現在倒したセブンスターズは五名――その最初の一人、ダークネスこと明日香の兄である天上院吹雪は未だに眠ったままだった。
正確には何度か目を覚ましてはいるものの、ダークネスの影響のせいかまだ体を上手く動かすことが出来ずにいる。また、記憶も混濁しているようで、妹である明日香のことも、まだはっきり思い出せないでいた。
明日香も毎日お見舞いに来ては声をかけているが一向に良くならない。闇のデュエルのダメージや怪我はほぼ完治し、後は時間が経てば動けるようになると保険医の鮎川先生は言っているが、明日香は本当に兄が元に戻るのか、毎日不安と戦っていた。
そんなある日のこと、明日香がセブンスターズ六人目の刺客に誘拐される。同時に、万丈目の精霊達が『怪しい力を感じる』と大騒ぎをし始め、同じ部屋にいた遊矢も異変を感じ、十代、翔、隼人を連れて怪しい力を強く感じる場所――吹雪のいる保健室へと駆けつけた。
また亮とクロノスも異変を感じ取ったようで、同じく保健室へと集合している。
中に入ると、吹雪がベッドから落ちて倒れていた。抱き起すと、小さな声で「タイタン……」と呟いている。
タイタンとは、前に十代が幽霊寮で戦った似非闇のデュエリストで、ナンバーズに操られて闇の力を使い、最終的にその闇に飲み込まれたデュエリストだった。
当時、十代を退学させようとタイタンを雇ったクロノスは、彼が依頼料を受け取りに来たのだと勘違いしたみたいだが、吹雪の話ではどうも彼がセブンスターズの六人目のようで、明日香は対戦相手として選ばれたらしい。
とりあえず、動けない吹雪に肩を貸しつつ、精霊達に頼んで怪しい力がする場所へと案内して貰うことにした。
どうやらバトルの場所に選ばれたのは、前に十代がタイタンと戦った幽霊寮の奥――そこに、タイタンと対峙するように、デュエルディスクを構える明日香の姿が見えた。
「「「明日香!」」」
「「明日香さん!」」
「シニョーラ天上院!」
何とかデュエル前には合流できたようだが、既に明日香は戦う意思を固めており、デッキをデュエルディスクに入れている。
こうなれば、もう止めることは出来ない。
「「デュエル!!」」
先攻はタイタンだった。遊矢はタイタンを初めてみるが、黒いコートを着た大男で、クロノスのデュエルコートに似たデュエルコートを身に着けている。
「私のターン、ドロゥ! まず私はリバースカードを二枚セットし、手札から《煉獄の契約》を発動ゥ! このカード以外の自分の手札が三枚以上の場合、手札を全て捨て、自分の墓地から『インフェルニティ』モンスター又はドラゴン族・闇属性・レベル8のシンクロモンスター一体を選んで特殊召喚できる! 私はァ、手札三枚を全て捨て、墓地から《インフェルニティ・ネクロマンサー》を特殊召喚!」
《インフェルニティ・ネクロマンサー》
効果モンスター
☆3 闇属性 悪魔族
ATK0 DEF2000 守備表示
死霊使いの名を冠するモンスターが現れた。緑色の長髪をした骸骨がローブを身に纏っている。
しかし、前に十代がタイタンと戦った時は、デーモンデッキを使っていたと遊矢も聞いていた。どうやら、セブンスターズとなったことで、デッキも前とは大きく変更されているらしい。
「《インフェルニティ・ネクロマンサー》の効果発動ゥ! 自分の手札がゼロ枚の場合、一ターンに一度、自分の墓地から《インフェルニティ・ネクロマンサー》以外の『インフェルニティ』モンスター一体を特殊召喚するゥ!」
「手札がゼロの時に効果を発動するモンスターですって!?」
「私は《インフェルニティ・デーモン》を特殊召喚!」
《インフェルニティ・デーモン》
効果モンスター
☆4 闇属性 悪魔族
ATK1800 DEF1200 攻撃表示
今度はオレンジ色の髪を悪魔が蘇っていく。前のタイタンが使っていたデーモンシリーズだが、明らかにインフェルニティモンスターだった。
「《インフェルニティ・デーモン》の効果! このカードが特殊召喚に成功した時、自分の手札がゼロ枚の場合、デッキから『インフェルニティ』カード一枚を手札に加えるゥ! 私は、《インフェルニティ・リベンジャー》を手札に加え、そのまま通常召喚!」
《インフェルニティ・リベンジャー》
効果モンスター チューナー
☆1 闇属性 悪魔族
ATK0 DEF0 守備表示
今度は黒いシルクハットを被った二丁拳銃を持つガンマンが、フィールドに呼び出される。
「レベル4の《インフェルニティ・デーモン》と、レベル3の《インフェルニティ・ネクロマンサー》に、レベル1の《インフェルニティ・リベンジャー》をチュゥニング!」
「シンクロ召喚!?」
「出でよレベル8、《インフェルニティ・デス・ドラゴン》!!」
《インフェルニティ・デス・ドラゴン》
効果モンスター シンクロ
☆8 闇属性 ドラゴン族
ATK3000 DEF2400 攻撃表示
召喚条件は闇属性チューナー+チューナー以外のモンスター一体以上。『インフェルニティ』の名を冠する大型ドラゴンが咆哮を上げた。
「とりあえずは、こんなものか。私はこれでターンエンドだ」
タイタン 手札0枚 LP4000
フィールド デス・ドラゴン
魔法・罠 リバース2枚
VS
明日香 手札5枚 LP4000
フィールド なし
魔法・罠 なし
「私のターン、ドロー!」
一ターン目から、大型のモンスターを出してきたタイタンに、明日香も警戒度を上げていく。
ネクロマンサーやデーモンの効果を見るに、『インフェルニティ』モンスターはハンドレスの時にこそ効果を発動する。このデス・ドラゴンも手札ゼロの時に効果を発動すると見てまず間違いなかった。
「私は《サイバー・プチ・エンジェル》を召喚!」
《サイバー・プチ・エンジェル》
効果モンスター
☆2 光属性 天使族
ATK300 DEF200 攻撃表示
呼び出されたのは全身が丸く、背中に羽根が映えた機械の天使だった。通常モンスターの《プチテンシ》がサイバー化したような見た目をしている。
