デュエルアカデミアの生徒が、集団で失踪するという騒ぎが起こった。授業にも殆どの生徒が出ておらず、森の中に生徒の物と思わしき荷物が発見されたらしい。
大徳寺から凡その情報を聞いた三沢が、「これはセブンスターズによる侵攻に違いない!」と、言い出し、逆にこちらから攻めに行くことになったのだが、森の中を進んでいくと古代のコロシアムのようなものが出来ていた。
どうやら、本当にセブンスターズが居たようで、タニアを名乗るアマゾネス一族の長が、このコロシアムを作るために生徒達を労働力にしていたと言っている。
しかし、労働にはしっかり対価を支払うタイプのようで、コロッセオの完成と共に、生徒達に労いの言葉とお給金を渡して寮に返していた。意外といい奴である。
気を取り直して、いざデュエル――と、行きたい所だったのだが、タニアと戦えるのは男の中の男だけということで、女性の明日香が前回のカミューラ戦同様に選考外となって怒っていた。だが、タニアに撤回するつもりはないようで、そんな文句も無視している。
「我こそは男という者、出てこーい!」
そう呼びかけるタニアに対し、我こそはと出ていく三人の男達。
「俺が行くぜ!」
「いやここは俺、万丈目サンダーだろう!」
「いいや、この俺、三沢大地が!」
前から順に、十代、万丈目、三沢だった。
十代はもうほぼ回復したようで飛び出していくが、亮はまだ前回のダメージが抜けきっておらず、クロノスは既に鍵を失って戦う権利を失っている。遊矢は、明日香を宥めていたら出遅れた形だ。
「ふむ、なかなかいい面構え……だが……そうだな、YOU」
散々悩んだ結果、選ばれたのは三沢だった。選ばれてガッツポーズをする三沢に対し、十代と万丈目が肩を落として下がっていく。
「ちょっと、待った!」
そんな中、遊矢が乱入した。
「なんだ、遊矢? 悪いが、選ばれたのは俺だ。今から交代はなしだぞ」
「わかってるって。そうじゃなくて、タニアに聞きたいことがあってさ」
「私に?」
「あのさ、これなんだけど……」
そう言って遊矢がポケットから出したのは、前回の闇のデュエルで負けたことで、人形になってしまったカミューラだった。
「それは?」
「アンタの仲間、セブンスターズのカミューラだ」
「知らないな。私は基本的に他のセブンスターズに会ったことがない。精々が、アムナエルの奴くらいだ」
「アムナエル?」
前に、カミューラもその名を口にしていたのを遊矢は思い出す。
「そいつもセブンスターズの一人なのか?」
「さてね、私をセブンスターズにスカウトした奴ってだけで詳しくは知らん」
「まぁ、そのアムナエルは置いておいて。この人形の呪いを解くことって出来ないかな? このカミューラには、聞きたいことがあるんだ」
タニアも口にしたアムナエルという人物についてもそうだが、何故ナンバーズを持っていたのか、何故ナンバーズを持って正気で居られたのか、それこそ聞きたいことは山ほどある。
「ふむ。見た感じ、術式自体はそう難しいものではない。解けないということはないと思うが――」
しかし、タニアにはわざわざカミューラを元に戻してやる理由がなかった。同じセブンスターズとはいえ、仲間意識がないと断言した以上は当然だろう。
遊矢も、タニアの態度や話しぶりから、そう言ってくるであろうことはわかっていたので素直に頷いていた。
「ただという訳には行かないんだろ?」
「そういうことだ」
「つまり、俺がデュエルに勝てば、遊矢の頼みを聞くということだな」
「そうだ。頭の良い奴は嫌いじゃないぞ、三沢大地」
ずっと話を聞いていた三沢が、簡潔に用件を纏めていく。その通りとタニアも頷いた。
これで、三沢がタニアに勝てば、カミューラは元の姿に戻して貰えると確約したも同然。後は三沢に任せ、遊矢も後ろに下がっていった。
「お前達、セブンスターズ用に既にデッキは調整してあるぜ! さぁ、デュエルだ!」
「では、デュエルの前に貴様の運命を選ぶと良い。ここに、三つのデッキがある。一つは知恵のデッキ、一つは勇気のデッキ、そして最後は……」
「最後は……?」
「……あまり気が乗らない仕事用のデッキだ」
なんじゃそりゃと、その場にいた全員がすっ転んだ。
詳しい話を聞いてみると、実はタニアはセブンスターズではあるものの、七星門の鍵にはあまり興味はないらしい。
本人は、婚活――婿を手に入れるために強いデュエリストを探しているだけで、今回アムナエルの勧誘を受けたのも、強いデュエリストを求めてということだった。
だから、闇のデュエルをする気もなく、勝てば三沢を婿にして、負ければ自分が嫁になるつもりらしいのだが、自分を勧誘したアムナエルという人物から、最低限の仕事だけはしっかりして欲しいと頼まれたそうで、仕方なく闇のデュエル用の地縛神が入ったデッキを受け取ったのだという。
「このデッキを使えば、私は闇のデュエルをしなければいけなくなる。なので、おすすめは前の二つ、知恵のデッキと勇気のデッキだ。どちらもアマゾネスの誇りが入っている素晴らしいデッキで――」
「俺は最後のデッキを選択する」
「――いいのか? 闇のデュエルを始めたら、私はお前を殺してしまうかもしれんのだぞ?」
「元々、闇のデュエルをする気で来たんだ。覚悟は当に出来ている。それに、婿だの嫁だのと言ったよくわからないことに興味はない!」
「……わかった。では、私もセブンスターズのタニアとして貴様と相対しよう。三沢大地」
そう真面目に宣言すると、タニアが三つ目のデッキをデュエルディスクに挿入した。
「では、行くぞ……死ぬなよ」
「勝つのは俺だ!」
「「デュエル!!」」
先攻は三沢。デッキからカードを五枚引いて手札にしていく。
「俺の先攻、ドロー! 俺は手札から《電磁石の戦士α》を攻撃表示で召喚!」
《電磁石の戦士α》
効果モンスター
☆3 地属性 岩石族
ATK1700 DEF1100 攻撃表示
前に万丈目とのデュエルでも使った、電磁石の戦士の一体が出現する。
「このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキからレベル8の磁石の戦士モンスター一体を手札に加える! 俺は《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》を手札に加える!」
万丈目に勝利したキーカードを早速サーチしていた。
