榊遊矢のGX次元漂流記   作:おこむね

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#004 『エンタメデュエリスト榊遊矢はお休みだ』

 遊矢がこの世界に来てから約半年。まだ元の世界に戻る方法は見つかっていなかった。

 元々、この世界の技術力はスタンダード次元より低い。海馬も、いろいろな伝手を使って、遊矢の世界のことを探してくれてはいるようだが、未だにいい結果は出ていなかった。

 次元を超えるだけの技術がない以上、仕方ないと言えば仕方ないことなのだが、海馬としては約束をしてそれを守れないというのが気に入らないのか、リアルソリッドビジョンの研究と並行して、次元移動の研究にもかなりの力を入れている。

 海馬曰く、そう遠くない内に成果を出すと言っていたので、遊矢はそれを信じて待つことにした。

 楽観視しているように見えるかもしれないが、実は打算もある。これだけの時間が経った以上、スタンダード次元でも遊矢がいなくなったことに気づいているはずだ。赤馬零児なら、遊矢のデュエルディスクを通してこの次元の場所を特定するのもそう難しいことではないだろう。

 他に手段がない以上、今の遊矢にできるのは待つことだけだった。しかし、ただ遊んで待つなんて無責任なことをするつもりもない。

 働かざる者食うべからず――遊矢は、海馬の仕事を手伝いながら、リアルソリッドビジョンの開発や、ペガサス・J・クロフォード氏がいるI2社で、ペンデュラムやエクシーズ、シンクロといった、この世界にないカードを普及させるための手伝いをしていた。

 

 ――そして、現在。

 

「えっ、デュエルアカデミアに通うんですか、俺が?」

 

 遊矢は海馬の命令で、デュエルアカデミアの生徒にされそうになっていた。

 

「そうだ。貴様は入学試験で、雑魚とはいえ実技試験の最高責任者をワンターンキルしたのだ。入学の資格は十分ある」

「いや、でも俺は……」

 

 言葉を濁す遊矢。

 確かに年齢的には高校に通う年だが、自分はこの世界の人間ではない。生活こそ、海馬の助けもあって何とかなっているものの、とてもじゃないが学校に通いたいとは思わなかった。

 

「バカめ、よく考えてみろ。貴様があのデュエルでペンデュラムやエクシーズを使ったのは、アカデミアの生徒の殆どが見ているのだ。このままペガサスが新システムとして、それらの召喚法を導入するにしろ、それらの召喚法を宣伝するテスターがいた方が手っ取り早い」

「つまり、俺は宣伝係ってことですか?」

「簡単に言えば、そういうことだ」

 

 半年前、仕事で海馬の元を訪れたペガサスに、リアルソリッドビジョンや、ペンデュラム、エクシーズ、シンクロの研究をしている所を見られ、彼が新カードの開発を即決したのは記憶に新しい。

 海馬も、いずれはデュエルモンスターズの生みの親であるペガサスの元へ行くつもりだったらしいが、想像していたよりも早く遊矢の存在がバレてしまったので、仕方なくそのまま事情を説明し、ペガサスをこちら側へ引き込んだ。

 遊矢の世界のカードはペガサスのインスピレーションを強くくすぐったようで、ペガサスは遊矢の助けになることを約束する代わりに、カード開発の手伝いをするように依頼し、遊矢はこの半年間、KCとI2社を行ったり来たりしていた。

 そのおかげか、エクシーズ、シンクロは何とか形になり、新システムとして少しずつ普及していくことになったのだが、ペンデュラムは今の技術で再現するのは難しいようで、まだ環境へ投入するには時間がかかるらしい。

 だが、ペンデュラムを抜きにしても、遊矢はこの世界で一番、新システムに精通しているのは間違いなかった。だからこそ、海馬は遊矢をテスターとして、デュエルアカデミアに通わせようとしている。

 いろいろと頭の固い者が多いプロよりも、これから成長する余地のある学生達の方が新システムに順応しやすいという狙いもあった。

 

