ホープレイの一撃が《真紅眼の闇竜》の首を切り落とし、大爆発を起こした。
攻撃が通った以上、この勝負は十代の勝利――早く翔と隼人を助けようと、傷ついた体を引きずりながら駆けだそうとする十代だが、下の二人を覆う光の膜や、自分達の足場に変化がないことに遊矢だけが気付いた。
「十代! まだだ!」
遊矢の声に反応して、十代も振り返る。
すると、爆煙の中、全くダメージを受けていないダークネスが不敵な笑みを浮かべたままその場に立っていた。
「どこへ行く? デュエルはまだ終わっていないぞ」
見ると、ダークネスのフィールドに一枚の罠カードが発動している。どうやら、あれでダメージを防いだらしい。
「罠カード、《魂のリレー》を発動させてもらった。このカードの効果で特殊召喚したモンスターが私のフィールドにいる限り、私が受ける全てのダメージはゼロになる。ただし、そのモンスターがフィールドから離れた時、私の敗北になるがね」
まさに、最後の切り札ともいうべきカード――十代はライトジャスティスの三分の二を見事に外したということだ。
「クソっ……で、そのモンスターはどこにいるんだ?」
「何を言っている? ずっといるじゃないか、君達の頭上に」
「何を、上なんて空しか――」
そう言って上を見上げる十代だが、空には暗闇しか見えない。
だが、ここで万丈目がおかしいことに気付いた。「待て、いくら夜だと言っても、星や雲が見えないのはおかしい」と。
それと同時に、闇が動き出した。
よく見ると、節々に光の線があり、強大なモンスターが空を塞いでいるということがわかる。
「まさか……嘘だろ」
「巨大過ぎるわ……」
「あり得ん……!」
「まさか、こんな、大きなモンスターが存在するなんて……!」
十代、明日香、万丈目が言葉を失う中、流石の遊矢も驚きを隠せなかった。
ダークネスのフィールドに呼び出されたモンスターは、火山の出口をその腹で埋め尽くせるくらいの巨大さを持っていたのだ。
「紹介しよう。私の切り札――《地縛神Asllapiscu》! 尤も、地縛神が本当に目覚めるのはもう少し先のようで、これはダークネスの力で再現した劣化品に過ぎないがね」
《地縛神Asllapiscu》
効果モンスター
☆10 闇属性 鳥獣族
ATK2500 DEF2500 攻撃表示
巨大な鳥のようなモンスター。その強大さはこれまで見たどのモンスターをも上回っている。
かつて遊矢が連れて行かれた海馬コーポレーションのビルの最上階へ行って、ようやくこいつを見下ろせるというレベルの大きさだった。
「さて、十代。まだ君のターンだが?」
「……ターンエンド」
エンドを宣言したことで、ホープレイの効果も切れ、攻撃力が元に戻っていく。
《C№39希望皇ホープレイ》 ATK4000→2500
十代 手札2枚 LP200
フィールド ホープレイ
魔法・罠 スカイスクレイパー
VS
ダークネス 手札0枚 LP1100
フィールド レッドアイズ、アスラピスク
魔法・罠 《真紅眼の凱旋》、《魂のリレー》
「私のターン! 永続罠、《真紅眼の凱旋》の効果で、墓地にいる二体目の《真紅眼の黒竜》を特殊召喚!」
《真紅眼の黒竜》
通常モンスター
☆7 闇属性 ドラゴン族
ATK2400 DEF2000 攻撃表示
二体目のレッドアイズがフィールドに現れる。
十代唯一の救いは、《真紅眼の闇竜》が、自身の効果でのみ特殊召喚が出来るモンスターなので、墓地からの特殊召喚が出来ない所だった。
もし、ここでダークネスドラゴンまで蘇ったら、もう十代に打つ手はなかっただろう。
「では、バトルフェイズ! 《地縛神Asllapiscu》でプレイヤーにダイレクトアタック!」
「ダイレクトアタックだって!?」
「地縛神は相手プレイヤーに直接攻撃が出来る! いけっ、アスラピスク!!」
「くっ……!」