「さらに、ライフを2000支払い、魔法カード《同胞の絆》を発動!」
三沢 LP4000→2000
「このカードを発動するターン、俺はバトルフェイズを行えず、ターン終了時までこのカード以外の効果で特殊召喚も出来ない!」
「だが、先攻は元々バトルフェイズを行えないので、デメリットにはならないということか」
「その通りだ! 《同胞の絆》の効果で、フィールドの《電磁石の戦士α》と同じ種族、属性、レベルで、カード名が異なるモンスター二体をデッキから特殊召喚する! 出でよ、《電磁石の戦士β》、《電磁石の戦士γ》!」
《電磁石の戦士β》
効果モンスター
☆3 地属性 岩石族
ATK1500 DEF1500 守備表示
《電磁石の戦士γ》
効果モンスター
☆3 地属性 岩石族
ATK800 DEF2000 守備表示
2000というライフは消耗したものの、三沢はこれで電磁石の戦士を三体フィールドに特殊召喚した。
ここまでは、万丈目とのデュエルで見た流れと全く一緒である。
「さらに《電磁石の戦士β》の効果発動! このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《電磁石の戦士β》以外の、レベル4以下の磁石の戦士モンスター一体を手札に加える! 《磁石の戦士δ》を手札に!」
手札の損失を防ぎつつ、フィールドにモンスターを三体揃えた。
「最後に、リバースカードを一枚セットしてターンエンドだ」
三沢 手札5枚 LP2000
フィールド 電磁石α、電磁石β、電磁石γ
魔法・罠 リバース1枚
VS
タニア 手札5枚 LP4000
フィールド なし
魔法・罠 なし
「私のターン! 悪いが、手加減はしないぞ!」
「来い!」
「私は手札から魔法カード、《魔獣の懐柔》を発動! 自分フィールドにモンスターが存在しない場合にのみ発動が可能。カード名が異なるレベル2以下の獣族モンスター三体をデッキから特殊召喚する!」
「なにっ、三体も特殊召喚するだと!?」
「ただし、この効果で呼び出したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズに破壊される上、ターン終了時まで私は獣族のモンスターしか特殊召喚できなくなる」
「だが、全て獣族しか入っていないデッキならば問題ない……」
「そういうことだ。出でよ、私のモンスター達よ!」
《森の聖獣カラントーサ》
効果モンスター
☆2 地属性 獣族
ATK200 DEF1400 守備表示
《森の聖獣ヴァレリフォーン》
効果モンスター チューナー
☆2 地属性 獣族
ATK400 DEF900 守備表示
《メルフィー・ラビィ》
通常モンスター
☆2 地属性 獣族
ATK0 DEF2100 守備表示
出てきたのは背中に草を生やした真っ白な兎と、背中に花を生やした鹿、そしてそんな二体に隠れるように、胸に白いハートマークを付けた全身ピンク色でもこもこの兎が小さくなって様子を見ていた。
「これが、森の聖獣と、その森に住むメルフィーだ!」
そのあまりの可愛さに、応援している翔と明日香が「「可愛い~」」と声を上げる。
遊矢は一瞬、《もけもけ》を思い出したが、どうやら今回は異常が起きている訳では無さそうだった。
「くっ、三体の獣族モンスター……リリース要員としては申し分ない。後はフィールド魔法を発動するだけで、地縛神は降臨する……!」
「どうやら、かなり地縛神を警戒しているようだが、安心すると良い。今の私の手札にはフィールド魔法も地縛神も存在しない」
「悪いが、敵の言葉は信じない。俺は常に最悪を考えてプレイングをしている!」
「頑なだな。そういう所も悪くない。これが闇のデュエルでなかったら、もっと楽しかっただろうに……」
勿体ない――と、ため息をつくタニア。
「私は手札から、《メルフィー・ラッシィ》を通常召喚!」
《メルフィー・ラッシィ》
効果モンスター チューナー
☆2 水属性 獣族
ATK300 DEF100 攻撃表示
胸にピンクのハートマークがついたグレーでもこもこのアザラシが現れる。
ラビィもそうだが、隣の聖獣モンスターに比べて、丸くて柔らかそうな見た目をしていた。
「私はレベル2の森の聖獣モンスター二体で、オーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」
二体の森の聖獣モンスターがオーバーレイユニットへと変換されていく。
「出でよ、ランク2! 《森のメルフィーズ》!」
《森のメルフィーズ》
効果モンスター エクシーズ
ランク2 地属性 獣族
ATK500 DEF2000 攻撃表示
フィールドにいるラビィと同じような個体を始め、何体もの小さいメルフィー達が集合している。群体にして個のモンスター、それがメルフィーズだった。
「さらに、レベル2のメルフィーモンスター二体で、オーバーレイ! 二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」
連続エクシーズ召喚――今度はメルフィー達がオーバーレイユニットへと変換され、二体目のエクシーズモンスターが出現する。
「出でよ、ランク2! 《わくわくメルフィーズ》!」
《わくわくメルフィーズ》
効果モンスター エクシーズ
ランク2 地属性 獣族
ATK2000 DEF500 攻撃表示
先に出た《森のメルフィーズ》同様、何体もの小さなメルフィー達が集まったモンスターが現れた。
先程と違うのは、地面に果物が大量に置かれている点だ。まるでお祭りのように、メルフィー達が大騒ぎしている。
「しっかし、タニアとメルフィー達では画風が違いすぎるな……」
「プッ、確かにな」
「酷いわよ、二人とも。十代も、笑うのやめなさいって」
割と真顔で万丈目がツッコミを入れると、十代が口を押さえて爆笑し出した。明日香が注意をするが、ツボにハマってしまったようで笑いが止められずにいる。
しかし、そんな外野のヤジなど気にした様子もなく、三沢とタニアは真剣にデュエルを続けていた。
「まさか、連続でエクシーズ召喚をしてくるとは……確かにこれなら、エンドフェイズに破壊される《魔獣の懐柔》の効果も回避できる。素晴らしいタクティクスだ」