「《サイバー・プチ・エンジェル》の効果発動! このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから『サイバー・エンジェル』モンスター一体、又は《機械天使の儀式》を手札に加える! 私は《機械天使の儀式》を手札に加え、そのまま発動!」
サーチしてきた儀式魔法をそのまま発動させていく。
「『サイバー・エンジェル』儀式モンスターの降臨のため、フィールドのレベル2モンスター、《サイバー・プチ・エンジェル》と、手札のレベル4モンスター、《サイバー・ジムナティクス》をリリースし、レベル6の《サイバー・エンジェル―韋駄天―》を儀式召喚するわ!!」
儀式召喚――今までの明日香は、十代と同じ融合を駆使したデュエルをしていたが、いつの間にかデッキの形を変えてきたらしい。
それはより、遊矢の世界にいる明日香に近づいた姿だった。
「降臨せよ、《サイバー・エンジェル―韋駄天―》!!」
《サイバー・エンジェル―韋駄天―》
効果モンスター 儀式
☆6 光属性 天使族
ATK1600 DEF2000 攻撃表示
全身紫色の女性型モンスターが降臨する。韋駄天の名を持つだけあって、足に自信があるようで、フィールドを走り回っていた。
「韋駄天の効果発動! このカードが儀式召喚に成功した場合、デッキ・墓地から儀式魔法カード一枚を選んで手札に加える!」
「では、ここで罠カード、《インフェルニティ・サプレッション》を発動ゥ! 自分フィールドにインフェルニティモンスターが存在し、相手がモンスターの効果を発動した時、その効果を無効にし、そのモンスターのレベル×100のダメージを相手に与えるゥ!」
「なんですって!?」
「そのまま何体も儀式召喚を許しても面倒くさそうなのでなァ。最初に止めておく」
どうやら出鼻をくじかれたようで、明日香は韋駄天の効果を無効にされた上、そのレベル6×100のダメージを受ける。
「ッッ!!」
明日香 LP4000→3400
身を刺すような痛みが明日香を襲う。実際に体験するまではイメージでしかわかっていなかったが、確かに痛みや衝撃はかなりのものだった。
しかし、明日香は倒れない。
遊矢達は知らないことだが、先んじてこのデュエルに勝てばタイタンが、吹雪の記憶を取り戻す方法を教えると約束していた。その記憶を取り戻すまで、絶対に明日香は諦めない。
「ふふふ、何を焦っているゥ? 恐怖からタクティクスが乱れているのではないかァ?」
「……苦しんでいる兄を、一刻も早く救い出したい。それだけのことよ」
「そうかァ? まぁいい。お前もまた、闇の世界に取り込んで、兄と同じ経験をさせてやる。楽しみにしておけ」
「そんな楽しみは御免ね。私は手札から装備魔法《リチュアル・ウェポン》を発動! 韋駄天に装備! 攻撃力、守備力を1500ポイントアップする!」
《サイバー・エンジェル―韋駄天―》 ATK1600→3100
レベル6以下の儀式モンスターにのみ装備できるカード。条件は厳しいが、これで韋駄天の攻撃力は、タイタンのデス・ドラゴンを超えた。
「バトルよ! 《サイバー・エンジェル―韋駄天―》で《インフェルニティ・デス・ドラゴン》を攻撃!」
《サイバー・エンジェル―韋駄天―》 ATK3100 VS《インフェルニティ・デス・ドラゴン》 ATK3000
腕にクロスボウのような武器を装備した韋駄天が、デス・ドラゴンに襲い掛かっていく。
「罠カード、《インフェルニティ・フォース》を発動ゥ! 手札がゼロ枚の場合にインフェルニティモンスターが攻撃対象に選択された時、攻撃モンスター一体を破壊し、自分の墓地からインフェルニティモンスター一体を特殊召喚するゥ!」
「させないわ! 墓地の《機械天使の儀式》の効果! 自分フィールド上の光属性モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、代わりに墓地のこのカードを除外できる!」
これにより、《インフェルニティ・フォース》の破壊効果は無効となり、同時に墓地からモンスターを特殊召喚する効果も不発となる。
「ぐうぅぬぅん!!」
タイタン LP4000→3900
罠カードを凌がれたことで、デス・ドラゴンが破壊され、タイタンも僅かなダメージを受けた。
しかし、100とはいえ、闇のデュエルでのダメージはかなり大きい。タイタンも一瞬、耐えるような表情をしている。
「リバースカードを二枚伏せて、ターンエンドよ」
明日香 手札0枚 LP3400
フィールド 韋駄天
魔法・罠 リチュアル・ウェポン リバース2枚
VS
タイタン 手札0枚 LP3900
フィールド なし
魔法・罠 なし
お互いの一ターン目が終了したが、状況は明日香が有利と言うことで十代が喜びの表情を見せた。
「最初はヒヤヒヤしたけど、明日香も調子出てきたじゃん。見たか、吹雪さん?」
「………………」
しかし、対する吹雪は苦しそうな表情を浮かべている。まるで、明日香が不利な状況にでもなっているかのような感じだ。そんな吹雪の顔を見て、十代も不服そうな顔をみせる。
「なんだよ、もっと嬉しそうにすればいいのに」
「いや、吹雪は感じているんだ。明日香らしくない攻めだとな」
「ああ、俺も明日香は少し攻め急いでいるように見える」
しかし、亮と遊矢もそんな吹雪の気持ちを当てるかのように、明日香の焦りを見抜いていた。
「遊矢まで……でも、有利なのは明日香なんだぜ?」
「見ろよ、十代。タイタンの顔を」
「顔?」
遊矢の言葉に従って、十代が明日香と対峙するタイタンの顔を覗き込む。フィールドのカードが全てなくなり、手札もゼロ、ライフポイントの差も僅かで、圧倒的に明日香が優位を取っている。
しかし、まだタイタンには余裕があった。
「あれは追い込まれた人間の顔じゃない……」
