榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

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#035 『ボーイ、光のデュエルを』

 ダークネスと十代のデュエルから一夜が明け、ようやく十代は意識を取り戻した。

 しかし、怪我こそ命に関わりはないものの、とんでもないダメージが十代の体には溜まっているようで、まだ一人で歩くことすら出来ないで居る。

 また、ダークネスに操られていたであろう吹雪もまだ目を覚まして居らず、保健室には十代を見守る遊矢を筆頭にしたレッド組と、吹雪を見守る明日香で一杯になっていた。

 念のため、十代と吹雪が身に着けていた墓守のペンダントは遊矢が没収している。また、変に闇のデュエルに巻き込まれでもしたら、今度こそ死んでもおかしくないからだ。

 

 そんな中、新たなセブンスターズの刺客と思わしき人物が、デュエルアカデミアで目撃される。湖で、美しい女性を見たと思ったら、口に牙を持つ吸血鬼だったという話だ。

 しかし、十代は動けず、そんな十代をサポートする遊矢と、意識不明の兄を看病する明日香の三人がいない今、戦えるのは亮、万丈目、三沢、クロノスの四人だけだった。

 四人が現場へ行くと、確かに美しい女性が湖に立っており、自身をセブンスターズの一人だと名乗っている。

 この中で、実際に十代とダークネスの闇のデュエルを見ていた万丈目が、皆を守るために率先してデュエルをしようとする――が、闇のデュエルを頑なに否定するクロノスが先にデュエルをすることになった。

 対する相手は、セブンスターズの貴婦人を自称する吸血鬼、カミューラ。

 デュエルは当然のように闇のデュエルで、敗者は人形に魂を奪われるという厳しいルールだが、闇のデュエルを信じていないクロノスは、おとぎ話と馬鹿にして譲らなかった。

 

「おとぎ話かどうか、すぐに分からせてあげるわ。用意は良くて?」

「いざ!」

「「デュエル!!」」

 

 互いに特注と思われるデュエルディスクを構えていく。

 クロノスはいつものデュエルコート、対するカミューラはヴァンパイアをモチーフとした禍々しいデュエルディスクだった。しかし、性能は普通のデュエルディスクとほぼ変わらず、先行はカミューラを示している。

 

「私の先行、ドロー! 手札から、《ヴァンパイアの幽鬼》を召喚!」

 

 吸血鬼を名乗っているだけあって、デッキはヴァンパイアらしい。全身に黒いローブを着た男性吸血鬼の幽霊が、フィールドに現れる。

 

 《ヴァンパイアの幽鬼》

 効果モンスター

 ☆3 闇属性 アンデット族

 ATK1500 DEF0 攻撃表示

 

「《ヴァンパイアの幽鬼》の効果! このカードが召喚に成功した場合、手札及びフィールドの中から、このカード以外の『ヴァンパイア』カードを墓地へ送ることで、デッキからレベル4以上の『ヴァンパイア』モンスターを手札に加え、レベル2以下の『ヴァンパイア』モンスターを墓地へ送ることが出来る」

 

 そう言って、カミューラは手札のヴァンパイアカードを見せてくる。

 

「私は、手札の《ヴァンパイア・ソーサラー》を墓地へ送り、デッキからレベル8の《竜血公ヴァンパイア》を手札に加え、レベル2の《ヴァンパイアの眷属》を墓地に送るわ!」

「ムムッ、なかなか手堅いノーネ」

「まだまだ序の口よ、先生。私は墓地の《ヴァンパイアの眷属》の効果を発動! 手札及びフィールドの表側表示カードの中から、『ヴァンパイア』カードを墓地に送り、このカードを特殊召喚するわ。私は手札の《ヴァンパイア・デューク》を墓地へ送り、《ヴァンパイアの眷属》を復活させる!」

 

 幽鬼の隣に、墓地から体の縦半分が黒い影に包まれた白い狼の眷属が蘇った。

 

 《ヴァンパイアの眷属》

 効果モンスター

 ☆2 闇属性 アンデット族

 ATK1200 DEF0 攻撃表示

 

「《ヴァンパイアの眷属》の効果! このカードが特殊召喚に成功した場合、ライフを500ポイント支払うことで、デッキから『ヴァンパイア』魔法・罠カード一枚を手札に加える。私は罠カード、《ヴァンパイア・シフト》を手札に加える!」

 

 カミューラ LP4000→3500

 

「手札が殆ど減ってないノーネ……」

 

 手札・フィールド・墓地を上手く駆使することで、キーカードを確実にサーチしていく手腕。対峙しているクロノスは、この時点でカミューラが油断ならぬ相手だと確信する。

 

「私はカードを三枚伏せて、ターンを終了するわ」

 

 

 カミューラ 手札2枚 LP3500

 フィールド 幽鬼、眷属

 魔法・罠 リバース3枚

 

 VS

 

 クロノス 手札5枚 LP4000

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

「私のターン、ドロー! シニョーラカミューラ、デュエルアカデミアの生徒ではない貴女が相手ならーば、私も手加減抜きの本気でお相手するノーネ」

 

 遊城十代や榊遊矢という存在がクロノスに与えた影響は、クロノス自身が思っている以上に大きかった。

 忘れもしない入学試験デュエル――ドロップアウトボーイとはいえ、まだ子供と言うことで切り札こそ封じたものの、デュエルアカデミアの実技担当最高責任者の自分が本気で挑んで二連敗したのだ。

 悔しさ、恥ずかしさ、惨めさ、全ての感情がクロノスの中を駆け巡る中、最後に残ったのは、自分の実力はこんなものではないという意地だった。

 それは言い訳でもあったが、長く教員という立場に立ちすぎたことで、自分のデュエルの腕が鈍っているとクロノスは自分に言い聞かせたのだ。

 しかし、いくら言い訳しても、半年後に彼らは入学してくる。このままでは負けた自分が舐められるのは必然。だが、実技担当最高責任者としてのプライドが、落ちこぼれのドロップアウトボーイに舐められることを許容できなかった。