「褒めてくれてありがとう。私は《森のメルフィーズ》の効果を発動! オーバーレイユニットを一つ使い、デッキから『メルフィー』カードを手札に加える。私は《メルフィー・パピィ》を手札に!」
これだけ展開していて、手札がほぼ減っていない。いろいろ意味不明な話もあったが、気が抜けない相手だと三沢もタニアの実力を認める。
「ならば、こちらも電磁石の戦士達の効果を発動! 相手ターンに自身をリリースすることで、デッキからレベル4以下の『マグネット・ウォリアー』モンスターを特殊召喚できる! 俺はα、β、γの三体をリリースして、デッキから《磁石の戦士α》、《磁石の戦士β》、《磁石の戦士γ》を守備表示で特殊召喚!」
《磁石の戦士α》
通常モンスター
☆4 地属性 岩石族
ATK1400 DEF1700 守備表示
《磁石の戦士β》
通常モンスター
☆4 地属性 岩石族
ATK1700 DEF1600 守備表示
《磁石の戦士γ》
通常モンスター
☆4 地属性 岩石族
ATK1500 DEF1800 守備表示
三体の電磁石の戦士が光となって消えると、また別の磁石の戦士三体がデッキよりフィールドに現れた。
「防御を固めたか。しかし、意味はない! 《わくわくメルフィーズ》の効果発動! オーバーレイユニットを一つ使い、このターンのバトルフェイズ、自分のメルフィーモンスターは相手に直接攻撃が出来る!」
「なっ、ダイレクトアタックが出来る効果だって!?」
「バトル! 《わくわくメルフィーズ》で、三沢大地にダイレクトアタック!」
《わくわくメルフィーズ》 ATK2000 VS三沢 LP2000
メルフィー達が三沢目掛けて走り出していく。
既に三沢は《同胞の絆》を使ったせいでライフが半分しかない。この攻撃を通せば、ライフはゼロにされてしまう。
「罠カード、《ガード・ブロック》! 相手モンスターからの戦闘ダメージをゼロにして、デッキからカードを一枚ドローする!」
しかし、地縛神を警戒していただけはあって、そう簡単にダイレクトアタックは許さない。遊矢もたまに使う防御カードで、戦闘ダメージを無効にしつつ手札を補充していく。
「だが、《森のメルフィーズ》の攻撃は防げまい! いけっ、ダイレクトアタックだ!」
《森のメルフィーズ》 ATK500 VS三沢 LP2000
タニアの言う通り、二の矢は防げなかった。攻撃力500のメルフィー達が三沢に殺到し、足を齧っていく。
「ぐうっ!! これが、闇のデュエルの痛みか……!」
三沢 LP2000→1500
闇のデュエルではダメージが現実となる。可愛いメルフィー達の攻撃も、足が痛くて立っていられないレベルのダメージを三沢に与えていた。
「立て、男だろう! 闇のデュエルで立てない者に戦う資格はない!」
「あ、ああ! 立てるさ!」
タニアの鼓舞に釣られ、三沢も立ち上がる。
だが、初の闇のデュエルということで、想像以上のダメージに面食らっているようだった。
「よろしい。私はメインフェイズ2で私は永続魔法、《一点着地》を発動! 自分、又は相手の手札から自分フィールドにモンスター一体のみが特殊召喚された場合、カードを一枚ドローする!」
ただし、この効果でカードをドローしなかったターンのエンドフェイズ、このカードは破壊されるというデメリット効果も持ったドローカード。前回、万丈目の兄も使ったカードだった。
「さらに、リバースカードを三枚セットして、エンドフェイズ」
「エンドフェイズ!? 《一点着地》の効果で、そのカードが破壊されてしまうぞ!」
「ご心配痛み入る。だが、それは無用な心配だ。このエンドフェイズ、手札の《メルフィー・パピィ》の効果を発動! このカードを手札から特殊召喚する!」
《メルフィー・パピィ》
効果モンスター
☆2 地属性 獣族
ATK300 DEF100 守備表示
胸に白いハートマークを付けたもこもこで茶色い子犬が新たにフィールドに現れる。
「永続魔法、《一点着地》の効果を発動! デッキからカードを一枚ドローする! これで、このカードは自壊しない」
「成程、そんな効果が……」
「さらに、墓地の《メルフィー・ラッシィ》の効果! エンドフェイズにこのカードが墓地に存在する場合、自分フィールドの獣族エクシーズモンスター一体のオーバーレイユニットに出来る。私は、《わくわくメルフィーズ》のオーバーレイユニットを回復させてターンエンド」
タニア 手札1枚 LP4000
フィールド 森メルフィー、わくわく、パピィ
魔法・罠 《一点着地》、リバース3枚
VS
三沢 手札6枚 LP2000
フィールド 磁石α、磁石β、磁石γ
魔法・罠 なし
「俺のターン、ドロー! 悪いが、このまま一気に決めさせて貰うぞ!」
「来い!」
「俺は墓地の電磁石の戦士三体をゲームから除外し、手札の《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》を特殊召喚する!」
《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》
効果モンスター
☆8 地属性 岩石族
ATK3000 DEF2800 攻撃表示
除外された三体の電磁石の戦士が合体して姿を変えていく。万丈目に勝利した時のフィニッシュモンスターだ。
「さらに――」
「この瞬間、《メルフィー・パピィ》の効果を発動! 相手がモンスターの召喚・特殊召喚に成功した場合、又はこのカードが相手モンスターの攻撃対象になった場合、このカードを手札に戻し、デッキから《メルフィー・パピィ》以外のレベル2以下の獣族モンスターを特殊召喚できる! 出でよ、《メルフィー・ワラビィ》!」
マグネット・ベルセリオンの特殊召喚をトリガーに、パピィが手札に戻り、入れ替わるように、胸に紫色のハートマークを付けたもこもこのワラビーがデッキから飛び出してきた。
《メルフィー・ワラビィ》
効果モンスター
☆2 地属性 獣族
ATK0 DEF400 守備表示
「さらに、《森のメルフィーズ》の効果も発動! 一ターンに一度、このカード以外の自分のメルフィーモンスターが手札に戻った場合、相手フィールドの表側表示モンスター一体は表側表示で存在する限り、攻撃を封じられ、効果も無効化される!」
「なっ! ベルセリオンを封じられた!?」
「さて、お邪魔して済まなかったな。続きをどうぞ」