「貴様のおかげで、デュエルモンスターズは新たな時代へ突入する。だからこそ、それを導く者が必要だ」

 

 新システムの導入により、ルールも少し変わった。

 先攻ドローはそのままだが、デッキ上限が40枚から60枚の間に、融合デッキはEXデッキと名称が変わり、上限が15枚に設定されている。また、表側守備表示の概念はなくなり、生贄もリリースに、生贄召喚もアドバンス召喚に名称が変わり、遊矢の世界のルールに少し近づいた。

 

 とはいえ、ルールが大幅に変更されれば、対応するのもそう簡単なことではない。

 さらに、エクシーズやシンクロまで加われば、文面で説明するよりも、見本がいた方が普及し易かった。海馬の言う、導く者というのがそれだ。

 

「研究もひと段落ついた。しばらくは休暇だ。デュエルアカデミアでゆっくりしてこい」

「社長……」

「勿論、新システムの宣伝も忘れるなよ。それが貴様の仕事だ」

 

 結局は仕事なんですね――と、苦笑いしながらも、遊矢はデュエルアカデミアに通うことを了承した。

 新システムのテスターとして通う以上、仕事は真面目にする必要がある。しばらくエンタメプロデュエリスト榊遊矢はお休みだ。海馬の指示通り、せっせと普及に勤しむためにも改めて気合を入れることにした。

 

 

 

◇◆

 

 

 

 そして、入学初日。赤い制服を身に纏った遊矢は、デュエルアカデミアの入学式に参加していた。

 通常の学校では入学式と言えば4月だが、デュエルアカデミアは9月から始まる。そのおかげもあって、試験の結果を受けてから入学までにかなりの時間があった。

 また、デュエルアカデミアには三つのクラスがあり、上からオベリスクブルー、ラーイエロー、オシリスレッドと別れている。遊矢の実力なら特例でオベリスクブルーにもなれたのだが、制服を発注する際、色の好みで制服を選んだため、オシリスレッドになってしまったのだ。

 海馬には呆れられてしまったが、別にテスターとして学校に通うなら、クラスはどこでも関係ない。遊矢の実力ならすぐに上のクラスに上がるだろうと考えた結果、「そのままオシリスレッドでいい」と告げられ、遊矢はデュエルアカデミアへやってきた。

 

「遊矢!」

 

 そんなこんなで入学式終了後、遊矢がオシリスレッドの寮へ向かっていると、入試の時に一緒だった十代と翔が、同じオシリスレッドの制服を身に纏い、遊矢の後を追いかけてくる。

 

「十代、久しぶり! えっと、そっちは……?」

「僕は丸藤翔。よろしくね、遊矢君」

「よろしく」

「遊矢もレッドだったんだな」

「意外っす。遊矢君の実力なら、絶対イエローだと思ったのに」

「まぁ、いろいろあってね」

 

 制服の色でクラスを決めたとは言い難かった。

 

「そうだ、遊矢。ここで会ったのも何かの縁だ、デュエルしようぜ!」

 

 何の縁だと思いながら、唐突なデュエルのお誘いに呆然とする遊矢だったが、次第に「確か入学式でもこんな感じだったな」と、十代の性格を思い出してきた。

 

「ちなみに、なんでいきなりデュエル?」

「だってお前、新システムのテスターなんだろ? まだシンクロやエクシーズのカードは販売されてないんだし、見るにはお前とデュエルするしかないじゃん」

 

 遊矢が新システムのテスターだということは、入学式の時に校長の手によってみんなに伝えられている。

 だが、まさかこんなにストレートにデュエルを誘われるとは思わなかったのか、遊矢も思わず苦笑いしていた。

 

「入学試験の時に見たモンスター、また見せてくれよ!」

 

 どうやら、十代はダーク・リベリオンに一目ぼれしたらしい。これも普及活動の一環だと思えば、別段、断る理由もなかった。

 

「オッケー、じゃあデュエルしようか」

「よっしゃあ! サンキュー遊矢!」

 