 

 クロノスは少ない時間を使って、自身を一から鍛え直していく。

 

 また、シンクロやエクシーズが導入されるのに連動して、融合関連やアンティーク・ギアのカードの補強もあり、自分のデッキも一新して、過去の自分を上回る実力を手に入れようと必死に実力を伸ばした。結果、それは叶い、クロノスはデュエルアカデミアで一二を争う実力を手に入れている。

 しかし、強くなったクロノスは、逆に一つの問題に行き着いてしまった。デュエルで生徒の相手をすると、何もさせずに瞬殺してしまうのだ。

 元々強力なアンティークギアデッキが、遊矢がいた融合次元並に強化された以上、当然と言って良いだろう。だからこそ、クロノスはデュエルをする際に、自分に一つの制限をかけた。

 

 それは、生徒相手に《融合》を使わないこと。

 

 これは遊矢が、生徒に対して強すぎるカードを封印していたのと同じ理由だった。生徒を導く立場の自分が、デュエルで生徒を何もさせずに叩きのめしてしまっては意味が無い。

 そのため、教師という立場のクロノスが本気を出すには、アカデミアの生徒が相手という枷を外す必要があった。だが、今回の相手は外部から来た吸血鬼――クロノスが手加減をする理由は、何一つとして存在しない。

 

「私はカードを一枚伏せ、永続魔法《古代の機械要塞》を発動ンヌ! さらに手札から魔法カード、《古代の機械射出機》を続けて発動するノーネ! 自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分のフィールドの表側表示カード一枚を破壊し、デッキから『アンティーク・ギア』モンスター一体を、召喚条件を無視して特殊召喚出来ますーノ!」

 

 今、クロノスのフィールドに永続魔法《古代の機械要塞》以外にカードが存在していなかった。

 よって、必然的に《古代の機械要塞》が破壊され、《古代の機械射出機》の効果を発動していく。

 

「私はデッキから《古代の機械巨人》を、召喚条件を無視して特殊召喚するノーネ!」

 

 《古代の機械巨人》

 効果モンスター

 ☆8 地属性 機械族

 ATK3000 DEF3000 攻撃表示

 

 毎度お馴染みと言って良いクロノスのエースモンスターだが、本来は特殊召喚出来ないという制限を無視して、デッキから特殊召喚される。地縛神程ではないが、相変わらず大きいモンスターだった。

 

「さらに、魔法・罠ゾーンから破壊され墓地へ送られた《古代の機械要塞》の効果を発動するノーネ! 自分の手札・墓地から『アンティーク・ギア』モンスター一体を特殊召喚できマース! 手札から、《古代の機械飛竜》を特殊召喚なノーネ!」

 

 《古代の機械飛竜》

 効果モンスター

 ☆4 地属性 機械族

 ATK1700 DEF1200 攻撃表示

 

 無駄のないコンボで、機械のワイバーンがフィールドに現れる。

 先程、クロノスがカミューラの手腕を絶賛していたが、今度は逆にカミューラがクロノスの実力に舌を巻いていた。

 事前に蝙蝠の眷属を使って敵の情報を入手していたカミューラだが、生徒相手に本気を出していなかったクロノスは、奇しくも上手く実力を隠すことが出来ていたのだ。

 想定以上のクロノスの実力に、相手を舐めていたカミューラが冷や汗をかいている。

 

「《古代の機械飛竜》の効果! このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから《古代の機械飛竜》以外の『アンティーク・ギア』カード一枚を手札に加えることが出来るーノ! 私はデッキから《古代の機械融合》を手札に加えるノーネ!」

「《古代の機械融合》!? 馬鹿な、貴方のデッキには普通の《融合》すら入っていなかったはず!?」

「ムムッ、いつ調べたのかは知りマセンーが、教師が生徒にデュエルを教えるのに強力すぎるカードを入れる訳がないノーネ! このカード達は、このデュエルの前に投入したカードですーノ! ペペロンチーノ!」

 

 暗に、入学試験のデュエルで十代や遊矢に負けたのは、手を抜いていたからだと言い訳するクロノス。

 実際に強くなったのは負けた後のことだが、普段よりもデッキの動きが明らかに違うせいで、この場にいた人間は全員がその言い訳を信じてしまっていた。

 特に、一度デュエルアカデミアから離れるきっかけを作ったクロノスに当たりが強かった万丈目は、「チッ、腐っても実技最高責任者ということか」と舌打ちしている。

 

「ですーが、《古代の機械飛竜》の効果でデッキからカードを手札に加えた場合、このターンの終了時まで私はカードをセット出来なくなるノーネ!」

「一番最初にリバースカードをセットしたのは……!?」

「勿論、このためですーノ! 私は、《古代の機械融合》を発動ンヌ! 自分の手札・フィールドから、『アンティーク・ギア』融合モンスターによって決められた融合素材を墓地に送り、その融合モンスター一体を特殊召喚するノーネ! さらに、自分フィールドの《古代の機械巨人》を融合素材とする場合、デッキのモンスターも融合素材に出来ますーノ!」

 

 召喚条件は、アンティークギアモンスター×3体。

 

「私はフィールドの《古代の機械巨人》、デッキの《古代の機械獣》、《古代の機械熱核竜》の三体を墓地へ送ーり、《古代の機械超巨人》を融合召喚するノーネ!!」

 

 《古代の機械超巨人》

 効果モンスター 融合

 ☆9 地属性 機械族

 ATK3300 DEF3300 攻撃表示

 

 三体の『アンディーク・ギア』モンスターが一つとなり、《古代の機械巨人》を超える超大型巨人が現れる。

 腕と足が六つずつあり、まさにメガトンという名に相応しいモンスターだった。

 

「さらに、さらーに、フィールド魔法、《歯車街》を発動なノーネ! このカードがフィールドゾーンに存在する限り、お互いのプレイヤーは『アンティーク・ギア』モンスターを召喚する場合に必要なリリースを一体少なく出来ますーノ! 私は、この効果で、《古代の機械飛竜》をリリースして、《古代の機械巨人》をアドバンス召喚なノーネ!」