「くっ、俺はフィールドの磁石の戦士三体を墓地へ送り、《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》を手札から特殊召喚する!」
《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》
効果モンスター
☆8 地属性 岩石族
ATK3500 DEF3850 攻撃表示
続けて、フィールドの三体の磁石の戦士が合体して姿を変えていく。動けなくなったベルセリオンを守るように、フィールドに新たな戦士が降臨した。
「では、この瞬間、《メルフィー・ワラビィ》の効果を発動! 相手がモンスターの召喚・特殊召喚に成功した場合、又はこのカードが相手モンスターの攻撃対象になった場合、このカードを手札に戻し、デッキから《メルフィー・ワラビィ》以外のメルフィーモンスター二体を特殊召喚できる!」
「召喚、攻撃対象での効果発動は、メルフィーの共通効果ということか……!」
「その通りだ。私は二体のメルフィーモンスター、《メルフィー・キャシィ》と《メルフィー・フェニィ》を守備表示で特殊召喚する!」
再び、メルフィーの共通効果でワラビィが手札に戻り、入れ替わるように、今度は二体のメルフィーモンスター、全身オレンジ色で胸にピンクのハートマークを付けたもこもこの猫と、全身黄色で胸に緑色のハートマークを付けたもこもこのフェネックがデッキから現れる。
《メルフィー・キャシィ》
効果モンスター
☆2 地属性 獣族
ATK200 DEF200 守備表示
《メルフィー・フェニィ》
効果モンスター
☆2 地属性 獣族
ATK100 DEF300 守備表示
「……メルフィーモンスターは、最初の通常モンスターであるラビィを除いて、全員が攻撃力、守備力の合計が400しかない弱小モンスターだが、どうしてこうも鬱陶しい」
「弱くとも、力を合わせれば強者とも戦えるということだ。まぁ、あまり私好みのデッキではないがな」
本来、タニアが使用するデッキはアマゾネスデッキ。そのテクニカルさを利用した知恵のデッキと、強力なパワーを使った勇気のデッキが持ち味だ。
メルフィーも基本的にはテクニカルな部類に入るが、素のモンスターの攻撃力が低すぎて単純な攻めも簡単にはできない。テクニカルすぎるのもイマイチのようだった。
「まぁ、仕事である以上はこのデッキを使い熟してお前を倒そう」
「くっ……!」
三沢が長考に入る。
下手にモンスターを増やせば、またメルフィーの効果でタニアがアドバンテージを取りに来るだろう。しかし、今のままではマグネット・バルキリオンが攻撃したとしても、二枚のリバースカードか、モンスター効果で迎撃されるのは確実。
ならば、逆に限界まで展開して攻めるべきか。だとしても、返しのターンの攻撃を凌げる確証もない。下手に展開した後に凌がれれば、待っているのは敗北だ。
どうする?
どうする? どうする?
どうする? どうする? どうする?
「三沢! ラスト侍魂見せてやれ!」
三沢がどうプレイするかを悩む中、十代からそんな意味の分からない応援が飛んでくる。
ラスト侍がおそらく自分を指しているのはわかるが、何故ラスト侍なのかはわからない。しかし、十代の声を聞いた瞬間、それまで悩んでいるのが馬鹿らしくなってきた。
たまには十代のように、深いことを考えずにプレイしてみるのも悪くないかもしれない。
「俺は手札から《三戦の才》を発動! 自分のメインフェイズに相手がモンスター効果を発動している場合、以下の効果を得ることが出来る。一つは、デッキからカードを二枚ドローする効果。一つは、相手フィールド上のモンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る効果。一つは、相手の手札を確認し、その中からカードを一枚選んでデッキに戻す効果だ」
「《強欲な壺》、《心変わり》、《強引な番兵》の効果を内蔵しているカードとは……」
「最近は、相手の効果を無効にするモンスターも増えているんでね。発動条件はそこまで難しくない。お前にも、散々このターンで展開されたしな」
「で、何を選ぶ?」
「俺は一番上、デッキからカードを二枚ドローする効果を選ぶ! メルフィーモンスターのコントロールを奪ってもあまり意味がないし、手札のカードを戻してもまたサーチされるだけだからな!」
そう言って、三沢はデッキからカードを二枚ドローした。そして、それが正しかったのだと、引いたカードの一枚をそのままデュエルディスクに差し込む。
「魔法カード、《置換融合》を発動! フィールドのマグネット・バルキリオンとマグネット・ベルセリオンを墓地へ送り、融合!」
「二体の最上級磁石の戦士で融合!?」
流石のタニアも驚いたような声を出した。
「出でよ、《超電導戦機インペリオン・マグナム》!!」
動けなくなっていたベルセリオンと、攻めあぐねていたバルキリオンが分離して、新たな姿へと合体していく。
足は四つ足になり、剣は一回り大きく、型にはレーザー砲を装備し、翼まで装備した、まさに二体の良い所取りともいうべき姿だった。
《超電導戦機インペリオン・マグナム》
効果モンスター 融合
☆10 地属性 岩石族
ATK4000 DEF4000 攻撃表示
「だが、貴様がインペリオン・マグナムを融合召喚したことによって、こちらもメルフィー達の効果を発動! そして、その効果にチェーンして罠カード、《メタバース》を発動!」
「《メタバース》だって!?」
「このカードの効果で。私はデッキからフィールド魔法を一枚選び、手札に加えるかフィールドに発動できる! フィールド魔法、《地縛地上絵》を発動!」
まさかのデッキからフィールド魔法を発動するという効果に驚く三沢。これを通せば、自分のターンにも関わらず、地縛神の召喚条件がクリアされてしまう。
「させるか! インペリオン・マグナムの効果発動! 一ターンに一度、相手がモンスターの効果・魔法・罠カードを発動した時、その発動を無効にして破壊する!」
「おっと、それはまずい! 速攻魔法、《禁じられた聖杯》を発動! ターン終了時までインペリオン・マグナムの効果を無効にし、攻撃力を400ポイントアップする!」
しかし、まるで読んでいたかのように、妨害を防がれてしまった。チェーンの逆順処理により、インペリオン・マグナムの攻撃力が上がってから、フィールド魔法が展開され、メルフィー達の効果が発動する。