 十代が笑顔でデュエルディスクを構えるのを見て、遊矢もデュエルディスクを構える。

 この世界に存在しない遊矢のデュエルディスクを見て、「やっぱり、格好いいぜ」と楽しそうな笑みを浮かべていた。

 

「「デュエル!」」

 

 デッキからカードを五枚引く。デュエルディスクに表示された先攻プレイヤーは遊矢だった。

 

「俺の先攻、ドロー!」

 

 ようやく、この世界のデュエルにも慣れてきた遊矢。

 それでも、やはり先攻のドローはアドバンテージがありすぎると思うが、この世界のルールで有りな以上、プレイヤーの遊矢はそれに従うしかない。

 六枚になった手札を確認する。

 たった一枚多いだけだが、この一枚がデュエリストにとって、どれだけのアドバンテージを与えるか。元の世界ならまず考えられないことだが、今は有難く利用させて貰う事にした。

 

「俺は、スケール1の《EMレ・ベルマン》とスケール8の《EMオッドアイズ・ユニコーン》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「おお! 早速来るか、ペンデュラム!」

 

 毎度お馴染み、二つの光の柱が遊矢のフィールドの両端に出現する。

 ペンデュラムは、シンクロやエクシーズと違い、この世界の技術では再現できなかった。だから、この世界でペンデュラムを使えるのは遊矢だけ。

 本来なら、ペンデュラムは使うべきではないのかもしれないが、遊矢にとってペンデュラムは切っても切り離せない存在であり、ペンデュラムがあるからこそ今の遊矢がある。それは、実際に遊矢とデュエルをした海馬も理解していた。

 問題だったのは、入学試験のデュエルでペンデュラムは大勢に見られたことだ。どんなに情報を伏せても、人の口には戸が立てられない。下手に隠すよりは、遊矢にしか使えない特別なカードとして公表した方が遊矢にとってもいいだろうということで、入学式でテスターとして紹介された時に、ペンデュラムの情報もまた一般の生徒達にも公開された。

 

「説明はいるか?」

「えっと、一ターンに一度、レベル2から7までのモンスターが同時に召喚されるんだっけ?」

「そう、今回はペンデュラムのスケールが1から8だからそれで合ってる。これが2から5なら、3と4。3から7なら、4から6までのモンスターが同時に召喚可能だね」

「あくまでペンデュラムの数字より少ないレベルのモンスターが呼べるってことか」

「それでも、上級モンスターまで簡単に特殊召喚できるのは凄いっす……」

「後は、そうだな。ペンデュラムゾーンに置かれたペンデュラムモンスターは通常のモンスター効果ではなく、ペンデュラム効果っていう別の効果を発動できるんだ」

「「ペンデュラム効果?」」

「ペンデュラムゾーンに置かれたペンデュラムモンスターは、魔法カード扱いになるんだ。だから、ペンデュラムゾーンでしか発動できない効果、モンスターゾーンでしか発動できない効果の二つを持っている場合が多い」

「えっと、悪い遊矢。ちょっと難しい……」

「例えば、レ・ベルマンのペンデュラム効果は、ペンデュラム召喚された全てのモンスターのレベルを一つ上げるというものなんだ。でも、普通のモンスター効果は、一ターンに一度、1~5までの任意のレベルを宣言し、宣言したレベルだけ自身のレベルを下げ、自身以外の『EM』モンスターのレベルを宣言した分上げるというもので、ペンデュラム効果はペンデュラムゾーンで、モンスター効果はモンスターゾーンでしか発動しない」

「あ、少しわかってきたっす……」

「つまり、二種類の効果を持っているってことでOK?」

「そういうこと!」

 

 十代と翔の理解が何とか追いついた所で、遊矢もデュエルを再開させていく。

 

「――揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚!」

 

 二本の光の柱の間から、モンスターが光となってフィールドに降り立つ。

 

「現れろ、二色の眼を持つ龍、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

 

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆7 闇属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 遊矢の相棒とでも言うべきドラゴンが現れた。