遊矢がそう口にすると、同時にタイタンも動き出す。
「私のターン、ドロゥ! 魔法カード、《強欲な壺》でカードを二枚ドローする!ゥ!」
この瞬間、手札が増え、インフェルニティモンスターの効果が一時的に消える。
「私は墓地の《インフェルニティ・パラノイア》の効果を発動ゥ! 墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の『インフェルニティ』モンスター一体を手札に加えるゥ!」
最初のターン、《煉獄の契約》の効果で墓地に送った最後の一枚だった。
「私は、《インフェルニティ・ネクロマンサー》を回収し、リバースカードを一枚セット! さらに永続魔法、《インフェルニティガン》を発動ゥ! そしてネクロマンサーを通常召喚!」
《インフェルニティ・ネクロマンサー》
効果モンスター
☆3 闇属性 悪魔族
ATK0 DEF2000 攻撃表示
再びネクロマンサーが復活する。これで再び、タイタンは墓地からインフェルニティモンスターを蘇生できるようになった。
「ネクロマンサーの効果! このカードは召喚に成功した時に守備表示となる。そして、その効果で墓地から《インフェルニティ・デス・ドラゴン》を墓地より特殊召喚するゥ!」
《インフェルニティ・デス・ドラゴン》
効果モンスター シンクロ
☆8 闇属性 ドラゴン族
ATK3000 DEF2400 攻撃表示
せっかく倒した強力モンスターがあっさりと復活し、明日香が顔をしかめる。
「さらに私は永続魔法、《インフェルニティガン》の効果を発動ゥ! 手札がゼロ枚の場合、魔法・罠ゾーンのこのカードを墓地へ送り、自分の墓地の『インフェルニティ』モンスターを二体まで特殊召喚できる。私は、デーモンとリベンジャーを特殊召喚!!」
《インフェルニティ・デーモン》
効果モンスター
☆4 闇属性 悪魔族
ATK1800 DEF1200 攻撃表示
《インフェルニティ・リベンジャー》
効果モンスター チューナー
☆1 闇属性 悪魔族
ATK0 DEF0 守備表示
これで再び、レベル8のモンスターを呼び出すことが出来る条件が整ってしまった。
また、デーモンが特殊召喚されたことで、デッキからインフェルニティカード一枚を手札に加えることが出来る。
「デーモンの効果で、私はデッキから《舞い戻った死神》を手札に加える。このカードはルール上、インフェルニティカードとして扱う効果があるため、デーモンの効果で手札に加えることが出来るゥ」
まるで、闇の世界から戻ってきたタイタン自身を指すかのようなカードだった。
「私はカードを一枚伏せ、レベル4の《インフェルニティ・デーモン》と、レベル3の《インフェルニティ・ネクロマンサー》に、レベル1の《インフェルニティ・リベンジャー》をチュゥニング!」
「またシンクロ召喚!?」
「出でよレベル8、《ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン》!!」
《ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン》
効果モンスター シンクロ
☆8 闇属性 ドラゴン族
ATK3000 DEF2500 攻撃表示
その名の通り、体に百もの目を宿したドラゴンが降臨する。インフェルニティモンスターではないが、攻撃力が3000もあり一瞬も油断は出来なかった。
「《ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン》の効果発動ゥ! 一ターンに一度、自分の墓地からレベル6以下の闇属性モンスタ一体を除外し、エンドフェイズまでそのモンスターの元々のカード名、効果を得る! 私はネクロマンサーを除外し、その効果を得る!」
これにより、《インフェルニティ・ネクロマンサー》となった《ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン》は墓地からインフェルニティモンスター一体を蘇生できる。
遊矢の《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》に似た効果だが、こちらはより展開力にシフトしており、タイタンはまだモンスターを展開するつもりだった。
「墓地から《インフェルニティ・デーモン》を蘇生。そして、効果を発動ゥ! デッキから、《インフェルニティ・バリア》を手札に加える!」
《インフェルニティ・デーモン》
効果モンスター
☆4 闇属性 悪魔族
ATK1800 DEF1200 守備表示
デーモンの効果には一ターンに一度の記述がないため、何度でも使用が可能となっている。
また《インフェルニティ・バリア》は、インフェルニティモンスターが存在し、手札がゼロ枚の場合に、効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にするカードで、タイタンはこれで防御を固めるつもりでいた。
「リバースカードをさらに一枚伏せ、先に伏せておいた魔法カード、《舞い戻った死神》を発動ゥ! 自分の手札・墓地・除外されているモンスターの中から、『インフェルニティ』モンスター一体を特殊召喚する! 甦れ、《インフェルニティ・ネクロマンサー》!」
《インフェルニティ・ネクロマンサー》
効果モンスター
☆3 闇属性 悪魔族
ATK0 DEF2000 守備表示
除外ゾーンからの復活。これでさらにインフェルニティモンスターを特殊召喚できる。
「ネクロマンサーの効果で、リベンジャーを墓地から特殊召喚!」
《インフェルニティ・リベンジャー》
効果モンスター チューナー
☆1 闇属性 悪魔族
ATK0 DEF0 守備表示
チューナーが復活したことで、これでまたレベル8のモンスターがシンクロ召喚できるようになった。