《超電導戦機インペリオン・マグナム》 ATK4000→4400
「続けて、《メルフィー・フェニィ》、《メルフィー・キャシィ》の効果が発動! チェーンの逆順処理により、まずはキャシィの効果で、このカードを手札に戻し、デッキからキャシィ以外の獣族モンスター一体を手札に加えることが出来る。当然、私が手札に加えるのは獣族の《地縛神Cusilu》!」
「地縛神を手札に加えたか……!」
「加えるだけで終わりにはしない! 私は続けてフェニィの効果! このカードを手札に戻し、手札からフェニィ以外の獣族モンスター一体を特殊召喚できる! 出でよ、《地縛神Cusilu》!!」
二体のメルフィーのコンボにより、デッキから簡単に手札に加えられ、相手ターンにも関わらず特殊召喚された。
《地縛神Cusilu》
効果モンスター
☆10 闇属性 獣族
ATK2800 DEF2400 攻撃表示
鳥、蜘蛛と続いて、巨大な猿の地縛神がフィールドに出現する。相変わらずの大きさに、せっかく作ったコロシアムもその足しか入っていなかった。
「ふむ、巨大すぎてメルフィー達が豆粒に見えるな……おっと、永続魔法《一点着地》の効果で、手札から私のフィールドにモンスター一体が特殊召喚されたことでカードを一枚ドローする」
「これが地縛神……! 相対して初めてわかるこの圧倒的なプレッシャー……!」
「さて、どうする? 三沢大地」
「どうもこうもない! 地縛神が動く前にデュエルを終わらせるまで! 俺は装備魔法、《ファイティング・スピリッツ》をインペリオン・マグナムに装備! 相手フィールド上のモンスター一体につき、攻撃力を300ポイントアップさせる!」
今、タニアのフィールドにモンスター三体、合計900ポイントアップする。
《超電導戦機インペリオン・マグナム》 ATK4400→5300
「確かに、メルフィー達は凄い効果を持っている。しかし、そのステータスが貧弱であることに変わりはない! 例え、地縛神が居ようとも、俺が狙うのは攻撃力500の《森のメルフィーズ》だ!!」
攻撃力4400では3900しかダメージを与えられないが、5300になったことで4000を超えるダメージを与えることが出来る。
どんなに強力なモンスターを出そうと、自分のターンが回ってこなければ意味がない。三沢は早々に、このデュエルに決着をつけるつもりだった。
「では、ここで《わくわくメルフィーズ》のモンスター効果を発動! 相手ターンに一度、自分のフィールドの獣族エクシーズモンスターをEXデッキに戻し、そのモンスターが持っていたオーバーレイユニットの数まで、墓地からレベル2以下の獣族モンスターを特殊召喚する!」
「くっ、その効果で《森のメルフィーズ》を回収するつもりか!」
「ふっ、勘違いは良くないぞ。私がEXデッキに戻すのは《わくわくメルフィーズ》!」
「なっ、《わくわくメルフィーズ》をEXデッキに戻すだって!?」
「《わくわくメルフィーズ》が持っていたオーバーレイユニットは二つ。よって、墓地から二体の森の聖獣を蘇らせる!」
《森の聖獣カラントーサ》
効果モンスター
☆2 地属性 獣族
ATK200 DEF1400 守備表示
《森の聖獣ヴァレリフォーン》
効果モンスター チューナー
☆2 地属性 獣族
ATK400 DEF900 守備表示
メルフィーではなく、この状況で森の聖獣たちを蘇らせる。予想外のことに、三沢もまだ思考が追い付いていけていない。
だが、相手のモンスターの数が変化したことで、インペリオン・マグナムに装備した《ファイティング・スピリッツ》による攻撃力数値も変動していた。
《超電導戦機インペリオン・マグナム》 ATK5300→5600
「《森の聖獣カラントーサ》の効果発動! このカードが獣族モンスターの効果で特殊召喚に成功した場合、フィールドのカード一枚を破壊する! インペリオン・マグナムを破壊!」
「手札の《朔夜しぐれ》の効果を発動! 相手が表側表示でモンスターを特殊召喚した場合、手札のこのカードを捨てることで、そのモンスターの効果をターン終了時まで無効化し、対象モンスターがフィールドから離れた場合、そのコントローラーに元々の攻撃力分のダメージを与える! これで、カラントーサの効果は無効だ!」
インペリオン・マグナムの破壊を狙ったタニアのコンボを、上手く交わす。
「まさか、そんなカードを引いていたとは……」
「《三戦の才》の効果でドローしたもう一枚のカードだ」
「しかし、それならCusiluの効果を無効にすべきだったのではないか? モンスター効果を無効にすれば、攻撃も可能となり、《朔夜しぐれ》の効果ダメージと合わせて私のライフをゼロに出来たはずだ」
「最後のリバースカード。そのカードの存在を俺は忘れちゃいない。もし、俺が地縛神の効果を無効にすれば、そのカードでアンタは地縛神を守りに行くはずだ」
あくまで推測だが、三沢は自分の推測に絶対の自信を持っていた。
それに結果論ではあるが、地縛神の効果を無効にしていたら、カラントーサの効果は防げなかったので完全に間違った選択でもない。
「バトルフェイズだ! インペリオン・マグナムで、《森のメルフィーズ》を攻撃! インペリアル・ソード!!」
《超電導戦機インペリオン・マグナム》 ATK5600 VS《森のメルフィーズ》 ATK500
「罠カード、《立ちはだかる強敵》! 相手の攻撃宣言時、自分のフィールドのモンスター一体を選択する。相手はこのターン、選択したモンスターしか攻撃できず、全ての表側攻撃表示モンスターで選択したモンスターを攻撃しなくてはならない!」
「成程! それが最後のカードだったのか!」
「私は《森の聖獣カラントーサ》に攻撃対象を変更する!」
攻撃対象が変更となり、インペリオン・マグナムがカラントーサと攻撃を仕掛けていく。
もし、万が一、《朔夜しぐれ》でクシルの効果が無効にされ、インペリオン・マグナムが攻撃していたら、タニアはこれを使って、今のようにカラントーサへ攻撃対象を変更するつもりだったのだろう。三沢の読みは正しかった。
《超電導戦機インペリオン・マグナム》 ATK5600 VS《森の聖獣カラントーサ》 DEF1400
インペリオン・マグナムの一撃で、カラントーサが一刀両断される。しかし、守備表示故にタニアへのダメージはゼロ。おまけに、相手モンスターの数が変化したことでインペリオン・マグナムの攻撃力もダウンした。