 

「クロノス先生を倒したモンスターか!」

「先攻は最初のターン、攻撃出来ない。カードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

 

 遊矢 手札2枚 LP4000

 フィールド オッドアイズ

 魔法・罠 リバース1枚

 ペンデュラム レ・ベルマン、オッドアイズ・ユニコーン

 

 VS

 

 十代 手札5枚 LP4000

 フィールド なし

 魔法・罠 なし

 

 

「俺のターンだ!」

 

 十代のデッキは、『E・HERO』を主軸とした融合デッキ。

 しかし、融合は強力な召喚法だが、一部の例外を除き、《融合》の魔法カードが必要なこと、手札の消費が多いなど、いろいろな弱点もある。

 おまけに、この世界で融合はあまりメジャーな召喚法という訳ではないのか、つい最近までサポートカードもあまり存在しなかった。そのため、《融合》をサーチすることすら難しく、キーカードである《融合》を手札に加えるのは、デュエリストのドロー運に頼るしかないということもあり、融合はかなり難易度が高い召喚法という認識になっている。

 

「魔法カード、《融合》発動! 手札の《E・HEROフェザーマン》と《E・HEROバーストレディ》を手札融合! 現れろ、マイフェイバリットヒーロー、《E・HEROフレイム・ウイングマン》!!」

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》

 効果モンスター 融合

 ☆6 風属性 戦士族

 ATK2100 DEF1200 攻撃表示

 

 にも関わらず、十代はあっさりと手札融合を決めてきた。風と炎のヒーローが合わさったニューヒーローが腕を組んで仁王立ちしている。

 

「早速、フレイム・ウイングマンか」

「へへっ、さらにフィールド魔法、《摩天楼―スカイスクレイパー―》を発動! このカードの効果で、『E・HERO』が攻撃する時、そのモンスターの攻撃力より相手モンスターの攻撃力が高い場合、そのバトルのダメージ計算時のみ、攻撃モンスターの攻撃力を1000ポイントアップするぜ!」

 

 フィールドがビル群に埋め尽くされ、フレイム・ウイングマンがその中の塔の先端に降り立って行く。

 これで、フレイム・ウイングマンでオッドアイズを破壊することが出来るようになり、十代は意気揚々とバトルフェイズへと突入してきた。

 

「バトルだ! フレイム・ウイングマンで、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を攻撃! スカイスクレイパー・シュート!!」

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2100 VS《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》 ATK2500

 

 ビルを足場に、フレイム・ウイングマンが真っすぐオッドアイズへと迫っていく。

 

「おっと、その攻撃は通せないな! 速攻魔法、《カバーカーニバル》発動!」

「《カバーカーニバル》!?」

「このカードの効果で、自分フィールドに《カバートークン》3体を特殊召喚する! そして、このターン、相手はこのトークン以外のモンスターを攻撃対象にできない!」

 

 《カバートークン》

 トークン

 ☆1 地属性 獣族

 ATK0 DEF0 守備表示×3

 

 オッドアイズを狙っていたフレイム・ウイングマンの間に、サンバの衣装を身に纏った三体のカバが乱入し、踊りを踊っている。

 いきなりアホみたいなカバが現れて面食らっているのか、フレイム・ウイングマンは困ったように動きを止め、プレイヤーである十代の方へ振り返った。

 

「くっ、ならカバートークンに攻撃だ!」

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2100 VS《カバートークン》 DEF0

 

 三体の内、一体が狙われ、残りの二体がオッドアイズの後ろへと避難する。

 狙われた一体は慌てたように逃げ出すが、無慈悲にもフレイム・ウイングマンの攻撃によりその身を散らしてしまった。

 仲間の犠牲にむせび泣くカバートークン達。

 正義の味方であるはずのフレイム・ウイングマンは、その姿を見て微妙な表情を浮かべていた。それを見て、十代も何となく後味の悪そうな顔をしている。

 