しかし、タイタンは明日香のリバースカードを警戒しているようで、デーモンを始め、下級モンスターを全て守備表示にしている。おそらく、ミラーフォースのようなカードでモンスターが全滅しないように保険としているのだろう。
「ではァ、フィナーレと行こう。《インフェルニティ・デス・ドラゴン》の効果発動ゥ! 手札がゼロ枚の場合、一ターンに一度、攻撃権利を放棄することで、相手フィールド上のモンスター一体を破壊し、そのモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与えるゥ!」
「なっ、モンスターを破壊した上にバーン効果まで!?」
「消えるがいい韋駄天! インフェルニティ・デス・ブレェス!!」
デス・ドラゴンのブレスにより、韋駄天は破壊されその攻撃力の半分が明日香のライフから削られていく。
問題なのは、元々の攻撃力を参照していないので、強化された韋駄天の攻撃力3100の半分がモロに明日香に直撃することだった。
「くっ、ぅっ!!」
明日香 LP3400→1850
「バトルだ! 《ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン》でプレイヤーにダイレクトアタァック! インフィニティ・サイト・ストリームゥ!!」
百の目を持つ竜が、明日香の残りライフを奪わんと攻撃を仕掛けてくる。
《ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン》 ATK3000 VS明日香 LP1850
「罠カード、《ピンポイント・ガード》! さらに罠カード、《裁きの天秤》を発動!」
「ダブル罠だとゥ!?」
「まずは《裁きの天秤》の効果で、相手フィールドのカードの数が自分の手札、フィールドの合計より多い場合、その差の分だけデッキからカードをドローする!」
前回、アビドス三世とのデュエルで遊矢も使用したカードだった。相手のフィールド状況に依存する上、罠なので発動が遅いのがネックだが、ハマれば大量のリターンが期待できる。
今、タイタンのフィールドには、五体のモンスターに一枚のリバースカード。明日香のフィールドには二枚の罠カードが存在していた。タイタンは保険をかけてシンクロしなかったことが、ここにきて裏目に出ている。
「差は5枚。よって、カードを5枚ドロー! そして、《ピンポイント・ガード》の効果! 相手モンスターの攻撃宣言時、自分の墓地のレベル4以下のモンスター一体を守備表示で特殊召喚する! 来なさい、《サイバー・プチ・エンジェル》!」
《サイバー・プチ・エンジェル》
効果モンスター
☆2 光属性 天使族
ATK300 DEF200 守備表示
墓地からプチ・エンジェルが復活し、明日香の身を守るために前へと出ていく。
「《サイバー・プチ・エンジェル》の効果発動! このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキからサイバー・エンジェルモンスター一体、又は《機械天使の儀式》を手札に加える! 私は《サイバー・エンジェル美朱濡》を手札に!」
「ならば、《ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン》で、その雑魚モンスターを粉砕するのみよォ!」
「《ピンポイント・ガード》の効果で特殊召喚された《サイバー・プチ・エンジェル》はこのターン、戦闘・効果では破壊されないわ!」
「グヌゥ、小癪な真似を……! 私はこれでターンを終了する!」
タイタン 手札0枚 LP3900
フィールド デス・ドラゴン、ワンハンドレッド、デーモン、ネクロマンサー、リベンジャー
魔法・罠 リバース2枚
VS
明日香 手札6枚 LP1850
フィールド プチ・エンジェル
魔法・罠 なし
「私のターン、ドロー!」
手札0のタイタンとは真逆に、これで明日香の手札は7枚まで回復した。
「私は手札から速攻魔法、《サイクロン》を発動! 後から伏せたリバースカードを破壊するわ!」
「ぐっ、除去カードを引き当てたか……!」
タイタンも苦渋の声を出す。セットされた《インフェルニティ・バリア》で《サイクロン》を無効にしても、結果は同じなので意味がない。タイタンは素直にそのままセットカードの破壊を許していく。
明日香も、正確に《インフェルニティ・バリア》の効果がわかっていた訳ではないが、この状況で防御を固めようとするならば、効果無効系のカードと相場は決まっている。
これで心置きなく、カードの効果が使用できるようになった。
「魔法カード、《天使の施し》を発動! カードを三枚ドローし、二枚を捨てる! さらに《強欲な壺》! カードを二枚ドローする!」
ドローソースの連続コンボ――これで手札の不要カードを処理しつつ、有効カードを加えることが出来る。
「私は、儀式魔法、《機械天使の絶対儀式》を発動! 『サイバー・エンジェル』儀式モンスターの降臨のため、手札・フィールドからモンスターをリリース、又はリリースの代わりに墓地の天使族又は戦士族モンスターをデッキに戻し、手札からサイバー・エンジェル儀式モンスターを儀式召喚する!」
「墓地からデッキに戻すことでリリースの代わりにするだとォ!?」
「私は、墓地のレベル4、《サイバー・ジムナティクス》と、《天使の施し》の効果で墓地に送ったレベル6の《サイバー・エンジェル―弁天―》をデッキに戻す――降臨せよ、レベル10! 《サイバー・エンジェル―美朱濡―》!!」
《サイバー・エンジェル―美朱濡―》
効果モンスター 儀式
☆10 光属性 天使族
ATK3000 DEF2000 攻撃表示
背中に金色の光輪を身に付けた機械天使が降臨する。レベル10だけあって、その神々しさは半端ではなく、まさに闇を払う浄化の光を身に纏っていた。