《地縛神Asllapiscu》 ATK2500 VS十代 LP200
予想外のダイレクトアタック効果。
大きさこそ違えど、攻撃力2500同士ならば、このターンは凌げると思っていただけに十代も苦しそうな顔を見せる。
「墓地の《ネクロ・ガードナー》の効果発動! このカードを除外して、戦闘を一度だけ無効にする! っ!!」
しかし、何とか墓地の効果を利用して、巨大な鳥の一撃をギリギリで回避した。サンダー・ジャイアントのコストで墓地に送っていたのだろう。
だが、その衝撃までは消しきることが出来ず、十代に多大な負荷をかけていく。
「まだそんなカードを隠していたか。私はカードを一枚伏せてターンエンド」
レッドアイズの攻撃力ではホープレイには敵わない。故に何とか攻撃を凌ぐことが出来ていた。
ダークネス 手札0枚 LP1100
フィールド レッドアイズ×2、アスラピスク
魔法・罠 《真紅眼の凱旋》、リバース1枚
VS
十代 手札2枚 LP200
フィールド ホープレイ
魔法・罠 スカイスクレイパー
「はっ、はっ、はっ、はぁ……」
地縛神の攻撃が直撃した訳でもないのに、十代は息を切らせている。闇のゲームと、あの地縛神が持つプレッシャーが十代の疲労を加速させているのだ。
だが、ダークネスもようやく手札が切れて動きが鈍くなってきていた。ここで一気に決めると、十代も勝負を賭けに行く。
「俺のターン、ドロー! このままバトルフェイズ――」
「おっと、もう一つ言い忘れていた。地縛神は攻撃対象にすることが出来ないからバトルの時は注意すると良い」
「――なんだって!?」
このまま一気に、ホープレイとアスラピスクを相打ちにして《魂のリレー》の効果による勝利を狙っていた十代だが、それも不可能とわかる。しかし、既にバトルフェイズへ突入してしまっていた。
「くっ、ホープレイで《真紅目の黒竜》に攻撃! ホープ剣・カオススラッシュ!!」
《C№39 希望皇ホープレイ》 ATK2500 VS《真紅眼の黒竜》 ATK2400
仕方ないとばかりに、ホープレイの一撃でレッドアイズが切り裂かれていく。だが、《魂のリレー》によって特殊召喚された、《地縛神Asllapiscu》が存在する限り、ダークネスのライフが削られることはなかった。
おまけに、永続罠《真紅眼の凱旋》がある限り、レッドアイズは無限に復活する。今の攻撃もまるで意味がなかった。
「さて、どうする十代?」
翔と隼人に残された時間もどんどん少なくなっていく。長々と考えているだけの余裕は残されていなかった。
しかし、相手はダイレクトアタックが出来るのに、こちらは攻撃対象に出来ないのでは戦闘で勝ち目はない。
どうにかして、効果でアスラピスクを倒す――もしくは、相手の方から攻撃を仕掛けさせないと駄目だった。
「リバースカードを一枚伏せて、ターンエンド……!」
十代 手札2枚 LP200
フィールド ホープレイ
魔法・罠 スカイスクレイパー、リバース1枚
VS
ダークネス 手札0枚 LP1100
フィールド レッドアイズ×2、アスラピスク
魔法・罠 《真紅眼の凱旋》、リバース1枚
「ふふっ、いいのか? そんなに簡単にターンを終えてしまって? 闇のデュエルは貴様を待ってはくれん。見ろ、哀れにも死を待つ友の姿を」
そういうダークネスの視線の先では、翔と隼人が消えゆく光の膜の残りの中で、身を寄せ合いながら耐えていた。
「アニキ! そんな奴の言うことなんて気にしなくていいよ!」
「そうだ、十代! お前はお前のデュエルをやればいいんだな!」
明らかに虚勢だが、それでも自分達が十代の負担になることだけは避けたい。そういう思いが伝わってくる。
「翔君、隼人君……!」
「あの馬鹿共……!」
そして、そんな思いは見ているだけしか出来ない明日香や万丈目にも痛いほどわかった。
「翔、隼人……!」