「俺はクレイマンを守備表……じゃなかった。モンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

 十代 手札0枚 LP4000

 フィールド フレイム・ウイングマン、セット1体

 魔法・罠 スカイスクレイパー、リバース1枚

 

 VS

 

 遊矢 手札2枚 LP4000

 フィールド オッドアイズ、《カバートークン》×2

 魔法・罠 なし

 ペンデュラム レ・ベルマン、オッドアイズ・ユニコーン

 

 

 ルールの変更が決まってからまだ日にちがそう経っていないこともあって、十代も新ルールに慣れるのに苦労しているようだ。

 たまにミスをしそうになる場面がちらほら見られる。しかし、そこは慣れということで、遊矢も文句をつけるつもりはなかった。

 

「俺のターン!」

 

 早々に融合を決めてきたのは予想外だったが、やはり融合を主体とするデッキは手札消費が激しい。

 十代の手札はゼロ。これで手札誘発カードの心配はなくなり、墓地発動のカードもないことはわかっている。十代のリバース次第ではあるが、上手くいけばこのターンで勝負を決められそうだった。

 

「俺はセッティング済みのペンデュラムスケールでペンデュラム召喚! 再び揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク! ペンデュラム召喚!!」

 

 二本の柱の間から、二つの光が新たにフィールドに降り立つ。

 

「現れろ、俺のモンスター達! まずはレベル2《EMソード・フィッシュ》、そしてレベル4《EMペンデュラム・マジシャン》!!」

 

 《EMソード・フィッシュ》

 効果モンスター

 ☆2 水属性 魚族

 ATK600 DEF600 守備表示

 

 《EMペンデュラム・マジシャン》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆4 地属性 魔法使い族

 ATK1500 DEF800 攻撃表示

 

 全身が剣のような形のコミカルな魚と、赤いシルクハットを被り手にペンデュラムを持った魔術師が光の中から飛び出してくる。

 

「《EMペンデュラム・マジシャン》の効果! このカードが特殊召喚に成功した時、自分フィールドのカードを二枚まで破壊し、その数だけデッキからペンデュラム・マジシャン以外の『EM』モンスターを手札に加える! 俺はカバートークンを二体破壊し、デッキから《EMドクロバット・ジョーカー》と《EMオッドアイズ・シンクロン》を手札に!」

 

 残りの二体のカバートークンが破壊され、十代とフレイム・ウイングマンが何とも言えない微妙な表情を浮かべる。

 

「さらに、《EMソード・フィッシュ》の効果発動! このカードが召喚・特殊召喚した時、相手フィールド全てのモンスターの攻撃力、守備力を600ポイントダウンする!」

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK2100→1500 DEF1200→600

 

 さらに、効果でステータスが下げられていく。

 ステータスが下がった影響か、少し体が縮んでいくフレイム・ウイングマン。

 

「フレイム・ウイングマン!?」

 

 小さくなるフレイム・ウイングマンに驚く十代だが、対する遊矢はこれで全ての準備が整ったとばかりに、笑顔で手札のモンスターをデュエルディスクに差し込んだ。

 

「俺は《EMドクロバット・ジョーカー》を通常召喚!」

 

 紫色のシルクハットを被り、目を黒いマスクで隠したコミカルな奇術師らしきモンスターが遊矢のフィールドに現れる。

 

 《EMドクロバット・ジョーカー》

 効果モンスター ペンデュラム

 ☆4 闇属性 魔法使い族

 ATK1800 DEF100 攻撃表示

 

「さらにドクロバット・ジョーカーの効果発動! このカードが召喚に成功した時、デッキから『EM』、『オッドアイズ』モンスター、『魔術師』ペンデュラムモンスターのいずれか一体を手札に加える! 《星読みの魔術師》を手札に!」

 

 ペンデュラム・マジシャンからドクロバット・ジョーカーの流れるサーチ。

 遊矢の手札は減っていないが、フィールドはモンスターが四体揃い、その内レベル4のモンスターが二体いた。

 