 

 レベル8の《古代の機械巨人》が一体のリリースでフィールドに現れていく。

 

 《古代の機械巨人》

 効果モンスター

 ☆8 地属性 機械族

 ATK3000 DEF3000 攻撃表示

 

「では、バトルフェイーズ!」

「おっと、『アンティーク・ギア』モンスターの効果は少し面倒臭いわね。リバース罠、《レインボー・ライフ》を発動! 手札を一枚捨て、このターンのエンドフェイズまで、私への戦闘及び効果ダメージは回復効果に切り替わるわ!」

 

 クロノスの『アンティーク・ギア』モンスターはその殆どがダメージステップに魔法・罠カードの発動を封じる効果を持っている。おそらくはそれを嫌ったのだろう。

 まだ攻撃宣言していない今ならば、罠カードの発動が出来る。そして、その効果はクロノスを牽制するのに十分な効果を持っていた。

 

「ムムムッ、これでは攻撃出来ないノーネ」

「では、続けて罠カードを発動! 《ヴァンパイア・シフト》! 自分のフィールド魔法ゾーンにカードがなく、自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが全てアンデット族のみの場合、デッキからフィールド魔法、《ヴァンパイア帝国》を発動出来る!」

 

 カミューラのフィールドには、幽鬼と眷属が両方アンデット族のため発動条件を満たしていた。デッキよりフィールド魔法が発動し、《歯車街》を上書きして、カミューラの王国が設立されていく。

 

「さらに《ヴァンパイア・シフト》の効果で、自分の墓地から『ヴァンパイア』と名の付いた闇属性モンスター一体を選んで表側守備表示で特殊召喚出来る! 私は墓地の《ヴァンパイア・デューク》を特殊召喚するわ!」

 

 《ヴァンパイア・デューク》

 効果モンスター

 ☆5 闇属性 アンデット族

 ATK2000 DEF0 攻撃表示

 

 真っ白な仮面を被ったヴァンパイアの君主が墓地より蘇った。

 

「なかなかやるノーネ……」

 

 クロノスの《歯車街》には、破壊され墓地に送られた時に、手札・デッキ・墓地から『アンティーク・ギア』モンスター一体を特殊召喚できる効果がある。

 本来なら、フィールド魔法の張り替えで破壊され効果が発動するのだが、この効果は任意効果のため、《ヴァンパイア・シフト》の後半にある特殊召喚効果が邪魔で発動タイミングを逃してしまっていた。

 クロノスもそれがわかっているが故に、黙ってカミューラにされるがままになっている。

 

「さらに! この瞬間、《ヴァンパイア・デューク》の効果! このカードが特殊召喚に成功した時、カードの種類を宣言することで、相手は宣言された種類のカードをデッキから墓地に送らなくてはならない! 私は魔法カードを選択!」

「ぬぅ……私はデッキより、《置換融合》を墓地へ送るノーネ!」

「フィールド魔法、《ヴァンパイア帝国》の効果発動! このカードはアンデット族モンスターのダメージ計算時に攻撃力を500上げる効果の他に、一ターンに一度、相手のデッキからカードが墓地に送られた時、手札・デッキから『ヴァンパイア』と名の付いた闇属性モンスター一体を墓地へ送り、フィールド上のカード一枚を破壊できる!」

 

 カミューラはデッキからレベル6の《ヴァンパイア・グレイス》を選択して墓地に送った。

 

「それで私のモンスターを破壊するつもりですーノ!?」

「いいえ、私が破壊するのは私の残されたリバースカード! そして、チェーンして、最後のリバースカード、永続罠《女神の加護》を発動! 自分は3000のライフを回復し、このカードがフィールドから離れた時、3000ポイントのダメージを受ける!」

 

 カミューラ LP3500→6500

 

「わざわざ自分のカードを破壊するノーネ!?」

「あら、先生だって、散々自分のカードを破壊したじゃない。同じことよ。《女神の加護》が破壊されたことで、私は3000のダメージを受ける――けど、《レインボー・ライフ》の効果で、ダメージはライフ回復に切り替わっているわ!」

 

 カミューラ LP6500→9500

 

「ゲロゲロ!? ライフポイント9500ですート!?」

「どうしました、先生? 攻撃してきても構いませんのよ」

「ぐっ、私はこのままターンを終了するノーネ……」

 

 これ以上、相手にライフを回復されるのは厳しい。

 クロノスとしても、フィールドにモンスターを残したままにはしたくはないだろうが、相手フィールドのモンスターは全て攻撃表示故に、ターンを終えるしか無かった。

 

 

 クロノス 手札1枚 LP4000

 フィールド 古代巨人、古代超巨人

 魔法・罠 リバース1枚

 

 VS

 

 カミューラ 手札2枚 LP9500

 フィールド 幽鬼、眷属、デューク

 魔法・罠 なし

 

 

「私のターン! 魔法カード、《強欲な壺》! デッキからカードを二枚ドロー!」

 

 カミューラも壺で手札を補充していく。

 しかし、ライフこそ大幅に上回っているが、フィールドの状況は圧倒的にクロノスの方が有利だ。にも拘らず、カミューラからはまだ余裕のようなものを感じる。

 

「私は《ヴァンパイアの幽鬼》と《ヴァンパイアの眷属》をリリースして、《竜血公ヴァンパイア》をアドバンス召喚するわ!」

 

 《竜血公ヴァンパイア》

 効果モンスター

 ☆8 闇属性 アンデット族

 ATK2800 DEF2100 攻撃表示

 

 二体のヴァンパイアの命を吸いながら、竜の血をその身に宿したヴァンパイアの王が降臨した。

 三叉の槍を持ち、頭には王冠を付けている。まさに、自分が最強と言わんばかりの風格を宿していた。

 