遊矢もデュエルディスクに目を落とす。海馬に禁止されているフィールド魔法、《クロスオーバー》を使って、デュエルに乱入すれば、リアルソリッドビジョンの足場を使って翔達を助けることは出来るだろう。
だが、それはこの状況を必死に我慢している翔や隼人、明日香、万丈目だけではなく、実際に戦っている十代への侮辱となる。
「大丈夫だ! このデュエル、必ず俺が勝つ!!」
十代も体力やダメージ的な消耗は激しいが、まだデュエルを諦めていない。遊矢も、もう少し十代を信じることにした。
「別れの挨拶はもういいのか?」
「……早く、カードを引けよ」
「では、私のターン、ドロー!」
ダークネスがドローする。お互いに息切れの状態――だが、ダイレクトアタックが出来る地縛神を持つダークネスが圧倒的に有利な状況だった。
向こうもこのターンでケリをつけると言わんばかりに、スタンバイフェイズ、メインフェイズをすっ飛ばして、バトルフェイズに突入していく。
「行くぞ、バトル! 《地縛神Asllapiscu》で、十代にダイレクトアタック!!」
《地縛神Asllapiscu》 ATK2500 VS十代 LP200
再び、地縛神の攻撃が十代に向けて放たれる――ここだ! と、十代はこのリバースカードに望みを託した。
「罠カード、《立ちはだかる強敵》! 相手の攻撃宣言時、自分のフィールドのモンスター一体を選択し、相手はこのターン、選択したモンスターしか攻撃できず、全ての表側攻撃表示モンスターで選択したモンスターを攻撃しなくてはならない!」
当然、十代はホープレイを選択する。
それにより、アスラピスクの攻撃対象がプレイヤーからホープレイへと変更され、攻撃を仕掛けていった。
《地縛神Asllapiscu》 ATK2500 VS《C№39 希望皇ホープレイ》 ATK2500
「攻撃対象に出来なくても、お前から攻撃することは出来る! 攻撃力2500同士で相打ちになれば、《魂のリレー》の効果でお前の負けだ!!」
「確かに。では、裏技と行こう! リバースカードオープン! 速攻魔法、《月の書》を発動! 《地縛神Asllapiscu》を裏側守備表示に変更する!」
その巨体を誇っていたモンスターが、いきなりフィールドから消え去り、一枚のセットカードへと変化していく。
「《地縛神Asllapiscu》が裏側守備表示になったことで、《魂のリレー》の効果はリセットされ、もう《地縛神Asllapiscu》を倒しても私の敗北にはならない!」
「けど、《魂のリレー》の効果が消えたことで、ダメージは通るようになった! そして、お前のレッドアイズも《立ちはだかる強敵》の効果でホープレイを攻撃して貰うぜ!!」
「くっ!」
《真紅眼の黒竜》×2 ATK2400 VS《C№39 希望皇ホープレイ》 ATK2500
二体のレッドアイズが、我先にとホープレイに突撃していくが、当然勝てるはずが無く、ホープレイによって切り裂かれていった。
「ぐぅっ!!」
ダークネス LP1100→900
二体のレッドアイズは破壊されていく。これで、十代はダークネスの地縛神以外のモンスターを一掃することが出来た。
「まだだ! メインフェイズ2、墓地の《真紅眼の飛竜》の効果を発動! このカードを除外して、墓地の《真紅眼の黒竜》を特殊召喚する!」
《真紅眼の黒竜》
通常モンスター
☆7 闇属性 ドラゴン族
ATK2400 DEF2000 攻撃表示
しかし、それでもレッドアイズは何度も蘇る。並々ならぬ執念すら感じた。
「カードを一枚伏せてターンエンド」
次のターンで今度こそ本当に勝負を決めると、ダークネスもリバースカードに全てを託していく。
ダークネス 手札0枚 LP900
フィールド セット1体 レッドアイズ
魔法・罠 《真紅眼の凱旋》、リバース1枚
VS
十代 手札2枚 LP200
フィールド ホープレイ