「美朱濡の効果! このカードが儀式召喚に成功した場合、EXデッキから特殊召喚された相手フィールドのモンスターを全て破壊し、破壊したモンスターの数×1000ポイントのダメージを相手に与える!」
「なにぃっ!?」
タイタンのフィールドのワンハンドレッドはシンクロモンスター。よって、美朱濡の効果が適用され、破壊されていく。
「ぐぅぬぅぅぅんっ!!」
タイタン LP3900→2900
デス・ドラゴンもシンクロモンスターだが、墓地からの特殊召喚なので美朱濡の効果対象外だった。
「まだだァ! 《ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン》の効果! このカードが破壊され墓地へ送られた場合、デッキから『地縛神』モンスター一体を手札に加える!」
「地縛神を手札に加える効果!?」
「私は当然! 我が神より与えられし力、《地縛神CcapacApu》を手札に加えるゥ!」
これで、後はフィールド魔法を発動させれば、タイタンは地縛神が召喚可能になる。
「させない! 私は《サイバー・プチ・エンジェル》をリリースして、《サイバー・プリマ》をアドバンス召喚!」
《サイバー・プリマ》
効果モンスター
☆6 光属性 戦士族
ATK2300 DEF1600 攻撃表示
上級のプリマをアドバンス召喚し、これで明日香のフィールドには高レベルモンスターが二体並んだ。
「《サイバー・エンジェル―美朱濡―》には、召喚されたターンのみバトルフェイズに二回攻撃できる効果がある! あなたにリリース要員は残させないわ!」
「ぐっ!!」
「バトル! 美朱濡で、《インフェルニティ・デス・ドラゴン》に攻撃! アセンションバースト!!」
「バカな! 攻撃力は同じ! 相討ちする気かぁ!?」
《サイバー・エンジェル―美朱濡―》 ATK3000 VS《インフェルニティ・デス・ドラゴン》 ATK3000
美朱濡が真っ直ぐに、デス・ドラゴンへ攻撃を仕掛けていく。
「ダメージステップに速攻魔法、《収縮》を発動! デス・ドラゴンの攻撃を半分にする!」
だが、明日香も対応策は考えていた。これで、デス・ドラゴンの攻撃力は下がり、戦闘破壊が可能となる。
《サイバー・エンジェル―美朱濡―》 ATK3000 VS《インフェルニティ・デス・ドラゴン》 ATK3000→1500
「ぐぬぅ!」
タイタン LP2900→1400
「だが、この瞬間、墓地の《舞い戻った死神》の効果ァ! このカードが墓地にある状態で、自分フィールドの表側表示の『インフェルニティ』モンスターが、戦闘で破壊された場合、このカードをフィールドにセットするゥ!」
セットされた《舞い戻った死神》には、手札・墓地・除外ゾーンから『インフェルニティ』モンスターを蘇生する効果がある。おそらく、地縛神のリリース要員にするつもりだろう。
「くっ、なら美朱濡でネクロマンサーに攻撃! アセンションバースト!!」
《サイバー・エンジェル―美朱濡―》 ATK3000 VS《インフェルニティ・ネクロマンサー》 DEF2000
美朱濡の二連撃で、二体のインフェルニティモンスターが破壊されていく。
「まだよ、《サイバー・プリマ》で、《インフェルニティ・デーモン》を攻撃! 終幕のレヴェランス!!」
《サイバー・プリマ》 ATK2300 VS《インフェルニティ・デーモン》 DEF1200
プリマの蹴りで、デーモンが吹き飛んだが、まだタイタンのフィールドにはリベンジャーが残されていた。
「私はメインフェイズ2で、《儀式の準備》を発動! デッキからレベル7以下の儀式モンスター一体を手札に加え、墓地から儀式魔法一枚を選んで手札に加えることができる!」
明日香はデッキから、先程戻したレベル6の《サイバー・エンジェル―弁天―》を加え、墓地から《機械天使の絶対儀式》を手札に加えていく。
「カードを二枚伏せてターンエンド」
明日香 手札2枚 LP1850
フィールド 美朱濡、プリマ
魔法・罠 リバース2枚
VS
タイタン 手札1枚 LP1400
フィールド リベンジャー
魔法・罠 リバース2枚
「……ククク、本当の勝負はここからだァ! 私のターン、ドロゥ!!」
フィールドにはセットカードが二枚にリベンジャー、手札には地縛神と今引いたカード。
仮に今引いたカードがフィールド魔法だったとしたら、セットしてある《舞い戻った死神》の効果でモンスターが二体揃い、地縛神が召喚されてしまう。
「フフフ、ハハハハハ! 私も魔法カード、《天使の施し》! デッキからカードを三枚引き、二枚を捨てるゥ!!」
強力なドローソースで、手札を整えていくタイタン。対峙している明日香も、何か不気味なものを感じるのか、冷や汗をかいている。
「罠カード、《メタバース》を発動ゥ! このカードの効果で、デッキからフィールド魔法、《地縛地上絵》を発動ゥ!」
どうやらリバースカードはフィールド魔法をサーチするカードだったようで、タイタンがフィールド魔法を発動させていく。
これで地縛神の召喚条件が満たされてしまった。
「さらに、リバースカードオープン! 《舞い戻った死神》! 自分の墓地から《インフェルニティ・デス・ドラゴン》を復活させるゥ! そして、《地縛地上絵》の効果!」
「《地縛地上絵》の効果ですって!?」
「その驚き様を見るに、今までこのカードの真の力を使い熟すセブンスターズはいなかったようだなァ。《地縛地上絵》は、シンクロモンスターが特殊召喚された場合、デッキから『地縛神』魔法・罠カード一枚を手札に加えることが出来る! 私はデッキから永続罠、《究極地縛神》を手札に加えるゥ!」
「っ、これでモンスターが二体――」
「《地縛地上絵》のさらなる効果ァ! このカードがフィールド魔法ゾーンに存在する限り、地縛神モンスターをアドバンス召喚する場合、シンクロモンスターは二体分のリリースとなるゥ!」
「二体分のリリース!?」