《超電導戦機インペリオン・マグナム》 ATK5600→5300
だが、まだ三沢には《朔夜しぐれ》の効果が残されている。
「《朔夜しぐれ》の効果対象となったカラントーサがフィールドから離れたことで、その攻撃力200のダメージをお前に与える!」
「っ、やるな……」
タニア LP4000→3800
闇のデュエルということで、通常なら大したことないダメージもかなりの痛みとなっていた。
「攻撃対象はヴァレリフォーンにしておくべきだったんじゃないのか?」
「いや、残念ながら、ヴァレリフォーンにはまだ仕事があるのでね」
「……成程。俺は、メインフェイズ2で、魔法カード、《手札抹殺》を発動! お互いのプレイヤーは手札を全て捨て、捨てた分だけデッキからカードをドローする!」
タニアの手札には、効果で戻った大量のメルフィー達がいる。次のターンで大量展開されないためにも、何とか処理しておく必要があった。
「俺は二枚捨てて、二枚ドロー!」
「私は六枚捨て、六枚ドローだ!」
その差四枚――手札には圧倒的過ぎる差がある。三沢のフィールドにはインペリオン・マグナムがいるとはいえ、相手にも厄介な地縛神やメルフィーズが残っていた。おまけに、ライフの差もあり、三沢が不利としか思えない状況――
「俺は魔法カード、《貪欲な壺》を発動! 墓地の三体の磁石の戦士、マグネット・ベルセリオン、マグネット・バルキリオンの五体をデッキに戻してカードを二枚ドロー! そして、今引いたカードを全て伏せてターンエンド!」
「お前のターンが終了したことで、《禁じられた聖杯》の効果も消え、インペリオン・マグナムの攻撃力と効果も元に戻る」
《超電導戦機インペリオン・マグナム》 ATK5300→4900
三沢 手札1枚 LP1500
フィールド インペリオン・マグナム
魔法・罠 ファイティング、リバース2枚
VS
タニア 手札6枚 LP3800
フィールド 森メルフィー、クシル、ヴァレリ
魔法・罠 《地縛地上絵》、《一点着地》
「私のターン!」
「このスタンバイフェイズに、罠カード、《バトルマニア》を発動! 相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターは全て攻撃表示になり、このターン表示形式を変更することは出来ない! そして、このターン攻撃可能なモンスターは攻撃しなければならない!」
「地縛神がいるとわかって尚、攻撃を強要してくるとは……」
「言っただろう。地縛神への対策は出来ていると! それよりも自分のメルフィー達を心配した方が良い。その攻撃力でインペリオン・マグナムに攻撃すれば、ライフは一気にゼロになるぞ」
だが、《バトルマニア》はバトルフェイズに突入させる効果は持っていない。タニアはメインフェイズを終わらせてから、バトルフェイズをスキップするという選択肢もあった。
しかし、そうなれば逃げたと思われる。タニアの性格的にも心情的にも選べない選択肢だ。それに、自分の心境抜きにしても、バトルフェイズをスキップされて喜ぶのは相手の方だろう。
「私は永続魔法、《メルフィーのかくれんぼ》を発動! 自分フィールドの獣族モンスターは、それぞれ一ターンに一度だけ効果では破壊されなくなる」
チラッと、タニアが探るような視線を向けてくる。インペリオン・マグナムの無効効果を使ってくるか確かめているのだ。
正直、三沢も使うのを迷っている。
これがメルフィーだけなら使わなかったが、獣族全体が対象となると、クシルも効果破壊耐性が着くということだ。ただでさえ、戦闘では倒しにくいモンスターに効果破壊耐性も付けば、まさに鬼に金棒と言っていい。
だが、それでも三沢が動かないのは、先程のターンでタニアが口にした「いや、残念ながら、ヴァレリフォーンにはまだ仕事があるのでね」という言葉のせいだった。あの言葉には確信めいた何かがあった。タニアはまだ何かを狙っている。
「ふむ。では、《森のメルフィーズ》の効果を発動! オーバーレイユニットを一つ使い、デッキから『メルフィー』カードを手札に加える。私は《メルフィー・ポニィ》を手札に!」
先程以上に、インペリオン・マグナムの効果を使いたくなった。
このサーチ効果も強力だが、《森のメルフィーズ》には、自身以外のメルフィーモンスターが手札に戻った場合、相手フィールドの表側表示モンスター一体の攻撃と効果を封じる効果がある。
まだ発動条件を満たしてはいないが、もしまた使われたら今度はインペリオン・マグナムの動きを封じ込められかねない。しかし、それでも三沢は動かなかった。
「二の矢も駄目か。では、三の矢だ。《森の聖獣ヴァレリフォーン》の効果発動! 一ターンに一度、手札を一枚捨て、《森の聖獣ヴァレリフォーン》以外の、レベル2以下の獣族モンスター一体を墓地から表側攻撃表示、又は裏側守備表示で特殊召喚する! 私が選ぶのは《森の聖獣カラントーサ》!」
「インペリオン・マグナムの効果発動! 一ターンに一度、相手がモンスターの効果・魔法・罠カードを発動した時、その発動を無効にして破壊する!」
これはスルー出来なかった。もし、効果を許せば、インペリオン・マグナムが破壊されかねない。
正直、使わされたという気持ちはある。その証拠に、タニアはこれで自由に動けると言わんばかりの表情をしていた。
「永続魔法、《メルフィーのかくれんぼ》の効果で、ヴァレリフォーンは破壊を免れる」
「だが、効果は無効だ」
「ふっ、これくらいなら安いものさ。私は《森のメルフィーズ》と《森の聖獣ヴァレリフォーン》をリリースし、《百獣王ベヒーモス》をアドバンス召喚!」
《百獣王ベヒーモス》
効果モンスター
☆7 地属性 獣族
ATK2700 DEF1500 攻撃表示
全身が紫色で紺色の鬣を持った猛獣が現れる。アニマルキングの名の通り、強靭な角と屈強な体を持っていた。
「ベヒーモスの効果! このカードがアドバンス召喚に成功した時、リリースしたモンスターの数だけ墓地の獣族モンスターを手札に加える! 私は《メルフィー・パピィ》と《メルフィー・ワラビィ》を回収」
「くっ、強力モンスターを呼んだ上に、墓地のメルフィーまでも回収してきたか……!」
「おっと、モンスターが減ったことで《ファイティング・スピリッツ》の数値も変化するんだったな。済まない、忘れていたよ」