「来るか、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

 カバの事件から気を取り直したように、十代が遊矢の挙動に注目していく。

 ペンデュラム召喚からのエクシーズ召喚――入学試験のデュエルでクロノスをワンキルしたのは、まだ十代の記憶に新しかった。

 

「ああ、見せてやる! お楽しみはこれからだ! 俺は、レベル4の《EMペンデュラム・マジシャン》と《EMドクロバット・ジョーカー》でオーバーレイ! 漆黒の闇より、愚鈍なる力に抗う反逆の牙! 今、降臨せよ!」

 

 二体のモンスターでオーバーレイネットワークが構築され、モンスターがエクストラデッキから特殊召喚される。

 

「――エクシーズ召喚! 現れろ、ランク4《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》!」

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》

 効果モンスター エクシーズ

 ランク4 闇属性 ドラゴン族

 ATK2500 DEF2000 攻撃表示

 

 漆黒のドラゴンが現れ、十代に向かって咆哮する。

 普通ならその迫力にビビる所だが、十代はキラキラした目でダーク・リベリオンを見つめていた。

 

「やっぱり恰好いいぜ!」

「十代は、エクシーズモンスターのことはよく知らないよね?」

「ああ」

「じゃあ、簡単に説明するよ。エクシーズモンスターは複数の同じレベルのモンスターをオーバーレイユニットに変えることで、エクストラデッキから特殊召喚できるモンスターなんだ。エクシーズモンスターにはレベルがなくて、代わりにランクという概念が存在する」

「レベルを持たないモンスターっすか?」

 

 それまで見ているだけだった翔も、不思議に思ったのか、話に加わる。

 

「そう、だからグラヴィティバインドやB地区のようなレベルに関係する効果は受けない」

「ダーク・リベリオンのランクが4なのは、レベル4のモンスターをオーバーレイユニットにしたからっすか?」

「そう。だから、レベル5のモンスターでエクシーズ召喚したらランク5、レベル6ならランク6になる」

「オーバーレイユニットっていうのは何なんだ?」

「オーバーレイユニットは、素材のモンスターが変質したもので、エクシーズモンスターは一部の例外を除いて、効果を発動する時、オーバーレイユニットを墓地に送らないと効果を発動できないんだ」

 

 その説明を聞き、クロノスとのデュエルでダーク・リベリオンがオーバーレイユニットを消費して、攻撃力を吸収したのを思い出した。

 

「つまり、オーバーレイユニットを使わないと、エクシーズモンスターは効果を発動できないのか」

「基本的にはね。一部のエクシーズモンスターは、オーバーレイユニットを使わなくても効果を発動できるよ」

「でも、ダーク・リベリオンはオーバーレイユニットを使わないと効果を発動できない」

「その通り!」

 

 大体のニュアンスは理解できたようで、二人はうんうん頷いている。

 とりあえず、最低限テスターとしての役割を果たしたかな――と思い、遊矢はデュエルを続行することにした。

 

「デュエル続行だ! 俺は《EMソード・フィッシュ》の更なる効果発動! このカードがモンスターゾーンに存在し、モンスターが特殊召喚された時、相手フィールド全てのモンスターの攻撃力、守備力を600ポイントダウンする!」

「またかよ!?」

 

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK1500→900 DEF600→0

 

 再びソード・フィッシュの効果でステータスが下がり、フレイム・ウイングマンの体が、ますます縮んでいく。

 

「そして、ダーク・リベリオンの効果発動! オーバーレイユニットを二つ使い、相手モンスター一体の攻撃力を半分にし、その数値分、ダーク・リベリオンの攻撃力をアップする! トリーズン・ディスチャージ!!」

 

 オーバーレイユニットを全消費し、宝玉が輝くと同時に、羽根がスライドしていく。紫電の雷が発生して、フレイム・ウイングマンの攻撃力を下げて行った。

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》 ATK2500→2950

 《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK900→450

 

 止めとばかりに、ダーク・リベリオンが攻撃力を下げ終わると、フレイム・ウイングマンは見る影もなく小さくなってしまった。

 