「墓地から特殊召喚する効果を使った眷属は、フィールドから離れる時除外される。そして、《竜血公ヴァンパイア》の効果発動! このカードが召喚に成功した場合、墓地の相手モンスター二体までを対象に、そのモンスター二体の効果を無効にして自分フィールドに守備表示で特殊召喚する!」

「わ、私のモンスターを!?」

「私は、《古代の機械飛竜》と《古代の機械熱核竜》を特殊召喚させて貰うわ! そして、そのままこの二体のモンスターでオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

「ぬぬっ!? レベルの違うモンスターで、エクシーズですート!?」

「不勉強な先生に、教えてあげるわ。このカードをエクシーズ召喚する時、元々の持ち主が相手となるモンスターをオーバーレイユニットとする場合、そのレベルを6として扱えるのよ!」

 

 特別なエクシーズの形――遊矢ですら、そんな特殊な効果は初見だった。

 

「エクシーズ召喚! 現れよ、ランク6、《交血鬼―ヴァンパイア・シェリダン》!!」

 

 アルダンピールということは、おそらく人間と吸血鬼の混血ということだが、おそらく相手モンスターを奪ってエクシーズ召喚をすることを前提にしているから、そういう名前がついたのだろう。

 しかし、見た目はヴァンパイアの貴族にしか見えず、真っ白な衣装が輝いて見える。

 

 《交血鬼―ヴァンパイア・シェリダン》

 効果モンスター エクシーズ

 ランク6 闇属性 アンデット族

 ATK2600 DEF1000 攻撃表示

 

「って、ちょっと待て! ヴァンパイアがエクシーズとか有りなのか!?」

「ふふっ、勝つためならば流行りにも乗る。それがヴァンパイア一族の生き様よ」

 

 万丈目のツッコミにも、そう余裕で返すカミューラ。

 それにしても、まさかエクシーズ召喚まで駆使してくるとは思わず、遊矢も内心でかなり驚いていた。

 

「ヴァンパイア・シェリダンの効果発動! 一ターンに一度、オーバーレイユニットを一つ使い、相手フィールドのカード一枚を墓地へ送る! 私は《古代の機械超巨人》を墓地へ送るわ!」

「グヌッ! ならば、《古代の機械超巨人》の効果を発動させて貰うノーネ! 融合召喚した表側表示のこのカードが相手の効果でフィールドを離れる場合、EXデッキから《古代の機械究極巨人》一体を、召喚条件を無視して特殊召喚できるノーネ!!」

 

 オーバーレイユニットを一つ消費されて作られる地獄にも続きそうな穴に、《古代の機械超巨人》が引きずり込まれる中――パーツを分離して、新たに別の巨人へと変化していく。

 

 《古代の機械究極巨人》

 効果モンスター 融合

 ☆10 地属性 機械族

 ATK4400 DEF3400 攻撃表示

 

 四本足で、まるで機械のケンタウロスのようにも見えるが、その攻撃力は《古代の超巨人》を大きく上回っており、大きさも決して負けていなかった。

 

「そんな効果を隠していたなんてね……仕方ないわ。ヴァンパイア・シェリダンの二つ目の効果! 一ターンに一度、フィールドのモンスターが、効果で相手の墓地に送られた場合、又は戦闘で破壊されて墓地へ送られた場合、このカードのオーバーレイユニットを一つ使い、そのモンスター一体を私のフィールドに守備表示で特殊召喚する!」

「まさか、私の――」

「そう、貴方のメガトンゴーレムは私が使うわ! 来なさい、《古代の機械超巨人》!」

 

 《古代の機械超巨人》

 効果モンスター 融合

 ☆9 地属性 機械族

 ATK3300 DEF3300 守備表示

 

 再び、オーバーレイユニットを一つ消費し、墓地へ送られたメガトンゴーレムが、カミューラのフィールドに特殊召喚される。

 

「まぁ、とはいえ、このまま使う気はないわ。魔法カード、《精神操作》を発動! 《古代の機械究極巨人》を私のフィールドへ!」

「ヌガッ! また、私のモンスターを!?」

「ええ、利用させてもらうわ。今度はランク8よ! 私は元々の持ち主が貴方の《古代の機械究極巨人》と、《古代の機械超巨人》でオーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!!」

 

 おそらく、これから召喚するモンスターも、《交血鬼―ヴァンパイア・シェリダン》と同じく、元々の持ち主が相手の場合、レベルを別の数字に出来るのだろう。

カミューラがランク8を宣言したことから、今回は二体共レベル8モンスターとして扱われているようだった。

 

「エクシーズ召喚! 現れよ、ランク8! 《真血公ヴァンパイア》!!」

 

 《真血公ヴァンパイア》

 効果モンスター エクシーズ

 ランク8 闇属性 アンデット族

 ATK3000 DEF2800 攻撃表示

 

 見た目は驚くほど、竜血公に似ている。ただ、竜血公が大人な感じとするならば、この真血公は持ちうる力を全て解放する戦士のような風貌だった。

 

「《真血公ヴァンパイア》の効果発動! 一ターンに一度、オーバーレイユニットを一つ使い、お互いのデッキからカードを四枚墓地へ送る! この効果でモンスターが墓地へ送られた場合、その内の一体を自分フィールドに特殊召喚できる!」

 

 オーバーレイユニットを一つ消費し、真血公の効果により、お互いのデッキから四枚のカードが墓地へと送られていく。

 

「あら、先生。運もないのね。全部、魔法と罠だけじゃない。仕方ないわ……私は《ヴァンパイア・フロイライン》を特殊召喚するわ」

 

 《ヴァンパイア・フロイライン》

 効果モンスター

 ☆5 闇属性 アンデット族

 ATK600 DEF2000 守備表示

 

 傘を持ったヴァンパイアの令嬢が墓地より華麗に歩いてくる。

 

「さらに、フィールド魔法、《ヴァンパイア帝国》の効果発動! 一ターンに一度、相手のデッキからカードが墓地に送られたことで、デッキから《ヴァンパイアの使い魔》を墓地へ送り、先生のリバースカードを破壊するわ!」