「さぁ、出でよ!! 我が神! 《地縛神CcapacApu》!!」
《地縛神CcapacApu》
効果モンスター
☆10 闇属性 悪魔族
ATK3000 DEF2500 攻撃表示
これまで、鳥、蜘蛛、猿、鯱、蜥蜴と来て、巨人が現れる。しかし、巨人だとわかる奴はタイタン以外にいなかった。
こんな地下に地縛神が入り切るはずもなく、地縛神の足以外は天井を突き抜けているのだ。これでは全体のシルエットなど見えるはずがない。
「ふむ、場所があまり良くなかったな。その姿を貴様らに見せることが叶わんとは……」
「くっ、地縛神の召喚を許してしまうなんて……!」
「そう嘆くな。これは天命だ。私はカードを二枚伏せ、墓地の《インフェルニティ・ジェネラル》の効果を発動ゥ! 手札がゼロ枚の場合、墓地のこのカードを除外することで、墓地からレベル3以下のインフェルニティモンスター二体を特殊召喚する! ただし、この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化されるゥ!」
そう言って、タイタンは二体のモンスターを墓地から特殊召喚した。
《インフェルニティ・ネクロマンサー》
効果モンスター
☆3 闇属性 悪魔族
ATK0 DEF2000 守備表示
《インフェルニティ・ドワーフ》
効果モンスター
☆2 闇属性 戦士族
ATK800 DEF500 守備表示
ジェネラル同様、ドワーフは《天使の施し》で墓地に送っておいたのだろう。
インフェルニティの名を冠するが戦士族という異色のモンスターが、ネクロマンサーに並び立っている。
「私は、レベル3の《インフェルニティ・ネクロマンサー》と、レベル2の《インフェルニティ・ドワーフ》に、レベル1の《インフェルニティ・リベンジャー》をチュゥニング! 出でよレベル6、《インフェルニティ・ヘル・デーモン》!!」
《インフェルニティ・ヘル・デーモン》
効果モンスター シンクロ
☆6 闇属性 悪魔族
ATK2200 DEF1600 攻撃表示
見た目は《インフェルニティ・デーモン》を紫色にし、体を大きくしたものだった。上位種とでもいうべきか、シンクロモンスターになったことで禍々しさも増している。
「《インフェルニティ・ヘル・デーモン》の効果ァ! 一ターンに一度、フィールドの表側表示のカード一枚の効果をターン終了時まで無効にするゥ! さらに、手札がゼロ枚の場合、そのモンスターを破壊するゥ! 私は、美朱濡の効果を無効にし、破壊!」
「速攻魔法、《神秘の中華なべ》! 美朱濡をリリースして、その攻撃力分のライフを回復するわ!」
美朱濡には墓地の儀式モンスターをデッキに戻すことで、破壊効果を無効にする効果があった。だが、それも効果を無効にされたことで防がれてしまっている。
しかし、ただではやられないとばかりに、明日香もライフを大幅に回復していった。
明日香 LP1850→4850
「ならば、リバースカード、《ガーディアンの力》を発動ゥ! 《地縛神 CcapacApu》に装備!」
どうやら、リバースカードの一枚は装備カードだったようで、地縛神が強化されていく。
「では、バトルと行こう! 《地縛神 CcapacApu》で《サイバー・プリマ》を攻撃ィ!!」
「ダイレクトアタックではなくわざわざ攻撃!?」
「ライフを回復されてしまったのでなァ。我が神、《地縛神 CcapacApu》には、相手モンスターを戦闘で破壊した場合、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える効果があるのだァ!」
「ッ、墓地の《ダメージ・ダイエット》の効果! このカードを除外して、効果ダメージを半分にする!」
これもまた《天使の施し》で捨てていたカードだった。もし、このカードがなければ、《サイバー・プリマ》の攻撃力2300の効果ダメージが直撃し、続く《インフェルニティ・ヘル・デーモン》の攻撃で明日香のライフはゼロにされていただろう。
「ならば、こちらも《ガーディアンの力》の効果ァ! 装備モンスターの攻撃宣言時に、このカードに魔力カウンターを一つ置くゥ!」
《ガーディアンの力》 魔力カウンター 0→1
「そして、装備モンスターの攻撃力・守備力はこのカードの魔力カウンターの数×500ポイントアップするゥ!」
《地縛神 CcapacApu》 ATK3000→3500 DEF2500→3000 VS《サイバー・プリマ》 ATK2300
天井からいきなり押しつぶすように真っ黒な掌がプリマに襲い掛かってきた。何とか抵抗しようとするプリマだが、力及ばず押しつぶされていく。
「くっ、ッッ!!」
明日香 LP4850→3650
地縛神からの攻撃は、通常の闇のデュエル以上のダメージを明日香に与える。明日香も思わず、両ひざをついて倒れそうになっていた。
「っ、これが……!」
「お取込み中済まないが、《地縛神CcapacApu》の効果を発動させてもらう! このカードが相手モンスターを戦闘で破壊した場合、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与えるゥ!」
「ッ――!」
明日香 LP3650→2500
予め発動させていた《ダメージ・ダイエット》のおかげでダメージは半分で済んでいる。
だが、地縛神の効果ダメージは明日香の体を痛めつけていく。あまりのダメージに一瞬、意識が飛びかけた。
「《インフェルニティ・ヘル・デーモン》でダイレクトアタック!!」
《インフェルニティ・ヘル・デーモン》 ATK2200 VS明日香 LP3000
体をふらつかせる明日香に、手加減のないヘル・デーモンの一撃が襲い掛かっていく。
明日香も、リバースカードを発動させようとしたが、体が上手く動いてくれなかった。
「カ、ハッ……!」
明日香 LP2500→300