「フレイム・ウイングマンの攻撃力が……」

「バトルだ! ダーク・リベリオンでフレイム・ウイングマンに攻撃! 反逆のライトニングディスオベイ!!」

 

 《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》 ATK2950 VS《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK450

 

 ダーク・リベリオンの効果を受けた以上、確定で2500のダメージを受けることになる。

 また、遊矢のフィールドには他のモンスターも残っており、このまま黙ってモンスターを減らすわけにはいかなかった。

 

「罠発動! 《ヒーローバリア》! 自分フィールド上に『E・HERO』が存在する時、相手モンスターの攻撃を一度だけ無効にする!」

 

 小さくなったフレイム・ウイングマンの前に、大きな盾が現れ、ダーク・リベリオンの攻撃を防いでいく。

 ダメージ2500の直撃を何とか凌ぎ、ホッと一安心する十代だが、対する遊矢はこの瞬間自身の勝利を確信した。

 

「《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》でフレイム・ウイングマンを攻撃! 螺旋のストライクバースト!!」

 

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》 ATK2500 VS《E・HEROフレイム・ウイングマン》 ATK450

 

 螺旋回転した赤い光線が、小さくなったフレイム・ウイングマンに向かっていく。

 だが、これを受けても2050ダメージ。まだ守備モンスターもいるので、続く遊矢の攻撃は受けることが出来る――

 

「この瞬間、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の効果!」

 

 ――そう、十代が考えた瞬間のことだった。

 

「この瞬間に発動する効果!?」

「オッドアイズは、モンスターとの戦闘で与えるダメージを二倍にする! リアクション・フォース!!」

 

 オッドアイズとフレイム・ウイングマンの攻撃力の差は2050。

 倍になればダメージは4100、初期ライフが4000である以上、防御カードなしでこれを凌ぐことは出来なかった。

 

「うわああああああああああああああっ!!」

 

 十代 LP4000→0

 

 デュエルが終了し、ソリッドビジョンが解除される。

 このデュエルは、遊矢が最初の手札で想像していた展開のまま進んだ結果だった。最初の遊矢の手札は、オッドアイズ、レ・ベルマン、オッドアイズ・ユニコーン、ソード・フィッシュ、ペンデュラム・マジシャン、カバーカーニバル。十代の展開次第ではどうなるかわからなかったが、2200以上の攻撃力を持つモンスターが召喚されなかったのを見た時、遊矢には七割方この終わりが見えていた。

 逆に十代は、殆ど初見殺しをくらった感じだ。

 クロノスとの入試デュエルでは、オッドアイズはフィニッシャーになっただけで、効果を発動しなかった。とはいえ、仮に効果を知っていたとしても、リバースカードが《ヒーローバリア》だった以上、十代に防ぐすべはなかったのだが。

 

「ぐああぁぁっ! 負けたー!」

「ほら十代、ガッチャガッチャ」

 

 悔しいという感情を隠すことなく、その場に座り込む十代。そんな十代を見ながら、遊矢は苦笑いで十代の決め台詞を口にしていた。

 

「やっぱ、遊矢は強いぜ。本格的にエクシーズが導入されたら、みんなこれくらい強くなるのかな」

「まぁ、シンクロも同時に導入されるし、環境は間違いなく変わるだろうね。でも、新システムだけじゃなくて、融合や儀式もテコ入れがあるってペガサスさんは言ってたよ」

 

 従来の召喚法にも、大量のサポートを出すと言っていた。

 本格的に全てが導入されるのは、もっと先の話だろうが、シンクロやエクシーズの二強になるという状況にはならないはずだ。

 

「そうか、遊矢君はテスターだから、ペガサス会長とも面識があるんだね」

「ここ半年は、殆ど毎日顔を合わせてたよ。シンクロとエクシーズについても細かい調整とか必要だったし」

「そういえば、シンクロ召喚はまだ見たことないなぁ」

 

 と、呟く十代。その台詞を聞いた瞬間、遊矢は何か嫌な予感がした。

 