「ならーば、罠カード、《重力解除》を発動するノーネ! これにより、フィールドの全ての表側表示モンスターの表示形式を変更するノーネ!」

 

 重力が消えたことで、フィールドのモンスター達が動きを変えていく。

 

 《古代の機械巨人》 攻撃表示→守備表示

 《竜血公ヴァンパイア》 攻撃表示→守備表示

 《真血公ヴァンパイア》 攻撃表示→守備表示

 《交血鬼―ヴァンパイア・シェリダン》 攻撃表示→守備表示

 《ヴァンパイア・デューク》 守備表示→攻撃表示

《ヴァンパイア・フロイライン》 守備表示→攻撃表示

 

「シニョーラカミューラ、講義の時間なノーネ。モンスターを召喚・特殊召喚したターンは、基本的に表示形式の変更ができませんーノ」

「つまり、前のターンで呼び出した《ヴァンパイア・デューク》以外は、表示形式を変えられないってことでしょう。なかなか面倒なことしてくれるじゃない」

 

 クロノスの《古代の機械巨人》の守備力は3000。今、攻撃表示のデュークとフロイラインではどうやっても攻撃力が足りない。

 

「けど、ノープロブレムよ。このままバトルフェイズに入りましょう! 《ヴァンパイア・デューク》で《古代の機械巨人》に攻撃!!」

 

 《ヴァンパイア・デューク》 ATK2000 VS《古代の機械巨人》 DEF3000

 

「この瞬間、フィールド魔法、《ヴァンパイア帝国》の効果! フィールド上のアンデット族モンスターの攻撃力は、ダメージ計算時のみ500ポイントアップする!」

「けど、まだ攻撃力が足りないノーネ!」

「さらに、《ヴァンパイア・フロイライン》の効果! 自分のアンデット族モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時、100の倍数のLPを払うことで、自分のモンスターの攻撃力と守備力をダメージ計算時のみ払った数値分アップする! 私はライフを600支払うわ!」

 

 カミューラ LP9500→8900

 

 これにより、合計攻撃力が1100ポイントアップし、《ヴァンパイア・デューク》の攻撃力が《古代の機械巨人》の守備力を超えた。

 

 《ヴァンパイア・デューク》 ATK2000→3100 VS《古代の機械巨人》 DEF3000

 

「わ、私の《古代の機械巨人》が破壊されてしまったノーネ!?」

「まだ、私には《ヴァンパイア・フロイライン》の攻撃が残っているわ! 闇の洗礼を受けなさい! 《ヴァンパイア帝国》の効果で、攻撃力500ポイントアップ!」

 

 《ヴァンパイア・フロイライン》 ATK600→1100 VSクロノス LP4000

 

 フロイラインの傘がクロノスのボディにズサズサと突き刺さり、現実でナイフを刺されたような痛みがクロノスの全身を襲う。

 

「ギ、ギニャー! い、痛いノーネ!」

 

 クロノス LP4000→2900

 

 思わず、ダメージで蹲るクロノス。

 闇のデュエルでのダメージはプレイヤーにかなりの痛みと衝撃を与える。1100ポイントとはいえ、甘く見ていい数字ではなかった。

 

「どう? ヴァンパイアの令嬢にいたぶられた気分は?」

「……グヌゥ、超マンマミーア」

「でも、残念。どうせいたぶるなら私、あちらの彼が良かったわ」

 

 そう言って、カミューラが亮へと視線を飛ばす。

 それを見た隣の万丈目が、「おいおい、敵さん。アンタが目当てらしいぜ、カイザー」と苦笑いを浮かべた。

 

「今からでも遅くはないわ。こちらはチェンジOKよ!」

「冗談ではないノーネ! 彼は私の大事な生徒、指一本触れさせはしませんーノ! そして、私は栄光あるデュエルアカデミアの実技担当最高責任者、断じて闇のデュエルなど認める訳にはいきませんーノ!」

「……クロノス教諭」

「でも、アンタ、ボロボロじゃないか!」

 

 亮や万丈目の心配する声に、甘えたくなりそうになったクロノスだが、すぐに首を横に振って前に向き直る。

 

「心配は無用なノーネ! デュエルは光、私が正当なるデュエルで闇を葬って見せますーノ!」

「では見せて貰おうかしら、その正当なるデュエルとやらを!」

 

 そう言って、カミューラは自身のバトルフェイズを終了していく。

 

「私はメインフェイズ2で、レベル5の《ヴァンパイア・デューク》と《ヴァンパイア・フロイライン》でオーバーレイ! 二体のアンデット族モンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

 三度目のエクシーズ。デュークはともかく、低攻撃力のフロイラインをそのまま攻撃表示にはしておきたくなかったのだろう。

 

「エクシーズ召喚! 現れよ、ランク5! 《紅貴士―ヴァンパイア・ブラム》!!」

 

 全身に赤いオーラを纏った、気高きヴァンパイアの騎士がフィールドに現れる。

 

 《紅貴士―ヴァンパイア・ブラム》

 効果モンスター エクシーズ

 ランク5 闇属性 アンデット族

 ATK2500 DEF0 攻撃表示

 

「私はブラムの効果を発動! オーバーレイユニットを一つ使い、相手の墓地のモンスター一体を自分のフィールドに特殊召喚できる! 私は、《古代の機械超巨人》を特殊召喚するわ!」

 

 《古代の機械超巨人》

 効果モンスター 融合

 ☆9 地属性 機械族

 ATK3300 DEF3300 攻撃表示

 

 再び、墓地から《古代の機械超巨人》がカミューラのフィールドに呼び戻されていく。

 

「また、私のモンスターを!」

「今は、私の僕よ。まぁ、この効果を使うターン、私はメガトンゴーレム以外で攻撃できなくなるのだけど、もうバトルフェイズも終了しているから関係ないわ」

 