魔法・罠 スカイスクレイパー、リバース1
「俺の、ターン!」
だが、ここに来て、十代のダメージもピークに来ていた。翔や隼人以上に、十代の方がダメージの蓄積で倒れかけている。
このターンで勝負を決めないと倒れてもおかしくない。また、十代自身、それを一番理解しており、このターンで全てを決めるつもりで居る。
「墓地の《置換融合》の効果発動! このカードを除外し、墓地の融合モンスターをEXデッキに戻してカードを一枚ドローする!」
墓地にはサンダー・ジャイアントがいるので、発動条件は満たされていた。
しかし、カードをドローすると言うことは――
「では、私も《便乗》の効果でカードを二枚ドローする!」
――ダークネスの手札も補充させるということだった。
だが、もう十代は開き直っている。どうせ、このターンで決められなければ負けなのだ。
「引きたきゃ、いくらでも引けよ! 《強欲な壺》を発動! カードを二枚ドローする!」
「《便乗》の効果で、カードを二枚ドロー!!」
もはや、十代に次のターンはない。このターンで決めきるつもりで、全てのカードを使っていく。
「魔法カード、《天使の施し》! カードを三枚ドローし、二枚捨てる!」
「くっ、《便乗》の効果で、カードを二枚ドローする!!」
自身の手札が6枚になった所で、ダークネスも十代が開き直ったことに気付いた。
しかし、いくら大量の手札があっても、自分のターンが来なければ使いようがない。
「まだまだ! 《ホープ・オブ・フィフス》! 墓地の『E・HERO』を五体デッキに戻してシャッフル。カードを二枚ドローする!!」
「ええい、まだ引くか!? 《便乗》の効果でさらに二枚ドロー!!」
今回デュエルではカードを墓地へ送る機会が多く、デッキの殆どの『E・HERO』は墓地へ行っていった。スパークマン、クレイマン、バブルマン、エッジマン、ワイルドマンをデッキに戻して、さらにカードを二枚ドローしていく。
同時に、ダークネスの手札も八枚となるが、手札誘発系のカードは一枚も引けていなかった。
十代にしてみれば千載一遇のチャンス――だが、逆を言えば、ドローカードの連打で膨れ上がった、この六枚の手札でダークネスを倒しきれなければ、今度こそ十代の負けだ。
「魔法カード、《ヒーロー・フラッシュ!!》を発動! 墓地の《H-ヒートハート》、《E-エマージェンシーコール》、《R-ライトジャスティス》、《O-オーバーソウル》をゲームから除外し、自分のデッキから『E・HERO』と名の付いた通常モンスター一体を特殊召喚する! 来い、スパークマン!!」
《E・HEROスパークマン》
通常モンスター
☆4 光属性 戦士族
ATK1600 DEF1200 攻撃表示
再びフィールドに戻ってきたスパークマン。十代の気合いが移ったかのように力強く発電している。
「さらに! このターン、自分フィールド上の『E・HERO』と名の付いた通常モンスターは相手プレイヤーにダイレクトアタックが出来る!!」
「ならば、これで終わらせよう! 永続罠、《真紅眼の凱旋》の効果! 墓地から二体目の《真紅眼の黒竜》を復活させる!」
《真紅眼の黒竜》
通常モンスター
☆7 闇属性 ドラゴン族
ATK2400 DEF2000 攻撃表示
マグマの名から飛び出した二体目のレッドアイズもまた、勝負を決めると言わんばかりの咆哮を上げていた。
「さらに、罠カード、《地縛解放》!! フィールド上にレベル6以上のモンスターが召喚・特殊召喚された時、自分フィールドのレベル10地縛モンスター一体をリリースして発動! 相手フィールドのモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの攻撃力の合計分のダメージを相手に与える!!」
「なっ!?」