《超電導戦機インペリオン・マグナム》 ATK4900→4600
「さらに私は《メルフィーのかくれんぼ》の二つ目の効果を発動! 自分の墓地の獣族三体をデッキに戻してカードを一枚ドローする!」
墓地から、《森のメルフィーズ》、《メルフィー・フェニィ》、《メルフィー・キャシィ》がデッキに戻り、新たな手札となっていく。
「私は魔法カード、《野生解放》を発動! フィールド上の獣族、獣戦士モンスター一体の攻撃力はそのモンスターの守備力分アップする! 《百獣王ベヒーモス》の攻撃力をアップさせる!」
《百獣王ベヒーモス》 ATK2700→4200
「だが、《野生解放》は使用したターンのエンドフェイズにモンスターが破壊されるデメリットも――ッ!」
「気付いたようだな。そう、私の獣族モンスターは《メルフィーのかくれんぼ》の効果で一度だけ効果で破壊されない!」
つまり、デメリットがないただの強化カードということだ。亮で例えれば、《パワー・ボンド》のライフポイントダメージがない版と言えばその強さもわかるだろう。効果は若干違うが、強さは似たようなものだった。
「とどめに永続魔法、《一族の結束》を発動! 自分の墓地のモンスターの元々の種族が同じ場合、自分フィールドのその種族のモンスターの攻撃力は800ポイントアップする!」
当然、タニアの墓地もフィールドも全てが獣族。よって、攻撃力は800ポイントアップする。
《百獣王ベヒーモス》 ATK4200→5000
《地縛神Cusilu》 ATK2800→3600
「バトルと行こう! 私は《百獣王ベヒーモス》で、《超電導戦機インペリオン・マグナム》を攻撃!!」
《百獣王ベヒーモス》 ATK5000 VS《超電導戦機インペリオン・マグナム》 ATK4600
強化によって攻撃力が上回ったベヒーモスが、インペリオン・マグナムに襲い掛かっていく。
「罠カード、《攻撃の無敵化》! バトルフェイズにのみ発動でき、二つの効果から一つを選択する! 一つ、フィールド上のモンスター一体はこのバトルフェイズ中、戦闘及びカード効果では破壊されない。一つ、このバトルフェイズ中、自分への戦闘ダメージはゼロになる!」
「で、どちらを選ぶ?」
「俺はこのバトルフェイズ中、戦闘ダメージをゼロにする効果を選択! さらに、《ファイティング・スピリッツ》の効果で、モンスターが戦闘破壊される場合、代わりにこのカードを破壊することで破壊を無効にできる! ぐっ!!」
《超電導戦機インペリオン・マグナム》 ATK4900→4000
罠カードの効果によって、何とかダメージを防ぎ、装備カードの効果で破壊を免れる。
「これで地縛神のダイレクトアタックも無意味ということか」
「そうだ!」
「だが、《バトルマニア》の効果で、攻撃はしなくてはいけない。私は《地縛神 Cusilu》で《超電導戦機インペリオン・マグナム》に攻撃!」
「なっ、わざわざ攻撃力が上のインペリオン・マグナムに攻撃してくるだと!?」
《地縛神Cusilu》 ATK3600 VS《超電導戦機インペリオン・マグナム》 ATK4000
「この瞬間、手札の速攻魔法、《ライバル・アライバル》を発動! 自分のターンのバトルフェイズに召喚が出来る! 出でよ、《メルフィー・パピィ》!」
《メルフィー・パピィ》
効果モンスター
☆2 地属性 獣族
ATK300 DEF100 攻撃表示
再びパピィが現れるが、場違いのフィールドに出て来て慌てふためいていた。
「わざわざモンスターを増やして地縛神を自爆特攻させるということは――」
「《地縛神Cusilu》の効果発動! フィールドのこのカードが戦闘で破壊される場合、代わりにこのカード以外の自分フィールド上のモンスター一体をリリースして相手のライフを半分にする!」
「なっ、ライフを半分にするだって!?」
「私はパピィをリリースして、《地縛神Cusilu》の破壊を無効にし、お前のライフを半分にする!」
「だが、インペリオン・マグナムとの攻撃力の差だけ、お前もダメージを受ける!」
パピィを身代わりに、何とかクシルは命を繋いだ。その反撃に、三沢は大自然の怒りをその身に受ける。
「ぐわあああああぁぁぁっ!」
「ぬぅっ! なかなか……!」
三沢 LP1500→750
タニア LP3800→3400
ダメージを受けたタニアもかなりの痛みを感じたはずだが、それでも膝を地につけることはしない。
逆に地縛神の効果をモロに受けた三沢は、思わずまた片膝を付いてしまった。
「ぐっ……! これが、地縛神の……!」
十代やカイザーが回復に時間をかける理由をようやく実感する。しかし、タニアの視線を受け、三沢はすぐに立ち上がった。
「俺は、倒れん!!」
「その意気や良し! 私はリバースカードを一枚伏せて、エンドフェイズ! 手札の《メルフィー・ワラビィ》と《メルフィー・ポニィ》を特殊召喚する!」
《メルフィー・ワラビィ》
効果モンスター
☆2 地属性 獣族
ATK0 DEF400 守備表示
《メルフィー・ポニィ》
効果モンスター
☆2 地属性 獣族
ATK400 DEF0 守備表示
ワラビィと一緒に、全身が赤く胸に青いハートマークをつけたもこもこのポニーが現れる。鬣も、ハートマークと同じ青色をしていた。
「永続魔法、《一点着地》の効果で、カードを一枚ドロー! また《野生解放》の破壊効果が発動するが、私の獣族モンスターは《メルフィーのかくれんぼ》で一度だけ破壊されない! ターンエンド!!」
タニアの使った《野生解放》はエンドフェイズ時に対象モンスターを破壊するが、効果自体は永続の為、攻撃力は守備力分上昇したままだった。
タニア 手札2枚 LP3400
フィールド クシル、ベヒーモス、ワラビィ、ポニィ
魔法・罠 《地縛地上絵》、《一点着地》、かくれんぼ、《一族の結束》、リバース1枚
VS
三沢 手札1枚 LP1500
フィールド インペリオン・マグナム
魔法・罠 なし
「俺の、ターン! 魔法カード、《強欲な壺》! デッキからカードを二枚ドローする!」
一気に手札を増やしていく。おそらく、やせ我慢しているが、地縛神の効果で受けたダメージがかなり厳しいのだろう。ここで勝負をかけるつもりのようだった。
「バトル! インペリオン・マグナムでベヒーモスに攻撃! インペリアル・キャノン!!」