 もし、バトルフェイズ前にこの効果を使っていた場合、メガトンゴーレムの攻撃で与えられるダメージは300に留まってしまう。だからこそ、メインフェイズ2までエクシーズ召喚を温存していたのだ。

 

「悪いけど、欠片も希望を与える気はないわ。私はリバースカードを一枚伏せてターンエンド」

 

 

 カミューラ 手札0枚 LP8900

 フィールド 竜血公、真血公、交血鬼、紅貴士、超巨人

 魔法・罠 帝国、リバース1枚

 

 VS

 

 クロノス 手札1枚 LP2900

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

「クロノス先生!!」

 

 クロノスが完全に追い詰められている中、隼人に担がれながら保健室で休んでいた十代が、遊矢や翔と共にやってくる。

 携帯端末を通して、デュエルはずっと見ていたのだが、どうしても十代がクロノスに声をかけたくなったと我が儘を言いだしたのだ。

 

「先生、負けるな! 俺と戦った時の先生よりも、今のアンタはもっと強いんだ! 見せてくれよ、アンタのターン!!」

 

 ドロップアウトボーイの十代に、そう 叱咤激励されて動かない訳にはいかなかった。

 

「……シニョーラカミューラ。この、クロノス・デ・メディチ。断じて闇のデュエルなどに敗れる訳にはいきませんーノ! 何故なら、デュエルとは本来、青少年達に希望と光を与えるモノであり、恐怖と闇をもたらすものではないノーネ!!」

 

 だからこそ、クロノスは闇のデュエルなど存在しないと、その存在をずっと否定していたのだ。

 そんなクロノスの内心を理解したように、十代も「だよな」と、声を上げる。

 

「そして、もう一つ。切り札は最後まで隠しておくものなノーネ」

「……何ですって?」

「私のターン、ドロー! 私は魔法カード、《オーバーロード・フュージョン》を発動ンヌ! 自分のフィールド・墓地から、機械族・闇属性の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外することーで、その融合モンスター一体をEXデッキから特殊召喚できるノーネ!!」

 

 それは一ターン目からずっと持っていたカードだった。クロノスは万が一のために、ずっとカードを温存していたのだ。

 

「私は墓地の《古代の機械巨人》と、《古代の機械獣》、《古代の機械飛竜》、《古代の機械熱核竜》の、四体の『アンティーク・ギア』モンスターを墓地から除外して、《古代の機械混沌巨人》を特殊召喚するノーネ!!」

 

 《古代の機械混沌巨人》

 効果モンスター 融合

 ☆10 闇属性 機械族

 ATK4500 DEF3000 攻撃表示

 

 それは、昔、シンクロ次元でデニスが黒崎とのデュエルで出した『アンティーク・ギア』モンスターだった。

 四体の『アンティーク・ギア』モンスターが一つとなり、全身が真っ黒な巨人が降臨する。

 その姿は一転してハイテクであり、両腕についている砲塔からはビームが飛び出しそうな勢いだった。

 

「希望と光を与える私が、闇属性のモンスターを使うのーは、少々お恥ずかしいですーが、今回は勝利を優先させてもらうノーネ」

「もう勝ったとでも?」

「《古代の機械混沌巨人》は、モンスターゾーンに存在する限り、魔法・罠カードの効果を受けず、相手のモンスターはバトルフェイズ中にモンスター効果を発動することが出来なくなるノーネ! さらに、このカードは相手モンスター全てに一回ずつ攻撃でき、守備モンスターを攻撃した場合、その守備力が攻撃力を超えた分だけ戦闘ダメージを与えますーノ!」

 

 今、カミューラのフィールドにいるモンスターは、竜血公が守備表示で守備力2100、真血公が守備表示で守備力2800、交血鬼が守備表示で守備力1000、紅貴士が攻撃表示で攻撃力2500、超巨人が攻撃表示で攻撃力3300だった。

 対する《古代の機械混沌巨人》の攻撃力は4500――仮に全ての攻撃を受ければ、その合計ダメージは9800となり、ライフを超回復したカミューラのライフですら、受けきることは不可能。まさに、逆転の一撃と言って良かった。

 

「バトルフェイズ! 《古代の機械混沌巨人》で《古代の機械超巨人》を攻撃! 私のモンスターは返して貰うノーネ!」

 

 《古代の機械混沌巨人》 ATK4500 VS《古代の機械超巨人》 ATK3300

 

 体の大きさ自体はそう大差ない二体だが、攻撃力には圧倒的な差があり、メガトンゴーレムがボロボロに崩れ去っていく。

 

「くっ!」

 

 カミューラ LP8900→7700

 

「続けて、《古代の機械混沌巨人》で、《真血公ヴァンパイア》を攻撃! このカードもオーバーレイユニットが私のモンスターなノーネ! 返して貰うノーネ!」

 

 《古代の機械混沌巨人》 ATK4500 VS《真血公ヴァンパイア》 DEF2800

 

 まさに子供と大人くらいの違いがあった。カオスジャイアントの一撃で、真血公が一撃で粉砕されていく。

 

「っ!!」

 

 カミューラ LP7700→6000

 

「ここらで一気に、大ダメージを受けて貰うノーネ! 《古代の機械混沌巨人》で《交血鬼―ヴァンパイア・シェリダン》を攻撃!!」

 

 《古代の機械混沌巨人》 ATK4500 VS《交血鬼―ヴァンパイア・シェリダン》 DEF1000

 

「フッ、束の間の勝利は味わえたかしら? 罠カード、発動!」

「カオスジャイアントには、罠カードは効かないノーネ!!」

「ええ、でもこれはカオスジャイアントを対象にした罠ではないわ! 罠カード、《二者一両損》! お互いにデッキの上からカードを一枚墓地へ送る!」

 

 強制効果で、お互いのデッキからカードが一枚墓地へ送られていく。

 

「この瞬間、フィールド魔法、《ヴァンパイア帝国》の効果! 一ターンに一度、相手のデッキからカードが墓地に送られたことで、デッキから《ヴァンパイア・スカージレット》を墓地へ送り、フィールドのカード一枚を破壊するわ!」