「私のフィールドにレッドアイズが特殊召喚されたことで、条件は満たされた! セットされている《地縛神 Asllapiscu》をリリースして、貴様のモンスター全てを破壊する! 貴様のフィールドには、ホープレイとスパークマンの二体がいる! 二体の攻撃力の合計4100ダメージを受けろ!!」
地縛神の命を使った大爆発がフィールドを包み、十代のモンスターを全て破壊していく。
まだダメージは発生していないはずなのに、その衝撃だけで倒れそうになる。それは後ろで応援している遊矢達も同じで、吹き飛ばされないように体勢を低くしないとマグマの中に叩き込まれそうだった。
だが、そんな中で、十代は懸命にデュエルディスクを操作して、カードの効果を発動させていく。
「手札の、《ハネワタ》の効果……! このカードを、捨てることで、効果ダメージをゼロにする……っ!」
ダークネスの《記憶抹消》でカードをドローさせられた時から、十代はずっとこのカードを手札に握っていた。
別に《地縛解放》のように、地縛神を利用した効果ダメージを与えるカードが発動すると読んでいた訳ではない。ただ、ダークネスが執拗にレッドアイズを蘇生させている以上、どこかでまた《黒炎弾》がまた来ると思っていたのだ。
次に2400ダメージを受ければその時点で勝負は終わる。十代にしてみれば、最重要警戒対象だ。だからこそ、ずっと手札に《ハネワタ》を隠し持ち――それが、今、十代の命を救った。
「っ、サンキュー……《ハネワタ》!」
前に遊矢と神楽坂のデュエルで出てきた《ワタポン》に羽根が付いたようなモンスターが、十代を爆発のダメージから守っていく。
しかし、爆発前の衝撃だけで、もう十代は膝を付いていた。立ち上がる力はもう残っていない。
「防がれたか……!?」
「……速攻魔法、《非常食》を発動! スカイスクレイパーを……墓地に、送り、ライフを1000回復する!」
十代にはまだ四枚のカードが残されていた。
倒れそうになる体を支えながら、その内の一枚を震える指でデュエルディスクに差し込んでいく。同時に、スカイスクレイパーが消え、フィールドが元に戻った。
十代 LP200→1200
「僅かばかりのライフ回復か! だが、貴様はその前に倒れかねんぞ!」
「《簡易融合》を発動……! ライフを1000支払い、EXデッキから、レベル5以下の融合モンスター一体を、融合召喚扱いで特殊召喚する……っ!」
回復したライフを即座に消費してモンスターを特殊召喚していく。
だが、EXデッキからカードを取り出すだけでも、もはや一苦労という有様だった。
《E・HEROスチーム・ヒーラー》
効果モンスター 融合
☆5 水属性 戦士族
ATK1800 DEF1000 攻撃表示
バブルマンとバーストレディの融合モンスターが現れる。しかし、《簡易融合》で呼び出したモンスターは、このターンの攻撃が出来ず、エンドフェイズに破壊されるため、このままでは壁にもならない。
「っ! 手札の、《ダンディライオン》を墓地に送り……魔法カード、《ワン・フォー・ワン》を、発動……! 手札・デッキから、レベル1モンスターを、特殊召喚するっ……!」
十代のデッキに入っている《ハネワタ》以外の、唯一のチューナーモンスターがデッキから特殊召喚されていく。
「来いっ、《アタック・ゲイナー》……!」
《アタック・ゲイナー》
効果モンスター チューナー
☆1 地属性 戦士族
ATK0 DEF0 守備表示
バイザーを顔につけた赤い長髪のチューナーが十代のフィールドに呼び出される。
このモンスターがチューナーだということに気付けた人物はいない。流石の遊矢もチューナーだとは気付いていなかった。
「墓地に送られた《ダンディライオン》の、効果、発動……! このカードが、墓地に、送られた場合……自分フィールドに、《綿毛トークン》二体を……守備表示で、特殊召喚する」
《綿毛トークン》×2
トークン
