ダメージがかなり肉体に痛みや疲労を与えてきたらしい。

 負けたらどうなるかわからないデュエルということもあって、必死に戦い、何とかホープの力で勝ち切ったようなのだが、その直後にここに飛ばされ――今に至るという。

 

「まさか、伝説の竜に勝ったのか!?」

「おっさん誰?」

 

 墓守の件を知らない十代からしてみれば、長は知らないおっさんだった。

 とりあえず、ここは伝説の竜の聖地だということを十代に説明すると、「竜っていうなら、こいつかな」と一枚のカードを出してくる。

 

「勝ったら持ってたんだ。難しい字で、なんて読むのかわかんなくてさ」

 

 見た感じ、枠が白いのでシンクロモンスターなのは間違いないが、遊矢も見たことがないモンスターだった。

 どうやら、先程持っていたのはこのカードだったらしい。

 

「伝説の……白き竜!?」

 

 唯一、事情を知っていそうな長が驚いたような声を出す。どうやら、彼のいう伝説の竜は十代がゲットしてしまったようだった。

 

「……十代。それ、本当に持って行って大丈夫なのか?」

「いいんじゃね? 勝手に俺の所に来たんだもん。しらねーよ」

 

 とはいえ、返しに行こうにも、今から遺跡の中に入る気にはなれない。

また、長曰く、もうそろそろ元の次元に帰る時間ということなので、伝説の竜とやらはそのまま十代のデッキに加わることになった。

 無事に十代も見つかったので、今度は元の次元に帰る準備をする。

 聞けば、元に居た次元に帰るには、三つの太陽が重なる時に出る光を受けながら墓守の遺跡にある入り口を出ればいいということらしい。

 長に見送られながら、墓守次元と呼ぶべき場所から帰る。次元移動の際に、遊矢以外は意識を失ってしまったようで、元の世界に戻ると全員気を失っていた。

 一瞬夢にも思えたが、遊矢の首にかけられたペンダントが、これが現実だと教えてくれる。

 眠っている十代にペンダントをつけた。長の話が本当なら、これで少しは十代の巻き込まれ体質も良くなるだろう。

 

 だが、この数日後、遊矢はこの行動が間違っていたと激しく後悔することになるのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・#27、#28『課外授業は闇のデュエル!?』より、十代の代わりに遊矢が試練を受けた。
 サイコ・ショッカー戦の反省を生かして最初から全力で倒しに行ったが、情にほだされてしまった。

・墓守のペンダントを貰った。
 が、十代に渡す予定。ナンバーズしかり、意外と狙われやすいのでお守りとして持たせることにした。


・闇のデュエルについて。
 どうも、この先のセブンスターズ戦の闇のデュエルでも、ダメージが大きい回や少ない回があるので、独自設定としてダメージが大きいだけ痛みや衝撃が大きく、またどのデュエルも一律でダメージを受けることにしました。なので、一回のデュエルでダメージを受けすぎると、原作十代のようにしばらく動けなくなる予定です。今回はノーダメージで勝ったので問題なし。

・十代だけ別の場所に飛ばされた。
 オリジナル要素。伝説の竜の化身であるカニっぽい頭をした影とデュエルした。あまりの強さに負けそうになったが、ホープがあれしてこうして勝った。

・時系列的には三月中頃くらい。
 セブンスターズ戦が四月からと想定している。



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