「ですーが、その効果でもカオスジャイアントは破壊できないノーネ!」

「ええ、ですから破壊するのは《交血鬼―ヴァンパイア・シェリダン》!」

「なっ! 自分のモンスターを!?」

「これで、攻撃対象を失ったカオスジャイアントの攻撃は無効となるわ!」

 

 おまけに、守備力1000を攻撃されることで、大ダメージを受けることを防ぐことにも成功した。

 これで、合計ダメージが9800から6300に変わり、カミューラのライフも残ってしまう。

 

「ぐっ、やりますーノ! サクリファイスエスケープを利用しーた、上級戦術なノーネ!」

「では、続きの攻撃をどうぞ、先生」

「言われずとも行くノーネ! 《古代の機械混沌巨人》で《竜血公ヴァンパイア》と《紅貴士―ヴァンパイア・ブラム》を攻撃!!」

 

《古代の機械混沌巨人》 ATK4500 VS《竜血公ヴァンパイア》 DEF2100 

《古代の機械混沌巨人》 ATK4500 VS《紅貴士―ヴァンパイア・ブラム》 ATK2500

 

「おっと、ブラムの方は《ヴァンパイア帝国》の効果でダメージ計算時のみ攻撃力が500ポイントアップするわ。お忘れなく」

「忘れてないノーネ!」

 

《古代の機械混沌巨人》 ATK4500 VS《竜血公ヴァンパイア》 DEF2100 

《古代の機械混沌巨人》 ATK4500 VS《紅貴士―ヴァンパイア・ブラム》 ATK2500→3000

 

 破れかぶれと言わんばかりに二体のヴァンパイアモンスターを破壊していく。だが、それでもカミューラのライフを削り切ることは出来なかった。

 

「ぐぅっ!!」

 

 カミューラ LP6000→3600→2100

 

 それでも、闇のデュエルということで、カミューラの受けたダメージもまた強大。表情には出さないが、身体的な痛みだけならクロノスよりもカミューラの方が大きいくらいだった。

 

「メインフェイズ2で墓地の《置換融合》の効果を発動するノーネ! 《古代の機械究極巨人》をEXデッキに戻して、カードを一枚ドローしますーノ!」

「あの時の……」

「私はリバースカードを二枚伏せてターンエンドなノーネ」

 

 

 クロノス 手札0枚 LP2900

 フィールド 混沌巨人

 魔法・罠 リバース2枚

 

 VS

 

 カミューラ 手札0枚 LP2100

 フィールド なし

 魔法・罠 帝国

 

 

 だが、これでカミューラのフィールドにモンスターはおらず、手札もゼロ。圧倒的にクロノスが有利な状況となる。

 

「私のターン! まさか、この程度でどうにかなるとでも!? 私は《紅貴士―ヴァンパイア・ブラム》の効果発動! フィールドのこのカードが相手によって破壊され墓地へ送られた次のターンのスタンバイフェイズ、このカードを墓地から守備表示で特殊召喚する!」

 

 《紅貴士―ヴァンパイア・ブラム》

 効果モンスター エクシーズ

 ランク5 闇属性 アンデット族

 ATK2500 DEF0 攻撃表示

 

 再び、ブラムが復活した。しかし、墓地からの特殊召喚なので、オーバーレイユニットは一つも持っていない。

 

「さらに、魔法カード、《貪欲な壺》! 墓地のモンスターを五体、デッキに戻しカードを二枚ドローする!」

 

 カミューラは真血公、交血鬼、スカージット、フロイライン、デュークの五体を選択してデッキに戻して、二枚のカードを引いた。

 

「……まさか、この私がアムナエルから与えられたカードに頼る日が来ようとはね」

「アヌ、アムナ、なんですート!?」

「これで終わりってことよ! 私は魔法カード、《死者蘇生》を発動! 墓地のモンスターを一体特殊召喚する! 私が特殊召喚するのは――」

 

 地震のような地響きと共に、カミューラの後ろから巨大な何かが地面から盛り上がってくる。

 その大きさは、《古代の機械混沌巨人》すら軽く超えており、良く見えるといくつもの足を持った蜘蛛のような姿をしていた。

 

「――出でよ、《地縛神Uru》!!」

 

 《地縛神Uru》

 効果モンスター

 ☆10 闇属性 昆虫族

 ATK3000 DEF3000 攻撃表示

 

「二体目の、地縛神……!」

「鳥の次は蜘蛛かよ……!」

 

 遊矢と十代が驚いた声を出すが、同時に地縛神を初めてみるクロノス、亮、三沢、おまけの大徳寺は声を出せずにいる。

 話には聞いていたが、ここまで巨大なモンスターだとは思っていなかったのだ。

 

「地縛神は相手の攻撃対象にならず、相手プレイヤーにダイレクトアタックが出来るわ。これは永続効果。《古代の機械混沌巨人》の効果でも、無効にすることは出来ない」

「た、確かにそうなノーネ! ダイレクトアタック効果は回避不可能なノーネ!」

「でも、真正面から行くのも面白くないわ。私は、《地縛神Uru》の効果発動! 一ターンに一度、このカード以外の自分フィールド上のモンスターをリリースすることで、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター一体のコントロールをエンドフェイズまで得る」

「な、なんですート!? また、私のモンスターを!?」

「全く、私のデッキにピッタリな効果なのは認めるけど、何でモチーフが蜘蛛なのよ。せめて狼かコウモリが良かったわ」

 

 地縛神のフォルムに文句をつけるカミューラだが、効果はしっかりと発動し、紅貴士をリリースして、カオスジャイアントのコントロールを奪っていく。

 

「さて、選ばせてあげるわ。どっちに攻撃されたい?」

「ど、どちらでも来いなノーネ!!」

「では、バトルフェイズ! 《古代の機械混沌巨人》でクロノス先生にダイレクトアタック!!」

 