積み重なったダメージが、繋ぎとめていた明日香の意識の糸を切断し、明日香が前のめりに倒れる。
どこからどう見ても、デュエル続行不可能だった。
「「「明日香!」」」
「「明日香さん!」」
「シニョーラ天上院!」
こちらの声掛けにも全く反応しない。
「フハハハハハ! まぁ、女の身でよくやった方だろう。当然だが、このまま起き上がれなければ、デュエルは続行不可能と見て敗北となる。私はこれでターンエンドだァ」
タイタン 手札0枚 LP1400
フィールド コカパクアプ、ヘル・デーモン
魔法・罠 《地縛地上絵》、《ガーディアンの力》、リバース1枚
VS
明日香 手札2枚 LP300
フィールド
魔法・罠 リバース1枚
ターンが変わっても、明日香は起き上がれなかった。十代達が何度も呼びかけても身動き一つ取らない。
これは本格的にまずい――と、遊矢が乱入を決意すると同時、遊矢の隣から「――sか」というかすれた声が聞こえてきた。
「ふ、吹雪さん……!」
「――ぁすか……っ!」
「そうだ! 吹雪さん、貴方の声なら届く! 明日香に希望を届けてくれ!!」
遊矢のそんなエールを受けて、フラフラになりながらも吹雪は一人で立ち上がる。
「あ、すか……! あす、か……! 明日、香……!」
段々と声がハッキリ聞こえてきた。
「――明日香!!」
そして、その声は明日香にも届く。
「……にぃ、さん」
明日香――という、たった三文字だが、その言葉にはたくさんの思いが詰まっていた。
闇のゲームなんかに負けるな。勝って必ず帰ってこい。そう自分の背中を後押ししてくれている――それがわかると、明日香は立ち上がった。兄妹の絆が、闇の力を凌駕したのだ。
「馬鹿な……! まだ立ち上がるというのか!?」
「私の、ターン!!」
吹雪の応援が力に変わり、デッキからカードをドローしていく。
「速攻、魔法、《慈悲深き機械天使》……! 手札のサイバー・エンジェル……儀式モンスター、弁天を、リリースし……て、デッキから……カードを二枚、ドロー……! その後、手札を、一枚……デッキの一番下に……戻す。さらに、リリースされた……弁天の、効果……! デッキから伊舎那を、手札に、加える……っ!」
弁天にはリリースされた時に、天使族、光属性モンスター一体を手札に加える効果があった。
手札に加えたのは、《サイバー・エンジェル―伊舎那―》。そして、《慈悲深き機械天使》には発動後、ターン終了時まで儀式モンスターしか特殊召喚出来ないデメリットがあったが、明日香ももう儀式モンスター以外を呼ぶつもりはなかった。
残された力を振り絞るように、カードをデュエルディスクに叩きつけていく。
「儀式、魔法……《機械天使の絶対儀式》を、再び、発動……! 墓地の、レベル2《サイバー・プチ・エンジェル》と……レベル6の、《サイバー・プリマ》を、デッキに、戻し……レベル8の、《サイバー・エンジェル―伊舎那―》……降臨……っ!!」
《サイバー・エンジェル―伊舎那―》
効果モンスター 儀式
☆8 光属性 天使族
ATK2500 DEF2600 攻撃表示
四つの腕を持つサイバー・エンジェルが降臨する。片腕の一つには三叉戟を、反対側には斧を持っていた。
「伊舎那の、効果……発動! この、カードが、儀式召喚に成功……した場合、相手は、自身のフィールドの……魔法・罠カード、一枚を……墓地に、送らなければ、ならない……」
「なにっ!?」
今、タイタンのフィールドにはフィールド魔法、《地縛地上絵》と《ガーディアンの力》、リバースカードの《究極地縛神》の三枚がある。
フィールド魔法を失えば、地縛神は自壊する。また、《ガーディアンの力》には、魔力カウンターを取り除くことで装備モンスターを戦闘・効果破壊から守る効果があった。万が一を考えれば、この二つは失えない。
タイタンに残された選択肢は一つしかなかった。
「ならば、先んじて効果を発動ゥ! 永続罠、《究極地縛神》!! フィールドに通常召喚された地縛神モンスターが存在する場合、フィールド上の表側表示モンスター一体を破壊する! 私は勿論、伊舎那を破壊する!!」
この瞬間、明日香は笑みを浮かべる。
獲物が罠にかかった時の猟師のような笑みだ。
「伊舎那の効果……! 一ターンに、一度……自分フィールドの、サイバー・エンジェル儀式モンスターを、対象と、する……相手の効果が、発動した時……墓地の、儀式モンスターを、一体デッキに戻し……相手フィールドのカード、一枚を、破壊する……っ!」
震える指で、墓地の美朱濡をデッキに戻し、破壊の対象を《インフェルニティ・ヘル・デーモン》に設定する。
「しかし、それでは貴様のモンスターも破壊され、相打ちとなるだけ! 《インフェルニティ・ヘル・デーモン》を破壊できたとしても、次のターンで我が神が――」
「次のターンは、ないわっ!!」
伊舎那の効果は相手の効果を無効にはしないので、伊舎那自体を守ってはくれない。
しかし、それでいいとばかりに、伊舎那とヘル・デーモンが同時に破壊された瞬間、明日香は最後のリバースカードを発動させた。
「罠、カード、《緊急儀式術》……! 自分、フィールドに、儀式モンスターが、存在しない……場合、自分の、手札・墓地から……儀式魔法、一枚を、除外し……このカードの効果を、その儀式魔法と、同じ効果にする……っ!」
本来であれば、前のターンのヘル・デーモンのダイレクトアタック時に発動させ、攻撃を凌ぐつもりだったが、地縛神の一撃が予想以上に強くて体が動かせなかったのが功を奏している。
伊舎那がいなくなったことで、明日香のフィールドには儀式モンスターがいなくなり、発動条件を満たしていた。
「墓地の……《機械天使の絶対儀式》を、除外し! 墓地の、レベル8……伊舎那を……デッキに戻して……手札から、レベル8、《サイバー・エンジェル―荼吉尼―》……降臨……!」
《サイバー・エンジェル―荼吉尼―》