☆1 風属性 植物族
ATK0 DEF0 守備表示
タンポポの綿毛に顔が描かれたトークンが二体、フィールドに現れる。これで十代は全ての手札を使い切った。
「だが、どのモンスターも、攻撃力で私のレッドアイズを上回れていない! ここまでか、十代!?」
「俺は!! レベル5の、スチーム・ヒーラーと、レベル1の……《綿毛トークン》二体に……レベル1の、《アタック・ゲイナー》を、チューニング……!」
スチーム・ヒーラーと《綿毛トークン》が七つの星に変換され、《アタック・ゲイナー》が一つの光の環となって、光の道を作っていく。
「シンクロだと!? 馬鹿な、これまで貴様がシンクロ召喚をデュエルで使ったデータなど!」
「ねぇだろーな……今回が、初めてだ!」
十代のシンクロ宣言に驚いたのはダークネスだけではない。しかし、そんな中で、遊矢と明日香だけが、十代が出そうとしているシンクロモンスターに心当たりがあった。
「――星の海から流れ出でよ、世界を救う一条の光! シンクロ召喚!! 来い、レベル8! 《閃珖竜 スターダスト》!!」
それは、前に大徳寺のせいで墓守次元に飛ばされた時、唯一別の場所に落とされた十代が、謎の存在と戦って勝ち取ったカード――
《閃珖竜 スターダスト》
効果モンスター シンクロ
☆8 光属性 ドラゴン族
ATK2500 DEF2000 攻撃表示
クリアウイングとはまた違う、全身真っ白なドラゴンが空へと飛翔していく。
星屑の名前の通り、まるで星の光がいくつも固まったような輝きがこのフィールドを照らしていた。
「くっ! だが、《閃珖竜 スターダスト》の攻撃力は2500! 仮にレッドアイズを倒したとしても、私のライフは――」
「《アタック・ゲイナー》が、シンクロ素材……として、墓地へ送られた時……相手フィールド上の、表側表示モンスター一体の、攻撃力は1000ポイント……ダウンするっ!」
《真紅眼の黒竜》 ATK2400→ATK1400
「なにっ!?」
「今度こそ……これで、終わらせる!! 《閃珖竜 スターダスト》で、《真紅眼の黒竜》を、攻撃……! 闇を、切り払え! シューティング・ブラスト!!」
スターダストの光の一撃が、攻撃力の下がったレッドアイズを屠らんと迫っていく。
《閃珖竜 スターダスト》 ATK2500 VS《真紅眼の黒竜》 ATK1400
攻撃力の差は1100――今度こそ本当に、ダークネスのライフを削りきりデュエルに決着をつけた。
「うわああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」
ダークネス LP900→0
勝敗が付いたことで、ソリッドビジョンが消えていく。同時に、ダークネスの魂がカードの中に封印された。
「翔……隼人……っ!」
捕らわれた二人を助けようとする十代だが、意に反して体が限界を迎えたようで、そのまま前のめりに倒れていく。
遊矢達も、倒れる十代に駆け寄ろうとするが、その瞬間――再び謎の光に包まれ、火山から海岸へと転移させられてしまった。
「うっ、あれ? ここは、どこなんだな……?」
「あ、アニキは……?」
少し離れた所で、翔と隼人も身を起こしている。二人とも疲弊はしているみたいだが、どこも怪我をした様子はなかった。
「翔君、隼人君、無事だったのね!?」
「全く、余計な心配かけさせやがって……」
明日香や万丈目も、そんな翔と隼人を見て安堵の笑みを浮かべている。
「十代、おい十代……しっかりしろ!」
そんな中、遊矢が倒れて動かない十代にいち早く駆け寄っていく。《黒炎弾》や《真紅目の闇竜》の攻撃によって、体はどこも火傷しているが命に別状はなさそうだった。
しかし、完全に気を失ってしまっており、いくら呼びかけても意識を取り戻さない。それだけ、地縛神から受けた衝撃が大きかったのだろう。ダークネスの切り札と言うだけあってあのモンスターだけは行動全てがプレイヤーに大きな負担をかけてきた。