 《古代の機械混沌巨人》 ATK4500 VSクロノス LP2900

 

 カミューラがカオスジャイアントを選んだ理由は単純、その方が屈辱を感じるだろうと思ったからだ。

 しかし、クロノスも負けじとリバースカードをオープンしていく。

 

「まだ終わりませんーノ! 攻撃宣言時に罠カード、《攻撃の無敵化》を発動なノーネ! このカードの効果で、このターン、私への戦闘ダメージをゼロにしますーノ!」

「甘いわ! カウンター罠、《レッド・リブート》を、ライフを半分支払い手札から発動!」

 

 カミューラ LP2100→1050

 

「て、手札から罠ですート!?」

「相手の罠カードの発動を無効にし、再びセットし直す! その後、相手は罠カードを一枚選んで自身の魔法・罠ゾーンにセットできるわ」

「ぐぬっ、セットされた罠は、そのターンに発動できないノーネ……」

「流石は先生、良くご存知ね。付け加えるなら、《レッド・リブート》の発動後、ターン終了時まで相手は罠カードそのものが発動できないわ」

「くっ、私はカードをセットしないノーネ……」

 

 これで、ダメージをゼロにすることは出来なくなった。クロノスにも、もうこのデュエルの終わりが見える。

 

「……仮に負けるとしても、最後まで諦めずに戦うノーネ! バトルステップにリバースカードオープン! 速攻魔法、《マグネット・リバース》を発動! 自分の墓地のモンスター及び除外されているモンスターの中から、機械族又は岩石族の通常召喚出来ないモンスター一体を特殊召喚できますーノ! 出でよ、《古代の機械超巨人》!!」

 

 《古代の機械超巨人》

 効果モンスター 融合

 ☆9 地属性 機械族

 ATK3300 DEF3300 攻撃表示

 

 結局、召喚してから一度も一緒に戦えずに奪われ続けたモンスターだった。

 しかし、そのメガトンゴーレムが最後は自分と一緒に戦ってくれている。デュエルとは本当に何が起こるかわからないものだ。

 

「では、《古代の機械混沌巨人》で《古代の機械超巨人》を攻撃! クラッシュ・オブ・ダークネス!!」

 

 《古代の機械混沌巨人》 ATK4500 VS《古代の機械超巨人》 ATK3300

 

 カオスジャイアントの一撃でメガトンゴーレムが粉砕され、攻撃力の差1200がクロノスのライフから削れていく。

 

「ぐぅっ、ぬぬうぅっ!! まだまだ、私は闇のデュエルに屈しはしないノーネ!!」

 

 クロノス LP2900→1700

 

 しかし、言葉とは裏腹に、クロノスの姿はもうボロボロだった。

 

「ふふふ、いい気味だわ。さて、次で終わりよ」

 

 地縛神の矛先がクロノスに向けられる。

 

「……諸君、よく見ておくノーネ。そして、約束して欲しいノーネ。例え、闇のデュエルに敗れたとしても、闇は光を凌駕出来ない。そう信じて、決して心を折らぬこと。私と約束してくださーイ!」

 

 見守る生徒全員に、そう言葉を送っていく。

 それは、あれだけ毛嫌いしていたオシリスレッドの十代とて例外ではなかった。

 

「最後の講義は終わりでいいかしら? クロノス先生」

「いつでも来い、なノーネ!!」

「《地縛神Uru》でクロノス先生にダイレクトアタック!! ヘル・スレッド!!」

 

 《地縛神Uru》 ATK3000 VSクロノス LP1700

 

 十代が戦ったアスラピスク同様に、動くだけでも地縛神は相手に衝撃を与えていた。

 そのまま、口から糸のような波動が飛ばされ、クロノスを吹き飛ばしていく。

 

「っ! ボーイ、光の……デュエルを……!」

 

 クロノス LP1700→0

 

 木にぶつかってクロノスが息を吐くと同時に、ライフがゼロとなりソリッドビジョンが消える。

 だが、たった一撃の攻撃を受けただけで、既にクロノスは瀕死の重傷を負っていた。それまでのダメージと合わせても致命傷なのが一目でわかる。

 

「やっと一個」

 

 そんな中、勝者であるカミューラは、倒れ伏すクロノスから一つ目の七精門の鍵を奪っていく。

 さらに、闇のデュエルのルールで、敗者のクロノスは体を人形にされてしまった。しかし、好みではないということで、カミューラはクロノスの人形をその場に捨てていく。

 その所業を見た十代が怒りを燃やすが、怒っているのはこの場の全員が同じだった。だが、そんな怒りなどそよ風と言わんばかりに、カミューラは不敵な笑みを浮かべている。

 

「次の対戦が楽しみだわ」

 

 流石に闇のデュエルの連戦はカミューラでも厳しいようで、一旦撤退を決めたようだった。

 同時に、背後の湖には大きな城のようなものが現れ、カミューラは風と共にその城へと戻って行く。「後日、素敵な招待状をお届けするわ」という不気味な言葉を残して――

 

 

 

 




 原作との変化点。

・#31『クロノスVS吸血美女(ヴァンパイア)カミューラ』より、クロノスが入学デュエル前より強くなっていた。
 実は隠れて特訓していた。今の強さは学園トップクラス。生徒相手には融合を制限している。

・カミューラの切り札はウル。
 もうネタバレっちまうんですが、幻魔の扉が上手く再現出来なかったんですよね。だから切り札を地縛神に変えました。人の魂をコストに発動するトンデモカードはちょっと取り込むのが無理ですわ。

・カミューラデッキはヴァンパイア(エクシーズ有り)。
 当時からカード増えたので強化しました。ぶっちゃけ、使い方を知らずに適当に書いたので、何か間違っていたら教えて下さい。

・このお話から少しずつクロノス先生が改心していく(原作通り)。
 クロノス先生はマジでいい先生なんだ。

・クロノス先生死にかけ。
 闇のゲームのダメージと地縛神の一撃で死にかけ。

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