「遊矢、もう一回デュエルしようぜ! 今度はシンクロ召喚見せてくれよ!」

「えー」

 

 へこたれないとは、まさにこのことか。

 別にデュエルをすること自体は嫌ではない。だが、どこかで拒否しないと、なし崩し的にこのままずっとデュエルさせられそうな気がした。

 そんな遊矢の考えを読んだように、翔が質問とばかりに遊矢に話しかけてくる。

 

「遊矢君、シンクロ召喚ってどんな召喚法なの?」

 

 いいタイミングと、逃げるように遊矢は翔の質問に答えていく。

 

「シンクロは、チューナーと呼ばれるモンスターとそれ以外のモンスターを墓地へ送ることで、そのレベルを合計したレベルのモンスターをエクストラデッキから特殊召喚するんだ」

「エクストラデッキから特殊召喚っていうのは、エクシーズと同じなんだね」

「そうだね。でもシンクロはオーバーレイユニットを使わない分、モンスターの効果が使いやすいんだ」

「でも、チューナーが必要っていうのはネックな気がするっす」

「まぁ、確かに、同じレベルのモンスターだけで呼べるエクシーズに比べて、シンクロはチューナーとモンスターのレベルを合わせないといけないから、慣れないと召喚が少し難しいかもしれないね」

 

 実際、遊矢もエクシーズとシンクロではエクシーズの方が使いやすい気がする。

 しかし、シンクロで呼べるモンスターが強力なのは、これまでの戦いでわかっているし、遊矢もクリアウイングに何回も窮地を救われてきた。

 召喚法に優劣をつけるつもりはない。どの召喚にもメリット、デメリットがあり、それを使いこなすのがデュエリストとしての技量というものだろう。

 

「くんくん……デュエルの匂いだ」

 

 そのまま遊矢と翔がシンクロについて話していると、のけ者にされていた十代が、何かにつられるように、ふらふらとどこかに向かって歩いて行く。

 まだ聞きたいことがありそうな翔だったが、十代を放置する訳にはいかないと思ったのだろう。仕方ないとばかりに、翔も十代の後を追いかけていく。遊矢も苦笑いを浮かべながら、翔と共に十代の後を追いかけて行った。

 

 

 

 




 原作との変化点。

・遊矢が新システムのテスターとなった。
 ペンデュラムはペンデュラムゾーンの調整が難しくて不採用。シンクロ、エクシーズを先んじて投入予定。

・ルールが変更になった。
 先行ドローは有り、デッキ上限、EXデッキ名称変更、表側守備禁止、生贄はリリース・アドバンス召喚に変更。

・禁止制限について。
 本来なら、9月で更新なのだが、2004年3月に遊矢がやって来て、シンクロやエクシーズの導入が決まり、既存のパックの発売が前倒しになっているため、環境が落ち着かずに禁止制限が先延ばしにされている。

・エンタメデュエリスト榊遊矢はお休み。
 テスターとしてのお仕事をするためにお休みすることにした。毎回レディース&ジェントルマンの煽りを書きたくなかったのです。あまりにも面倒過ぎる。

・#2『フレイム・ウイングマン』より、遊矢がオシリスレッドに入った。
 色で制服を決めた。基本的にはオシリスレッドの制服を、いつも肩にかけているイメージでOK。

・十代とデュエルした。
 半分は講座。流石にARC-V後の遊矢の方が、GX初期の十代よりは強い。

・レッド寮に行かなかった。
 原作では、入学式の後にレッド寮へ行き隼人に出会うが、レッド寮に行く途中でデュエルしてそのまま移動しています。そのため、時間が原作よりもある状態。



 デュエル内容変更点。

・二度目のペンデュラム召喚時、強制効果のソードフィッシュと任意効果のペンデュラムマジシャンの効果発動が逆になっていたので修正しました。

・フレイム・ウイングマン攻撃時にスカイスクレイパーの効果が攻撃力に加算されていたので修正しました。


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