それも攻撃を防いで尚、十代のこの消耗具合だ――もし、直接攻撃を許していれば、十代は本当に死んでいたかも知れない。
そして、そんなダークネスの魂が宿ったカードが十代の側に落ちていた。
「これが、ダークネスの魂なのね……」
「本体はあっちにいるみたいだ」
十代を遊矢に預け、明日香と万丈目が海岸に倒れるダークネスへと近づいていく。
遊矢達の世界では体毎カードに封印されるが、この世界では体は外に残るらしい。既に魂をカードに封印された以上、危険はないとは思うが、念のために「気をつけろよ」と、遊矢が心配の声をかけた。
「……っ」
だが、二人が倒れるダークネスに近づくと、魂を封印されたはずのダークネスが僅かに身じろぎをする。
先頭にいた明日香は、薄ら開かれたダークネスと目が合ったようで、その顔を見ることが出来たようだった。
「嘘……そんな……」
「天上院くん?」
明日香の目に涙が溜まっていく。そんな明日香を見て、疑問の声を出す万丈目だったが、今は彼女だけがこのダークネスという男の真の正体に気付くことが出来た。
「魂が、別の魂が入っていたのよ。だから、その魂が封印されたことで、元の魂が残って……」
「な、何を言っているんだ、天上院くん……?」
「こ、この人は、天上院吹雪……ずっと行方不明になっていた。私の兄さんなの……っ」
万丈目は知らないことだが、遊矢と翔、隼人は十代を通じて、明日香がずっと行方不明になっている兄を探していたことを知っていた。
吹雪はずっとダークネスに操られていた――それが、行方不明事件の真相だったのだ。
「ほ、本当なのか、明日香……?」
「間違いないわ、本物の吹雪兄さんよ……」
遊矢の疑問に泣きながら返事をしつつ、倒れる兄を抱き上げる明日香。闇のデュエルのせいで、吹雪もまた体がボロボロになっており、すぐには意識を取り戻しそうになかった。
そんな中、七精門の鍵を通じて異変を感じ取ったらしい亮と三沢が合流してくる。亮は元々、吹雪と同級生だったようで、明日香が抱きかかえる吹雪を見て言葉を失っていた。
しかし、ずっとこのままという訳にも行かず、何とか手分けして十代と吹雪を保健室まで運んでいく。
こうして、セブンスターズとの戦いは静かに幕を開けた。
原作との変化点。
・#30『VSダークネス(後編)真紅目の闇竜の攻撃』より、真紅目の闇竜がかませになって、切り札が地縛神になった。
今から言い訳をするぜ! 最初は普通のデュエルを書いて闇竜を倒して終わったんですけど、続くデュエルを書いている途中、ちょっと理由があってセブンスターズに切り札カードを持たせることになったのです。
じゃあ、何にしよう?→強いカードがいい→七枚いるな→ナンバーズ出したのに、シンクロ側は補填なしか?→じゃあ、ゴッズから何か探すか→ダークシンクロかな?→でもゼーマン使っちまったな→あ、地縛神七体じゃね?
と、いうような感じで、地縛神にスポットが当たり、ダークネスのデュエルを書き直したら、闇竜君はかませになってしまいました。でも、代わりになかなか良いデュエルが書けたから満足はしています。
・地縛神とは言っても本物ではない。
あくまで闇の力で作った偽物。なので、ナスカの地上絵は消えていないし、召喚に魂も必要ない。ただ、強い力は持っている。ナンバーズと同じような感じ。
・十代はしばらくリタイア。
原作通り、しばらく動けなくなります。他のメンバーも、ダメージを受けると似たようにしばらくリタイアさせます。
・スターダストはスターダストでも決闘竜。
シグナ―の竜をこの時点で出すのは流石に設定無視し過ぎる上に、上手い言い訳も見つからなかったので漫画版を頼った。ぶっちゃけ、スターダスト・ドラゴンサポートはいっぱいあるけど、閃珖竜はサポートほぼないから困る。