効果モンスター 儀式
☆8 光属性 天使族
ATK2700 DEF2400 攻撃表示
伊舎那と同じく、腕を四つ持つサイバー・エンジェルが降臨する。しかし、持っている武器が違い、両腕で長い棒を持ち、残った腕は一刀ずつサーベルを手にしていた。
「……荼吉尼の効果。この、カードが、儀式召喚に成功……した場合、相手は、自身のフィールドの……モンスター、一体を……墓地に、送らなければ、ならない……っ!」
「なぁっ!?」
タイタンのフィールドにはもう《地縛神CcapacApu》しか残っておらず選択肢はない。
装備魔法、《ガーディアンの力》には効果破壊耐性はあるが、荼吉尼の効果は墓地に送る効果なので防ぐことが出来なかった。
「ぐっ、ぬぅ……」
苦渋の表情で、タイタンが地縛神を墓地へ送っていく。これでタイタンのフィールドには身を守るためのモンスターはいなくなった。
全ては《究極地縛神》を発動したこと。
結果論ではなく、あそこが分岐点だった。
タイタンはあの場面、素直に《究極地縛神》の発動を諦めて墓地へ送るべきだったのだ。または、《ガーディアンの力》を代わりに墓地に送っても良かった。
だが、下手に欲をかいたせいで、地縛神を失い、防御手段も失っている。
ただ、それは明日香の策でもあった。タイタンの性格がその選択肢を選ばないと読んでいたのだ。
極限状態だからこそ、逆に明日香の読みが冴え渡った。
タイタンは強気な態度と裏腹に、そのタクティクスは冷静で相手の様子を見る狡猾さを持っている。しかし、逆を言えば、それは臆病であるとも言えた。
中盤、ミラーフォースを警戒しての守備連打。あそこで、タイタンの臆病さが垣間見える。
その前のターンは、墓地にフィールドを立て直すための《インフェルニティ・パラノイア》があったから強気だったが、保険を失ってからは守りの動きが目立った。《インフェルニティ・バリア》がその決定打だ。何とかして、自分のフィールドを守ろうとする保守的な意思が前に出ている。
明日香も本能的にそれを理解したからこそ、伊舎那を先に出したのだ。
もし、荼吉尼を先に出していたら、タイタンはヘル・デーモンを墓地に送り、《究極地縛神》で荼吉尼を破壊しただろう。そうなれば、後出しで伊舎那を出しても、地縛神の前に何も出来ずに終わるだけだった。
先に伊舎那を出し選択を強いれば、タイタンは《究極地縛神》を発動する。タイタンの性格では、他のカードを選択出来ないし、罠を使わないで墓地に送ることなど出来ない。だからこそのこの結果だ。
勿論、明日香も《究極地縛神》が対象を取る破壊効果だと知っていた訳ではなかった。しかし、あのギリギリの場面で手札に加えたカードは、間違いなくこちらに何かしらのマイナスを強いる効果だと予想はしていたのだろう。
結果、それが見事に嵌り、今の状況が出来ている。
「……これで、終わりよ。《サイバー・エンジェル―荼吉尼―》で、タイタンに……ダイレクトアタック!!」
《サイバー・エンジェル―荼吉尼―》 ATK2700 VSタイタン LP1400
もはや、タイタンを守る壁はなく、手札も魔法も罠も何もない。自身の負けを感じながら、タイタンが荼吉尼の攻撃を受けていく。
「ぐわあああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」
タイタン LP1400→0
決着がついたことでソリッドビジョンが解除され、明日香が再びその場に倒れる。
同時に、闇のデュエルで敗北したタイタンが、再び暗闇の中に囚われて行った。タイタンも「嫌だァ! またあそこに戻るのは嫌だァ!!」と、泣き叫んでいるが、敗者の願いが聞き入れられることはなく、タイタンは再び闇の中に姿を消していく。
そんなタイタンの最後を見ながらも、一目散に倒れる明日香へ駆け出したのは吹雪だった。しかし、まだ体が上手く動かせないようで、何度も躓き転びながら明日香の元へ駈けていく。
そんな吹雪を誰も抜かなかった。明日香が一番に来て欲しい人物が誰か、全員がわかっていたからだ。
そして、吹雪が倒れる明日香を抱き起すと、他のメンバーも明日香の元に駆けつけていく。明日香もまだ意識はあるようで、自分を抱きかかえる兄の姿を見て嬉しそうな笑みを浮かべていた。
しかし、それも限界だったようで、明日香の瞼がすぐに閉じられる。すぐに保健室へと連れて行くことになったのだが、その途中、吹雪からいろいろと事情を聞いていると、吹雪をこの特別棟に呼び出したのは大徳寺だということがわかった。
今回、たまたま大徳寺は一緒に居ないが、まさか大徳寺が裏切っていたとは信じられず、レッド生である十代や遊矢も言葉を失う。だが、吹雪が嘘を言っているとも思えず、どうすればいいのかわからなくなってしまった。
もしかしたら、何か事情があったのかもしれない。
そんな一縷の望みをかけて、レッド寮の大徳寺の部屋に向かう十代と遊矢だったが――既に大徳寺はデュエルアカデミアから姿を消してしまっていた。
原作との変化点。
・#41『闇の闘牛場(ダーク・アリーナ)発動! 明日香VSタイタン』より、タイタンデッキがインフェルニティに変更になった。
満足できねぇぜ(若本ボイス)。デーモンデッキでも良かったが、コカパクアプを出す都合上、インフェルニティの方が使い勝手が良かった。また、シンクロが結構敵側で出ないのでそこも補填したかった。オーガドラグーンやトリシューラはいない。
・明日香が戦線離脱。
デュエル中もダメージで意識が飛びかけた。しかし、万丈目や三沢に比べたら軽傷。
・セブンスターズ襲来から約二か月経っている。
時系列的に、ダークネス戦からカミューラ戦が四月上旬。カイバーマンが四月中旬。タニアが四月下旬。アナシスと黒蠍団が五月上旬、アビドス三世が五月中旬、タイタンが五月下旬という感じ。
・だが、奴は弾けた(闇の中へ)。
いつかまた出てくるかもしれない。