攻撃力が下のインペリオン・マグナムが肩の砲撃をベヒーモスに向けていく。
《超電導戦機インペリオン・マグナム》 ATK4000 VS《百獣王ベヒーモス》 ATK5000
「自爆特攻――ではないな!?」
「ああ、俺もお前と同じ効果のカードを使わせてもらう! ダメージステップに速攻魔法、《コンセントレイト》! 自分フィールドのモンスター一体の攻撃力はターン終了時までその守備力分アップする!」
インペリオン・マグナムの守備力は4000。つまり、攻撃力は二倍となる。
《超電導戦機インペリオン・マグナム》 ATK4000→8000 VS《百獣王ベヒーモス》 ATK5000
一気に攻撃力が上昇し、ベヒーモスを粉砕していく。もし、地縛神の攻撃対象にならない効果がなければ、タニアはこれで負けていた。
「ぐぅっ、ぬぅん!!」
タニア LP3400→400
まさか、一気に3000もダメージを受けるとは思っていなかったようで、タニアも苦し気な表情をしている。だが、意地でも倒れることはしない。
「だが、これで終わりだ! メインフェイズ2で永続魔法、《マスドライバー》を発動! 自分フィールド上のモンスター一体をリリースする度に、相手に400ポイントのダメージを与える! 俺はインペリオン・マグナムをリリースして、タニア! お前に400ポイントのダメージを与える!」
これも遊矢の世界では禁止になっているカードだった。特殊召喚が容易なデッキだとモンスター10体くらい簡単にリリース出来てしまうからだ。
しかし、当然、この世界では使用できる。三沢はこのカードが切り札のようで、タニアの残りライフを削りにいった。
「見事だ、三沢大地! だが、ここまでだ! チェーンして罠カード、《破壊輪》! フィールド上のお表側表示モンスター――インペリオン・マグナムを破壊して、お互いにその攻撃力分のダメージを受ける!」
入学試験で三沢も使っていたエラッタ前の最強の《破壊輪》だった。当然、エラッタ前は禁止カードだが、この世界では制限カードで止まっている。
「くっ、相打ち狙いか!?」
「まさか! 私は手札の可愛い可愛い《ハネワタ》を捨てることで、このターン私が受ける効果ダメージをゼロにする!」
十代のデッキにも入っている優秀なモンスターだった。
「《ハネワタ》だって!?」
「ふっ、効果ダメージに対するちょっとした保険だ。《一族の結束》の効果は消えてしまうが、結果役に立った!」
「なら、役立たずにしてやる! 手札から速攻魔法、《墓穴の指名者》を発動! 相手の墓地のモンスター一体を除外し、次のターン終了時まで、この効果で除外したモンスター及びそのモンスターと元々のカード名が同じモンスターの効果を無効化する!」
タニアが使った《ハネワタ》はコストで手札から《ハネワタ》自身を捨てることで効果を発動する。
つまり、効果が発動する前に墓地に居るので、《墓穴の指名者》で除外されると効果が封じられるのだ。最近は墓地や手札で発動するカードが増えてきたので、その対策に入れたカードだった。
「なっ! これではお互いにダメージを!?」
「どうせ死ぬなら道連れだ!!」
これにより、《破壊輪》のダメージはお互いにいく。インペリオン・マグナムが爆散し、お互いのプレイヤーはその攻撃力8000分のダメージを受けた。
「「ぐわああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」」
三沢 LP750→0
タニア LP400→0
闇のゲームで8000のダメージは、プレイヤーのライフ二つ分だ。当然、その痛みや衝撃は大きく、三沢もタニアも吹き飛んで体をコロシアムの壁に強く叩きつけられた。
三沢は全身ボロボロで意識を失い、力なく倒れている。また流石のタニアもこのレベルのダメージを受けては立てないようで、何とか意識こそ失ってはいないものの、壁を背に座り込んでいた。
「「「三沢!!」」」
「「「三沢君!」」」
デュエルは引き分けとなり、ソリッドビジョンも解除されていく。同時に、倒れた三沢へと駆け寄った。
どうやら、引き分けも敗北と同じ扱いのようで、三沢の七精門の鍵は消えてしまっている。ただ、タニアもこのダメージではしばらくは戦うことは出来ないだろう。結果的にセブンスターズの一人を打ち取ったようなものだった。
「……まさか、この私がデュエルで立てなくなるようなことがあるとはな。見事、三沢……っち」
三沢も怪我がかなり酷いが、タニアも負けず劣らずのダメージである。自分と相打った三沢を称えながら意識を失っていく。
とはいえ、いくら敵でもこのまま放置しておく訳にもいかないので、タニアのペットと思われる虎にも手伝って貰って、三沢とタニアを最近御用達の保健室へと連れて行くことにした。
新たに怪我人が二人増えたことで、保険医の鮎川先生に説教という名の巨大な雷を落とされることになるのだが、それはまた別の話。
原作との変化点。
・#36『三沢っちVSアマゾネス! ムコとりデュエル』より、タニアがガチ戦用の三つ目のデッキを出してきた。
ちょっと原作のセブンスターズが自分勝手すぎるので、仕事をさせるためにこちらでデッキを用意した。地縛神との相性を考えてメルフィーをチョイス。タニアとの画角の違いで見学していた十代は大爆笑していた。ただ、強いゾ! 舐めてると死ぬ!
・アムナエル暗躍中。
原作と微妙に違い、セブンスターズへの橋渡しは全部アムナエルがやっている独自設定。
・三沢が地縛神ようにデッキを調整してきた。
ダメージを防ぐカードと、カード効果を無効にする効果を多めに入れていたが、後者はほぼ引くことが出来なかった。ドロー運がない。
・《朔夜しぐれ》はアイドルカード。
長くなるのでカットしたが、原作だとこの話はアイドルカードについて語られている。三沢は実用性と効果を加味して、このカードをチョイスした。
・結果相打ちになった。
三沢が勝って終わりも考えたが、タニアが三沢にべったりになりそうだったので、どちらでもない相打ちをチョイス。エラッタ前の《破壊輪》にご登場願った。タニアと引き分けたことで、#037『肉弾デュエル! アマゾネスのデスリング』はカットされた。
・三沢とタニアは本土の病院に救急搬送された。
次話の冒頭でも書くつもりだが、ライフ8000のダメージは大きすぎるのでしばらく三沢はリタイア。